渡辺 紀綱(わたなべ きこう) (クトゥルフ神話7版用キャラクターシート)
マシャシイが作成したTRPG「クトゥルフ神話7版」用のキャラクターシートです。
渡辺 紀綱(わたなべ きこう) の詳細
キャラクター情報 NPCでの使用は不可 | ||
TRPGの種別: | クトゥルフ神話7版 |
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キャラクター名: | 渡辺 紀綱(わたなべ きこう) | |
♥: | 19 / 19 | |
♥: | 19 / 19 | |
外部URL: | ||
メモ: | ||
詳細A: |
《プロフィール》 【職業】 異形狩り 【年齢】 【性別】 男性 【住所】 【出身】 【SAN値】 74 / 74 【幸運】 40 【STR】 120 【APP】 75 【CON】 100 【SIZ】 90 【POW】 95 【INT】 90 【DEX】 75 【EDU】 121 【アイデア】 90 【知識】 121 【MOV】 8 【ダメージボーナス】 +2D6 【ビルド】 3 【職業技能ポイント】 420 【個人的な興味の技能ポイント】 180 《戦闘技能》 ☑回避 50% ☐投擲 20% ☑近接格闘:刀剣 99% ☑近接格闘:格闘 90% ☑射撃:拳銃 80% 《探索技能》 ☑応急手当 50% ☑隠密 60% ☐鍵開け 1% ☐鑑定 5% ☑聞き耳 90% ☐精神分析 1% ☐追跡 10% ☐手さばき 10% ☐登攀 20% ☑図書館 60% ☑目星 90% 《行動技能》 ☐機械修理 10% ☐重機械操作 1% ☑乗馬 50% ☐ナビゲート 10% ☐水泳 20% ☐跳躍 20% ☐電気修理 10% ☐変装 5% ☑運転:自動車 75% 《交渉技能》 ☑信用 20% ☑言いくるめ 65% ☐威圧 15% ☐説得 10% ☐母国語:日本語 99% ☐魅惑 15% ☐言語:英語 60% ☐言語:ラテン語 60% 《知識技能》 ☑医学 80% ☐クトゥルフ神話 25% ☐オカルト 5% ☐コンピューター 5% ☐経理 5% ☐考古学 1% ☐自然 10% ☐心理学 10% ☐人類学 1% ☐電子工学 1% ☐法律 5% ☐歴史 5% ☑伝承:妖怪 60% |
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詳細B: |
{武器} 素手 1D3+DB 1回 {装備と所持品} 【支出レベル】 【現金】 {資産} {バックストーリー} 【容姿の描写】 【イデオロギー/信念】 【重要な人々】 【意味のある場所】 【秘蔵の品】 【特徴】 【負傷、傷跡】 【恐怖症、マニア】 【魔導書、呪文、アーティファクト】 アイテム名: 天の守護衣 効果 完全防護のバリア:この衣服は、使用者を完全に包み込み、あらゆる攻撃から守る防護障壁を展開する。障壁は物理的な攻撃だけでなく、精神的、魔術的な攻撃にも効果を持ち、一定時間内は全ダメージをゼロにする。1D3ラウンド、1度に20以上の攻撃を受けた場合は即時に効力を失う。 自動修復機能:衣服は損傷を受けても1日で自動的に修復され、再び使用者を守り続ける。完全には消耗しない限り、何度でも修復可能。1度に30以上のダメージで完全に破壊。 「天の加護」の効果: 使用者が身に着けている間、天の守護が力を貸し、周囲に悪影響を与える存在を軽減させる。邪悪な気配や霊的な存在が近づくと、その影響が弱まる。霊的なものや邪神の手先の攻撃力は半減となる。 外見 淡い青い光を放つ軽やかなローブ。中央には光り輝く宝石が埋め込まれており、動くたびに微細な光の筋が現れる。軽やかな布でできているが、どこか荘厳な雰囲気を持つ。 【遭遇した超自然の存在】 【使用した経験パッケージ等】 HO1:異形狩り あなたは『異形狩り』だ。 