マンゴー・パパイヤ(クトゥルフ神話TRPG用キャラクターシート)

畑野レタスが作成したTRPG「クトゥルフ神話TRPG」用のキャラクターシートです。

本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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マンゴー・パパイヤの詳細

キャラクターID: 164423108021Retasu3

キャラクター情報  NPCでの使用は不可
TRPGの種別: クトゥルフ神話TRPG
マンゴー・パパイヤ

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キャラクター名: マンゴー・パパイヤ
16 / 16
13 / 13
外部URL:
メモ:
詳細A:
《プロフィール》
【職業】 兵士 【性別】 男 【年齢】 37 
【出身】 メキシコ 【学校・学位】 いっていない 
【精神的な障害】 シェルショック、麻薬の後遺症、トラウマ、幻聴、痙攣 

【SAN値】 現在 / 最大
65 / 99

【STR】 8 【APP】 4 【SAN】 65
【CON】 15 【SIZ】 17 【幸運】 65
【POW】 13 【INT】 16 【アイデア】 80
【DEX】 5 【EDU】 14 【知識】 70
【H P】 16 【M P】 13 【ダメージボーナス】 +1D4

【職業技能ポイント】 280
【個人的な興味による技能ポイント】 160

《戦闘技能》
☑回避     70% ☐マーシャルアーツ  1%
☐こぶし    50% ☐キック    25%
☐頭突き    10% ☐組み付き   25%
☐拳銃     20% ☐投擲     25%
☐マシンガン  15% ☐サブマシンガン 15%
☑ライフル   75% ☐ショットガン 30%

《探索技能》
☑目星     85% ☐聞き耳    25%
☑応急手当   80% ☐追跡     10%
☐隠れる    10% ☐忍び歩き   10%
☐隠す     15% ☐写真術    10%
☐図書館    25% ☐登攀     40%
☐鍵開け     1% ☐精神分析    1%

《行動技能》
☐水泳     25% ☐運転:    20%
☑電気修理   80% ☐操縦:     1%
☐跳躍     25% ☐ナビゲート  10%
☑機械修理   70% ☑製作:料理(和食) 47%
☐乗馬      5% ☐重機械操作   1%
☐変装      1% 

《交渉技能》
☐母国語(スペイン語) 70% ☐信用     15%
☐説得     15% ☐言いくるめ   5%
☐値切り     5% ☑外国語(英語) 30%
☑外国語(日本語) 30% 

《知識技能》
☐歴史     20% ☐クトゥルフ神話  0%
☐オカルト    5% ☐コンピューター  1%
☐経理     10% ☐電子工学    1%
☐天文学     1% ☐物理学     1%
☐化学      1% ☐考古学     1%
☐心理学     5% ☐法律      5%
☐人類学     1% ☐生物学     1%
☐薬学      1% ☐地質学     1%
☐博物学    10% ☐芸術:     5%
☐医学      5% 
詳細B:
{武器}
キック 1D6+DB タッチ 1回 -
組み付き 特殊 タッチ 1回 -
こぶし 1D3+DB タッチ 1回 -
頭突き 1D4+DB タッチ 1回 -


{所持品}



【現金】  【預金/借金】 

{パーソナルデータ}
【収入】  【個人資産】


【不動産】  【住所】


【家族&友人】
みんな死んだ。



【狂気の症状】

【負傷】
筋肉の一部断裂

【傷跡など】
指の無い左手、首の下にナイフ痕、腕に注射痕、全身に弾痕や火傷痕

【読んだクトゥルフ神話の魔導書】
なし

【アーティファクト】
なし

【学んだ呪術】
なし

【遭遇した超自然の存在】
なし
【探索者の履歴】
詳細C:
「シャッチョサン、寿司、いいネタあるよ。
お米踊ってる、ダンスダンス、シャリッシャリね。
農薬ナッシング、健康長生きこれ一番ね」

