マスターさんの日記 「過去のセッション日記 深淵(後編)」

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2022/06/19 05:26[web全体で公開]
😶 過去のセッション日記 深淵(後編)
 雨!
 今この土地に水の加護が還って来た!!
 私の力の源泉、水。いよいよ動く時が来た!!
 早速小さな水妖を呼び出し、ガイウス様の元へ伝令を飛ばす。
 まさかこの国を蹂躙する準備を怠っているとは思わない。時満ちるのはもうすぐだ。

 奴隷達の煽動工作を黒眼に任せ、私は火神教団の象徴、巨大ピラミッドへと向かう。
 黒眼。ヤツは上手くやるに違いない。でないと私の側では生きていけない。

 ピラミッドへと向かうケラスス。これは果たして何なのか。それがどうしても知りたい。
 ただの聖帝十字陵なら良いケド、何らかの儀式に使用して、まかり間違って火神教団の御本尊が復活しようものなら目も当てられない。
 調査を開始するケラスス。
 不思議なことに熱したフライパンに水滴を垂らすように、雨水が蒸発している。
 なんらかの魔法的な保護があるのかな? な?

「それが知りたい場合は、魔法知識か【夢歩き】で判定を行って下さい。ちなみに【夢歩き】で判定して達成値が高いと、イイモノが見れるかもね」

 イイモノ? 知りたい知りターイ!
 頑張ってサイコロ振ったさ。今日の出目の最高値を振ったよ! しかし今日は2D6の出目が酷いな。何回「3」を振ったことか。だからファンブルで深淵を呼んじゃうんだってば。おっかねぇな。
 ささ、GM。イイモノって何ですか?

 か、火神教団の御本尊がっ!! 【夢歩き】中の私の前に登場wwwwww
 だ、騙したなあっ!!
「深淵の【夢歩き】ってこんなモンっすよ♪」

 さて、困った。こんな化け物と対峙して生き残れる訳ないじゃないか。イメージ的には、初心者探索者がばったりクトゥルフと遭遇したみたいな感覚なんですけど。
 憎まれ口を叩きたい所だけど、あまりの出来事に口も聞けずに退路を探すのみ。

「これは先程助けられた手前、私が助けに行きましょう」

 コロナエナ~~~~~ッ! 彼女の中ではアレは「助けた」扱いになるんや。まさに情けは人の為ならず。
 【夢歩き】中は現実とは違うイメージ上の世界。物理的な介入はあまり出来ないが、逆にイメージの強固な物が力を持つ世界。
 死人喚びの出来る彼女が援軍として選んだ人物は――

「ぶるううあああっ! ワシを喚び起こすのは誰だあっ!!!」

 前領主・クルーゲ閣下、若本ボイスで降臨wwwwwwwwwwwwwwww
 これは火神と言えども簡単には勝てねぇぞwww
「今の内に、早くこっちへ!」
 声に導かれ、ケラススは脱兎の如く身を翻す。

 このピラミッドはマズい。放置しておく訳にはいかない――

 一方、黒眼の煽動工作により、「タスラン帰還」の報は奴隷達の間に小波のように広がってゆく。その小波は徐々に大きくなり、うねりを上げ、大きな波を作る。
 黒眼ばかりではなく、ハイドもそれに加わり、ただの人の集まりであったのがいつしか大きな集団になり、より大きな結束を生み出そうとしていた。

 そこに降り出す、雨。
 数年ぶりにこの地を潤した雨が決定的だった。

「この地を我々の手に取り戻そう! 火神教団を倒そう!」

 タスランを盟主とした奴隷達の反乱が始まった。

 奴隷小屋から波及した反乱は至る所に拡がっていく。斬り結ぶ反乱軍と火神教団兵。その混乱を口火に、仄かに開く深淵の口より滲み出てくる水妖。降りしきる雨の中跋扈する水魔の群れに混乱は混沌へと傾いてゆく。
「陛下は兵を派遣せずに、水妖を放ったか……」

 クライマックス。
 このセッションで初めてPC全員が会しました。
 根回しの成果もあり、オルクスが孤立。私としては理想的な展開。NPCが介入するのは無粋、と言う事でウルスラ様はタスランを攫い、隔離していた森の魔族を倒しに。
 さあ、タスラン。目の前にいるその男(オルクス)はウルスラの忠実な部下だ。ヤツを倒さない限り、君達に自由はありませんよ。クックック……。

 ここでタスラン。導きの水晶で得た力、自らの魔族の血に振り回される演出。暴走開始!
 オルクスが懸命にそれを鎮めようとする。ケラススはそれを必死に煽る。
 そして。

「オルクス…僕を止めてくれ……」

 そのセリフ、言っちゃらめえええぇっ!