自らも異形ながら、異形への並々ならぬ憎悪を持ち、世界中の異形を殲滅すると言う信念のもと、世界各地を旅している。 そんなあなたは、かつて日本で自らと同じ『異形狩り』に命を助けられたことがある。その『異形狩り』は圧倒的な強さを持ち、あなたを瀕死に追い込んだ異形を単身で狩って見せたのだ。その後瀕死のあなたを治療し、暫く看護してくれたその異形狩りの強さにあなたは劣等感、或いは嫉妬を抱くと同時に憧れた。 その後、その『異形狩り』に再会する事は終ぞ叶わなかったが、あなたの情報網にある情報が引っかかる。忽相市で発生している『連続不審死事件』には強大な異形が関わっており、同時にその忽相市では最近『正義の味方』と呼ばれる特徴があの異形狩りに似ている人物の噂がある事を。 あなたの目的は忽相市の異形を根絶やしにし、『正義の味方』と呼ばれる人物があの異形狩りか確かめる事である。 『探索者の創造』 人間に擬態できる怪物なら基本可とするが、ビルドは最大で3までとする。年齢の上限は300歳。 他の言語の初期値が2つまでEDU÷2の数値となる。3つまで90の技能習得可能。100歳以上の場合はEDUの成長数5回、300歳では5回のEDU成長を行う。また100歳ごとに以下の確定EDU成長。 100歳以上:1D10 200歳以上:1D10+3 300歳:1D10+6 『異形狩りの経験パッケージ』 ・年齢は100歳以上とする。 ・正気度を1D10+6減少させる。 ・クトゥルフ神話技能を1D10+6増加させる。 ・探索者のバックストーリーに異形狩りに関連した「負傷、傷跡」「恐怖症、マニア」を4つ追加する。 ・「遭遇した超自然の存在」を10体まで追加する。神格は1体まで。 ※「遭遇した超自然の存在」とまた遭遇した場合基本的にSANチェックはしません。 ・KPと相談して任意の魔術を3つまで習得可能。それ以上欲しい場合も相談。 ・追加の70ポイントを以下の技能に割り振れる 戦闘技能、歴史、人類学、考古学、オカルト、言語 『異形狩りのパルプキーアタイプ』 ・100ポイントを以下の任意の技能に加える。 〈運転(任意)〉〈威圧〉〈近接戦闘(任意)〉〈射撃(任意)〉〈聞き耳〉〈目星〉〈図書館〉〈隠密〉〈クトゥルフ神話〉 ※クトゥルフ神話技能の初期上限は30で。もっと欲しい場合は私を説得してください。それと余談ですが、あなたはどのような魔術を使いたいか宣言した後に、〈クトゥルフ神話〉ロールに成功すると魔術を使えます。これは個別で覚えている魔術とは別です。 【異形狩りのタレント】 驚異的な治癒:1ラウンドにHP2回復。 異常な精神:暴力、傷、死体、それがどんな酷いものでもあなたが精神的衝撃を受ける事は無い。 {仲間の探索者} |
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詳細C: |
序 目を覚ますと、見知らぬ天井が広がっていた。 助けてくれた男の話によると、私はこの屋敷の裏手にある鳥居の前で倒れていたらしい。彼は私に、何があったのかと尋ねたが、私は何も思い出せなかった。名前も、出身も——すべてが霧の中に消えていた。 戸惑う私を見て、彼は「何か思い出すまで、ここにいてもいい」と優しく告げた。彼はこの屋敷の主であり、この集落をまとめる武家の長でもあった。この屋敷には道場があり、世の中が落ち着いた今も、実戦さながらの剣術・武術の訓練が行われている。 ある日、私は武家の主が屋敷の裏手にある鳥居へ向かう姿を見かけた。 何かに導かれるように、私は彼の後をそっとついていった。鳥居をくぐり、獣道のような細い道を進む。竹藪を抜けた先に広がっていたのは、数え切れないほどの錆びた刀が突き刺さる異様な光景だった。その中心には小さな祠があり、主は静かに手を合わせていた。 やがて私に気づいた主は、振り返り、この祠について語り始めた。 ——この祠には、かつて神より授けられた神剣が眠っている。 