 竈で米を炊き、農家や漁師から厳選した食材を直接買い、
五十年一日も欠かさず包丁を握ってきた頑固親父が出迎える。
そんな和食処”和島”に現れた謎の黒人。一人称はミー。二人称はユー。
マンゴ―・パパイヤ、名前も存在感も肌の色も明らかに外国人だが、
彼は自分の故郷の名前は頑として言わない。
色々と胡散臭い外国人だが、彼は彼なりに真面目に和食の研鑽に励んでおり、
一流の暖簾を継げるほどではないが、
下処理とはいえ包丁を握るのを店の親父さんが許すほどの腕前。
極めて大柄な黒人男性、胡乱な日本語、指の無い左手。
彼が店に出始めた最初の内は不安げに思う人も多く、一時は店の客足も離れたという。

 だが親父さんはそれに対して何も語らず、黙々と料理を作り続ける。
シモンは親父さんとは対照的に、明るい笑顔で出迎えてくれる。
やがて彼の真摯な態度、上がっていく和食の腕前、明るい雰囲気に、
店の常連も、彼を受け入れ始め、客足は戻っていった。
機器の修理にもこなれており、古くなった店の改修を自前でこなし、
一部腐食した看板や解れ掛けた暖簾など物理的にボロボロな店も、
黒い手の職人の技により、趣のある店と言えるように。
シモンが話している内に、親父さんにも話を振るものだから、
親父さんも流石に一言二言ぐらいは会話に混じるようになり、
店の常連は「親父さんも娘さんが死んだ時から、めっきり暗うなっとったが、
あんの黒坊が来てからに、随分顔色が良くなりおった」と喜んだ。

 それから数年、その街にその黒人は名物として扱われた。
雨の日も風の日も笑顔で客を呼び込み、どんな相手であっても笑顔で応対する。
怒った顔を見た人はなく、うどの大木と詰られても、陽気に笑っていた。
彼がいると食事の場が賑わい、食べるという行為が楽しく感じてくる。

「ミーはこの店が大好きデース。この日本という国が大好きデース。
ミナサン、暖かい、ポカポカね。
こんな素敵な国に生まれたミナサン幸せものね」

 そりゃあ多少の諍いはある。
ただどれも黒人からすれば可愛らしいもの。
罵詈雑言も黒人からすれば、ちょっと不機嫌なだけにしか聞こえない。
金持ちの気分屋も上から目線も慣れたもの。
むしろいい意味での対価をくれて、少し囁けばいい気になるのだ。
ここには平和がある、ここには温かさがある。
黒人が望んでも望んでも、どこにもなかったものがここにはある。

黒人が日課のように、空に向かって祈る。
手を組んで、自分が今満ち足りている事をかつての仲間たちに祈る。
「中田お嬢様、ロベルト、シーカ、エルメロー、ピッチ、マタイ、チェルシー。
天国がなければ、天国に行けなければ、その魂がこの地に来れますように」
どうかかつての仲間たちに祝福がある様に。
どうか自分よりも祝福されているように。
そうでないと浮かばれない割に合わない。
「……パパイヤそこに居とったか。
丁度馬肉の良いのが届いたんでな、一杯付き合え」
普段浮かべる笑顔とはかけ離れた想いを胸に抱いて祈っていると、
階下から親父さんが黒人に声をかけてくる。
普段の賄いではなく、特にいい魚が獲れた時や、いい酒が手に入った時、
珍しい食材や貴重な素材が手に入った時、
親父さんはそれを一晩だけの特別な料理として取り扱い、それだけを振舞う。
そして修行中の黒人にも舌に覚えさせる為か、
後回しではなくその時だけは店の客と同じような形で振舞われる。
常連の人も、厳選した食材しか取り扱わないだけに、
中々出ない馬の肉が届いたという知らせを聞いて押し寄せてきた。
桜鍋に馬刺し、それを和島の頑固親父が調理する。
どれだけ美味しいものが出てくるのか、考えるだけで涎が出てくる者までいた。
黒人も大喜びで
「YES、ミーも一時期お肉といえば馬の肉だった事がありマース。
トテモ柔らかくて、それでいて繊細で、他の肉とは別ものデシタ。
ミーは馬の肉が大好きデース」
鍋の煮立つ音がする、包丁が鋭く振るわれ、肉が薄く丁寧に切り取られる。
黒人も葱を切り、下処理を手伝っていき、馬の風味が店の中全体に広がっていく。
「……お待ちどう」
そして並べられる料理、皆が思い思いに口に運び、舌の上で踊らせ堪能する。

