😶 『』なんてね。 感想+α (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)とても素晴らしいセッションでした。 良い小説を読んだ後特有の読後感がある素晴らしいシナリオでした。 KPCはロスト、PC生存という結果なのは残念でしたが、やり切った自信はあります。 彼だったらこれ以外の結末はないでしょうし、自分としてもこれ以上はないという納得感があります。 KPも細かいRPに付き合ってくださったおかげでPCに入りこむことができました。 本当にセッションを開催したいただきありがとうございました! この下は参加したPCの後日譚です。 直接的ではないにしろ、類推できそうな表現はあるのでネタバレを気にする方は閲覧を控えることをお勧めします。 ここからが後日譚です。 ●後日譚『君のいない写真』 ふいに目が覚めた。 まだ部屋は薄暗く、窓から日の光が入ってない。耳が痛くなってくるような静寂が部屋を包んでいる。 充電中のスマホの待ち受け画面を見るとまだ5時だった。 母が死ぬ夢を見てしまったのが忘れられなかった僕は、一時期悪夢を見るのが怖くて薬がなければ寝れなくなってた。 今では怖さも大分なくなってきたけど、まだ心のどこかにしこりが残ってる。 自然と早く目が覚めるようになったのもそのせいだ。 眠気もないし、仕方ないので布団から起き上がってキッチンへ。 大きな音を立てないように気を付けながら朝ごはんを作る。 …… この体質になって以来、朝ごはんにおいてキッチンは僕の独壇場になったのは少しだけ嬉しい副産物だ。 二人分の簡単な和食を用意して、ささっと自分の分を食べ終えると部屋に戻る。 机の上で最早すっかり私物みたいな顔で横たわっている家族アルバム…… のはずだったものを開いた。 探すまでもなく謎の女の人の写真が並んでいる。 半年ぐらい前に知らない女の人が家族アルバムに紛れ込んでいるのを見つけた。 いや、紛れ込んでるというか今持っているアルバムに関してはぶっちゃけ女の人ばっかり写ってる。 気になって他のアルバムも確認してみると、しっかりと女の人が育っていく姿が写ってる。 見つけた時持っていたインスタントカメラを現像するとその女の人の写真ができたから、確かに女の人は側にいたんだと思う。本物の家族みたいに楽し気に、時には母さんや僕とも一緒にいるその女の人…… でも、まったく心当たりがなかった。 いろいろな人に聞いて回ってみたけど母さんの知り合いにもいないし、僕の同級生に聞いても誰も知らなかった。 一緒に育ったはずの誰かが煙か何かになって消えてしまったみたいだった。 最初は面白がっていた母さんも、最近は気味悪がってもうこのことについては話したがらない。 だけど、僕はまだ彼女を探していた。 探究心とか、怖いもの見たさというのもあるけど、単純に彼女に会ってみたいのだ。 「…… 今日はこれにしよう」 街を見下ろす位置をバックに移っている一枚をスマホで撮る。 多分、これは近くの山の展望台で撮った写真だ。 これなら自転車でもいけるだろう。 いつものバックにスマホ、サイフと家の鍵それにインスタントカメラを入れて飛び出した。 最近の趣味は女の人が写っていた場所に行くことになっていた。 家の誰かが使っていたっぽい部屋がそうだったように、実際に写真の場所に行ってみると意外と女の人の痕跡が残っている。 制服を着て前に立ってる写真に写ってた店では、彼女の私物が処分されかけてたから何とか頑張って店長を説得した。 そうやって調べているうちにどんどん写真の中にしかいない彼女に詳しくなっていった。 「ここは…… 外れか」 スマホに写した画像を見て、撮った場所であることを確認する。 いい景色だけど彼女の痕跡は残ってなかった。 まだ昼ごはんまでは時間があるから他の場所を探そうか。 スマホをしまうときに、インスタントカメラが奥の方に転がっているのを見つけた。 カメラを構える。ボタンを押す。かちっとオモチャのような音が鳴る。 しみついた動作はまだ残っていたけど、以前はあったはずの手ごたえが感じられない 何回か雑誌の賞を取ることもあったんだけど、半年前の悪夢以降一度も採用されない。 審査員はみんな口をそろえて『写真にあるべき重要なパーツが抜け落ちてる』と指摘する。 悪夢以来、あまり家族写真を撮らなくなったからか? 単純に風景写真を撮る技量がなくなったのか? いや、本当は分かってる。 足りないのはきっと彼女なんだろう。 なんだか自分の大切な部分がなくなってしまったような、胸を掻きむしりたくなるような気持ちが広がってきた。 僕はバッグの中の写真の束を取り出した。 それは最近友達と撮った写真だ。 誰を写してもこれじゃない感がぬぐえないが、それでも大切な思い出だ。 その一枚を食い破り、咀嚼し、腹の中に収める。 そうすることで胸の中に残っていた空っぽが満たされて、なんだか自分が満たされた気分になる。 そして後を引くように、大切な写真をダメにしてしまった後悔と罪悪感が襲ってくる。 もうこうするのも慣れてきてしまっていることに嫌気がさす。 はじめは訳が分からず、心を満たすために何枚か女の人の写真を食べてしまったが、いまは友達の写真をデコイにすることで彼女の写真を守っている。 …… そりゃあいい写真を撮れないわけだ。取りたくもないものを、囮にするためだけ撮ってるんだから。 ため息をついてともう一度カメラを構える。 いつもそうだ。彼女がいた場所を訪れるとそのたびに写真を撮って、なんだか嫌な気持ちになる。 いっそやめてしまえばいいのに、分かっていても止められない この虚しさは彼女に会えれば消え去ってくれるんだろうか。 写真の中の彼女に思いをはせながら、ただ君のいない写真だけを撮る日々だ。 ※彩斗の一人称が変わったのは大人ぶろうとする意識がなくなったからです。
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