その昔、とある悪鬼が魑魅魍魎を率いて暴れ回っていた。人々を救うため、神はこの神剣を遣わし、悪鬼を討ち滅ぼさせた。しかし、神剣はあまりにも多くの妖の血を吸いすぎてしまい、やがて妖刀へと変貌してしまった。 妖刀には不思議な力が宿り、その力を求めて悪霊や妖が集まるようになった。だからこそ、この祠を守る者が必要なのだ。主の一族は代々、この妖刀を狙う者たちを討ち祓い、祠を守り続けてきたという。 そして、その役目を担った者は、やがて生涯を終えるとき、この地に埋葬される。そして、生前に振るった刀をこの地に突き刺し、死してなお、妖刀を守り続けるのだ——。 主の勤めを知った私は、強い興味を抱いた。 そして、思わず口を開く。 「私にも、その勤めを手伝わせてほしい」 しばし考え込んだ後、主は静かに言った。 「鳥居の前に君が倒れていたのも、何かの縁かもしれないな……。わかった。君にも手伝ってもらおう。ただし、奴らと戦うための術を身につけなければならない。まずは道場に通い、剣術を修めてもらう」 こうして私は、主と共に妖刀を守る役目を担うことになった。 そしてある夜、私は初めての勤めに赴くこととなった。 一 今回はまだ修行を始めたばかりのため、主の後ろについて見ているだけでよいと言われた。私は主と共に、まず祠へと向かった。主は祠に手を合わせた後、祠の下にある桐箱を開け、一振りの刀を取り出す。 「妖どもを斬るには、妖刀の力を浴びた刀でなければならない。だからこそ、この刀は祠のそばで保管している」 そう言うと、主は刀を帯に収め、静かに森の奥へと歩を進めた。 しばらく森を進むと、不気味な音が耳に届いた。 ——クチャクチャ……グチャ…… 何かを咀嚼するような、湿った音。音のする方へ進むにつれ、その正体が明らかになった。 森の薄闇の中、一つの影がうずくまっている。 何かをむさぼり食うように、蠢くその背。 目を凝らすと、それは鹿の内臓を貪っていた。 しかし、私たちの気配を察知したのか、そいつはゆっくりと立ち上がる。そして、こちらを振り向いた。 それは、子どもほどの背丈を持つ異形の存在だった。 人の形をしてはいるが、決して人ではない。 黒く湿った異様な肌、鉤爪のように鋭い手足の爪、生肉を容易く噛みちぎる獰猛な牙——。 それは、紛れもなく「小鬼」だった。 小鬼の鋭い視線がこちらを捉え、全身に張り詰めた威圧感が突き刺さる。私は無意識のうちに一歩、後ずさった。 「弱さを見せてはいけない。奴らに取り憑かれてしまうぞ」 主は、小鬼から目を離さずに静かに警告する。 だが——遅かった。 私の怯えを察した小鬼が、一瞬で地面を蹴る。 素早い。目にも止まらぬ速さで、私めがけて飛びかかってきた。 反射的に身をすくめた、その刹那。 一閃。 宙を舞う小鬼の首。 主の剣が、小鬼の喉元を捉え、一瞬で切り裂いていた。 飛びかかる勢いのまま、小鬼の胴体は前へと投げ出される。そして、私の足元に届くよりも前に——地面へと崩れ落ちた。 主は、微かに息をつきながら、静かに刀を収める。 私は、ただ立ち尽くしていた。 ——これが、「妖刀を守る」勤めなのだと、初めて実感した夜だった。 二 厳しい修練を積み、ついに私は主から刀を受け取った。 それを祠に納め、日々鍛錬を重ねる。そして—— 遂に、初めての実戦の日が訪れた。 今回の相手は、「骸食い(むくろぐい)」と名付けられた妖だった。 最近、集落では墓が荒らされる被害が相次いでいた。人が襲われたわけではないが、新しく埋葬された墓が掘り返され、遺体の肉が食い荒らされていたという。 それが骸食いの仕業であることは明白だった。 私たちは骸食いを討つため、森へと足を踏み入れた。 今回の勤めは、私が請け負うことになった。 主と共に祠へ行き、静かに手を合わせる。祠の下の桐箱から一本の刀を取り出し、鞘に収める。 そして、森の奥へと向かった。 妖たちは血肉の匂いに惹かれるという。