😶 記録 〇〇〇〇年8月20日 (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)昨日殺害した標的の遺書を届け終え、早朝帰宅。 商店街の人間に遭遇すると面倒なので、朝の準備ギリギリの時間を見計らって滑り込むように家に入った。 アホ面を晒して爆睡しているさつきを放置し、就寝の準備をする。 未明を過ぎた薄ぼんやりとした空から滲むように照らす明かりを浴びているさつきの顔を見ると、昨晩の記憶がフラッシュバックした。 俺の顔を正面から見つめて愛おしそうに笑ってナイフを振るう彼女の姿。 その視線からは強烈な愛情と、それからほんの少しの恐怖を感じた。 ただ確かなのは、俺に対する明確な殺意があると言うことだ。 しかも、さつきの殺意が日に日に増しているのを感じる。 彼女を起こさないようにその柔らかい金髪をゆっくりと撫でる。 この胸の内に湧き上がる感情は愛か、恐怖か。 ……そう遠くない内に俺は彼女の手で殺されるだろう。 それだけは間違いない。 ならば、早々に遺書を完成させなくては。 そう分かっているものの、どうしても筆が進まない。 言いたいことは山程ある。 見極めてるとか言いながらも派手に撒き散らす様な殺し方をするなとか、もっと普段からしっかりしろとか、クソまずい料理をなんとかしろとか。 特に一番最後のは重要な問題だ。毎回完食する身にもなって欲しい。 額から頬へ手を落とし、ムニリと歪んだ愛らしい顔に笑いが溢れた。 ああ、世界で唯一無二の俺の妹。 お前は一体何処へ辿り着くのだろう。 さつきの髪をどけ、額に口づけを一つ落とす。 いつかお前に殺されるとしても、今だけは――――。 一体どんな夢を見ているのか、緩んだ顔で俺の手を離さない彼女の側に腰を下ろす。 おやすみ、俺だけの大事な大事な妹。 手のひらに彼女の温かい体温を感じながら、ゆっくり瞼を下ろした。
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