Keiさんの日記 「ホワイト・ウルフの歴史のお話」

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Kei
Kei日記
2024/01/28 20:35[web全体で公開]
😶 ホワイト・ウルフの歴史のお話
ご機嫌よう。

先だって D&D ひいては TRPG そのものを作ったとも言える会社 TSR のお話をしましたが、今回はホワイトウルフのお話をしましょう(勢いがついてしまいましたので)。

TSR の回で、90年代には D&D の売り上げが頭打ちになっていたこと、加えて業界を襲った MtG の波があったことを書きました。これは D&D だけでなく、当時の多くの会社にとっても同様でした。ですが、そんな中ひとり息巻いていた会社があります。それがホワイトウルフです。
ホワイトウルフはもともと Ars Magica を出版していた会社と、ゲーム雑誌を出版していた会社が合併して生まれ、Ars Magica のデザイナー、マーク・レインハーゲンのアイディアで作られた TRPG、Vampire: the Masquarade で成功を収めました。V:tM は TRPG に(さらに加えて LARP にも)大きな影響を与えただけでなく、90年代の TRPG 文化を牽引する大ヒット作として絶大な人気と影響を誇りました。シリーズはどんどん拡張され、World of Darkness という共通の世界観を持つ複数のタイトルが生み出されていきました。
そんな WoD ですが、2000年代に入ると Time of Judgement という一連のキャンペーンによって終焉を迎えます。終焉を迎えるというのは、このキャンペーンがそのものズバリ、WoD を終わらせるものだったのです。そして、新しいシリーズ、Chronicles of Darkness へとバトンは渡されることになります。
その一方で、当時のホイワイトウルフは、TRPG 以外のゲーム領域に目を向けていました。具体的には WoD Online という MMO RPG を立ち上げようとします。ですが、ホワイトウルフには MMO RPG を作るような資金も技術もありませんでした。そこで同社は、EVE Online を作っていた CCP Games との合併を選びます。プロジェクトの開始は注目を集めました。
ですが、難航する開発をはじめとするいくつもの問題が立ちはだかり、加えて EVE Online の拡張が優先され、WoD Online チームは繰り返し縮小とレイオフの対象となったばかりか、TRPG としての CofD の売り上げも目標に届かなかったため、ホワイトウルフ部門自体も度重なるレイオフに晒されると、CofD のディレクターは対抗として新会社 Onyx Path を立ち上げ、CofD 自体の開発は新会社に移管されます。
また一方で WoD 20th 版も出版にこぎつけ、旧来の WoD ファンから好評を持って迎え入れられましたが、「目が覚めるような十分な売り上げ」とはならず、CCP 配下でのホワイトウルフの命運はあと僅かでした。どんどんリソースは削られていき、ついには開発開始から8年の時を経て完成に程遠い WoD Online もキャンセルされ、WoD Online を含むホワイトウルフの資産も売却されることになります。
そこで名乗りを挙げたのが Paradox Interactive です。パラドゲーをご存知の方はホワイトウルフとの関連がないことに驚くでしょう。パラドが主に展開しているのは高難易度ストラテジー・ゲームばかり(HoI とか)の上、パラドが出版社として契約しているゲームもいわゆるシミュレーション・ゲーム(Cities Skylines とか)ばかり。WoD のようなゲームが入り込む余地はないように見えます。どうやら噂によると Paradox の役員に WoD が好きな方がいらっしゃったとか……?(噂です
ともあれ、資産一式が買い取られ Paradox の子会社として再出発することになりました。これまで CofD と書いてきていますが、正式に CofD となったのもこの時で、それまでは CofD も単に WoD もしくは新 WoD と呼ばれていて混乱の元でした。CofD(WoD 20th の一部も)は引き続き Onyx Path にライセンスされることになりました。
ともあれそうして、Paradox の下で生まれ変わったホワイトウルフは、晴れて V:tM 5e を出版します。
これが問題作でした。ネオナチへの(好意的と取れる)言及、小児性愛(とも取れる)描写、チェチェンでの性的少数派に対する加害を扱ったネタなどが含まれ、Paradox が謝罪、出版停止になりました。いわゆる「再発防止策の検討」の結果、現代は90年代ではないし、ホワイトウルフに任せていたらまたやらかすことが確認され、ホワイトウルフでの開発・出版は停止されることになりました。WoD 5e はライセンスされ、開発は Renegade に移管されました。
いまでもホワイトウルフという会社は Paradox 配下で存続し、WoD の企画チームのような業務を行なっています。

WoD も日本語版がありました(Revised、いわゆる3版)。アトリエサードが出していましたが、アトリエサードが出したかったのは V:tM だけだったんじゃないかしら、と思ったり。というのも、V:tM のコアルールだけあからさまに紙の質が良くって。あとアトリエサードの翻訳は読みにく……いえ、これはそもそも原書がポエムというか読みにくいのですけれど。
ともあれ WoD はいいゲームですし、こういうゲームを遊ぶ方がもっと増えたらいいのにな、と思ったりもしますわ。
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