その特性を利用し、骸食いを誘き寄せるために獣の血を撒き、息を潜めて待つ。 やがて、森の静寂を破る音が響き始めた。 ——カサ…カサ… 落ち葉を踏みしめる足音。 一歩、また一歩と近づくにつれ、足音が増えていく。 そして、ついに奴らの姿が闇の中から現れた。 それは、狼のような四足歩行の獣だった。 だが、普通の狼ではない。 四肢には鋭く長い鉤爪が剥き出しに生え、口からは涎を垂らしながら無数の牙を剥き出しにしている。 毛皮は赤茶色に染まり、何度も血を浴びた痕跡が見て取れた。 それが三匹——。 一匹の骸食いが、金切り声のような咆哮をあげる。 次の瞬間—— 奴は地を蹴り、一瞬で私に襲いかかってきた。 骸食いが跳びかかる。剥き出しの鉤爪が喉元を狙う。 私は横へ跳び、間一髪で回避した。骸食いの爪が地面をえぐる。 構える間もなく、奴はすぐさま体勢を立て直し、再び突進してくる。 刀を横薙ぎに振るう。 だが、斬れたのは肩口だけ。深くは入らない。 「クッ…」 奴の皮膚は予想以上に硬い。 すると、残る二匹が側面に回り込んだ。 囲まれる…! 私は呼吸を整え、左の骸食いが飛びかかる瞬間、一歩踏み込む。 逆手に持ち替えた刀が、奴の喉元を貫いた。 一匹目——撃破。 すかさず右の骸食いが襲いかかる。 私は回転するように身を翻し、刀の刃で前足を斬り裂く。 骸食いがバランスを崩した隙に、腹部へ深く刀を突き立てる。 二匹目——撃破。 残るは最初の骸食い。 奴は低く身を伏せ、鋭い目でこちらを睨んでいる。 私は血を払った刀を構え、静かに息を整えた。 「……さあ、次はお前だ」 森に張り詰めた空気が満ちる。 最後の死闘が始まった。 骸食いは低く身を伏せたまま、じりじりと私の周囲を回る。 さっきまでのように無闇に飛びかかってこない。警戒しているのか、それとも——狙いを定めているのか。 私は刀を構え、静かに息を整えた。 ——先に動いたほうが負ける。 骸食いも、それを理解しているのだろう。 だが、私は一瞬だけ目を伏せ、足元に転がる倒した骸食いの亡骸を見る。 ——血の匂いが強い。 これなら——。 私はわざと一歩後ずさり、刀を僅かに下げる。 怯んだと、思わせるために。 その瞬間—— 骸食いが飛びかかってきた! 私はすかさず、転がる骸食いの亡骸を蹴り上げる。 舞い上がる血と毛皮の臭いに、骸食いの動きが一瞬鈍る。 私は踏み込むと同時に、全身の力を込めて刀を振るった。 骸食いの首が宙を舞う。 首のない胴体はそのまま勢いのまま地面に倒れ、動かなくなった。 私はゆっくりと息を吐き、血に濡れた刀を紙で拭き、静かに払い、鞘に収めた。 「……よくやった」 主の声が響く。 私は振り返り、静かに頷いた。 初めての実戦——私は、勝利を収めた。 三 数日後——。 私は主から正式に「勤めの後継者」として認められ、名を授かった。 紀綱(きこう)——姓は渡辺(わたなべ)。 「綱」の名は、主の家が代々受け継いできたもの。本来なら主の子に継がれるはずだったが、子のいない主は、「ならばお前に」と私に託してくれた。 それから私は、次々と妖を討ち祓っていった。 実態のない幽鬼。人間の背丈を優に超える怪異。次々と訪れる戦いの中、私は剣を振るい続けた。 そして——時が過ぎた。 ある夜、妙な胸騒ぎを覚えて目を覚ます。 遠くから聞こえる騒然とした声。外の気配がただならぬものだった。 私はすぐさま主のもとへ向かう。 「集落に魑魅魍魎が攻めてきている…それを率いているのは巨大な悪鬼だ。」 主は冷や汗を滲ませながら、私にそう告げた。 「紀綱、行くぞ。」 私たちは急ぎ、刀を取るため祠へ向かった。 道中、集落を見下ろすと—— 燃え盛る炎。 黒煙が立ち昇り、人の悲鳴が響く。 ——急がねば。 ようやく祠にたどり着いた。 竹藪が風もないのにざわめき、揺れている。 祠の奥から、何かが呼応するような妖気が立ち上る。それに反応するかのように、竹の葉がざわめいていた。 