グランドオープニング

ヴァカルデ
ヴァカルデスレッドグランドオープニング・オープニング[web全体で公開] 押されたいいね! 1
登録日:2021/07/18 06:37最終更新日:2021/07/18 06:37

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ヴァカルデ
5. ヴァカルデ
2021/08/09 23:14
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場所は、UGNN市支部にある数ある研究室、その1室。

 血の海から起き上がった彼女は、その場を離れるために手足を動かし続けた。目が覚めて一番初めに目に入ったものは漆黒を纏う異形の怪物。肉を裂き、血を浴び、断末魔を嬉々として耳に刻む。この世のものとは思えない残虐なナニカ。
 
自分の名前は知っている。ここが記憶にある場所であることは分かる。ただ、ここがどこで、自分がなぜここにいるのかが分からない。ただ、目の前にいるナニカが恐ろしくて、ただひたすら出口に向かって走り、血に滑って転んでもなお、這いずって進む。

あの怪物に、追いつかれたりしないように逃げて、逃げて、逃げ続ける。

???「――――誰か、助けて……!」
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ヴァカルデ
4. ヴァカルデ
2021/08/09 23:11
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 UGNN市支部、数ある研究室の中のとある一室で、誰かが笑みを浮かべていた。肉を引き裂く感覚、命が滴る音。聞くに堪えない断末魔さえ、その全てが、甘美な快楽にしか思えない。1つ、また1つと命を摘むのが、たまらなく楽しいのだ。

 この衝動は、既にもう手が付けられない段階まで進行している。

 怪物は、既に消えてなくなりかけの理性を頼りに、最後の仕上げを行った。
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ヴァカルデ
3. ヴァカルデ
2021/08/09 23:04
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舞台は、UGNN市支部に備え付けられている複数の研究室、その中の1室である。

 また、失敗だ。望む結果には程遠い。実験に使ったシャーレや薬品の処理を行いながら、珍しく彼、玉城 竜馬は考え事をしていた。

 この頃、明らかにN市の警備をすり抜けるようにFHエージェントやその他、オーヴァード犯罪者たちが入り込んで来ている。
 支部長までが事件の対処に駆り出されている状況だ。しかし、支部の守りを疎かにするわけにはいかないため、交代で戦闘員が最低2人は支部内に常駐することになっている。

 あのいけ好かない女もまた、ロクに休むことなく駆け回っているのだろう。
 ただでさえ、レネゲイドによる治癒能力さえ及ばぬ病に冒されている弱い身体で。死.ねば終わりだと言うのに、その命を削ることを惜しまない。そんな姿勢が、気に入らないのだ。

 この研究が。ありとあらゆる手段を用いて積み上げ続けている『無意味』が身を結べば。俺というオーヴァードが最強の名を冠するまでに至れば、或いは……。

「……らしくないことを考えて時間を無駄にした。…次だ。」
仏頂面のまま、また作業に戻ろうとした彼の背後では、不自然に影が蠢いていた。
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ヴァカルデ
2. ヴァカルデ
2021/08/09 22:57
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エマ「ふーん……。何か変わったヤツらだと思って付けて見たら、普通に悪い奴らだったし……。うわ、あの顔、よく見かけるなぁ……。FHエージェントみたいだし、もう少しちゃんと隠れとこ。」

深夜、とある地下駐車場。最近N市に現れるガラの悪い連中に興味を持って、気づかれないように尾行している女子高生、小鳥遊エマは彼らと後から現れたFHエージェントの会話を盗み聞いていた。

モブA「……っす、三上さん。わざわざこんなところに来いだなんて珍しいっすね。何かあったんすか?」

三上(FH)「おう。お前ら、そろそろひとつくらい派手にやらかせ。今ならUGNの連中の警備も協力者のおかげでザルになってんだ。今出来ねぇようなら、もうお前らは終わりだよ。覚悟決めろ。」

三上(FH)「つっても、今N市で暴れてる『ジャバウォック』はヤベェ奴だ。アイツが戦ってるときは絶対近寄るなよ。衝動に吞み込まれちまってるせいかは知らねぇが、ノッてる時は敵味方関係なく皆殺しにするからよ。」

三上(FH)「……ま、余計なお世話か。お互いUGNが敵って意味じゃあ同士だ。上手くやれよ。」

 FH構成員と、所属は知らないが素行はかなりよろしくない連中みたいだ。
 この頃よく聞く警備の話以外にも気になる情報が入ったし、明日には支部長にも報告しておこうと、彼女もその場を後にする。

 彼女は、UGNイリーガルという立場から、FHやオーヴァード犯罪者の情報を漁り、届ける仕事をしている。
 勢力争いにはあまり関心がないが、今体験させてもらっている『日常』は、UGNがなければ成り立たないであろうものだ。だから彼女はUGNに協力している。

 ちなみに、深夜まで尾行を続けていた彼女はその後学校をサボって爆睡していた。目を覚ましてN市支部に報告へと向かい始めた頃にはお昼をとうに過ぎ、ランドセルを背負った小学生たちが騒がしく帰路に着くような時間帯となっていたのである。

エマ「ヤバ……流石に寝すぎた……!しぶちょーに怒られる……!」
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ヴァカルデ
1. ヴァカルデ
2021/08/09 22:37
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舞台は、N市公立高校のとあるクラス。朝のHRを終えて、一限目の準備を行う休憩時間。
騒がしくも平和なひと時。

女子A「え、今日数学自習?やったじゃん。」

女子B「だよねー。長谷川せんせー怖いもんね。最初の頃に誰かがるみちゃんせんせーって呼んだ時、何か物凄い顔してたし。」

女子C「あれ、多分かなり怒るの我慢してたんだろうなぁ……。悪い先生ってほどじゃないんだけど、結構怖いよね……。」

………

男子M「はぁ……残念だなぁ……。聞きたいとこあったのに。」

男子A「……お前、あの成績でよく何回も長谷川のところ行けるよな……。しかもそれ、この前も聞きに行った問題じゃん……。心折れねぇの……?」

世界の表側では、昨日と同じ今日が訪れた。担任の数学教師が一日休んだ、その程度しか変わらない、そんな日常が繰り広げられている。

今は、まだ。
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