ゆねさんがいいね!した日記/コメント
ゆねさんがいいね!した日記/コメントの一覧です。
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マダラ | |
2020/09/20 15:05[web全体で公開] |
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マダラ | |
2020/09/02 15:23[web全体で公開] |
😶 白夜の歌 ちょっとあとのこと (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)『当店の惣菜は清潔な環境で調理しています』 スーパーマーケットの惣菜売り場。そんな文言の記されたパネルが私の目に留まった。ごちゃごちゃとした色彩と目を覆いたくなるようなフォントの暴力に眉を顰め、私は口の中でぼそぼそと単語を並べ立てる。 清潔、浄化、無菌室。 そのとき、私の目の前を、小さな少年が通り過ぎる。いかにも躾のなっていない様子と、いかにも清潔さを保っていない指で、彼はべたべたと惣菜に指を触れた。顔をしかめ、私は踵を返して惣菜売りから立ち去る。 ああ、でも、本当にただ清潔な世界に比べれば、何倍かマシだな。食べたくはないけど。 頭の中を、あの砂漠がよぎり、それと同時に喉の奥から言葉があふれる。三つのセンテンス。ボキャブラリーの訓練。脈絡なんて考えちゃいけない。だって世界には脈絡なんてない、あるのは気まぐれな共通項だけ。 月の砂漠を、はるばると。旅の駱駝が行きました。 月、砂漠。 「月の砂漠。月、十五夜、兎。砂漠、……サバ、味噌煮」 ぶつぶつとつぶやいて、私は鯖の缶詰を手に取った。脈絡のない言葉の結びつけも、たまにはなにかの役に立つ。特に夕食を決めるような場合には。 脈絡のない出会いも、きっとそういうものなのだ。 ***** 小さなアパートの一室の玄関に足を踏み入れ、私は大きくため息をついた。 別に大して疲れてはいないのだけれど、これはあくまで一つの儀式だ。フリーのネットライターなんてしていると、オンとオフの概念があやふやになる。仕事がない時は休みで、仕事がある時は休みじゃない。普通の勤め人がそうするように、夜に家に帰ってきて疲れたように息をつくポーズを取らないと、生活からメリハリが失われてしまう。 買い物袋をテーブルに置き、缶詰と缶ビールを取り出す。麦酒の泡立つ小気味よい音に耳を傾けながら、最近新調したノートPCを操作して、メールの着信を確かめる。 マッチングサイトで知り合って多少話したものの、急な取材のためにデートの約束を守れなかった相手からの奥ゆかしい非難が一件。別に元々たいして好きじゃなかった。別に。 とある企業からの訴訟で世話になった弁護士からの法律用語で美しく飾られた心配と忠告が一件。君が最近個人的に興味を持っている研究機関に、警察に過去にあったある組織。どちらも正気の人間なら目をつむるべきだ。頼むから訴訟漬けになるより前に、地元中学のマーチングバンドとかなにかそういう平和なモノを取材しろとか何とか。 そして、記事を書いているサイトの担当者からの着信が一件。壱岐島における君の取材と記事には、端的に言って失望した。文章や筋立てがどんなに良くても、新聞とは違ってうちには日々の小説欄はないのだ。この原稿は出版社の文芸部に持っていった方がいい云々。 デート相手や仕事の担当には少しも謝る気は起きなかったが、弁護士には悪いと言わざるを得ない。でも私にはあの団体の動きを監視する使命があるような気がした。また連中が何かしでかすとなったら、危険を覚悟で告発しないといけないのだ。まあ、いざとなれば日本有数の財閥も味方してくれるかもしれないし、命の心配だけはして、あとはこれまで通りにやるだけだ。誰かさん曰く、死なない限りはなんとかなる。 とにかく、そんなすべてをゴミ箱に放り込んで、私は鯖の味噌煮を箸でほぐす。目をあげると、壁に掛けられたクリップボードが眼に入る。普段は進行中の取材に関するメモや写真を張り付けているその場所には、今は四枚の写真と、いくつものメモがあった。 喉を鳴らしてビールを飲むと、私は目をつむる。