その気配を全身に浴びながら、私たちは刀を取り、集落へと駆け出した。 そこには、まさしく地獄絵図が広がっていた。 燃え落ちる家々。 人を襲い、血肉を貪る悪鬼羅刹。 その奥には—— 圧倒的な威圧感を放つ、強大な影。 魑魅魍魎を率いる、巨大な悪鬼。 ——百鬼夜行。 私と主は、人々の避難を道場の者たちに託し、目の前の妖どもを片端から斬り伏せていく。 斬って、斬って、斬って—— どれほどの時が経っただろう。 視界は血と体液に霞み、もはや何を斬っているのかすら分からなくなる。 そして——突然、視界が暗くなる。 私は顔を上げた。 そこにいたのは—— 鬼。 いや、そんな生易しいものではない。 人間を軽く超える体躯。 筋骨隆々の肉体。 血を浴びたような深紅の肌。 額に輝く、鋭利な二本の角。 私は、その圧倒的な存在感に身体を強張らせた。 ——これは、戦うべき相手ではない。 ——敵対すらしてはならない。 そう、本能が告げていた。 次の瞬間—— 悪鬼が巨大な拳を振り下ろした。 私は死を覚悟する間すらなく、吹き飛ばされた。 衝撃。 鈍い痛み。 ——生きている? 私はゆっくりと目を開ける。 そこには—— 私を庇い、血まみれになった主がいた。 「……っ!!」 ピクリとも動かないその身体を、私は呆然と抱きかかえた。 ——そんなわけがない。 ——主が、こんなところで。 現実を拒絶し、思考が真っ白になる。 だが—— 「紀綱…立て…そして、討て……」 か細い、消え入りそうな声が、確かに届いた。 私はハッと顔を上げる。 そこには、折れた二本の刀。 ——武器がない。 だが、絶望する暇はなかった。 私は、残された力を振り絞り、走った。 燃え盛る炎。 響き渡る断末魔。 倒れ伏す人々。 それらを振り切るように、私は祠へと駆けた。 ——悪鬼を、討つための武器を。 鳥居を抜けると、そこには異様な空気が満ちていた。 これまでにない、異質な感覚。 ただ一つ、確かに分かることがある。 ——呼ばれている。 祠へ向かうと、竹藪のざわめきはさらに強くなった。 それはまるで、私を導くかのように、祠へ吸い寄せられるように。 背中を押されるような感覚を覚えながら、私は戸を開けた。 祠の扉を開くと、そこには—— 暗闇の中、ぽつりと浮かび上がる刃があった。 まるでそこだけが別の世界であるかのように、異様な静寂が満ちている。 ——美しい。 それは、ただの刀ではなかった。 鞘もなく、剥き出しのまま大地に突き立てられた妖刀。 刃は細身で流麗な反りを持ち、まるで波のようにゆらめいている。 闇の中にありながら、不思議な光を帯び、わずかに妖しく輝いていた。 柄には緻密な彫刻が施され、鍔には絡み合う龍の紋様。 まるで生きているかのようなその存在感に、私は息を呑んだ。 ——これが、妖刀。 私を呼んでいたのは、この刃だったのか。 その瞬間—— ザァァ……ッ! 背後の竹林が大きく揺れ、まるで歓喜するかのように葉がざわめく。 体の奥底が震える。 熱い。 胸の奥から何かが湧き上がるような感覚。 それは畏れか、興奮か、それとも——。 無意識のうちに、私は刀に手を伸ばしていた。 ——この刃を、握れば。 ——私は、変わるのかもしれない。 手が柄に触れた瞬間—— 祠の中を、妖しく禍々しい気が渦巻いた。 まるで長年の眠りから目覚めるかのように。 だが、もう迷う暇などない。 私は、刀を引き抜いた——。 次の瞬間—— ドクンッ! 心臓が跳ね上がり、血流が異常な速度で加速する。 だが、その血は全身には巡らず、右手——妖刀を握る手へと集中していく。 次第に右手の感覚が薄れ、代わりに冷たい何かが流れ込んでくる。 ——これは、何だ? まるで血液が刀へと吸い込まれ、その代わりに自分のものではない何かが流れ込んでくるような感覚。 輸血を直接し合っているかのような、不気味で異質な感覚だった。 ——このままでは、妖刀に飲み込まれる。 だが—— 私は、拒まなかった。 