【ニンジャスレイヤー 書籍版】【ディシーブド・バイ・ショーギ・バスタード】【TRPGリプレイ】

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登録日:2024/12/16 18:31最終更新日:2024/12/18 13:52

前置き

このリプレイは、12/15日のユドナリウムリリィ+ニンジャスレイヤーTRPGの説明を行った際、唯一の参加者であるPLのぐり=サン協力の下、彼が作成してくださったPCでギャンブル中毒のニンジャ…デッドハンズ=サンが、地下賭博場「ツクツク」の胴元で根っからのバクチ打ちでもあるソウカイ・ニンジャ、マタドール=サンと邂逅し、彼との出会いを経てソウカイヤ入りを果たす過程を、互いにRPしながら作らせてもらいました。表記はTogetterまとめやNJRecallsに近い形でまとめました。唐突な提案に快く承諾してくださったぐり=サンに感謝。やさしみ…


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ニンジャスレイヤーTRPGより 【ディシーブド・バイ・ショーギ・バスタード】


二頭の牡牛がぶつかり合うピンク色のネオン看板が、重金属酸性雨を浴びてバチバチと火花を散らした。その下では「ノー・ブルシット」「危険」「ツクツク」と書かれた危険なLED文字が、交互に点滅する。ここは、ネオサイタマのリアルヤクザたちが夜な夜な集う危険な違法賭博場、「ツクツク」だ。 1


ここに集まるヤクザは、クランのためにと大口を狙う者もいれば、マネーロンダリングを目的にゲームセンター感覚で利用する者もいるが…地下賭博場にやって来たのはヤクザの矜持なぞ微塵も持たない、ハナフダ・トランプのイカサマを得意とする一人のギャンブラーであった。 2


室内は巨大なアーケードゲーム場を改装して作られ、薄暗く広大。チョウダ・ハンダ賭博を代表するダイスやオスモウ・スロット、ハナフダを用いた各種ギャンブル・ゲームの他、胴元が飼いならす屈強なバイオ闘牛「マツザカ」による殺戮ショーが行われて、オイラン・バニーが運ぶオボンの上には、ドリンクと共にシャカリキ・タブレットが添えられている。 3


「…………」その男、デッドハンズは店内の周囲の監視の数を確認しながら、ポーカーの台に進む。「ドーゾ、空いてますよ」近づいてきた客に自然な対応で席への着席を促すのは、サイバーサングラスをかけたディーラーのクローンヤクザである。「…それじゃ、やろうか」ツイてる、と思った。以前に下見したときと同じクローンヤクザがディーラーだ。 4


クローンヤクザは全員全く同じようでいて、ほんの僅かに個体差やディーラーとしての経験の差がある。その隙を突くのがイカサマの鍵のひとつだ。「何だよ、ニイちゃん。ケジメもなけりゃ、カチコミしたような傷跡も無いじゃねぇか。ホントにヤクザか?」隣の席にいたのはグレーターヤクザ。つまるところ、平凡な一般客だ。 5


「オイオイ、ガードは何やってんだ? ア? ヤクザスーツ、ちゃんと着てんだろうな?」「……これでいいか」ジャケットをずらし、下に着たヤクザスーツを見せる。無論、男はヤクザでない。ツクツクに入るため手配屋から調達したものだ。「問題ありません、始めます」クローンヤクザが合図し、二人にハナフダ・トランプを配る。 6


「……」デッドハンズは一瞬手札を見て、すぐに伏せる。常に目の前で持つスタイルは素人だ。後ろの何者かに見られるリスクは最小限に。「ホーホー、アンタ…アレだな? 賭博を転々としちゃ、大勝ちして逃げ去ってくような、典型的なディーラーだろ」余裕のある表情を見せつつ、隣の新参に尋ねる。 7


「悪いがココは止めた方が良いぜ、そういう場所じゃないんだよここは。シンジケートって知ってるよなァ? そいつらが一枚噛んでるようなとこでふんだくるような真似は…」「俺は大勝ちなんて出来るようなタマじゃない …2枚だ」手札のうち不要な2枚をディーラーの前に飛ばす。 8


「…ハイハイ、3枚な」後から続くように、カードをディーラーへと捨てる。クローンヤクザが捨てられた札の枚数分、プレイヤーへと渡していく。デッドハンズには2枚。リアルヤクザには3枚だ。「ドーモ」配られた2枚をちら、と見てまたすぐ伏せる。現時点の男の手札は役無し。ブタだ。 9


「こいつは悪くねぇな…頭は俺だな? じゃ、早速ベットだ」グレーターヤクザが「ベット」のボタンを押す。「コール」肝心なのは1回目だ。様子見と、腕慣らしも兼ねて、まずはやるべきだろう……イカサマを。勝負は、目の前の男が手札を晒す瞬間。この時は誰もがそこに視線を追ってしまう。すなわち、イカサマのチャンスだ。 10


