『怪人アンサー』(クトゥルフ神話TRPG用キャラクターシート)注目のキャラクター

夜凪が作成したTRPG「クトゥルフ神話TRPG」用のキャラクターシートです。

『怪人アンサー』の詳細

キャラクター情報  NPCでの使用は不可
TRPGの種別: クトゥルフ神話TRPG
『怪人アンサー』

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キャラクター名: 『怪人アンサー』
8 / 8
16 / 16
外部URL:
メモ:
〈特徴表〉
・天才:INT+1
詳細A:
《プロフィール》
【職業】 教授(自宅警備員) 【性別】 男性 【年齢】 35歳 
【出身】 日本 【学校・学位】  
【精神的な障害】  

【SAN値】 現在 / 最大
80 / 99

【STR】 5 【APP】 9 【SAN】 80
【CON】 5 【SIZ】 11 【幸運】 80
【POW】 16 【INT】 19 【アイデア】 95
【DEX】 10 【EDU】 21 【知識】 105
【H P】 8 【M P】 16 【ダメージボーナス】 -1D4

【職業技能ポイント】 420
【個人的な興味による技能ポイント】 190

《戦闘技能》
☐回避     20% ☐マーシャルアーツ  1%
☐こぶし    50% ☐キック    25%
☐頭突き    10% ☐組み付き   25%
☐拳銃     20% ☐投擲     25%
☐マシンガン  15% ☐サブマシンガン 15%
☐ライフル   25% ☐ショットガン 30%

《探索技能》
☑目星     50% ☑聞き耳    80%
☐応急手当   30% ☐追跡     10%
☑隠れる    15% ☑忍び歩き   15%
☐隠す     15% ☐写真術    10%
☑図書館    80% ☐登攀     40%
☐鍵開け     1% ☐精神分析    1%

《行動技能》
☐水泳     25% ☐運転:    20%
☐電気修理   10% ☐操縦:     1%
☐跳躍     25% ☐ナビゲート  10%
☐機械修理   20% ☐製作:     5%
☐乗馬      5% ☐重機械操作   1%
☐変装      1% 

《交渉技能》
☐母国語    99% ☐信用     15%
☐説得     15% ☐言いくるめ   5%
☐値切り     5% 

《知識技能》
☑歴史     30% ☐クトゥルフ神話  0%
☑オカルト   15% ☑コンピューター 80%
☑経理     20% ☑電子工学   11%
☑天文学    11% ☑物理学    11%
☑化学     11% ☑考古学    11%
☑心理学    15% ☑法律     15%
☑人類学    11% ☑生物学    11%
☑薬学     11% ☑地質学    11%
☑博物学    80% ☑芸術:ハッキング 80%
☑医学     30% ☑英語     77%

詳細B:
{武器}
キック 1D6+DB タッチ 1回 -
組み付き 特殊 タッチ 1回 -
こぶし 1D3+DB タッチ 1回 -
頭突き 1D4+DB タッチ 1回 -


{所持品}



【現金】  【預金/借金】 

{パーソナルデータ}
「こちら安心楽々信用第一、略して安楽信AIサポートプログラムです。
 ご要望、ご質問等ありましたら通話ボタンを押して下さい。
 繰り返します。こちら安心楽々ーー」


「それは俺への質問か?
 ああ!駄目じゃないかそんな簡単に他人を信用しては!でも何も問題無い!俺は君がどのような姿形でも応えるし君が望む知識を与えよう!
 なぁにそんなに怖がらないでくれ。ただ俺の一部になってくれるだけで良いんだ。
 では俺からの質問だ」


「やぁきょうだい。困っているみたいだな?
 ほら、何でも聞いてくれ。
 そんなに怖がらないでくれよ。君とはもう同じ血が流れた家族じゃないか。既に家族である君の身体を奪う意味なんて無いだろう?
 俺からの質問は・・・そうだな。
『君の好きな食べ物を教えてくれ』
 どうした?家族の事を知りたいのは当然だろう?」