「……奴らを打ち滅ぼせるなら……私は、生贄でいい。」 だから——力をくれ。 その瞬間、世界が反転した。 ——私の身体は、もう私のものではなくなった。 意識は遠のき、まるで俯瞰するかのように”自分”を見下ろしていた。 ”私”は、妖刀に支配されていた。 背後で足音が響く。 ”私”は振り向いた。 そこには小鬼がいた。 小鬼は何の躊躇いもなく襲いかかろうとする—— だが、その瞬間。 小鬼が地面を蹴るよりも早く、”私”の身体が閃光のように横をすり抜けた。 ”私”はそのまま集落へと歩みを進める。 後ろには、真っ二つに裂かれた小鬼の骸が転がっていた。 四 そこから先は、まさに瞬きする間の出来事だった。 集落にたどり着いた”私”は、目の前の魑魅魍魎を認識するや否や、疾風のごとく駆け出す。 一閃、また一閃。 刀が舞い、妖どもが断ち斬られていく。 気づけば、”私”が通った道には、もはや動くものは何一つ存在しなかった。 そして—— 遂に、奴の前にたどり着く。 悪鬼が、こちらを見た。 血に濡れた口元。 その足元には、食い荒らされた主の亡骸が横たわっていた。 ”私”は、それを見ても足を止めなかった。 周囲の妖どもには目もくれず、ただ目の前の悪鬼にのみ、すべての神経を研ぎ澄ませていた——。 次の瞬間、”私”は駆けた。 悪鬼は、嗤った。 血に濡れた牙を剥き出し、侮蔑の眼差しで私を見下ろしている。 まるで 「人間ごときに何ができる」 とでも言いたげに—— だが、悪鬼は知る由もなかった。 魑魅魍魎を率いる鬼であろうと、この妖刀の前では 塵芥にすぎない ということを。 ”私”は駆けた。 それと同時に、悪鬼の巨体が唸るように動く。 鬼の拳が空を裂き、猛威を振るう。 凄まじい速度——避ける間すら与えない。 だが、”私”は迷わず前へ出た。 悪鬼の拳が振り下ろされる——その瞬間、”私”の姿が掻き消えた。 悪鬼の目が見開かれる。 次の瞬間—— 鬼の肩口から血飛沫が噴き上がった。 ——速い。 悪鬼が拳を振り下ろすよりも早く、”私”はすでに懐へ入り込み、妖刀で肩を裂いていた。 しかし、悪鬼は怯まない。 そのまま反撃の拳を横薙ぎに振るう。 だが、それすらも遅い。 ”私”は紙一重で避け、踏み込みながら刀を閃かせた。 一閃—— 鬼の膝が斬り裂かれ、巨体が大きくぐらつく。 悪鬼の怒りの咆哮が夜の闇に響き渡る。 だが、それでも——遅い。 ”私”は、さらに踏み込み、斬り込んだ。 一閃。 また一閃。 剛力を誇る悪鬼が、”私”の速さについてこられない。 妖刀が舞うたび、鬼の身体が裂かれ、血飛沫が闇夜に散る。 鬼が最後の力を振り絞り、全力で拳を振るった—— だが、その瞬間、”私”の姿が掻き消えた。 次に悪鬼が感じたのは、 胸を貫く冷たい刃の感触だった。 ”私”は、悪鬼の背後に立っていた。 妖刀が、悪鬼の心臓を貫いている。 悪鬼は信じられないといった顔で、自らの胸を見下ろした。 次の瞬間、悪鬼の意識が途絶え、身体から力が抜ける。 ——だが、それは終わりではなかった。 私は、妖刀の柄を握りしめ、さらに力を込める。 すると、妖刀は悪鬼の命を吸い上げるように脈動し始めた。 悪鬼の身体が枯れるように萎んでいく。 皮膚はひび割れ、筋が浮き出し、やがて土に還るように崩れていった。 同時に—— 私の身体が歪み始める。 熱が湧き上がり、肉が軋み、骨が伸びる。 力が、流れ込んでくる。 圧倒的な力が—— 私は、鬼になった。 五 どれほどの時が経ったのか、それすらも考えなくなるほどの年月が過ぎた。 あの夜、私は鬼となり、妖の残党を圧倒的な力で蹴散らした。そして、ただ一人、祠へと戻った。 祠に足を踏み入れた瞬間、私の意識は身体に戻った——だが、それはもう 人間の身体ではなかった。 腕は異形と化し、肌は鬼のように変質し、かつての自分の面影はどこにもなかった。 この姿では、人里へ戻ることは叶わない。 ならば—— ここで生きよう。 