【ケダモノオペラ】『饗応の試練場』 #02【TRPGリプレイ】
注意: 当ページの内容の転載、複製は著作者の許可がない限り行わないでください。
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本作は、「池梟リョーマ、アークライト、新紀元社」が権利を有する「ケダモノオペラ」の二次創作物です。
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本作は、「池梟リョーマ、アークライト、新紀元社」が権利を有する「ケダモノオペラ」の二次創作物です。
じゃがまる2
リプレイ 1
登録:2022/11/06 17:15
更新:2022/12/21 00:15
ケダモノオペラリプレイ『饗応の試練場』 #02
これは『饗応の試練場』プレイ時の、場面2『迷宮都市』でのやりとりと物語の記録です。
前回:『場面01_騎士たちの来訪』
https://trpgsession.click/sp/topic-detail.php?i=topic166766272730
※リプレイ製作時に心情や描写を大幅に加筆しています。
話の流れ、台詞、行動はセッション時のものですが三次創作の面が強いため苦手な方はご注意ください。
参加者
KP いおろい
PL じゃがまる2(ツキミ)
PC情報:ツキミ(場面02開始時)
ケダモノ種:アラクネ(水晶の糸を操る大蜘蛛)
ケダモノ名:ツキミ
疑似餌の姿:顔の見えない魔女(死骸)
行動理由:人の魂の輝きに対して興味を持つ。
権能:叡智
住処:天まで届く塔
欲望:鑑賞
『人々の悲劇や激しい感情を間近で堪能するために、頼みをきく。』
伝説:
□『あなたは昔、幸福な生活をおくっていました。今もそれを懐かしんでいます。』【伝説表:失楽園】
特技の使用:
□0 □1 □2 □3 □4 □5
獲得した予言:※予言の内容はセッション終了までに必ず物語に組み込むこと
□『迷宮の奥底で、あなたはシャルルとふたりきりになりました。』【イントロ予言】
”饗応の試練場は”渓谷の崖にぼっかりと口を開いている。
いつからあるともしれないこの地下迷宮は、広く深く、未だに奥まで踏破されたことがない。
未発見の財宝を求め、腕自慢たちが集まり、彼らの落とすあぶく銭を目当てに商人が群れ、谷底に迷宮城下町が出来上がる。
あなたたち一行は、この活気あふれる街へと足を踏み入れる。
ここでは、疑似餌を使って人間のフリを続けるのが賢明だろう。
場面02_迷宮都市
迷宮都市①:迷宮城下町
”饗応の試練場”は複数のダンジョンや洞窟が連なる地下迷宮だ。相応しきものには財宝を、そうでないものには死を与え、最深部には饗応夫人と呼ばれる欲深いドラゴンが巣食うとか。はたまた迷宮に終わりなどなく試練は地獄まで続くのだとか。いずれにせよ真実を確かめたものは存在しない、この世には――危険と魅力を十分に備えた迷宮への挑戦者は後を絶たず、彼らを支援するもの、そこに商機を見出すもの。熱に浮かされた多くの人々が渓谷を行き交い、いつしか一つの都市が築かれる。それが饗応夫人のお膝元、”迷宮城下町”。ボレア王国の若き騎士団長ブリジットは、精鋭の騎士と魔法使いツキミを連れ、シャルル捜索のため試練場の入り口があるという谷底の街を訪れた。
◆
露店の立ち並ぶ大通りを歩きながらブリジットは説明する。
「ツキミ様、”饗応の試練場”は饗応夫人なるドラゴンが作った迷宮だと伝えられております」
だが迷宮の最下層に到達する者も、そこに棲むドラゴンを見たという者も未だ現れない。この厄介な噂が、多くの冒険者と同じようにシャルルの冒険心にも火をつけてしまったのだろう。
