【ロストロイヤル】白き指、血で濡らさば:その2【TRPGリプレイ】
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1. セス | |
2020/10/11 00:57 |
>騎士と王子はそれぞれの思惑のもとに歩みを進める。 >運命の分岐路に差し掛かった時、彼らはどちらへと向かうのか。 いい引きですね! 今後の展開を楽しみにしてます!
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本作は、「うらべ壱鉄、冒険企画局、新紀元社」が権利を有する「ロストロイヤル」の二次創作物です。
衝動的に書き上げてしまったのでまた投稿しました。休日の時間をけっこう消費したけど後悔はない。
◆◆◆
落城する王宮よりエゼク王子と3人の騎士は逃れ、庇護を求めて一路ロンズデール卿の封土へと向かう。しかし、王子の遠縁にあたるロンズデール卿は王の証たる秘宝、聖杯を奪うべく叛意を翻した。
騎士たちの活躍により王子暗殺は阻止される。だが、叛逆の意志を示したロンズデール卿――ウィルフレッドをいかに扱うかという問題が残された。
一行の意見が分かれるなか、王子はいかなる決断を下すのか。君主の卵に最初の試練が降りかかる。
◆◆◆
Q:何あらすじにしてるわけ?
A:開幕フェイズのログ紛失しましたwwwwサーセンwwwww
閑話休題。
「騎士たちが異なる2つの命題から一つを選び、一行で何らかの決断を下す」というゲームのシステム上、PLの分身たる騎士は周囲の人々、そして主君と語り合い己の意を周囲に示すことになる。つまり今から行われる分岐フェイズではRPが非常に重要になるのだが……
まだPCのキャラが固まっていないため、脳内メモリの使用率を80%ぐらいにして思案する私。しかし、リリの中の人が先に対話フェイズを行うという決断を下し、私が先陣を切って大事故になる悲劇は避けられた。
騎士たちと王子はロンズデール卿の処遇を話し合うべく、卿の邸宅として使われていた屋敷に滞在することとなった。初春の風が吹く庭園でしばし語り合うリリとエゼク王子。
王都に咲いていた馥郁たる花々とそれを愛していた母、王妃グレイローザのことを想いエゼク王子は年相応に涙を浮かべる。そんな王子にリリは優しく語り掛けるのだった。
「……そうだね。馥郁たる花の宴。魔王が現れる前は、母上がこよなく愛していたものだった」
「……母上……」
「愛はいいです。いつまでも抱いていられる。そして、どこまでも進んでいけるのです。王子、その寂しさも愛です。あなたはその愛で、これからも元気に、綺麗な空の下で生きていくのです」
ここで判定が挟まれた。今後の運命を占うべく3つのダイスが盤面を転がる。
5、3、1を上にして止まったダイス。達成値は8、見事な判定成功であった。
「……リリ。きみは、素敵なひとだね。ああ、そうだ。下を向いてばかりいては、眼前に咲く花の美しささえ、見落としてしまうかもしれない」
「おかげで少し気が晴れたよ」
「……きみがいてくれて、よかった」
「そうです。世界にはいろいろな素敵なものがあります。それらひとつひとつを愛して、心身ともに健やかな王となる……リリは王子に、そうなって欲しいのです」
リリの会話をみて気合を入れつつ「対話判定やりたいです!」と宣言する私。GMも承諾し、シーンは私が操作するPCであるトリンシックのものに切り替わった。
今は人気もなくなった大広間。冬の匂いが残る空気が窓から流れ込んでいたが、一羽の小鳥がそこから入り王子の白い指先へととまった。
一羽の雲雀に春の訪れを感じ取るトリンシックとエゼク王子。話の内容は次第に今後のこと、そしてロンズデール卿の処遇へと流れを変えていった。
「アヴァロンを失って、今やぼくは一人では何もできない。あにう……ロンズデール卿の処遇を、決めることさえ」
「王子は……前に進むってことに不安を覚えることとか、ないっすか」
「……あるよ。自分の行く先が正しいと確信できたことなど、一度だってない」
再びふられるダイス。6、1、2の出目は判定がスペシャルであることを示していた。やったね!
王子と視線を合わせ、思いが伝わることを祈りつつトリンシックは言葉を重ねた。
「俺はそうやって頑張って生きてる王子、尊敬してますよ。商家の次男坊には王家の責務とかはよくわかんないけど、とても重いものだとは王子を見ればわかります」
言葉は胸に届いたのだろう、緊張していた表情は和らぎ王子は静かに語りだした。
「……そうか。きみには、兄上がいるのだったね」
「ロンズデール卿とはね。小さい頃、ほんの数ヶ月ほどだけど、一緒に過ごしたことがあったんだ」
「兄弟というものに憧れていたから、つい〝兄上〟と呼んでしまって。……すごく嫌そうな顔をされたっけ」
互いに兄がいるという運命のいたずらに苦笑する二人。しかし、心に抱えていた不安が少し薄れたのは確かだった。
シーンはノエルへと移る。対話判定を選んだ彼は食堂で王子と出会った。子猫の形をした不可思議(ニミュエ)と話をしていた王子は、心のどこかに未だ迷いを抱えていた。
「王子、ウィルフレッド殿の処分についてじゃが、悩んでおられるみたいじゃな」
「……うん。当の彼はああ言っていたし……罪もきっと、相応なのだろうけれど」
「いち領主で……ぼくの、家族だ。簡単には、決められない」
騎士として3人の中で一番長い歳月を生きてきたノエルは名誉のため、そして守りたいもののためにより多くの決断を下してきた。己の経験をもとに彼は言葉を紡ぐ。
「そうじゃのう、僕のとしてはウィルフレッド殿は処刑すべきじゃと考えるの」
「じゃがこれは所詮、僕だけの意見じゃ。リリ殿にはリリ殿の、トリンシック殿にはトリンシック殿の意見があるじゃろう」
「じゃからの、王子。一度決断したことは覆してはいけないと心得るのじゃ」
「僕らは様々な意見を持つ。円卓の騎士同士でも意見が対立することはよくあることじゃ」
「それでも決定に従うのは、正反対の意見でも逆らわないのは、王がしっかりと考え、それが一番だと判断し決断したと信じてるからじゃ」
「……そう、だね。仮にロンズデール卿を殺める決断を下したとて……」
「それを後悔し、嘆き、足を止めては。信じてくれた騎士にも。散っていった者にも、申し訳が立たない」
判定は成功し、ノエルは判定の振り直し権こと【正義】を獲得した。ここでちょうど分岐フェイズは中間地点に差し掛かかることとなった。
騎士と王子はそれぞれの思惑のもとに歩みを進める。運命の分岐路に差し掛かった時、彼らはどちらへと向かうのか。