「では、ショウダウン!」景気よく見せたクローンヤクザの手札は、8のスリーカード!「よっしゃ、こいつはもらい!!」ヤクザの出した役はQのスリーカード!ヤクザの一人勝ちか? 否、ヤクザ二人が手札を見せているあいだに、デッドハンズは既にイカサマの仕込みを終わらせていた。「……俺の勝ちだ」彼の出した役はフルハウス!フシギ! 11


「ブッダシット!フルハウス!?マジかよ…」グレーターヤクザは驚きを隠せずにいた。常連としてここに長いことポーカーをしていたが、こうも鮮やかな振る舞いには驚きを隠せなかった。「ここに来る前にブッダに祈っててよかったぜ」いたって平静を装いながら、周囲のヤクザの視線をちらりと見る。注意は払われていない。完璧だ。 12


デッドハンズは長袖の下に忍び込ませていたトランプを手元に手繰り寄せ、あとは伏せた手札を晒す際に静かに入れ替えたのである。後はカードを手に取り、晒すだけ。彼にとって、この程度のイカサマはベイビー・サブミッションも同然。何故なら彼はニンジャの…ギャンブラーだからだ! 13


「…ドーゾ。」クローンヤクザはデッドハンズに大量の万札チップを与えた。ただのビギナーズラックではない。だがこれは、純粋にデッドハンズが磨き上げたイカサマの賜物である。ワザマエ!「ドーモ。……続けるかい、旦那?」「あ、当たり前だろォ…まだ始めたばっかだからよォ。こっからだよ…こっから」デッドハンズの挑発にヤクザが続行で答える。 14


時刻は刻一刻と過ぎて行った。デッドハンズは負けこそするが、勝つときはまさに大勝とも呼ぶべき役を揃え、勝利を手にしていった。ウシミツ・アワーもあと少しの所で、リアルヤクザは連敗を理由に席を降り、ポーカーテーブルにはデッドハンズがただ一人座っている。 15


「頃合いだな」時間的にも、儲け的にも、切り上げるタイミングであった。デッドハンズは席を立ち、いままで稼いだチップを精算しようとする。この賭場を使うのはこれで最後だ。バレてないとはいえ、次からは怪しまれるかもしれない。だが賭場はいくらでもある。このネオサイタマには。 16


「お客様、少し事務所へ」会計へと向かうデッドハンズを止めたのはヤクザスマイルで近づくグレーターヤクザの小男だ。紫色の上級ヤクザースーツを着込み、胸元には悪趣味なクロスカタナのバッジ。「アッハイ」いかん。怪しまれたか?だが、そうと決まった訳ではない。ここはおとなしく従っておく。 17


「事務所はこちらです」小男とデッドハンズは、隠しドアの前に立つ。小男がLAN直結でUNIXにパスコードを直接入力した。ガゴンプシュー。一行の後方で、機密フスマが閉じた。「オジャマシマス」とはいえ、すぐさま逃げようとしても無駄なのはわかっている。俺のイカサマは完璧のはずだ。でなければさっきの時点で咎められていたはずだ。 18


「言っときますが、手荒な真似はせんで下さいよ…どっかのニンジャ=サン。」通路を歩くデッドハンズの後ろには、いつの間にか散弾銃を構える4体のクローンヤクザ。既に臨戦態勢!「アニキ、例の男をお連れしやした」「……ニンジャ?」そこは、まさにヤクザの事務所と称されるに相応しい内装の中、PVCレザーソファに腰を下ろすのは…ソウカイ・ニンジャ! 19


「フウーッ…ドーモ、初めまして。マタドールです」葉巻を一服した後、アイサツするは「ツクツク」の胴元、恐るべきソウカイ・ニンジャのマタドール!「…………ドーモ、デッドハンズです。おかしいな…俺はもう帰りたいんですけどね」はぐらかすデッドハンズに対し、マタドールは淡々と話を進めた。 20


「フッ、やはりな…貴様は俺の眼に止まった時点で、既に檻に捕まったも同然なのだよ。あれだけ長い時間やっていれば、貴様の動きぐらい容易に分かる。お前がイカサマ師であること。ニンジャ動体視力とニンジャ器用さを駆使して、イカサマをしていることをな」「仮に俺がイカサマ師だとして、イカサマをその場で捕まえずここに呼び寄せたのはどういう魂胆だ」 21


「俺はお前と同じ熟練のイカサマ師だ。だが、それと同時に生粋のバクチ打ちでもある。お前は見どころのある博徒だ。だからこそ、お前がバクチ打ちかどうか…要は肝っ玉の太さを測る。ちょっとしたギャンブルでな。」「……いいだろう。それで、ちょっとしたギャンブルというのはなんだ?」 22