周囲を見渡せば、見るからに腕の立ちそうな一行や、遥々遠征してきたであろう商隊の姿を多く見かける。様々な立場のものが町を訪れ、それぞれの思惑で試練に挑み、その大半が戻らない。ここではそれが日常なのだ。
それにしても。
ぼんやりと雑踏を眺めるツキミはじつに気だるげだ。こちらの話を聞いているのかいないのか、やはりケダモノという存在は人の営みに興味を示さないものなのだろうか。
ブリジットはそのような事を思いながらも話を続ける。
「やみくもに迷宮の中をさまようのは得策ではありません。まずはシャルル殿下の冒険者パーティについて情報を探そうと思うのですが、よろしいでしょうか?」
対するツキミの反応は薄い。
「シャルルとやらに興味はない。その辺りのことは全てお前たちに任せる」
その言葉通り、こちらの行動などはどうでもいいのだろう。
だが彼女――ひょっとすると彼かもしれないが――はそう言いながらも約束どおりにこうして森を離れ、部隊に同行している。出会いこそ死を覚悟するようなものだったが、ブリジットにとってはこの事実だけで感謝してもしきれない程だ。
「はっ。ではまずシャルル王子を探すために情報を集めたいと思います」
「うむ。好きにしろ」
この街は人も物も多い。手がかりが見つかるまでは気の長い作業になるだろうが、殿下は人目を惹くお方。何処かにきっと、情報を持つものがいるはずだ。
ブリジットは騎士たちに命じて周囲への聞き込みを始めた。
迷宮都市②:試練『シャルル王子の情報を集める』
騎士たちの様子を眺めていたツキミはため息を吐く。ああ、面倒くさい、もどかしい。ブリジットの輝く様を見るためにわざわざ外まで出向いたというのに、このような些事に時間を奪われるなど怒りすら覚える。しかし彼女の行動に口出ししてしまえばそれこそ本末転倒というもの。ふん、シャルルの動向だと? どうという事はない。僅かな知恵で片付く話だ。早くこの者らを満足させて先に進んでもらうとしよう。
それでは試練『シャルル王子の情報を集める』です。
権能は慈愛、叡智。難度は1。波乱予言は3つですね。
【波乱予言:シャルル王子の情報を集める】
『あなたたちは偽りの情報をつかまされました』
『あなたたちは盗人に荷物を奪われました』
『あなたの噂が広がり、街は恐怖に包まれました』
物騒な予言が多いですね(笑)
試練なので、ベースロール 2d6を振ることになります。
振ります(コロコロ)…… 6。
6ですね。あと 4あれば試練クリアですね。
では特技3『B:糸の芸術』を使っちゃおうかと思います。
どんな感じで使っちゃいますか?
マジックアイテムを作るというのがどこまで出来るかによりますが。例えば街の地図を作って、パーティに縁のある人がいれば地図のその場所が光る、みたいな。
おお~なるほど。多分ブリジットはシャルル王子の使っていた物品か何か持っていると思うので、それを使って痕跡を辿る、みたいな?
あ、いいですね。触媒もあると。
ただ街中で思いっきり使っちゃうとですね。
そうか、まずいですね。姿が見えちゃいますね。
まあ蜘蛛なので、通りを堂々と歩いててもいいんですけど。
(笑)
街中でも高いところにスルスルっと上って、そこで作ることも出来るんじゃないですかね。
なるほど、迷宮都市だしきっと入り組んでますよね。
ええ、全然行けると思います。では 2d6をお願いします。
はい(コロコロ)…… 5。ギリギリだねぇ!
ああでも通りました、良かった! それでは試練は突破ということでよろしいですね。
はい!