 戦闘開始。
 今までのロールプレイの応酬で他PLからトスされた手札もあって、オルクス無双開始。orz
 初太刀でタスランを支配している導きの水晶をあっさり弾き飛ばし、戦闘終了。
 くっそう。これ何て出来レース?

「導きの水晶は僕の後ろに弾き飛ばしますよ。そこら辺に転がしておいたら悪さする人間がいるかも知れないし」

 私を見てニヤリと笑うオルクス。
 良く判ってらっしゃる。
 残念ながらタスランとオルクスの共倒れはもう無理です。ならば最早この場所には用はない。

「それでは私はギリッと歯噛みしますが、すぐに元の表情に戻り、『まだ策は残していますよ……』そう言い残してこの場を去ります」

『うわぁ、何この人。おっかねーっ』

 タスランとオルクスは和解し、そして二人は各々の信念の元、道を違えます。
 そしてシーンが落ち着いた所でGMが「エンディングに入って良いかな?」と聞いてきます。

 ちょっと待った~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!

 まだです。このままではまだ終われません。
 もう少し、ケラススの物語にお付き合い下さいまし。

 ケラススの向かうは一番の激戦区。
 攻める反乱軍。この場所を死守せんとす火神教団兵。そのどちらにも、立ちはだかる者全てに等しい死を与えつつケラススは向かう。
 忌まわしいピラミッドへ。
 あの圧倒的に感じた火神の気配は今は感じない。血と殺意の匂いに満足して眠っているかのよう。
 水と炎のせめぎあいは、このまま行けば恐らく水が勝つだろう。今の反乱軍にはそれ程の勢いがある。

「それでは私も水の軍勢を持って、そのお手伝いをしましょうか」

 ケラススの目がゆっくりと開いてゆく。能面の如き表情が初めて、嗤った。

 そう。このピラミッドは放っておく訳にはいかない。反乱が成功した暁には取り壊される可能性が大ではありますが、火神が舞い降りるような物騒な代物を私は看過出来ません。
 ではどうするか?

 深淵を開けばいいんです。
 普通はGMの作為か、はたまた偶発的にしか発生しない深淵を、ケラススは魔法を使う事によって意図的に発生させる事が出来る!
 深淵を発生させ、ピラミッドを深淵の中に叩き込もうと言う算段です。このプランに気付いた時から、魔法の反動を軽減するカードを掻き集め、何とかシーンに間に合った! (だからさっきの戦闘では、実は手札がボロボロだったりする)

 ついでに火神教団兵と反乱軍もまとめて深淵の中に放り込んでしまえwwwwww

 とは言うものの、ピラミッド全体を深淵に沈める事は無理だろうから(なんせ17年もの歳月をかけてるんだから、かなりでかい)、一部を削り取って、パワースポットの役割を機能させなくするだけでOK。

 「水魔の召喚」で喰らう反動ダメージはカード6枚分。魔法を成功させても勝手に深淵は開きますが、ここは反動で置いたカードの分も深淵の増幅に使いたいので、最後の判定はわざとファンブル。(笑)
 いや、ファンブルを意図的に起こせるって素晴らしいルールだNE!