「親父さん、これは馬の肉で合っていマスか?」
「間違える筈がねえだろ、俺ぁ羽良浅次だぞ」
「…………」
滑らかな舌触り、はっきりとした独特の食感。
濃厚に喉の奥に伝わってくる旨味の波。
それは黒人に、過去の記憶を思い起こさせる。
_______________________________


「おめえ、生きてるのか」
「…………」
「只の魚じゃなくて鮪でもとったか。
けえ(来い)、そして飯食え」

 和食処”和島”を営む男、羽良浅次が朝の仕入れの為に港に向かった時、
波打ち際の浜辺に一つ、死体のような物が転がっていた。
傷は深く、ずぶ濡れで、身体は冷え切っていた。
心臓こそ動いていたが、その眼は開いていながらどこも映していなかった。
それでいて、ここにはない何かを求めて彷徨っているような眼をしていた。
羽良はそんな眼に心当たりがあった。
少し前の自分だ。
娘が亡くなった直後の自分だ。
それが大切なものだと、その為なら自分の命だって惜しくはないと思いながら、
のうのうとそれを失ってもなお生き続けてしまった者の眼だ。
だから、羽良はその浜辺にいた黒人の男に声をかけ、
魚などを乗せるためのトラックに抱えて乗せ(注:荷台に人が乗るのは違法です)
臨時休業の札をかけ、そいつの為に一膳の飯を作ってやった。
男は手を付けず、椅子に座ったままだった。
昼飯を作ってやり、夜食を前においてやった。次の日も、その次の日も。
羽良はその名前も知れぬ黒人の男に飯を作ってやった。

 三日経って羽良は、写真を持ってきて黒人の男の前に置いた。
そこに明るい表情の女の子が映っていた。
黒人の男は初めて、自分から動き、写真を見た。
羽良はそれに何も言う事無く、小さく呟き始める。
「おめえはよ、俺に似てたんだ。
娘が死んだ時の俺によ。
俺は娘に和食を継いで欲しかった。
あいつにも誰かに美味いと言って貰える嬉しさを教えてやりたかった。
毎日、毎日、技仕込んで、厨房に立たせて。
あいつの気持ちなんて何も考えずにな。
結局あいつは店から逃げ出した。
そしてあいつは俺に反抗して悪い奴とつるんだ。
俺は臆病だった、あいつに嫌われたくなくて、何も言えなかった。
……しばらくしてあいつは死んだ、どうやら麻薬をやってたらしい」
その瞬間、黒人の男の眼から、涙が一筋流れ落ちた。
「俺は何も見てなかった、あいつと会うのが怖かった。
俺が頑固なばかりに、あいつに謝ろうともしなかった。
ただ一言、すまねえと謝って、あいつの言う事を聞いてやれば、
あいつは店から出ないで済んだし、死なないで済んだんだ。
…………久しぶりだな、こんなに話すのは。
ただ、誰かに、聞いて貰いたかったのかもな」

 そこまで言い終えた時、羽良は黒人の男が泣いているのに気づいた。
男は小さく、何度も何度も謝っていた。
羽良に、娘に、誰か分からない女らしき名前に、母親に、父親に。
何度も何度も何度も何度も、ひたすら謝罪を繰り返していた。
「そうか、おめえも誰かに謝りたかったんだな。
こうしよう、俺は娘に謝るためにおめえの面倒をみてやる。
徹底的に面倒をみてやる、いっぱしの職人にしてやろう。
だからせめて、てめえもてめえの抱えてるものに謝るために、
命を賭けてでも誰かを包丁で喜ばせてみろ。
……お互い、謝りに行こうぜ」
黒人の男は、深く、確かに頷いた。
そして前に出された食事を食べ、再び涙した。
数日食べていない腹に、和食の中でも選りすぐりの逸品が飛び込んでくる。
そこには労りがあった、誇りがあった、美味さがあった。
ただ満たすだけではない、誰かを感動させるための力がそこに凝縮されていた。
黒人の男は、羽良の行った事の半分も理解していなかった。
ただ、自身が何を為せばいいのかだけは伝わってきた。
無口な日本人の頑固親父の、五十年包丁を握ってきた指先。
それは幾百の言葉よりも雄弁に、黒人の男に語っていた。