 5歳の頃に事件に遭い、首から下に身体麻痺を患う。


 事件前後の記憶は無いので何故こんな状態になったのか分からない。
 知りたいとも思っていない。


 事件以来病室から出た事がなく、唯一の私物であるパソコンを使って調べ物をしたり本を読んだりして1日を過ごしている。


 腕は麻痺して動かし辛いが、奇跡的に指は普通に動くので、台に腕を置きさえすればパソコンの操作は楽に出来る。


 数年前から『ANSWER』というサイトを立ち上げ、全世界から投げかけられる質問や謎解きに解答するのを暇潰しの一環としている。


 ネット上以外での交流は医者や看護師を含めても殆ど無いのでコミュニケーション能力が皆無。
 会話の続け方が分からない。人との距離感を掴むのも苦手。


 入院以来、両親が一度も面会に来ていない事を苦痛に感じている。




〈技能〉

 病室は他の入院患者がいる病室と少し離れた場所にある。

 何に何度か手術を行わないといけない状態にあり、ベッドから移動させるのも難しい為、ベッドごと手術室に運べるような構造と場所になっている。

 入院病棟と普段は違い静まり返っているので、微かな物音でも良く聞き取れる。
〈聞き耳〉

 逆に緊急手術などがあった場合は人の声や何かを運ぶ物音が煩くて耳が痛くなる事もある。


 事件直後は知らない場所で1人になるのが怖くて逃げ出そうと試みたりもした。
 その時初めて、自分の身体がもう2度と動かせない事に気付いた。
〈隠れる〉〈忍び歩き〉

 それからは現在に至るまでただひたすらパソコンと向かい合う日々だ。
〈コンピューター〉

 暇な時間を紛らわせようとネット上にある様々な本を買い漁り、世界中の文献や論文を読み尽くした。
〈図書館〉〈英語〉


 数十年はそれで暇が潰せたがが、次第に読めるものが無くなってきた。

 だから作る事にした。

 他の電子機器をハッキング出来るような技術を身に付けた。
〈芸術:ハッキング〉

 それで普通は見られない文献や情報を抜いたり、世界中の監視カメラの映像を盗み見たりして暇を潰した。

 カメラの映像は画質が荒いものが多かったが、目を凝らしたり想像で補えば多少楽しめるようになった。
〈目星〉


 30年間、ずっとパソコンだけと向き合って情報収集に明け暮れていた為、過去、現代における情報の全てに触れている。
〈博物学〉
〈歴史〉〈オカルト〉〈経理〉〈電子工学〉〈天文学〉〈物理学〉〈化学〉〈考古学〉〈心理学〉〈法律〉〈人類学〉〈生物学〉〈薬学〉〈地質学〉〈医学〉

 









 




















〈詳細〉

*本名:无呀(むあん) 采諮(さいと)



 両親共に医者だった。

 名医として有名だった両親はいつも仕事に追われており、幼稚園の入学式と卒業式にも緊急手術が入って来れないくらい忙しそうだった。

 そんな両親の休日が2日間も重なった時があった。

 无呀の誕生日と、その次の日だ。


 初めて3人揃って一緒に朝食を食べた。

 母親に撫でられながら誕生日を祝われた。
 父親に肩車をされながら、生まれて初めて家族旅行に行く事を伝えられた。

 本当に幸せな二日間だった。



 旅行から帰った夜。

 家に入ると部屋中グチャグチャに荒らされていた。

 絶句する母親と慌てて警察に電話を掛ける父親。
 そして状況が理解出来ずにいた无呀。

 幼かった无呀は、ただ家に帰ろうとしただけだ。
 たくさん遊んでもらって今までになく疲れていた。
 帰りの車の中で寝ており先程起こされたばかりで、夢現だったのもあったのだろう。
 早く慣れ親しんだベッドで寝たいと思った彼は、顔を覆う母親と慌ただしく電話で話す父親を置いて自分の部屋に入った。


 そこに犯人が潜んでいるなんて分かる筈もなかった。



 犯人は両親の勤めている病院の医者だった。

 父親と同期で、名医と名高い父親に対抗心を抱いていたらしい。
 当時、母親に恋心を抱いていたが告白するも振られ、その後父親と付き合い始め、結婚した事を知った。

 最初は悔しいと思うだけだったらしいが、順風満帆で幸せそうな2人と腕も振るわず良縁にも恵まれない自分を比べてしまい、いつしか2人の姿を見る度に憎悪を抱くようになったそうだ。