 魔法反動はほぼノーダメージ。そしてそのカードによりケラススが開いた深淵は……

「初手から半径28mの深淵か……でかいな」

 反動が少なくて、なおかつデカイ数字のカードを必死でキープしてたからね。これからまだまだ大きくなりますよ。
 気分は邪神復活をもくろむ邪悪な神官だぜw

 さて、深淵を開いたケラススはSANチェックに失敗して(←違う)このまま深淵に呑まれても良いんですが、せっかくだし脱出を試みます。
 拡がる深淵と走るケラススの追いかけっこです。
 GMがカードをめくり、このターン拡がった深淵のメートル数を現在の深淵の半径に足す。中心から逃れようとするケラススは自分の移動出来るメートル分だけ移動。それを繰り返し、深淵が収縮を始めるまで(運命カードのタイトルに『翼人』の表記があるカードを引くまで)に深淵の拡がりから脱出すればOKと言う手順。
 ケラスス移動。深淵拡大。ケラスス移動。深淵拡大。ケラスス……

 終わらん!(泣)

 走れども走れども脱出できず。手札に「追加アクション:移動」がいつまで経っても来ないんじゃよ……。
 見かねたコロナエナが「追加アクション:移動」のカードを渡してくれた。

「こっちです。早く!」

 あ、コロナエナ、まだ私の事を味方だと思ってるwwwww
 実に素晴らしいロールだ。(笑)

 コロナエナの協力もあり、無事深淵からの生還を果たしたケラスス。しかしコイツは……

「半径48mの時点でやっと脱出か…それではこれからはどこまで深淵が拡がるかを確認しましょう」

 ペラリ、ペラリ、ペラリ、ペラリ……

 50m、60m、70m……まだ拡がる。

 ペラリ、ペラリ……

 80m、90m…この辺りから卓がざわつき始める。

 ペラリ………

 100、110……………

「『翼人』、まだ引かんのか!?」

 ぺラ…

 120…

 神、と言う存在。それはGMのカードを引く手に確かに宿りました。(笑)

 引くも引いたり!
 深淵半径、133m!!

 タスランとオルクスの戦闘終了時くらいに山札をリシャッフルし、ほぼ山札がめくられていない状態からのスタートで、深淵が収縮する頃には捨て札の方が山札より背が高いとか、ありえん。ゲラゲラゲラ。

 ピラミッド全て呑み込んだよwwwww

 これはさぞかし人間達も深淵に巻き込まれただろうな。ケラススも満足でしょう。さあガイウス様に報告だ。

「そんな事はさせないっ!」

 恍惚の表情を浮かべ立ち去ろうとするケラススの脇を駆け抜けて行く男がいた。
 ケラススの背後――深淵に向かってオルクスは駆けて行く。

「GM、この『守護者』のカードを使います。このカードの効果で深淵に呑まれてゆく者達全てを救います。その代償としてオルクスが替わりに深淵に呑まれて行きます!」

 なっ!? そんなカードがあるのかっ!!

 深淵がその門を閉じた時、不毛の大地は確かにそこに拡がっていた。 あの威容を誇ったピラミッドは跡形もなく消え失せた。
 しかし。
 どこまでも邪魔をしてくれましたね。ウルスラの走狗よ。
 ――まあ、それもまた良し。

「帰りますよ、黒眼。今私達に出来る事は最早ありません」

 エンディング。
 深淵に呑み込まれたオルクスはウルスラに掬い上げられます。しかし深淵に浸ったオルクスは最早人間ではなく、半魔の存在となり、ウルスラに付き従う事を運命として受け入れます。
 それでもラルハースがバラー領を侵略した時、度々その戦場に現れたそうです。蒼眼の盲目の騎士を打ち倒す為に。

「どこだ! ケラスス! 姿を現せっ!!」
「クックック…そんな所に私はいませんよ、オルクスさん」

 とか軍師っぽく格好をつけたは良いケド、実はケラスス、知力7なんだよなぁ。(笑)
オルクス:「大丈夫。俺6だしwww」

 さて、私めはと言いますと。

「陛下。バラー領は現在、内乱により民は疲弊し、不毛の大地と化した都市はいまだ機能を回復しておりません。攻めるなら今が頃合かと」
「うむ。ご苦労。ここからはワシがでよう」
 瘴気が風を巻き、ケラススの顔を撫でる。
 混沌の扉は開き、戦争が始まる。
 深淵が各地に門を開き、さらなる悲劇が撒き散らされる事だろう。
「それが私の望む世界。行きますよ、黒眼。この世を深淵に沈めるのです」
「はい、ケラスス様。私はどこまでもお供します」
 そう言った黒眼はニタリと笑う。蒼眼よりももっと、昏く、深い闇の瞳で。



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