【ロストロイヤル】白き指、血で濡らさば:その6【TRPGリプレイ】
注意: 当ページの内容の転載、複製は著作者の許可がない限り行わないでください。
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本作は、「うらべ壱鉄、冒険企画局、新紀元社」が権利を有する「ロストロイヤル」の二次創作物です。
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本作は、「うらべ壱鉄、冒険企画局、新紀元社」が権利を有する「ロストロイヤル」の二次創作物です。
Mustang
リプレイ 3
登録:2021/04/29 17:26
更新:2021/04/29 17:27
◆3ラウンド
2ラウンド目の攻防を終え、これは行けるというムードが漂い始めた時にそれは起こった。
「——雄々オオオォォォォォッ!!!!」
トリアールが、人のそれとは思えないほどの絶叫を戦場に響かせる。その響きは、振動は、本能的にあらゆる生物を萎縮させる。
「【罪の果実】か!」
魔将のみがもつ強力なバフ/デバフ、【罪の果実】。ランダムに発動したりしなかったりするそれがついに発動してしまったのだ。
「全員、速力と魔力に×がつきます。意地でも【高揚】を保たないと大変なことになりますよ!」
GMの発言に戦慄する3人。初見で若葉がついていても出目次第で決まる【高揚】は一切容赦してくれない。ここからが本番。
「リリ、これが魔人との戦いじゃ。決して油断するんじゃないぞ」
「ええ、勿論ですわ!ノエルも突っ込んでいってくださいませ!」
不利であろうが放たれた矢のごとく突き進むリリ。全能力値に不利を負ったノエルは援護に回る。その後トリンシックが【血路】を削ったらトリアールが「妄言」でパワーアップして筆者が「げぇっ!」と思ったりした。
「行きますわよ!」
魔術で蔦を束ね、緑の巨腕のようにして振り下ろすリリ。
「グッ……咒林妖精相手の戦闘経験が……否。『緋々茜の騎士』、ここまでのものであったか!」
直撃によるノックバックを止められず、トリアールは魔群の中へと後退していった。
◆4ラウンド
血路判定に敗れPC側不利の開幕となった4ラウンド。しかし、これ以上の長期戦は不利と判断した騎士たちはここで一転攻勢に出る。
1戦闘に1回だけ使用できる【絆】と、ダイスの出目を操作できる【運命点】を駆使し血路に対するダメージを伸ばすノエルとトリンシック。魔術による幻影の刃と、技巧に支えられた細剣の刃が小鬼たちを薄紙同然に裂く。
包囲を抜けられる焦りが生んだ、トリアールの2度にわたる反撃は騎士たちの命を奪うには足りず。
「そうね、ノエルとトリンシックがやったのだから、私はこれでもう「良し」と思っていたのだけれど、少しお返しをしておきますわ」
リリが生じさせた緑の驟雨は、退路を塞ぐ最後の小鬼たちを打倒した。ついにこの場から脱することができるようになったのだ。
「よくやった、リリよ!今は分が悪い、早く脱出するぞい!」
「ええ!速く抜けましょう!」
「ほれ、トリンシックも来るんじゃ!」
「……次に相まみえたとき、必ず決着をつける」
トリンシックを最後に退路を走る4人。
「おのれ、死するまで戦うことなく、逃げるとは……む?」
忌々しそうに呟いたトリアールが、己の掌を見る。
おびただしいほどに血が流れていた。知らぬ間に、これほどの手傷を負わされていたということか。
「……フハハッ……面白い! いいだろう、円卓の騎士……そして『譲り葉』!キサマらが成長し、円熟したその時にこそ、このトリアールが刈り取ってくれるわ!」
狂気的な笑い声を背に、騎士たちは戦場を脱するのであった。
◆終幕フェイズ
どうにか魔将トリアールの追撃から逃げ切り、一行は森の奥、清らかな沢の流れる場所へと出た。
「……不可思議たちの気配がする」
慣れないながらも騎士3人に守られる形で戦場を横断したエゼク王子。
「うん。かれらも、安心している様子だ。ここにはもう、争いのにおいはないよ」
「ふう、何とかなったようじゃな」
「空気がおいしいですわ。たくさん吸って回復しますわ」
なんとか生き延びた二人が各々の感想を述べるのをみて、トリンシックも刃こぼれがないかざっと確認してから剣を鞘に納め、大きく息を吸って吐く。
「これからずっと、あんな相手と戦ってゆかねばならないのだね」
「ホントそれっすよね、腕を磨かないとこの先生きて行けなさそう」
騎士たちがこんなにも強く在るのに、主君である自分が弱音ばかりではいけない。王子はぐしぐしと涙を拭く。
「せめて今は、傷を癒さないと。不可思議が話しかけてくれた。この先に、身を潜めるのにちょうどいい洞窟があるそうだ」
リリがこっそり持ってきたお菓子を食べながら作戦会議をしようということに。相当危なかったが当面の危機は去ったのだ。
王子もリリの提案に同意し洞窟へと向かう。彼が手を見るとそこにはほんの小さな切り傷が。逃げる際、指先をどこかの木の枝にでも引っ掛けて、切ったのだろう。ひとすじの血が流れ落ちている。
「兄上を、殺さずには済んだけれど」
果たしていつまでも、この白い指は、血で濡れずにいられるものだろうか。彼ら騎士にだけ、すべてを背負わせるわけにはゆかない。
その日の夜、騎士たちは一様に不思議な夢を見た。預言者デネトワによる龍と、魔王にまつわる伝承の夢。
これは吉兆か、あるいは波乱の前触れか。彼らの旅路は続く。
◆あとがき
全6回にわたるキャンペーンのうち最初のシナリオに当たる「白き指、血で濡らさば」をログを参考にリプレイに起こしてみました。
特にいいねや閲覧数を稼ごうとかそういうことは考えずに「思い出を残しておきたい」という一心でキーボードを叩いたので若干読みにくい部分があったと思いますが、ここまで読んでいただき幸いです。
残り5回も個性的なセッションだったので、後々リプレイとして残しておこうかなぁと考えています。