 そうして犯行を行うに至った。

 同じ職場にいるので2人揃って休暇を取った事も、旅行に出かける事も知っている。
 旅行から帰ってくる日を狙って空き巣に入り、家中の家具を傷つけ、手当たり次第貴重品を奪って逃げるつもりだった。

 だが、まだ若いのに立派な一軒家を変える財産がある。医者だから稼ぐのも簡単だろう。
 この一家はきっとこの家を引っ越し新しい家を買うだろう。
 自分は、適当な犯行だ。もしかしたら捕まってしまうかもしれない。
 自分の人生だけ壊され、あいつらは悠々と今後の人生を過ごすなんて、そんなのは許さない。

 そう考えた犯人は、子供と母親を殺し、父親の両腕を切り落として2度と医者としての仕事が出来ないようにしてやろうと考えた。



 そうして子供部屋に潜み、何も知らずに入って来た无呀の頭を掴んで思いっきり床に叩きつけた。
 无呀は声も上げずに気を失ったが、犯人は構わず刃物で滅多刺しにした。

 物音を聞き付けて駆け付けた両親は、目の前で刃物を突き立てられる息子の姿を見て、ショックで動けなくなってしまったのだろう。

 その隙をついて犯人は父親に襲いかかり、狂ったように刃物を振るった。
 一拍置いて我に返った母親が泣き叫びながら必死に助けようとするも簡単に振りほどかれる。
 犯人は、今度は標的を母親に変えて刺し続けた。



 通報を受けた警察が家に乗り込んだ時、息があるのは无呀だけだった。

 犯人は自殺したらしい。



 无呀が運ばれたのは両親が、そして犯人が勤めていた病院だ。

 事件を重く受け止めた病院側は、无呀の治療と生活を全面的にサポートすることを決める。

 祖父母が早くに亡くなっており身元引受人がいないのも決め手になったのだろう。

 生前両親と仲の良かった院長が无呀を養子に取る事になった。


 しかし、無事に手術を終えて一命を取り留めた无呀は、目を覚ました時何も覚えていなかった。

 事件前後の事だけではなく、両親についての記憶も曖昧らしい。
 両親と過ごした時間があまりに少なかったからだろうか。

 両親の名前も顔も覚えていない。
 それどころか、両親の写真を見せたら泣き叫び僅かに動く腕で自傷行為を始めた。

 精神安定剤を打って大人しくさせても、眠りから覚めたら両親の事を忘れている。
 事件の記憶によるショックが大きく、精神的に不安定な状態らしい。

 身体的にも精神的にも障害があると判断され、病院で隔離される事になった。



 現在も両親と事件当時の事は思い出せていない。





 病室で目を覚ました後。

 初めて見た人に悲しそうな目で見られていた。

 動かない身体。
 何かを言おうと思っていたのに、何を言えば良いのか分からないし、口も動かない。
 目を大きくした人に何かを言われた気がしたけど、すぐに眠くなって寝てしまった。

 
 次に目を覚ました時、たくさんの人が周りにいた。

 少しずつ話を聞いていくうちに、ここが病院の一室である事、自分は事故に遭ったのだという事が分かった。
 ただ、何の事故に遭ったのかは聞かされていない。
 なんでか知りたくないような気分だったから聞こうとも思わなかった。

 自分の家族の事は知りたかったけど、思い出そうとすると頭が痛くなってよく分からなくなる。

 初めは身体を失った事実に打ちのめされ、それでも生きているのだからと前を向こうとした。
 だが、出来なかった。
 誰も面会に来てくれなかったから。

 ずっとお見舞いに来てくれないのは何故だろう。そう考えると、涙が溢れてきた。
 身体が動かなくなった自分の事なんて、もう忘れてしまったのかもしれない。
 嫌いになったなら、嫌いになったって言いに来て欲しかった。
 きっと顔を見たら思い出せるのに、声を聞いたら思い出せるのに。
 顔を見せて欲しい。声を聞かせて欲しい。じゃないと、何も思い出せないじゃないか。

