ポール・ブリッツさんの日記 「設定もなくただそこにいて機械的に参加するのがデフォのTRPG」

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ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツ日記
2021/09/25 17:54[web全体で公開]
😶 設定もなくただそこにいて機械的に参加するのがデフォのTRPG
「……けっこう難しい条件だな」
「でもなんかあるでしょう?」
「うーん……昔のSPIの『死の迷宮』なんてどう?」
「そんなゲーム、オンセンのルールブック一覧見ましたが、どこにもありませんけど……」
「どちらかといえばボードゲームのほうでくくられているからかもしれないな。ボードゲームというか、チット引きゲームだったからなあ。チットを引いて迷宮を作って、冒険者のパーティが冒険する……だけの一人用ゲーム」
「だけ?」
「だけ。背景はない。設定もない。キャラクターを作って、迷宮に放り込んで、モンスターを殺して宝物を手に入れて、金と経験値を稼いで帰ってくる……だけ。だから、完全にルールはほぼ自動化されてる」
「…………面白いんですかそんなの?」
「けっこうファンは多かったそうだ。月刊タクテクス誌に邦訳が出てたな。続編として『戦慄の城塞』ってゲームも作られそれも邦訳されてたが、そっちは背景世界とストーリーとラスボスとエンディングがついていた。やってみたが、やるとけっこうハマる。けれど、ラスボスを倒すことはできなかった」
「中途であきらめたんですか?」
「いや、あれ、チット引いて迷宮作るゲームだろ」
「ふんふん」
「紙袋に入れてチット引いてゲームして、紙袋に入れた状態で置いといたら、『ゴミを捨てたもの』と親に間違われて処分されてしまった」
「……………………」
「あれ以来、親が死んでも墓参りだけは絶対にしない、と誓っている」
「小さい男ですねえ」
「背景世界がなくてすべてが機械的なTRPG、といったら、『暗闇への挑戦』というゲームもあったな」
「そのゲームも一覧のどこにもありませんけど……」
「昔の、ゲームグラフィックス誌という雑誌の付録ゲームだったからなあ。マイナーすぎて取り上げられてないんだろう。さっきの『死の迷宮』にインスパイアされたものらしくて、こっちのほうは、サイコロを振ってダンジョンを作り、方眼紙に書き込んでいくゲームだった。パーティを作って冒険するけど、基本ひとり用。こちらもほぼ完全にルールは自動化」
「…………そんなのばっかりですね」
「いちおう、60種類ある中で最強のモンスターであるデーモンを倒せばゲームエンディングだけど、さらに遊びたかったらオリジナルモンスターを作ってください、とかいう添え書きもあったな」
「何度も聞いてなんですけど、面白かったんですかそれ?」
「廉価版TRPGが、創元の『スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー』しか売ってなくて、しかも田舎ではTRPGを手に入れることすら困難だった時代で、なおかつTRPGを趣味にしている友達を見つけるのは輪をかけて困難だった時代の作品だから……貧乏人の中学生は飛びついたなあ」
「いや、ですからね、面白かったんですかそれ?」
「人気はあったようで、続編に、迷宮外でのワイルダネスもできるようにルールが追加された『運命への挑戦』というゲームが付録でついたぞ。自分もそちらで果てしないプレイの末にデーモンを倒した」
「それはいいんです。面白かったんですか?」
「みんなの記憶に残るほど面白かったのなら、オンセンの『ルールブック』の一覧にないはずがない、と思ってくれ、で答えになってるか?」
「……聞いた自分が悪かったです」
「あとは……」
「まだあるんですか」
「なんか重要なものを忘れているような気がするけど、思い出せない。まあ、TRPGは、戦闘でもなんでも『機械的にただ参加するだけ』ってのがイヤになった人が作り始めたゲームじゃないかって思うんで……」
「でも、ポールさんは、ちょっとしゃべりすぎのような気がします」
「すまん……」
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