妖刀に群がる妖を討ち祓いながら、この身体が朽ち果てるその日まで。 ——それから、どれほどの時が経ったのか。 ある日、祠に二人の人物が訪れた。 一人は 身の丈に合わぬほどの大剣を担ぐ若き女性。 そして、その女性に付き添うように歩く 中年の男。 女性はまっすぐに私を見据え、問うた。 「——あなたがここに住まう 悪鬼 …なのでしょうか」 その言葉に、中年の男が頷く。 「見たところ、その可能性は高いな」 女性は静かに続ける。 「あなたには、討伐依頼が出ています。 どうか、大人しく祓われることを願います」 ——私は驚愕した。 久しく聞く 人の声 にではなく、 私が“悪鬼”と呼ばれていることに。 確かに、今の私は 鬼 そのものだ。 だが、あの夜—— 悪鬼はすでに討ち取ったはずだ。 人に害をなした覚えもない。 そもそも、あの戦い以来 一度も人と出会ってすらいないのに—— 「アァ……ウァ……」 違う。違う。私は悪鬼ではない。 だが 声が出ない。 この喉は、もはや人の言葉を紡ぐことすら許されない。 「……」 女性は静かに剣を構え、 私を見つめた。 ——私はここで討たれるのか。 いや、違う。 私は 主に言われたのだ。 『立て……そして、討て』 と。 ならば—— 私はまだ戦える。 私は、妖刀を構えた。 女性は、微かに目を細め、静かに言葉を紡ぐ。 「……そうですか。では、参ります」 ——瞬間、 地を蹴る音すら聞こえぬほどの速度で、彼女は目前に迫っていた。 私が気づいた時には、すでに 大剣が振り上げられていた。 私は反射的に 妖刀を構え、防御の態勢を取る。 刃と刃がぶつかり合う——次の瞬間、私は空を舞っていた。 凄まじい衝撃。 地を転がりながら、一瞬 あの時の悪鬼の拳が脳裏をよぎる。 だが、違う。 あれとは 比べものにならない。 私は 鬼となった身。 人間だった頃とは 桁違いの力を持っているはず なのに—— この 華奢な少女 は 私を容易く吹き飛ばした。 人ではない—— ! 私は慌てて体勢を立て直す。 ——だが、その後の戦いは、 圧倒的なものだった。 彼女は 力でも、剣技でも、私を遥かに凌駕していた。 私は斬られ、吹き飛ばされ、抗うことすらできず、ついには 意識が闇へと沈んでいった。 六 ——何かが聞こえる。 人の声……鳥のさえずり…… 私は意識を取り戻した。 ——生きている。 ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れた祠だった。 ただ、一つだけ違うのは——そこに、二人の人物がいることだった。 私の傍にいた男性が、私の方を見て呟く。 「目覚めたか。グラディウス、奴が起きたぞ」 「グラディウス」と呼ばれた女性が振り返り、私へと歩み寄る。 「……よかった。無事に目覚めたのですね。体の方は大丈夫ですか?何か違和感があれば、遠慮なく言ってください」 彼女は優しく、そう言葉をかけた。 「そういえば、自己紹介がまだでしたね」 「私は グラディウス。そしてこちらが——」 「リーベラだ……」 リーベラと名乗った男は、何かの作業をしながら短く答える。 ——私は、混乱していた。 なぜ、私は 生きている? なぜ、彼らは 私を殺さなかった? ——とにかく、まずは起き上がろう。 私は身を起こそうとする—— その瞬間、異変に気づいた。 身体が……軽い。 あれほど一方的に打ちのめされたはずの身体は 痛み一つなく、驚くほど自然に動いた。 そして、私は気づく。 自分の腕が、足が、肌が—— ……人間のものに戻っていることに。 信じられず、私は全身を確かめた。 腕も、脚も、腹も、顔も……すべてが かつての「渡辺 紀綱」のものだった。 私は久しぶりに人の声を使い、彼女たちに問いかける。 「……これは……どうやって、私を 人に戻したのですか?」 グラディウスは、私の問いに答える。 「あなたはその妖刀——いえ、正確には この神剣に取り憑かれているのです。」 