「ところでブリジット」
「なんでしょう、ツキミ様」
騎士たちが聞き込みを始めてから数分後、ツキミはブリジットを呼び止める。
「ソナタ、シャルルとやら、もしくはそのパーティとかいう輩に纏わる物品を持っておらぬか」
「はい……昔、シャルル様に頂いたこの髪留めでしたら」
ブリジットは頭から何か外すような仕草をして、手のひらをツキミに差し出す。
「これが何かお役に立ちますでしょうか?」
そこに乗せられた小さな髪飾りは、僅かに色褪せているものの、さびや曇りは見当たらない。
控えめな輝きが持ち主によく似ている。
これなら素材としては及第点だろう。
「少しの間、貸せ」
「はい。もちろんでございます」
髪の乱れもそのままに、ブリジットは二つ返事で答えて見せる。
「何、特に傷つけようということはない」
「いいえ。それでシャルル様が見つかるのであれば、どう使って頂いても大丈夫でございます!」
ブリジットの返答にはやはり迷いがない。この実直さ、本当に見込み通りの娘だ。
「探すのはソナタ等の仕事だがな。そうだな――少し散歩してくる」
言うが早いか、ツキミはブリジットに背を向けると返事も待たずに通りを歩き出す。入り組んだ路地を適当に進み、丁度いい暗がりを見つけると改めて周囲を見渡した。どうやら騎士たちは付いてきていないようだ。
それだけ確認すると、ツキミは人通りが途切れるのを見計らい疑似餌を迷宮都市の路地裏へ滑り込ませる。
さて、少しばかり大蜘蛛の知恵を授けるとしよう。
では『糸の芸術』を使ったという事で【特技予言】のどちらかを得ましょう。
【特技予言:糸の芸術】
『いくら新しくつくっても、失われたものは戻ってはきません』
『美しいだけで、むなしいものでした』
ちなみに予言なんですが、「あなた」と書かれている場合はツキミさん自身に起こることで、ブリジット、とかいう風に書かれている場合はその人に起こることです。
ふむふむ。
それ以外の特に指定されていない予言については誰に起こっても構わないです。自分でも他人でも。
面白いですね。
で、どちらにしましょう?
では使いやすそうな『美しいだけで、むなしいものでした』を得ようと思います。
はい。では、あなたは見事な地図を作り上げます。
はい。
それを見るならば、1か所、シャルルではないだろうがシャルルの関係者であろう弱い光を見つけることが出来るでしょう。
おお~。
迷宮都市③:特技『糸の芸術』
岩壁に張り付くようにして屋根を高く積み上げた建物は、迷宮都市では珍しくない。そのうちの一つ、ひと際高い屋根の上に、音もなく巨大な蜘蛛が這い上がる。常人が見れば悲鳴を上げかねない光景だが、生憎ケダモノというのは人目を忍ぶのが得意な連中だ。どれ、まったく、小汚く散らかった街だ。このような場所を好んで訪れるシャルルとやらは本当にここまでして探す価値のある者なのだろうか。糸で地図を織り上げる間、頭に浮かぶのは小言ばかり。ああ、忌々しい。やはりさっさと娘の魂を頂いて塔へ戻るべきか。だが、折角おあつらえ向きの試練に挑むと言っているのだ。このような機会を逃すような真似こそ耐え難い――さあ出来た。幸運な娘だ。奴に通じるものは確かにいるようだ。
ツキミは自分で探す気はないので、その地図を持ってブリジットさんのところに戻ります。
ではブリジットさんとその部下たちが聞き込みをしていて、それでも情報が得られないというところにスルスルっと戻ってきます。
はい。
多分上から疑似餌をスルーっと降ろしてくる感じでしょうね(笑)
(笑)
ふとブリジットが振り返ると。
「ツキミ様!?」
数瞬前には確かに誰もいなかったはずの背後にいつの間にかツキミが突っ立っていた。
「も、戻ってらしたんですか?」
「そら、返すぞ」
何でもないという風にツキミは髪飾りを差し出す。
「あ、ありがとうございます……」
ブリジットは何とか礼を言うと、受け取ったそれを髪にさし直す。
しかし、今の出来事は一体何だったのだろうか。
こちらの視線に気付いたのかツキミが口を開く。
