おーしょーさんの日記 「死神は真実を嗤う」

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おーしょー
おーしょー日記
2017/05/15 19:12[web全体で公開]
😶 死神は真実を嗤う
今日はツイてない。
青年は目的の捜査資料を検索しながら、小さく溜め息を吐いた。念願だった特務警察ブラックハウンドに入隊し、猛者揃いと噂される機動捜査課に配属された。理想に燃える青年に命じられたのは、先輩警官が担当している事件に関連する資料をまとめること。はっきり言って裏方だ。
(ドラッグ絡みかぁ……ヒットする事件多すぎだろ、これ……)
うんざりしながら仮想ウィンドウに表示された資料内容に目を向け、関係のないものを排除していく。地道すぎる。
「もうちょっと絞り込めればな……」
「──1年前に起きた事件だ。チーム内でドラッグを奪い合ったらしい」
「なるほど。……え?」
相槌を打った後で、自分以外の声がしたことに初めて気がついた。慌てて振り返る青年に、その男は「ああ、続けてくれ」と手を軽く振り告げた。しかしその言葉に素直に頷けるほど青年は場慣れしていなかった。
「……えっと、どなたですか?」
「君の同僚だ」
40代半ば頃の、ヴィル・ヌーヴ系の白人男性。落ち着いた物腰の中にも精悍さを感じさせるその男に、青年はまるで見覚えがない。それにブラックハウンドの制服も着ておらず、古ぼけたコート姿の無頼漢といった風情だ。
だが特務警察の本部に部外者が堂々と入り込めるはずがない。それに威圧的な制服を嫌って私服を着用する隊員も見かけたことはあったので、青年の疑念はそこで途絶えた。
「1年前ですか」
「ああ」
仲間内での殺傷という要素もあり、検索結果はかなり絞られた。
青年が展開した捜査資料に中年男も目を向けていたが、その内の1つで視線が止まる。
「……これか」
「? 何です?」
青年の問いに男は答えず、「──キックス」と謎めいた単語を呟いた。と同時に、そのウィンドウが唐突に消去される。展開していた当の青年は何もしていない。勝手に操作されている。
「え、あ!? ちょ、ちょっと、何するんですか!?」
「協力感謝する」
「はあ。……って、そうじゃなくて!」
噛みついてくる青年を放置し、男は資料室から悠然と出ていく。
やむなくデータベースへのアクセスを打ち切り、資料室を飛び出した青年だったが、既に同僚を名乗る男の姿はどこにも見えなかった。仕方なく青年は資料室の防犯用カメラにアクセスし、数分前の室内の映像を元にして隊員情報を検索する。
「……え?」
Not Found。該当する隊員は存在しません──。
鉄壁のセキュリティを誇るブラックハウンド内に、存在しないはずの部外者。
「何なんだ? 亡霊……?」
全身から冷たい汗が噴き出してきた気がして、青年は不快感と恐怖に顔を歪めた。


「──ああ、俺だ」
ポケットロン越しに、男の新しい雇用主となった女へ報告する。
「気になる件があると言っていたな。……そうだ。キックスの事件だ」
女が声を一瞬張り上げかけ、慌てて抑えた口調で怒鳴りつけてくる。
「お前次第だ、レイ。”死神”を使うか、このまま闇に葬るか……お前が選べ」
男はそう言って、女の返事を待たずに通信を切った。
歩みを止めることもなく、男は何食わぬ顔でブラックハウンド本部を後にした。数人、明らかに場違いな男の存在に気づいた者はいたが、怪しむまでには至らない。万が一怪しんだとしても、その時は偽造IDを提示しておけば問題ない。身元は機動捜査課課長のお墨付きだ。
懐から煙草を取り出し、火を点ける。そこでようやく足を止めて一服した男は、紫煙をくゆらせながら皮肉めいた笑みを口元に浮かべた。
「真実なんてものを明らかにしたところで、何も変わりはしないんだがな……」
一度終わりを迎えた事件。容疑者は既に死んでいる男。ほじくり返したところで、何が出て来るはずもない。
男は、そう思っていたのだ。
──この時は、まだ。

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さて、今日は待ちに待ったトーキョーN◎VAアクトの日ですよ!!
てなわけで脳内妄想で発生した自分のキャスト”死神”フランツ・ヴィルトの、アクト前日譚を書いてみましたw ハンドアウトの情報からすると、レイ課長も1年前の事件に不審を抱いているようなので、フランツ自身は「今更再捜査してもなあ」と考えてるけど課長命令に付き合っている、という立ち位置にしてみました。
実際のアクトではそうそう上手く立ち回れないとは思いますが、意識して渋いおっさんらしく演じる予定w
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