遊牧家族さんの日記 「完全無欠なキャラクターは英雄たりえない」

遊牧家族
遊牧家族日記

2017/04/03 19:13

[web全体で公開]
😶 完全無欠なキャラクターは英雄たりえない
物語の根幹をなす要素は「行って帰る」と「欠落したものが回復する」だという話を以前しました。今回は後者の「欠落したものが回復する」に焦点を当てていきます。

人は、欠落を感じ、それを求めずにはいられない生き物です(このことについて後でもう一度考えます)
「何かが欠けている」という状態は、「それを取り戻す」という動機を呼び起こします。この性質を利用することで、人の行動や思考をある程度コントロールすることもできます。

ここではビデオゲーム「ゼルダの伝説」を例に挙げます。ファミリーコンピューターの初期のものです。ゲームのスタート時、主人公のリンクは剣を持っておらず、洞窟にいる老人から剣をもらいます。作者の宮本茂によれば、これは、敢えて何もわからないところからプレイヤーが自分で考えてゲームを進めていくためなのだそうです(参考 http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1005369.html)
しかしここには他にも意図があるのではないかと私は思います。というのも、プレイヤーのゲーム体験はコンソールのスイッチを入れる前から始まっているからです。最初のゼルダの伝説はディスクメディアで販売されていました。プレイヤーはゲームをプレイする前にまずパッケージに接触します。そこには剣と盾を携えた少年が描かれています。しかし操作できるキャラクターは剣を持っていない。つまりここで「剣が欠けている」という現状が与えられ、「剣を手に入れる」ことへの動機が呼び起こされているのです。

このように、欠落は動機づけとして極めて強力です。裏を返せば、欠落するところのない完全無欠なキャラクターを作ってしまうと、外の世界に関わっていく動機を持たせることが難しくなってしまうということです。

この考え方は、他のキャラクターとの関わりを持ちたいときに有用です。相手のキャラクターに欠落しているものは何か? と考え、それの回復を助けようと行動することで、より物語らしい関わりを持つことができるでしょう。
ただし、考えの押しつけにならないように注意はしてください。
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