---斬るための刃物を黒人の男は手にする---
---ただ、今度は人を不幸にするためではなく---
---今度は人を幸せにするために---

「ところで、てめえの名、聞いてなかったな。
俺は羽良、姓を羽良、名を浅次、てめえも名乗りな」
「……they call me so Marco bambina
(俺はバンビーナのマルコ、そう人からは呼ばれていた)」
「あん、マンゴー・パパイヤ?
随分と甘ったるくて美味そうな名前じゃねぇか」
「…………」
ちょっと黒人の男は突っ込みたかった。
だがまだ黒人の男は、プーニェ様の言っていたノリツッコミをまだ修得していない。
黒人の男は黙ってそれを受け入れた。


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「バンビーナ、生きてるか?」
「ああ、残念だがまだミーの天使様は来ねえようだ。
ロベルタ、ユーの天使はまだお迎えに来ないのかい?」
黒人の男と白人の男は、ボロボロになった石作りの床の上で、
互いに背を預けながら座り込んでいた。
撃ちすぎで熱くなって、歪み始めてさえいる銃身を二人とも放り投げ、
その口に煙草を咥えて火をつける。
「ああ、さっき来たんだが、敵と一緒に間違えて撃ち殺しちまってな」
「そりゃあ、しょうがねえな」
煙を口から吐く二人の周囲には、幾十もの血を流す死体が転がっていた。
死体はどれも覆面を被り、手には銃やらナイフやらを握っていた。
中には簡易的な爆弾を持ったものさえいた。
多勢に無勢、そして覆面たちの士気は極めて高かった。
だが死んだ、全て黒人と白人の二人に返り討ちにあった。
「そういや、バンビーナの知り合いはこの中にいたか?」
「ああ、そこに転がってるライフル抱えているガキ、
そして最初に撃ち殺した赤い覆面の皺皺ババア。
ありゃあミーが銃の使い方を一から教えたし、
ミーの事をバンビーナ何て呼ばずに、マルコの兄貴って慕ってくれた。
ロベルタ、ユーと違って100倍可愛げってもんがあったよ。
皺皺ババアは逆にミーに銃の撃ち方を教えてくれたババアだよ。
自分も腹減っている筈なのにな、ミーに喰え喰えもっと喰えって。
あの頃はお節介とかが煩わしかったが、あれがなきゃどこかで野垂れ死んでた。
……いっそその方が良かったのかもな」
見知った戦法、どのように来るのか、どんな武器を持っているのか、
二人は既にそれを知り、理解していた。

 麻薬シンジゲートを裏の顔に持つNPO法人”フルーツ・パラダイス”
多くの果樹農園を資産に持ち、それに偽装した果樹農園以上の麻薬農園を持ち、
金と食料で貧困層の人間を、偽りの使命に燃えた聖戦士に仕立て上げる。
そんなシンジゲートの一員として、二人はかつて動いていた時期があったのだ。
だから分かる、どうしたら相手がどう動くのかを。
だから分かる、麻薬で興奮した相手をどうすれば確実に仕留められるのかを。
過去の自分を消し去る様に、丁寧に罠が張られ、動きを誘い、仕留めていった。