「ソナタ、シャルルとは良い仲だったのか?」
予想外の話題にまたもや面食らってしまう。どうやら説明する気はないらしい。
「ええと……はい。女だてらに私が騎士団長をしているのも、シャルル王子に『お前は剣の才能がある!』と見出され、さらに剣の稽古をつけて頂いたからなのです」
そうして鍛錬を重ねた結果が今の自分だ。
剣を磨いたとて、彼の言葉がなければここまで辿り着くことはなかっただろう。
「シャルル王子は、本当に私の恩人です」
「そうか。であれば、私からもシャルルという者には感謝を伝えねばなるまいな」
ツキミの大きな帽子の下から、薄い笑みが覗く。
「話はもうよい。そら、こちらもソナタに預けよう」
「こ、これは……?」
ブリジットの手に乗せられたのは少し厚みのある織物だった。その布は滑らかな虹色に輝いており羽のように軽い。上物のシルクだろうか。よく見ると生地の表面には刺繍で細かな模様が描かれている。
「驚くほどの物でもない。この街の地図だ。光っているところがあるだろう」
ツキミの言う通り、確かに一か所、インク染みのような淡い光を放っている。
「はい……ございます」
「恐らくそこはシャルルか、その所縁のものか? まあ分からんが、そういったものがいる場所だろう。そういう風に作ってある」
「す、すごい技をお持ちですね……!」
ブリジットは改めて手元の布に目を落とす。なるほど、確かに街の全体像が見て取れる。
一体どのような技術、魔術を用いればこのような事が叶うのだろうか。
顔をあげてツキミを見ると、彼女は念を押すように、そして実に面倒臭そうに言葉を付け足す。
「後はソナタらで勝手に探すが良い」
「かしこまりました! ご助力ありがとうございます、ツキミ様!」
ブリジットは心からの謝意を伝えると、すぐに部下たちを呼び戻す。
地図によれば目的の場所はどうやら商店のようだ。そこに、シャルルを知るものがいるに違いない。
では、あなたたちはシャルル王子の足跡を辿ることが出来る。
シャルルの冒険者パーティは、この迷宮から幾度も財宝を持ち帰ったベテランだ。
彼らと懇意にしている商人の店にあなたたちは辿り着く。
果たして、店の主人はシャルルに縁のある者だった。何でも彼らは店の得意客らしい。
店主によれば、シャルル達は”千の竜塚”、”盗掘者の野”、”果てなしの大滝”を経由し深層を目指したのだという。
そして、計画では半月で戻る予定だったとも。
彼らの出立は二月前。どれだけ切り詰めようとそろそろ備蓄が尽きる頃だ。
ブリジットは震える胸に手を当ててひとつ息を吐く。分かっていた事実に今更不安がる必要はない。
すぐにでも発たなければ。最も確実に、迅速にシャルル達と接触し得る方法で。
「探索は、殿下と同じルートを辿る強行軍になります」
部下達とツキミとに向けてブリジットはそう告げる。
これは同時に最も危険な選択でもある。
並の者では彼らの足跡を追うどころか先へ進むことすら難しいだろう。
ならばこそ。
「ツキミ様、貴方様の力が頼りです。どうかよろしくお願い致します」
「ふむ。そのようなこと、どうとでもなる」
魔女の形をした存在は、相変わらずの調子で、しかし確かに頷いたようだった。
彼女にとって人探しも迷宮の攻略も大差ないと言う事か。
「何と心強いお言葉。本当に、ツキミ様にお願い出来て良かった……」
「良い良い。ソナタらは精々足掻くがいい。私はそれを見るだけだ」
「もちろんでございます!」
ツキミの行動がどのような動機によるものであれ、探索行に加わったという事実が揺らぐことはない。
その助けをもって王子救出の悲願が達成できるのであれば。
「ツキミ様にはあくまでご助力頂くだけ。それだけで私は――」
何も求めないどころか、本当に何を差し出しても惜しくはないのだ。
王国で待つ民も、きっと皆同じ想いでいることだろう。
ブリジット達も恐らく食料等を用意して、いよいよ饗応の試練場と呼ばれる迷宮に挑むこととなります。
では場面3『千の竜塚』です。
⇒『場面03_千の竜塚』へ続く