「ヘイ、言われた物を用意しときました。」小男が運んできたのは3つのショットグラス。それぞれのグラスには赤色、黄色、緑色をした不気味な液体が注がれている。デッドハンズに拒否権はない。他のニンジャと遭遇するのは、初めての経験だったからだ。相手の提案を拒否してこの場を去るビジョンは今のところ、ない。 23


「貴様がここから逃げるのは時間の無駄になるだけだ。オレのサーベル・ジツは既に貴様の首を掻っ切るには、十分な距離にいるんだからな…」二人のニンジャは向かい合って座る。テーブルには先ほどの三つのケミカルな液体のショットグラス!「一つは劇薬が入っている。後遺症が残るほど、危険な代物を混ぜさせた。残り二つは睡眠薬…悪い賭けではあるまい」 24


「睡眠薬を飲んだ後はどうなる? そのまま寝込みを殺されたら死んでも死にきれん」「その点は安心しろ。睡眠薬はお前の勝利の証…目が覚めれば、お前の胸元にはクロスカタナのバッジが付いていると保証してやろう」「それはありがたいことだ…」ソウカイヤ、この男のように組織に繋がれる羽目になるのか。 25


だが、いまこの場ではそれが唯一生き残る道だ。勝ち方を選べるような立場でないのは承知している。「そう悪いものでもないぞ? 欲しい物は全て手に入ったからな…この店、凶悪なバイオ闘牛のマツザカにクローンヤクザ。欲しいと思った物、全てをな」「……」俺の本心は見透かされている。やはりこの男……マタドールと言ったか。上等の博徒だ。 26


改めて三色のグラスを見る。見た目では中身の違いはわからない。当然だ。「……ところで、マタドール=サンはどれが毒かは知ってるのか?」「知っていてはバクチになるまい。あの小男だけが、正解を知っている。これは純粋な度胸試しだ…飲まぬなら、今ここでカイシャクしてやっても良いのだぞ?」 27


「少しでも駆け引き・読み合いの余地があればと思っただけだ。少しでも勝つ確率が上がるのなら藁にも縋るのがギャンブラーだろう?」……そして、デッドハンズは赤のグラスを取る。「ならば、俺はこの緑色のグラスをいただこう」「……俺はイカサマを咎められて、生きるためにこれを飲む。なら、マタドール=サンはなんのために飲む?」 28


「オレはソウカイ・ニンジャ…そして、バクチ打ちだ。このゲームで、オレはそれを証明する。ただ、それだけだ」「なるほど。酔狂なもんだ」デッドハンズが返す。「そうだ、酔狂なバクチ打ちのドウモトでもある」「……カンパイ」ショットグラスを一気に飲み干す。「カンパイ」マタドールも続けてショットグラスを飲み干す。その所作に躊躇いはない。 29


ショットグラスに注がれた謎めいた液体は薬物風味を醸し出し、飲んだ者の舌を麻痺させた。…二人は暫くの間、見つめ合った。「あぁ…このまま寝るには座り心地のいい椅子だ……」PVCレザーソファに深く座りなおした。後ろでなにかが行われている気配は感じた。だが、振り向くこともできない。睡魔は確実にデッドハンズの意識を狩り取ろうとしている。 30


おお、見よ。小男の後ろ手に隠された錠剤瓶めいた形の小型リモコンを! 小男が赤のボタンを押すと、デッドハンズはたちまち深く重い眠気へと襲われているではないか! これは、如何なるイカサマか!液体は飲むだけでは効果は発揮されず、スイッチによる遠隔操作によって、飲んだ者を好きなタイミングで眠らせる。闇ルートで入手した睡眠薬である! 31


「残念だったな…イカサマがバレるかどうかのスリルを味わうために、わざわざオレもグラスを口にしたというのに。メンターになる気など更々ないが、精々ソニックブーム=サンに殺されないことを…ブッダに祈るぐらいはしてやろう」あんたがメンターなんてこちらも願い下げだ。悪態をつく暇もなく、デッドハンズは完全に眠りに落ちた… 32


かくして、デッドハンズはソウカイ・ニンジャとなった。だが今回のギャンブルは、彼が直面するバクチの規模に比べれば、ごくごく些細な先ぶれに過ぎないのである…おぉ、ナムサン! 33


ニンジャスレイヤーTRPGより 【ディシーブド・バイ・ショーギ・バスタード】終わり

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本作は、「ブラッドレー・ボンド、フィリップ・N・モーゼズ、本兌 有、杉ライカ、KADOKAWA」が権利を有する「ニンジャスレイヤーTRPG コア・ルールブック」の二次創作物です。