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2025/03/30 18:06
😶 クトゥルフ短編「画像生成AIの描いたもの」 (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼) マール社の世界の図書館、って本が欲しいが高いデス・・・ 「本編」 私はA市にある大学付属の図書館に勤める図書館員である。 うちの図書館は、二階建ての吹き抜けになっている。本棚は床から二階天井まで壁面に沿って重ねられており、建物の中央に設置された螺旋階段でアクセスできるようになっている。狭いスペースに本の収納の為にむりやりそうしたらしい。地震でもおきたら大変なのだが、いまのとこと、そういう事態には陥っていない。一応、この構造はドイツにある古い修道院(たしか、マリア・ラーハという名前だったと思う)を参考にしたものらしい。。 そんな奇妙な構造の図書館なのだが、正直なところ、あまり人気がなく、日々を静かに過ごしている。 太陽が西に沈む時間がだいぶ遅くなったある春先のこと、私は珍しく残業をし帰りが遅くなった。 今日の夕飯はどうするべきか、軽く済ませるかと思っていたところ、目の前を何かが横切った。猫である。 その猫は、建物と建物の間にある路地裏に消えていった。猫も夕食を急いでいるのだろうか。自分はいっそ、外食で済ませようかと思って、自分がいま立ち止まっている店をみてみた。 画廊だった。夕食とは縁がない店だ。しかし、ちょっと絵を見て帰るのもいいだろうと、まだ営業中でもあったので、私は店に入ってみた。 ドアを開けると呼び鈴が鳴ったが店主が出てくる様子はない。まあ、勝手に見させてもらうとしよう。 店内に飾られている絵は、どれも普通のものだった。人物画、林を描いた風景画、宇宙から地球を見た絵、など。 それらを見ているうちに、私はあることに気が付いた。これらは、おそらくAIが書いたものだ。 人物画は、左右の均整が取れすぎているし、林の風景画の木々は通常ではありえない長さに伸びている。宇宙から見た地球は、宝石のように青く輝きすぎている。 「お気に召して頂けましたか?」 不意に声を掛けられびくりとした。いつの間にか、中年の男が私のすぐ隣にいた。店主だろう。 「すみません。勝手に入ってしまって」 「いえいえ、構いませんよ。よろしければ、奥でお茶でもどうぞ」 と奥の部屋に案内される。断ろうとしたのだが、少々、強引に奥へと通された。 「お気づきでしょうか? 店内の絵画は全て、画像生成AIによって描かれたものなのです」 やはり、そうだったか。店主は旧式のデスクトップパソコンを起動し、私に画面をみせた。画像生成AIが、新たな画像を生成していく。 「世間では、著作権の違反だとかいろいろ言われておりますが、AIは学習速度が速いだけなのです。人間が何十年もかけて体得し絵画にしたものを一瞬で学んでしまうから誤解されるのです」 「学習し、新しい芸術の世界を切り開くことを否定するなど、新たな芸術に対する理解が足りていないのです」 私は店主の力説する様子に気圧された。 どこかの教会。非常に小さな人物が描かれているが、小さくてよくわからない。人間のようにも見えるが、それにしては青いきもする。 海底にでてくる神殿。柱と柱の間から、緑の光が漏れている。潜水艦のようなものから、金魚鉢のような潜水服の人物が神殿に向かっている。 巨大な石造りの神殿。前の画像と関連があるのだろうか。ゆるやかな曲線を描く何かが眠っている。 画面に次々に描き出される光景に、私は目を奪われた。もっと、もっと見てみたい。 そう思ってしまったのだが、不意に画面が真っ暗になった。これはなんだ、故障か? すっかり魅了されていた私は、いつの間にか店主の姿が消えているのにきがつかなかった。画面では、少しづつゆっくりと、扉の絵が浮かび上がっていく。私は画面から目が離せない。 「なあぁぁん」 不意に、猫の鳴き声がした。視線がそちらに向く。一匹の猫が、窓の外からこちらをみていた。と同時に、ぬちゃり、という気味の悪い音がパソコンの画面から響いてくる。 画面の中、描かれた門がゆっくりと開き、そこからぬめぬめとした粘着物に覆われた長い触手が伸びてくる。これはなんだ、何かの生物の舌のようだ。 もはや、画面の中の映像は生成ではなく動く動画になっていた。おまけに、ひどい腐臭がする。これは、本当に画像生成AIなのか? 画面の下が、画面を飛び出し、私を絡めとるように伸びてきたので、私はそれを避けた。運動が得意とはいえず、なんとか直撃はさけたが、謎の生物の舌がまき散らすなにかの汚臭にみちた粘液が服を汚した。 こんな場所にはいられない。私は逃げようと扉に飛びついたが、扉は開かなかった。鍵が閉められている。 どんどんと扉をたたくが、扉が開けられる様子はない。これは店主の罠だったと、今更ながらにきがついた。 足元に、ずるりと何かが這い寄ってくる。舌だ。何かの下が画面から扉までの軽く3メートルはあろうかという距離を伸びてきて、私を捕まえようとする。この世にこんなに長い舌を持つ生物はいない。この画像生成AIは、学習の果てに何を生み出してしまったのか。 扉はゆっくりと開き、舌の本体が見えそうになってくる。 「なぁああん」 窓の外の猫が鳴く。 私にできる事は、唯一の抵抗は一つだった。私は、必死の思いでパソコンの裏手に回り込み、パソコンの電源を引き抜いた。ノーパソでなくて良かった。内部電源のない旧式のデスクトップパソコンは、電源が切れて停止した。 あの気味のわるい舌も、パソコンの電源が落ちると同時に姿を消した。 あの猫のおかげで助かった。 <終> あとがき 画像生成AIがなんか変なものを生成してしまうというお話でした。TRPGのシナリオにしようと思ったものの、いつまでたっても仕上がらないから、こういう形に。 作中の登場人物は、自分のキャラクターシートにある「夢眠史郎(すごい名前)」っぽいイメージです。オチは猫がキーボードの上に座って台無しにする「猫リセット」にしたかったのですが、うまく表現できないので、こんなかんじになりました。
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2025/03/30 18:06
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