😶 単発シナリオ「Sleep tight have broken Dreams」感想 私は通常の場合、感想をテキストに起こすことはしない。単純に苦手なのである。 心の内を出力するのはどうにももどかしいからだ。なので今回はその珍しいことをしている。 そして今回はネタバレに配慮しなければならない。たいへんだ。がんばろう。 今回のシナリオはかなり綺麗にまとまった単発シナリオだった。澄んでいる、と言っていい。 一つの作品として綺麗に完結しているので、読後感が良くなっている。 それというのも、単発シナリオを制作するにあたって陥りやすい、「その後」や「事件の影響」などの余地をあまり残さなかったことにあるだろう。 これは設定周りを詰めたくなる者が陥りやすいところだと思われるが、枝葉の情報や伏線なんかをエンディングにまで置くことで「その後」の余地が出来上がってしまう。 無論それ自体が悪い事ではない。そういうフックがあれば続編を考えるのが容易になるからだ。 しかし、どうしたって単体のシナリオとしては濁ってきてしまうのも事実である。そのシナリオ中で起きた事件が氷山の一角で……と語られると、「物語の終わり」というよりは「第一章の終わり」になってしまう。 今シナリオはそのあたりを避けているように見える。そのため、単発シナリオとしての完成度を高めることに成功している。 そしてこの澄んだ印象を支えたのは全体的なテンポの良さだろう。テンポばかりはシナリオ面だけではどうにもならない部分はあるにしても、意図的にキャラクターが『詰まる』ようなシーンは無かったように思われる。 勿論取り扱っている内容的に、キャラクターにとっては立ち止まって深く悩んでしまう事は考えられる。そこはシナリオでどうのというよりマスタリングの話になってくるだろうか。 他にもエネミーを含めたNPCについても、これら全体の流れの良さに一役買っている。 NPCはシナリオの進行を担う存在であるのだからそりゃそうだろうと言われればその通りではあるのだが。 シナリオヒロインはいい子であるし、言葉も意思も疎通できるというのは大きい。 まったく個人的なことを言うなら「頑張れば口説けそう」って思えるヒロインだったのはいいところだと思う。NPCを口説くな。はい。(正座) さて、ヒロイン側に問題がないので自動的にヴィラン側がシナリオの何もかもをひっかぶることになる。 今回の上手いところはOPからヴィランと接触して、対話しているところにもあったのではないかと多む。 殴ることに躊躇うことはないデザインでありながら、あまり嫌悪感はなく、「根はいい奴なんだよ。ただ、何かを間違えたんだろう」って気持ちにさせてくれるヴィランのデザインは好きな人ばかりではないが、早期にPCと接触・対話を行うという性質上、そういうデザインの方がエンディングのあの少ししっとりと落ち着いた雰囲気にしやすいのだろうと思う。 このシナリオの読後感の良さはあの、優しくもどこか切ない、センチメンタルを感じるエンディングにあるところ。 それは各個別ED終了後のあの演出からもわかる。あの演出は、EDでプレイヤーたちが底抜けに明るいシーンをやってからだと多少ちぐはぐな印象を与えてしまいかねないだろう。エンディングでもややトーンを落とした、夕焼けの、あるいは朝焼けの明度であったからこそ活きてくるシーンなのかなと私なんぞは考える。 さて、長くごちゃごちゃとよくわからぬ、わかりづらいテキストを書いてしまったが、ここは往年の名作に倣い、シナリオを食べ物に喩て締めくくりとしようと思う。 今回のシナリオは「カンパリ・トニック」である。爽やかでありながらどこかほろ苦く、そして優しくオレンジピールが甘く香っているようなお話だった。 私の語彙力が無さすぎてお話をリキュールに喩えると結構な頻度でカンパリが出てくるの、どうにかしたい。
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