それから小さく十秒数えて、私は思い切り目を開いた。素早く唇を動かす。いつものトレーニング。まずは左から。 「ガイド、バギー、自衛官、行動力」 彼にはきっとまた会うことになるだろう。今度はバカンスにでも行きたいものだ。そう、きっと近いうちに、今度は観光地とか、おいしい店とか、そういう場所を教えてもらわなくては。きっとあのぶっきらぼうな口調で、何かとはっきりしない私を引っ張りまわしてくれるはずだ。 「アイドル、財閥の娘、マフラー、秘めたやさしさ」 彼女には嫌われてしまったかも。でもまあ、ライブのチケットは送られてきた。大音響にはまだトラウマがあるけれど、響くのが綺麗な歌なら、きっと怖がる必要はない。 「研究者、元刑事、理屈っぽい、……あの人の友達」 新聞社時代に世話になった、女性記者の先輩。あの人は彼のことも随分評価していたっけ。彼はあの人から聞いていて想像していたヒーローより、なんというか、こう、うん、だいぶ人間らしかったと言っておこう。彼とは会う約束を取り付けている。露骨に嫌な顔をされたが、放っておくと死にそうなのだから仕方がない。彼には是非とも、研究を成し遂げてもらわないといけないのだ。 「メカニック、名匠の弟子、修理、約束」 彼の師匠を探すのは容易かった。専門外の私でも名前を耳に挟んだことがあるほどのメカニックだ。彼はぶっきらぼうに、弟子の伝言を伝えた私に礼を述べてくれた。彼のことは幾分毒のある口調で責めていたが、それでもその言葉にあふれる愛を聞き逃す私ではない。 トレーニングを終え、私は満足した顔でもう一度ボード全体を見渡す。うん、奇妙な共通項しかなくても、そこには確かな物語がある。 PCをもう一度開き、映画のサイトを開く。出会いのない仕事で、夜はビールとつまみと古いフランス映画で過ごしてたんじゃ、当分恋人は望めないだろうな。まあでも、これが心地いいんだから仕方ない。 ジャン・コクトー監督、『オルフェ』。 死者と生者の叶わぬ恋の物語。もう何度も観たお気に入りのその物語が展開されるのをぼおっと眺める。 「砂漠の女の子、歌、駱駝、変な野菜、水、チョコレート、月、丘、赤い花」 また唇が勝手にセンテンスを刻んでいることに気づき、私は思わず唇の端を引き上げる。本当に悪い癖だ。でも癖なんだから仕方がない。 それに、覚えておかなくてはいけないことがある。守らなければいけない約束がある。 心に留めておかなければいけない“またね”がある。 そのために私は言葉を刻む。今日も明日も、これから先も、ずっと。脈絡のない出会いと、奇妙な一夜を、伝え続ける。 だから、私はもう一度目をつむった。 浮かぶのは月夜の砂漠の風景。風変わりな動物にまたがって進む、二つの影。 「……大切な友達」 私の唇が再び、頭に浮かんだ言葉を勝手に紡ぐ。その感触を何度も味わいながら、私はすっかりぬるくなったビールを一息に飲みほした。 はい、というわけで9/1に完走した「白夜の歌」(KP:瑠奈様 PL:時雨様 じゃが様 りちゃ様 柏木様 マダラ)に参加したマダラのPC:青桐静葉の後日譚妄想でした。 いやーよかった! もうずっとずっと、CoC始める前から行きたかったシナリオなんですよ。 辿り着いたエンドはA-1、全員生還(一人は帰らないことを選んだかたち)となりました。憧れの物語を素敵なメンバーと一緒に頑張って走り抜けて、素敵なエンドにゴールインできてほんとによかった。 PC、NPC、舞台、描写、全部がとてもいい雰囲気にあふれていて、ワンシーンワンシーンを絵として切り取ってみてみたくなるような、そんなセッションでした。 いやまあセッション中はドキドキだったんですけどね。発狂でみんな揃って死にかけたり、最終戦闘もほんとにギリギリだったり。最後の最後、このラウンドで倒さないとというタイミングでみんなが行動を終え、非戦闘員の青桐にお鉢が回ってきたときは本当に息が止まるかと思いました。「人の特ダネ邪魔すんなパンチ」でとどめを刺せた時は、ジャーナリスト魂ここにありって感じしましたね。 NPCのシンちゃん(かわいい)となかよくしたりオルフェに名前つけたりして、会話の一つ一つを楽しめたと思います。コクトー、また会えるといいね。 青桐の連想ゲームじみた単語ならべロールプレイも楽しかったな。