 赤と白い煙が混ざる空気を吸いこみながら、ため息を大きく吐く。
「後悔してるか?」白人の男は、黒人にそう尋ねる。
「ああ、生まれた時からしてるとも。何で生まれちまったんだってね」
そう雑談を交わしながら、頑丈な扉に目を向ける。
弾痕が幾つも刻まれ、それでもその奥にいる存在を守り通した分厚い鉄の扉。
「じゃあ、何でまだ生きているんだい?」白人は次の問いを投げかける。
黒人はそれに嗤って「そりゃあ、ユーと同じさ」
「「生きる理由が出来ちまった」」
二人で言葉が揃ったのに笑いながら、今度は前に目を向ける。
敵は戦線を組み直し、無傷で士気も十分な新手を送り込んできた。
足音は地面を揺らし、吠える声でとうの昔に砕かれた窓の名残が震える。
二人は笑いながら、床に投げた銃を再び手に取る。
銃弾を込め、死体も活用して即席のバリケードを形作る。
まだまだ夜は長く、敵は数えきれない。
だが、守るべきものがある限り、共に背中を預け合える仲間がいる限り、
黒人の男と白人の男は、敵に負ける気が欠片もなかった。

 それからしばらくして、同じように死体が積み上げられていく。
銃弾と爆音は鳴り止まず、戦っているのか、それとも狂っているのか、
どっちでもあるのか、どっちでもないのか。
それすら分からなくなった境地で、二人は交互に弾丸を込め、銃弾を放ち続ける。
じわり、じわり、尽きぬ敵により足は後ろに下がっていく。
バリケードは破壊され、敵の死体を盾にするように、新しい敵が迫ってくる。
だけど死なない、今までの自分とは違う。
死んでいないだけじゃない、いつ死んでも構わないじゃない。
死にたくない、死なせたくない、その想いが胸にある限り。
……結論を言おう、確かに二人は死ななかった。
だが鉄の扉は爆風で歪み、そこに敵の少年兵が飛び込んだ。
黒人の男はその少年兵を撃てるはずだった。
実際銃口はその少年兵の脳天に狙いを定めていた。
だけど撃てなかった、引き金を引けなかった。
黒人の男は教え子も、恩人も、さっき手に掛けたではないか。
だけれど、その少年兵は、黒人の男の弟だった。
何年も見ていない、だけどその面影、村から離れる時に渡した耳飾り。
地面がずれていくように、ゆっくりと、ゆっくりと、時間が進んで行く。
爆弾を背負った少年兵が、教え込まれた正義の名の下に、鉄の扉の向こうに行く。
喉から出る声すら聞こえず、その時間だけ銃声も爆音も何も聞こえない。
そんな時間の中、黒人の男より早く白人の男が鉄の扉の向こうに飛び込んだ。
そして静寂を破る爆音が鉄の扉を大きく揺るがす。
黒人の男の時間は動き出し、足は鉄の扉の向こうへ進みだす。
「来るな!マルコ!来るんじゃねぇ!」
その足を再び止めた理由は白人の男の悲痛な声。
無防備な黒人の男の背中を何発もの弾丸が襲う。
だが背中よりも、その悲痛な声の意味を理解してしまったのが、
胸の奥側の存在しない筈の器官の痛みこそが、黒人の男の足を止めた。

 倒れ伏す黒人の男、掠れ行くその目に映ったのは、
原形を留めないほどに、右足も左足も左腕も腹部も失ったナニカ。
もう「なんでやねん!」と必死に頭をはたこうとする黄色い肌の腕はない。
必死に大人でいようとして、つま先立ちで物理的に大きく見せようとして、
かえって幼く、微笑ましく見えるあの細い足はどこにもない。
辛い感情をどこまでも押し殺し、笑い方を教えてくれたあの表情はどこにもない。
血と意識と心を失った黒人の男に、覆面を被った者達が声を投げかける。
「神は罪を犯してもなお、貴方を愛している」
 「貴方は罪を犯しても、神はそれを救われるかもしれぬ」
「神の計画に背き、逃げた預言者は、嵐に見舞われ、クジを引いた」
 「水に投げ込まれ、魚の中で悔い改め、再び神に従う心を得た」
「立ち返れ、何が正しい行いなのかを」
 「我々は火と精霊ではなく、古きバプテスマを授けよう」
「水の中で悔い改め、主の道に立ち返れ」
「「「「貴方は次に会う時、パラダイスにいるであろう」」」」