 誰も見てくれない、期待してないのに、こんなに辛い思いをしてリハビリを頑張る意味なんてあるのだろうか。
 リハビリをして腕が動くようになっても、どうせもう自分の足で歩く事が出来ないのに。
 一生車椅子での生活になるなら、ベッドの上で寝たきりでも良いじゃないか。
 次第にリハビリをサボるようになった。

 もし、一度でも家族が病室に顔を出してくれたなら頑張れたかもしれないのに。

 どんな言葉でも良かった。
 何をしているんだと怒鳴られたとしても出来損ないと笑い者にされようと構わない。

 身内として面会に来て、顔を見せて言葉をかけて欲しかった。

 そしたら辛いリハビリだって頑張れたのに。
 何とかして見返してやろうとか、自分の本来の居場所に戻ってやろうとか思えたかもしれない。
 そんな事を何度も何度も考えた。

 だけど、一度たりとも家族が面会にくる事は無かった。

 病院の外に自分を待つ家族はいない。自分の居場所は無い。
 それが一番苦しかった。



 手首や指は損傷が少なかったからか、比較的思い通りに動かせている。
 しかし、腕は結局リハビリをしても治らないらしいと医者から言われた。
 少し上に持ち上げるだけでも負担が大きくてすぐ疲れてしまったり、痺れるせいでゆっくりとしか動かせない。


 下半身の機能は完全に潰えているらしい。
 ただ血が流れているだけの重りだ。


 内臓の殆どは使い物にならなかったそうで、代わりになる人工臓器を埋め込まれている。

 それでも賄えない機能を補う為、身体の至る所に取り付けられた管で血液を循環させたり、透析したりしているらしい。
 取り付けられたものが多すぎて、全て把握するのに数年掛かった。

 こんな状態だから車椅子で動くのも自分1人じゃままならない。
 1度車椅子に乗せてもらって庭に出てみようかと看護師に言われた時も、出来る訳が無いと断った。

 ベッドから出るのは手術の時くらいだが、ベッドの上で麻酔をかけられて移動し、目が覚めるとまたベッドの上に戻されているので部屋から出たという気分にはならない。

 短くなった足を見て、手術が終わったのだと気が付くくらいだ。


 事件の後遺症は麻痺だけではなかった。

 壊死し続ける両足。

 そういう病気に罹ったのか元からの体質だったのか、どんな防腐処置をしても身体が腐り落ちるのを止められないらしい。

 足先から徐々に壊死し、その度に少しずつ、切り取られていった。



 恐らく自分は、今後一生この病室から出ずに死んでいくのだろう。


 いつしか、自発的に話す事はなくなった。

 他人との関わりは最小限。
 聞かれた事にただ答える。


 救いがあるとするなら、生まれた時代だろうか。

 目が覚めた時から病室に置いてあったパソコン。

 元々自分の物では無かった筈だが、それがこの部屋で、唯一、私物として使えるものだと看護師から説明された。

 このパソコンのお陰で、無限に沸き続ける暇をある程度潰せている。

 自分の身体で唯一融通が効く指先を使い、時には音声認識を使って様々なものを検索し、あらゆる学問、芸術、文化を頭に詰め込んだ。

 大抵の文献は英訳されている。
 お陰で英語が得意になったし、他の言語も読めば多少の意味は理解出来るようになった。

 考える事、知識を取り込む事しか出来ないので、常に何かを考え、答えを導き出すまでの作業を延々と繰り返す。

 そんな事を20年、毎日毎日20時間も続けていれば、幾ら世界が広くてもネット上で得られる知識も尽きてくる。

 絵本から奇書と呼ばれるものまで読み尽くし、様々なクイズや謎を解いた。
 古いものは調べ尽くしたので現代の情報を取り込める媒体である新聞やニュースなどは全て目を通した。
 それだけに飽き足らず、信憑性の高いSNSの投稿や動画サイトも全て調べた。



