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😶 なぜPCは依頼を拒むのか 依頼を受けようとしないPC、は古くからある問題です。 そして、PCの依頼拒否による進行の停滞を防ぐためのテクニックがいくつか編み出されてきました。 すでに事件に遭遇した現場からセッションを開始する「ホットスタート」などがそうです。 ですが、ここでは、なぜPCが依頼を拒むのか、その理由について考えてみたいと思います。 今回取り上げる理由は次の3つです。 1.単なる進行妨害又は嫌がらせ 2.依頼を受けることの合理性の欠如 3.物語論上の要請 1は論外です。この理由で依頼を拒むのなら、そのPCをセッションから放逐することも止むを得ないでしょう。 しかし、そのPCを放逐する前に、本当に1の理由だけで依頼を拒んでいるのか、を慎重に吟味せねばなりません。 それを怠ると、よりよいセッションの時間を持つことのできる可能性を放棄することにもなりかねないからです。 他の理由はないか。そこで次に、2に挙げた合理性の問題を吟味してみます。 (この理由について議論しているブログ記事がありますので、そちらも参考にしてください→http://d.hatena.ne.jp/bit666/20130202) どんな依頼にもリスクとベネフィットがあります。どちらか又は両方を欠いたものを依頼とは呼べません。 ですから両者を比較衡量して可否を決定するのですが、その結果としてリスクがベネフィットを上回っていたり、そもそもリスク又はベネフィットを見積もるための情報(パラメータ)が不足しているといった事態が起こります。 そうだとすれば、依頼を拒否する又は保留することは合理的な判断たりえます。 しかし、このような損得勘定によらない理由が他にあるのではないか? そこで3の物語論上の要請に移ります。 これを理解するには少しばかり前提知識が必要です。 アメリカのジョセフ・キャンベルという学者は、世界の神話には人間の自己実現の過程が反映されているという考えのもと、世界の神話、特に英雄伝説を分析し、それらに共通する仕組みをまとめあげました。彼の業績は多くの作家や映画脚本家に影響を与え、名作とされる作品を生み出すきっかけとなりました。 ハリウッドでDevelopment Executive(映画化に値する原作を探したり、脚本家を指導したりする役職)を務めてきたクリストファー・ヴォグラーは、キャンベルの理論をもとに、脚本家のための手本として「神話の法則」を発表しました。 なのですが、実はこの「神話の法則」の中に「冒険への拒絶」という要素が含まれています。 (詳しくは→http://kenkyu-labo.com/02/shinwanohosoku.html) 例を挙げましょう。ここでは、ウォルフガング・ペーターゼン監督の映画「ネバーエンディング・ストーリー」を取り上げます(原作については言及しません) 本の中の世界ファンタージェンを救うための旅に出ることを予言された勇者アトレイユは、神官や民衆(そして本の読者であるバスチアン)に子供扱いされたことに臍を曲げ、「バッファローを狩りに行く」と言って一度は依頼を断ろうとします。アトレイユは草原の民という種族で、狩りは彼にとっての日常です。つまり彼はここで冒険を拒絶し日常に留まろうとしていました。その後曲がりなりにも勇者と認められ、ウロボロスのアウリンを授かり旅に出ることになります。 また、本の読者でありこの映画の真の主人公であるバスチアンもまた、一度冒険を拒絶しています。彼はアトレイユの旅に付き添い、食事を共にし、仲間の死を悲しみ、敵を前にする恐怖を覚えますが、それらはあくまで読者としてのことです。しかしファンタージェンを救えるのはその世界の民ではなく自分自身であると知らされたとき、「これはただのお話じゃないか!」と一度は否定しようとします。彼は本好きの根暗な少年という自分の日常を固持しようとしたのであって、この時点で彼は本当の意味で冒険に出発してはいなかったのです。 「冒険の拒絶」は、キャンベルが世界の神話の中から見出した要素です。ということは、私たちの精神のわりと深い領域に根ざしている可能性があります。依頼を拒むPCのPL本人は意識していないことがほとんどでしょうが、だからといって軽視してよいものでもないと思います。
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