 数日後、どこか遠い遠い海で、死体に限りなく近い何かが放り投げられた。
_________________________________

 偶然とはいえ、フルーツ・パラダイスの不正と悪行の手がかりとなるものを、
黒人の男は手に入れてしまった。
なら黒人の男が向かうべきは一つ。
自身が仕える日本人の女の子の元へと駆けだしていく。
「中田お嬢様!」
「どないしたん、”バンビーノ”マルコ」
タコの字が入っていても、黒人の男がよく食べるタコスではなく、
タコ焼きという、軟体生物を程よくカットしたものを粉ものにいれて、
丸めて焼くという代物を頬張りながら、女の子は黒人の男を迎え入れる。
「フルール・パラダイスはこのメキシコに大量に武器と爆薬を輸入してイマシタ」
「せやな、でも証拠がどこにもあらへん。そんじゃお上は動かへんで」
「アリマシタ」
「マジか!」
女の子はタコ焼きを口から吹き出し、驚きの声をあげる。
「ってなんでやねん!」
小さな女の子が叫びながら、目の前の大きな男性を全力で叩く。
「無理せんと言うたやろ!何しよってんバンビーノ」
「オウ、ソーリー。中田お嬢様」
「やけどな……よう頑張った。
ウチもこない現状どないしよっと思とったっけど、
自分のおかげでどうにかなりそうや。
そこは胸張っとき。
ついでにロべやシーカに自慢しとき!」
「イエス!マム!」

シーカ退場
ピッチ退場

ーー

「自分が新入りのバンビーノっちゅう奴か、おおきに」
トップに挨拶しろと言われ、黒人の男が案内されたのは、
黄色い肌……東洋系の民族らしき小さな女の子。
どうみてもトップに見えず、それ以前になんて言っているのか分からない。

シーカ登場
お嬢様は可愛らしい面強調
シーカとは大人な関係性を

ーー

エルメロー退場
中田家両親退場
ロベルト登場
フルーツパラダイス編終了
お嬢様編開始

ーー

訓練開始
フルーツパラダイスで人の暖かさに触れさせていく
ピッチ登場
徐々におかしくしていく
数年経過
故郷の村焼く
中田家に憎悪付与

ーー

運命の分岐点、コイントス
マタイに耳飾りを渡しておく
素朴な村終了
フルーツパラダイス編開始

ーー
素朴な村開始
自由の無さを感じているのを強調
チェルシーに関しては、恋心補正でいい感じに

ーー
黒人の男は走った。
店から飛び出して、あてもなく夜の街へと逃げ出した。
だって、違った。
あまりにもその味は、あの時食べた時の味と違い過ぎた。
あの時食べた肉は何だったのか?
ただ考えれば考えるほど、答えは一つに収束されていく。
あの時あの鉄の扉には、銃弾と火薬と銃身、ナイフだけしかなかったはずだ。
その中にお嬢様に入って貰って、シェルターにした。
だからその内側に存在する”肉”なんて一つしかない。

 そうして走っていると、まさに奇跡としか思えない出会いがあった。
「おい、まさか。バンビーノか?」
紡ぎだされる懐かしい呼び名。
誰も彼も間違ったパパイヤでしか呼ばれない、って何でパパイヤやねん!
そんなノリツッコミを抑えつつ、黒人の男は振り向いた。
そこにいたのは、懐かしい白い顔。
かつて自分を誤った正義から立ち直らせた男。
背中を預けてもいいと思えた白人の男の名前は、ロベルタ。
だが白人の男は、黒人の男の目の前で……死んではいなかった。
そういえばお嬢様の亡骸がある部屋に入って行って、
それから制止した後、ロベルタがどうなったのかを全く把握していなかった。
普通に考えたら殺されそうなものだが、自分が殺されなかったのだ。
ロベルタも何かしらの悪運によって、生き延びたのだろう。
「ああ、おいおい。どうしたんだよバンビーノ。
まさか本当に女子供みてえに、人の顔を見て泣き出すたあ」
黒人の男の顔からは、知らず知らずのうちに涙が溢れ出てきた。


