りちゃさんの日記 「知ラナイ家 それから」

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りちゃ
りちゃ日記
2020/09/12 14:10[web全体で公開]
😶 知ラナイ家 それから

朝倉太郎丸の病室を訪れると、部屋の主はいつもと変わらず虚空に視線を遊ばせたまま黙って来客を出迎えた。

こちらも勝手知ったもので窓際に向かうと一瞬の逡巡の後、カーテンを開いた。
窓の外には夕暮れの街が広がっている。

ビルの群れは暗がりに息をひそめながら所々を雲母のように煌めかせ、沈みかけた夕日は秋空を橙に灯しながら、たなびく雲を薄紫に染め上げていた。

時が止まったような錯覚を覚えて身じろぎすると、窓ガラスに反射した自分の姿がその所作を真似た。
その表情を注視するが、特に変化は見られない。
平凡な見慣れた冴えない男の顔だ。


そう、もうすっかり片付いた案件なのだ、あれは。

頭を振って窓に背を向けると朝倉は視線だけこちらに向けてきた。
やたら陽気な看護婦さんの言う通り、最初に比べると徐々に回復してきている。
LINEを開くと数日前の朝倉からの着信に目を落とした。
そして思い出す。あの知らない家での一件を。

だいたいずるいんだよ。
俺のせいだ、なんて。
あんな言い方されたらこっちだって怒れないじゃないか。

どうせこいつのことだ。一人でなんとかしようとしたのだろう。
こいつのたすきを継いだ形の俺たちは、最後に報われたような気がするけれど、こいつはどうなんだろう。
あまり気にしないような気もする。そういうやつだった。


持ってきた飲み物を仕舞おうと冷蔵庫を開けてみると、カットされたりんごと日持ちしそうな惣菜がひっそりと収まっていた。
少し迷った後、そのまま扉を閉じた。
これはこれで祈りの一種なのだという気がしたからだ。


あの娘たち、また見舞いに来てたみたいだぞ、と朝倉に声をかけた。

物静かな、けれど妙な説得力のあった縦坂さん。
てっきり本屋かと勝手に思っていたけれど、ティーショップで働いているのを窓越しに見かけて驚いた。
行動的で、泣いて笑って忙しそうだった南ちゃん。
保母さんだったとかでこちらはそう意外ではなかった。彼女の料理からは時折季節外れの花の香りがするような気がした。

どちらも美人で、朝倉がどこでどうやって彼女たちと知り合ったのか聞き出してやりたくなった。
早くよくなって起きて来いよ。
そうしてまた飲みに行こうぜ、学生の頃みたいにさ。

そこで俺らがどんだけ格好良くお前の後始末したか聞かせてやるよ。

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先日、時雨様キーパーで八重樫アキノ様作の「知ラナイ家」に、事務員の仁井谷 円治(にいたに のぶはる)参加させていただきました。

21時に突然クトゥルフしたい、というわがままから実現した卓でしたけど、和製ホラー的な怖さがあって楽しかったです。描写やギミックは洋風な展開が多かった気がしますけど、舞台が日本の一般的な家屋ってだけで勝手に脳みそが和風ホラーフィルターをかけてしまうものなんですね。加えて迫りくる恐怖とちりばめられた罠がどこに潜んでいるかというどきどき感が終始あって、3人でお互いフォローし合いながら進められたのはチームとはいかないまでも仲間感あってよかったです。

というわけで後日譚妄想です。
キーパーの時雨さんがいつもやられていることだそうですが、NPCとの間の親密度を1d100で決めるのが面白かったです。マダラさんちの藍生さんが73とまずまずだったり、柏木さんとこの南ちゃんが32と、それって本当に仲よいの?という数字だったりする中、仁井谷は96を引いて、親友ポジションいただいちゃいました。そういう訳で、導入NPCだった朝倉が、プレイ中ずっと頭の片隅に居ついていて、あいつのためにも生きて帰らないとなあ責任感じそうだしというプレッシャーがあってそれもまた楽しでした。

改めまして、マダラさん、柏木さん、そしてキーパーの時雨さん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の八重樫アキノ様にも感謝です。
またよければ一緒に遊んでください。
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