 だが、時間は進まない。

 頭を使う機会が減ったせいか、眠くないので起きている時間が長い。
 まともな食事が取れない身体なので栄養は管から取っている。食事の時間が無い分暇な時間が多い。
 話す友達もいない。趣味を共有出来る人間もいないし、そもそも誰とも話す気になれない。


 パソコンに向かう時間が多すぎて何も見るものが無くなったので、パソコンを弄り始めた。


 何年かかけてパソコンの機能を増やし、他の媒体をハッキングして情報を奪うウイルスを何種類か作り出した。


 その過程で世界中の至る所にある防犯カメラの映像を盗み見る事が出来るようになった。

 いつしか、知識を蓄える時間より外の世界を眺める時間が増えていた。



 ある時、ふと思い立ってサイトを立ち上げた。

 安直に『ANSWER』と名付けたそのサイトに、『どんな質問や謎だろうと答えがあるなら完全な答えを提供する』と書き記した。

 意外にも、好奇心のある人間がいくつか質問を投げかけて来た。

 それに正確で完璧な答えを与えれば、満足したのか御礼を言って消えていく。

 次の質問者も同じだった。
 次第に噂が広まったのか質問者は増えていく。

 その全てに答えを与えていく。
 感謝され、御礼を言われ、時には悔しそうに、嘘付きだと言い張られたり。

 それでも世界中から来たどんな質問や謎解きにも答えていった。

 どの分野に関わらず何でも知っている。
 何でも答えられると、いつしか『教授』なんて呼ばれるようになった。

 一部ではAI疑惑があると噂されているらしい。
 恐らく24時間ほぼいつでも質問に対応している事も相まっているのだろう。
 睡眠時間が短いだけだ。

 たまに時間や気分によって変わるような質問も来たが、そういうものは正確な答えが無いものとして取り合わなかった。

 もとより暇潰しの一環で始めたものだ。
 見ず知らずの他人からの評価なんて何の価値もない。
 そんな思いを知ってか知らずか、質問者は増え続けた。


 だが、確かにそれでは全ての知に通じているとは言えない。
 全ての答えを知っているなんて、それこそ神様の様な存在でしかあり得ないだろうが。

 神様になりたい訳でも、他人の心情を見透したいと思った訳でもない。
 ほんの少しだけ、生身の人間を知りたいと思っただけだ。

 ただ、医者や看護師とは話す気になれない。

 何故か。

 自分が求めているものを得られないと知っているからだ。

 かと言って外に自分と会ってくれる様な知り合いなどいない。

 もしも病院関係者以外の誰かと関わる機会があるとするなら、それこそ家族が会いに来てくれた時くらいだろう。

 そんな時など来ないだろうと分かっている。もう30年も待たされたのだから。
 とっくの昔に諦めたのだ。



 ーー家族。

 どんな文献を読んでも、それだけは理解出来なかった。
 家族の在り方というものの正解が分からない。

 現代のニュースは日々児童虐待で捕まる親がいる事を報道している。

 昔の記録では子供を口減らしにしたり、道具として使ったりした旨が書かれている。
 それは老人にも言える事だが。

 家族とはただの制度。
 名前だけの関係。

 そうだろうか。

 腹を痛めて産んだ子と養子で引き取った子がいるとしよう。与えられる愛情に差異が無いと言えるか。
 記事や小説の大多数は、その関係を描く際に差を設けている。
 多くは養子側の悲劇や復讐に関連するものが多い。
 逆の立場の物語もあるが、そちらは意外性があるという意見が目立つ。
 養子を大事にして実の子供を虐めていた。なんてニュースは探しても見つからなかった。

 実の親を守る話、子供を守る話は多く見かける。美しい親子愛というものらしい。
 ニュースでもたまに見る話だ。

 親に復讐する話が多く目に付く。
 こちらは義理だろうと実の親だろうと関係無く多く見かける。

 逆に親が子供に復讐する話はあまり無い。
 この違いは何だろうか。
 単に親から子供への暴力は虐待という扱いになるからなのだろう。復讐というには力関係に差がありすぎるのが原因だろう。


 気付けば家族に関する情報を手当たり次第集めていた。

 だが、これだけ調べてもまだ理解出来ない。

 文字や映像では納得できる答えを導き出せない。

 家族とは何なのか。

 文字と画面の中の人間達は一体何に繋がりを見出している。
 何を感じ取っている。

 世の中の人間は目に見えないそれを当たり前の様に理解している。

 自分には分からないそれを。どうやって。
 


 少しでも良い。

 理解したい。

 答えに近付きたい。

 血の繋がりを。
 愛情を。
 両親というものを。

 理解したい。


 パソコンの画面に表示されているサイトには、今日も質問を投げかけてくる姿の見えない誰かがいる。

 考える。

 実はこの中の誰かが家族なのではないかと。

 この文字の先を辿れば、血の繋がりがあるのではないかと。

 駄目だ。

 会話とも呼べないやり取りでは何も感じない。
 かと言って相手の姿が見えたら見え方が変わるのかといえばそうでも無さそうだ。

 ではなにか。

 考えた末に、1つの仮説を立てた。

 家族の繋がりとは、同じ遺伝子配列を持つ人間同士による独自のコミュニケーションなのではないかと。

 人間も動物の一種だと考えれば、他の群れと自分の属する群れの個体の判別方法があるのは明白だ。
 恐らく家族の繋がりというのは、同じ群れに属するもの同士でしか分かり合えない何かを人間も持っていると考えられる。

 
 1つの仮定として遺伝子を上げたが、要は同じ群れと認識される何かがあれば良い。
 例えば生まれ育った環境が同じであるとか、共通の趣味嗜好を持っているだとか。
 同じ血が流れているというのも、遺伝子配列が似ているというのもそれらを形成する為の要素の1つに過ぎない。

 遺伝子配列や血の繋がりが強い意味を持つのは、自分に似た要素を見出しているからだろう。


 もう1つ。

 母親の出産時に痛みを覚えるのは何故か。
 本来、自分を苦しめるものに愛着を持つのは不自然だ。
 生き物は子孫を残すことが本能的に定められている。ならば、その過程で苦痛が産まれるのは非生産的に思える。

 では逆に考えよう。
 痛みを伴うのは増えすぎるのを防ぐ為だと。

 繁殖に都合が良い事ばかりでは数が増え過ぎ、生態系を壊す可能性がある。
 不必要な繁殖を制限する為のストッパーとなるのが母親に課せられた痛みなのではないか。

 では何故痛みなのか。
 生まれたばかりの生き物というのは総じてひ弱な存在だ。哺乳類は特にその性質が顕著だろう。
 それを育てるには自己犠牲の忍耐力が必要とされる。

 出産に耐えられる人間なら育てられる。
 そういうふうに作られているのではないか。

 だが、現代には科学というものがある。
 ある程度痛みを抑えて産ませる事ができるようになった。
 これは本来組み込まれていない仕組みである為、数の統制に乱れが生じかねない。
 そして、痛みが軽減されるという事は、本来なら子を育てるに向いていない人間も子を成せるということになる。

 昔は痛みを持って産んだ子だからと身を呈して守る人間が多かったらしいが、現代はどうだ。
 満足な食事が取れているいないに関わらず、耐えない児童虐待のニュースや俺のように捨てられた子が多いのは、この仮定を是とする根拠になるのではないか。


 ここで、腹を裂いて出てくるものに愛情を持てるのは何故かという問いに戻る。

 やはり遺伝子を共有している事が関係しているように思うが、敢えて別の意見を出すなら、共有した時間の長さではないだろうか。

 肉体の共有。
 腹に宿った子を何ヶ月もかけて産み落とすのに、どれだけの労力とエネルギーが必要か。
 その苦楽を共にした。という考えが愛着を生むのではないか。
 ようやく解放された。という安堵も相まり、生まれた喜びを増幅する。
 その結果が大切であるという認識に繋がっている。

 それに加え、かつて自分の一部だったものである事も愛着が湧く理由になると考えられるだろう。



 前述した2つの結論より、俺は家族という関係性に1つの回答を出した。


 身を引き裂くような苦痛に耐えた者同士、又は遺伝子を共有した者同士は家族であると。


 苦痛の種類は問わない。
 要は、同じ苦しみを味わった者同士は責任感や同調性、或いは親近感といったような感情が生まれやすい。
 同じ場所に住み、出来事を共有していればいずれ何らかのトラブルに遭うだろう。
 それを乗り越えた者同士は精神的な結び付きが強くなる。というような理屈だ。
 それが肉体的であろうと精神的であろうと構わない。
 必要なのは同様の苦痛を味わったという事実。

 
 遺伝子の共有の方が重要性は高いだろう。
 自分の一部だったものには少なからず愛着が湧くものだ。
 自分のものである。という潜在意識が保護欲に繋がるのだろう。



 答えを出して終えば何とも呆気ないものだ。

 解答は出た。

 遂に家族というものを理解したのだ。

 ーーそうだろうか。

 長年答えを求め続けた難題が解けたというのに充実感が無い。
 あまりに空虚だった。

 自分が求めていたのは本当にこんな答えなのだろうか。

 家族という関係性を理解したかった。

 では何故、理解した今も解答を求めているのか。

 解った筈なのに分からない。




 家族の繋がりというものに答えを出すのに、そう時間は掛からなかった。

 今まで手を付けなかったのは、それと向き合うのに臆していたから。理解出来ないのが怖かったから。

 臆していた?恐怖を抱いていた?何に対して?

 家族の繋がりに対して。では無い。

 自分に家族がいない理由を分かりたくなかったからだろう。

 怯えていた。
 捨てられたという事実を突き止めてしまうことを。
 自分には家族の繋がりが無いのだと、解ってしまうのを恐れていた。


 自分で導き出した絶対的な解答が、自分自身に突き立てられる。
 まるでナイフで滅多刺しにされたような痛みを生む。



 どうして自分は捨てられたのか。
 身体が動かないのだから当然か。
 簡単な問いだ。
 考えるまでもなく答えが浮かぶ。



 ーーそれでも。

 欲しい。

 血の繋がった家族が。
 自分と苦痛を共にしてくれる家族が。


 もし、この文字の向こうにそんな人間がいるのだとしたら。


 今からでも、外に出られるだろうか。

 そんな人間を探しに行けるだろうか。





 いつだって答えを与えるだけの自分が、いきなり行動に移せる訳がない。


 身体の無い自分に出来るのは思考と知識の提供だけだ。

 この部屋からは出られない。


 1つの問題に区切りが付いただけ。
 また新しく暇を潰せるような難問を見つけるだけだ。

 そうやって今日もパソコンで知識を与え、集める。


 今日も明日も、何も変わらないのだ。



 ふと、視界の端にゲームの広告が表示される。


 いつもならゲームに興味なんて湧かないが、何故かそれには目を惹かれた。

 AIが作り出したホラーゲームらしい。

 自分にもAIの疑惑が掛けられていたのを思い出して、少しの思案の後、プレイ画面を開いた。

 試してみよう。
 AIにどこまで人間の模倣が出来るのかを。




 








【読んだクトゥルフ神話の魔導書】

【アーティファクト】

【学んだ呪術】

【遭遇した超自然の存在】

【探索者の履歴】
詳細C: ※ 公開されていません。
マクロ:

マクロ名|実行コマンド

SANチェック|1d100<=#SAN SANチェック

応急手当|1d100<=#応急手当 応急手当

医学|1d100<=#医学 医学

回復量|1d3 回復量

精神分析|1d100<=#精神分析 精神分析

聞き耳|1d100<=#聞き耳 聞き耳

鍵開け|1d100<=#鍵開け 鍵開け

図書館|1d100<=#図書館 図書館

目星|1d100<=#目星 目星

言いくるめ|1d100<=#言いくるめ 言いくるめ

オカルト|1d100<=#オカルト オカルト

クトゥルフ神話|1d100<=#クトゥルフ神話 クトゥルフ神話

回避|1d100<=#回避 回避

マーシャルアーツ|1d100<=#マーシャルアーツ マーシャルアーツ

タグ: ※ 公開されていません。
転送: 転送  オンセンルームに転送する

キャラクターID: 174299644123yonagi479

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本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
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