かつての戦友にして、最高の仲間にして、
一緒にお嬢様に忠誠を誓った白人の男は笑う。
涙ながらに嗤っている。
「ホワイ!?ロベルタ!?どうして店に火をつけた!?」
白人の男は笑って応える。
狂ったように笑って応える。
「バンビーノのマルコ、いやパパイヤ・マンゴー。
……俺たちはな、お嬢様を救えなかったんだ。
罪を贖うなんて、出来なかったんだ」
あの時、あの鉄の扉の向こうで、来るなと叫んだ白人の男は、
自分が喜んで食べていたものが、お嬢様の肉だと気づいていたのだろうか。
だからこそ、黒人の男が少しずつ救われてきた数年の間に、
白人の男は少しずつ壊れていったのだろうか。
「俺たちはな、救われちゃ、いけねぇんだ」
「ロベルタァァァァ!!!!」
黒人の男の手が懐に差し込まれ、そして包丁を握りしめて抜き出される。
白人の男は、かつて戦闘において黒人の男を凌駕したはずなのに、
それが首に届くまで、壊れた笑みのまま動くことはなかった。
横に鋭く振り切られた包丁。
それは正しい軌跡を描き、誤った使い方を完遂する。
白い首筋から赤いものが溢れ出し、口からゴポリと音がする。
そして完全に手遅れになってから、白人の男は動き出した。
声にならない声で、最後の言葉という呪いを黒人の男に掛けるために。
「おじょ…う…さ……ま……を…………」
その最後の言葉はどうやっても口から吐零れず、
代わりに周囲の人の悲鳴が、それを打ち消すように響き渡る。


回想終了
ウミガメのスープ
ロベルタ登場
和食処焼く
羽良退場
包丁をロベルタに間違った使い方
指名手配

ーー

フルーツパラダイス編再開
麻薬、飲まずにはいられない!



 素朴な村で暮らしていたメキシコの黒人の男性が、
素朴な村で家族と一緒に暮らしておりました。
黒人の男は弟と仲が良く、また好きな女の子もいました。でも若い黒人の男には、その村はあまりに素朴過ぎたのです。
そこへ”フルーツパラダイス”という慈善目的のNPO(非営利法人)の人が通りがかりました。その人は「君が物足りないのは使命がないからだ。我々に金銀はないがあるものをあげよう。主の御名の元、立ち上がりなさい」その人は、次の日まで黒人の男を待つと言いました。
黒人の男は、記念に貰った硬貨、この村では価値がなく、村の外では価値のあるもの。これを宙に投げ、表か裏かで天の意志を聞きました。その結果、黒人の男はフルーツパラダイスの一員になる事に決めました。

 それからの日々は忙しく、大変で、それ以上に実りあるものでした。
訓練し、その訓練の内容そのものが誰かのためになっている。フルーツを育て、恵まれない人たちに施す。出来ることが増え、新しい事を色々知りました。
しかしある時事件は起こりました。異教の邪神を信じ、悪魔にそそのかされ、悪の代行者と成った者達が、黒人の男の故郷の村を焼いたのです。黒人の男は嘆き悲しみ、そして怒りました。指導者も「これは正義のための戦いだ。これは神の名によって祝福されている。勇気を持つ者は幸いである」ありとあらゆる言葉で、黒人の男を勇気づけました。
黒人の男は銃とナイフ、そして爆弾を手に、多くの悪を倒しました。国で賄賂を受け取り悪政の温床となる者。外国と手を組んで戦争を起こそうとしている者。黒人の男とその仲間たちは正義のヒーローだったのです。神に祝福されているのです。何故なら、仲間たちや黒人の男たちは天使を見たのです。そして天使たちは「貴方達は正しい」と囁くのです。
そうして、ある日黒人の男とその仲間たちは、外国人のくせに、この国の人が何も出来なくなる特権を振りかざし、思い思いの悪を為し、他の悪を助けているというのを聞きました。黒人の男とその仲間たちは、当然のようにその外国人の家に押しかけ、爆弾で壁を破壊し、部屋にいた夫婦の首をナイフで掻き切りました。そして帰ろうとした時、横から白人の男と他数人の襲撃に会い、バラバラに散らされ、黒人の男は白人の男に捕らえられました。
白人の男は黒人の男に言いました。「お前らが正義だと言ってるのは、クソくだらねえ麻薬シンジゲートの化けの皮だ。薬で頭をイカレさせて、お前らのような奴らを手駒にしてるんだよ」黒人の男は必死に反論し……やがてそれは真実であったことを理解します。そして自分のやってことを深く深く後悔するのです。