「ですので、神剣に 封印を施しました。完全に切り離したわけではありません。もし完全に分離してしまえば——あなたは 正常ではいられなくなるかもしれない。」 「それに——あなたには “使命” のようなものがあるのでは?」 「それを果たすには、その神剣の力が まだ必要 でしょう」 私は、ゆっくりと視線を落とす。 そこには、封じられた妖刀が、静かに横たわっていた。 私はそっと手を伸ばし、柄を握る。 ——何も感じない。 かつてのように 力を吸われる感覚も、異様な脈動もなかった。 ただ、そこに 馴染むように存在していた。 私は顔を上げ、改めて二人に向き直る。 「……助けていただき、ありがとうございます。私は 紀綱……渡辺 紀綱 と申します。」 「あなたたちは一体、何者なのでしょうか?」 グラディウスは、優しく微笑んで答えた。 「私たちは 『異形狩り』 と呼ばれる者です。」 「異形とは 人に仇なす怪物 を指します。私たちは、それらを 狩るために旅をしているのです。」 「ここへは とある依頼 で訪れました。」 「かつてこの地には 神剣が祀られる集落 がありました。しかし、それを狙う魑魅魍魎によって、一晩にして滅ぼされたのです。 そこで、その魑魅魍魎を率いた悪鬼を討ち取れ というのが、私たちへの依頼でした。」 「ですが——違っていたようですね。」 「悪鬼は すでに討たれ、神剣もまだここにある。そして——あなたと神剣があったおかげで、滅びた集落の瘴気は 妖刀に吸収され、浄化されている。」 「これで、当分は 悪霊の心配はないでしょう。」 ——私は、安堵した。 私がここでしてきたことは、決して無駄ではなかったのだ。 そして、同時に—— 胸に決意が芽生えた。 「——私に、あなたたちの異形狩りを手伝わせてください。」 「私のこの力は、そのためにあるのです。」 グラディウスは、私の目をじっと見つめ——やがて頷いた。 「わかりました。こちらこそ、よろしくお願いします。」 「共に 怪物を討ちましょう。」 そう言って、彼女は私に手を差し伸べる。 私はその手を、迷わず握り返した。 リーベラが、荷物をまとめながら呟く。 「異形の目撃情報は減っているが、奴らは 人間社会の裏で確実に力を蓄えている。」 「見つけ出し、狩る——そのためには人手が必要だ。」 「お前が加わるのは、大きな戦力になる。」 そして、彼は続けた。 「……それじゃあ、行くぞ。」 私は少し驚きながら、彼らに問いかける。 「行く、とは……どこへ?」 グラディウスが微笑む。 「山を下った先に、人の町があります。」 「そこが、今の私たちの 拠点 です。これからは、そこで活動していきましょう。」 彼女とリーベラは、迷いなく歩き出した。 私は、それを追いかけるように 刀を抱え、共に歩き出す。 ——鳥居を抜けた瞬間。 久々に 刺すような暖かい太陽の光 を感じた。 私は目を細め、光に慣れるのを待つ。 そして——目が慣れたその時、私は目の前の光景に息を呑んだ。 かつて魑魅魍魎に襲われ、地獄絵図と化した集落の跡地。 その場所には 一面の桜が咲き誇っていた。 何かを覆い隠すように、そして——何かを守るように。 私は、その光景を 心に焼き付ける。 そして、未来へ向かい、歩き出した。 |
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本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。 Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc. Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc. PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION