Keiさんの日記 「マンチキンの歴史のお話」

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Kei
Kei日記
2025/03/26 18:22[web全体で公開]
😶 マンチキンの歴史のお話
ご機嫌よう。思いかけずマンチキンというワードが飛び込んで参りましたので、今日は H. Tucker Cobey による「Tracing the Origin of “Munchkin”」の抄訳です。そもそもマンチキンというのは(悪い意味での)「お子様」「ガキ」という意味ですが、どんな意味で、どこから来て、どう広まったのでしょうか? 蛇足しておきますがマンチキンというのは猫の品種ではなく TRPG プレイヤーの品種です。

マンチキンという言葉は1970年代後半には D&D 界隈で用いられるようになっていました。そこには(まだ発売から5年しか経っていないにも関わらず)「古参」と「新参」の違い、特に新参とされた人々の年齢層が低かったという背景があるようです。1979 年には既に「新参のガキどもはゲームの邪魔や迷惑行為を楽しんでいる」という内容のテキストがあります(Dr. Gary Alan Fine’s Shared Fantasy, APA-DuD #23)。
James Desborough & Steve Mortimer の 1999 年の著作「The Munchkin’s Guide to Power Gaming」でも、マンチキンは9〜13歳のお子様で、ほとんどの人にこの傾向があるという記載があるほか「肉体的にも精神的にも幼い」という意味で使われていたという証言もあります。
1980年になると、Glenn Blacow による「Aspects of Adventure Gaming」で、プレイスタイルの分類がなされます。これがおそらくプレイスタイルの最初の分類と思われますが、この文中で「多くのキャンペーンはパワーゲームから始まるが、進行するについれてスタイルが変わっていく。一方で若者が新たにキャンペーンを始める際もパワーゲームから始まるので幼稚というレッテルが貼られる」と語られています。
そして1985年、Jeff Okamoto の手で「Real Men Don’t Play Fantasy Role-Playing Games」が書かれます。これがマンチキンテキストとして知られる文章ですが、その定義は他のスタイルを挙げた上で「これ以上何かいう必要ある?」というシンプルなものです。
それから40年経って、マンチキンという言葉は「好みでないプレイスタイルで遊ぶ人」として今でも使われていますが、本来はジェネレーションギャップから生まれたものです。

抄訳ここまで。ここから先は日本語版に関する蛇足ですが。

日本でマンチキンという言葉を広めたのはおそらく非常に高い確率で馬場秀和でしょう。今でもサイトは稼働していて、マンチキンテキストも読むことができますが、後に更に脚色された版の訳のようで、上記の原文にはない文章が含まれています。また一応個人的な思いで注意をしておきますと、馬場氏自身が非常に偏ったタイプのプレイヤーと思われますので、そう知った上でお読みいただくと良いかしら。
いずれにしても、日本ではマンチキンという言葉はちょっと違った方向の意味を持つようになりました(Wiki 自由研究によると日本における意味の変遷の過程に朱鷺田祐介氏が関わっているようですが、わたくしそのあたりは存じません)。

それはともかく、今回改めて原文を軽く眺めたりして「Real Men Don’t Play Fantasy Role-Playing Games」に挙げられたプレイスタイルの分類にサンディおじさま(CoC の作者)が関わっているという部分が新鮮でしたわ。ともあれ原文は少なくとも歴史的経緯からすれば怪文書ではございませんし、当時のサブカルチャーの状況を表したテキストですし、マンチキンの扱いも悪い意味でのお子様/ガキというニュアンスの方が強いかと存じます。

最後に、原文を読んでいないので紹介文からの推測ですが、日本でいう「我儘で聞き分けがない」という意味でのマンチキンを最初に大々的に取り上げたのは「The Munchkin’s Guide to Power Gaming」かと思われます。そうした遊び方としてキャラクターのステータスを不正に操作し、ルールを曲げ、不利な結果をやり直し、GM を買収し、NPC のアイテムを盗む方法などが書かれているそうですわ。もちろんジョークとして、パワーゲームというプレイスタイルを前提に。出版社が Steve Jackson Games、出版年がマンチキン・カードゲームの2年前ということから、これがマンチキン・カードゲームの元と考えられることもあるようですわね。
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レスポンス

藤木ナギサ
藤木ナギサKei
2025/03/26 23:21[web全体で公開]
> 日記:マンチキンの歴史のお話

こんばんは。日記拝読させていただきました。マンチキンという言葉は、ジェネレーションギャップから生まれたものだったのですね…勉強になりました。
聖岳生馬
聖岳生馬Kei
2025/03/26 20:57[web全体で公開]
> 日記:マンチキンの歴史のお話

21世紀も1/4過ぎようとしていて、マンチキンテキストだのスタートレックだのの用語を見るとは
やはり世界は繰り返しをしているのかもしれません。

しかし趣味も言葉も、うつろうものですねぇ。

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