 黒人の男は解放され……それでも左の手で何かをするごとに、引き金の感触が忘れられません。ナイフの感触が忘れられません。そこから怨嗟の声が染み出してくるようでなりません。黒人の男は自身の利き手の指を切り飛ばし、何か罪を償えないか求めたのです。
そのために最もふさわしいと思ったのが、白人の男ロベルタと一緒に、麻薬シンジゲート”フルーツパラダイス”と敵対し麻薬を根絶させようとする中田家に仕える道でした。皮肉にも黒人の男が殺したので、当主を失い力を大きく失った中田家は人材を求めていました。黒人の男はそこで頑張り、ついには彼女まで出来ました。
やがて中田家と黒人の男は、麻薬シンジゲートの明確な証拠を手に入れ、それを処分しようとする動きとの全面抗争に突入しました。中田家と黒人の男、ロベルタなどは麻薬シンジゲートが国内に密輸した武器倉庫を制圧して立てこもりました。あとは国連などの国際組織が来るまで持ちこたえるだけです。
でもいつまで待ってもやってきません。しびれを切らした仲間の大多数は、籠城から撃って出て、数の暴力で原形を留めない肉片になりました。そんな地獄から黒人の男を逃がすために、黒人の男の彼女は黒人の男を庇って倒れました。
もう外に出るわけにはいきませんでした。中田家の当主のお嬢様を鉄の扉の向こうに隠し、それ以外の全てで最終防衛ラインを貼りました。お嬢様は頑張って弾薬を持って来たりしてくれました。ただただ食料が無いまま時間だけが進んで行き、幸いにも中田家当主になったお嬢様が武器この奥から保存用の肉を持ってきました。みんな弾薬と一緒に箱に乗せられて扉の隙間からやってくる肉を、とても嬉しがっていました。
でも負けました。黒人の男は大切な場面で引き金を引けなかったのです。銃口を向けた先にいたのは、黒人の男の弟でした。倒れた黒人の男は原形を留めない死体になったお嬢様の姿に絶望しながら、海に投げ捨てられました。

 それからしばらくして、日本の和食処の親父さんは、浜辺で死体のなりかけを拾いました。親父さんは娘を失くした時、世の中に絶望していました。親父さんはその死体になりかけている黒人の男の眼を見て、共感の気持ちを抱き、世話してやります。黒人の男はそれから親父さんの下で、罪を償うために、今度は刃物で人を殺して悲しませるのではなく、刃物で肉と魚と野菜を切り、人に喰わせて喜ばせるのだと誓いました。
黒人の男は、それから何年もまじめに働き、その街の名物になりました。
黒人の男は、ある時自分が籠城していた時、食べていた肉が人間の肉だったと気づいてしまいました。悲しみのあまり逃げ出した先で遭遇したのはロベルタ。彼に全てを打ち明け……そしてロベルタは全てを聞いた後、笑顔で親父さんと黒人の男の店を燃やしました。「俺たちに救われる権利なんてねえんだと」黒人の男は、再び刃物を誤った使い方で使いました。
公衆の面前で人を殺した黒人の男は日本にいられず、どこにいっても絶望しか産まない環境に正気でいられず、戻った先はかつて黒人の男を笑顔で迎え入れた麻薬シンジゲート”フルーツパラダイス”でした。
フルーツパラダイスは笑顔で過去の事を水に流し、黒人の男に麻薬を進めました。
こうして黒人の男は再び笑顔で銃を人に向けて撃てるようになりました。一生懸命修行し、美味しいものを作って、それで手に入れた金も。金を手に入れた人を銃で撃って、手に入れた金も同じもの。ただちょっぴり血の匂いがするだけなのです。

〆
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