FチームのFから連想広げた時に、「Forte」なんじゃないかっていう発言をしたら、それがチーム名みたいになってラストのロールプレイに組み込んでもらえたのはちょっとうれしはずかしって感じですね。最後にみんなでおっきな声で歌えてよかった。 全体的にバラバラなんだけど、なんか妙にまとまりのあるチームだったと思います。それは青桐にとっては日ごろ並べ立ててる言葉たちのように見えるんじゃないかと思って、こういう感じの後日譚になりました。帰ってきたあと、とある関係者に自分たちの旅を語る役目を任された時の彼女の語り出しが「私たちのチームは、そもそもの最初から、全員が時間通りには集まらなかったんです」だったのは我ながらお気に入り。 ではこのあたりで。同卓してくださった時雨様、じゃが様、りちゃ様、柏木様。そしてKPの瑠奈様。ありがとうございました。また、次の悪夢で会いましょう。
Adam | |
2020/08/25 12:48[web全体で公開] |
😶 (※シナリオネタバレ注意)『壊胎』後日譚 ~黒田の場合~ (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)今の職場に転がり込んで、もう半年がたつ。 それまでの俺には「非日常」と思えてしまうようなこの場所が、今では居心地がいいとさえ感じている。 訓練はキツいけど、酒保には気に入ったブランドのタバコとラムもあるし、食堂のメシも旨い。 バイクだって、非番の日には好きにいじってていい。 あの娘をあんな風にして殺したのに、安穏と生きていていいのか。何かしなきゃいけないんじゃないか。 そんな漠然とした罪悪感、使命感を抱えてここにきたのに、それがもう居場所になってしまっている。 重い感情に慣れていってしまう自分に嫌気がさしつつも、今日も何とか生きている。 --- きっかけとなったあの日、俺たちは真っ暗な闇の中で目覚めた。 その場所で水埜と、色の真っ白なあの娘と出会った。 そこからはもう、何とか外に出るために無我夢中だった。 薄暗い研究室、無造作に転がされた死体、訳の分からない言葉を喋るバケモノ。 そして、変身。 一度目に在ったのは体が軽くなる感覚と、万能感。 目の前で傷ついた教授や、悍ましいバケモノを見て、絶対に殺さなきゃいけない、そんな考えに囚われた。 その狂気に身を任せ、考えるより先に体が動き、変身していた。 ガキの頃に憧れた、正義のヒーローみたいだった。でも、俺は一歩届かなかった。 水埜がバケモノを倒したとき、「やった。終わった。」と思った。 けれど、殺したバケモノに駆け寄る彼女は「お父さん」と、確かにそう言った。 それに気が付いた時にはもう、遅すぎた。 二度目に在ったのは強烈な殺意と、破壊衝動。 バケモノに変わってしまったあの娘を楽にしてやりたい、その一心で縋るように禁忌を手に取った。 次の瞬間、目の前のすべてが、血の朱に染まっていった。 静寂、憎悪、恐怖、孤独。 そんなことを感じながら気づいた時にはもう、彼女だったものが辺り一面に転がっていた。 暗い部屋で手かせを嵌められ、助けを求めていた彼女を、 それでも心配させまいと「大丈夫」と言ってくれた彼女を、 殺したのは俺だ。 ---- 水埜にも迷惑をかけた。 学がない俺の代わりに研究所の調べものをほとんどやってくれたし、バケモノを倒せたのも全部アイツのおかげだ。 そして最後には、あの娘を殺した俺を、殺してもらった。 救助される直前。もうすべて忘れて、ドライバもシステムも、自分さえも、全部沈めてしまおう、そうも思った。 そんなときも、水埜が手を引っ張ってくれた。「これで救える命もあるんです」と。 あの言葉で、今の職場に来ることにも踏ん切りがついたと思う。 今でもアイツは、前衛を支える後衛として、そして突っ走る俺のブレーキ役として、俺の面倒を見てくれている。 どっちが年上か分かんないね、これは。 助けられた後、RIDEシステムとドライバを船に置いていこうとしていたことを話したら、病室で教授にドハッパ喰らったっけ。 持ってた分厚い本で、さんざっぱらどつきまわされたことを覚えている。 教授は俺たちよりも手ひどい怪我を負っていたにも関わらず、もう現場復帰している。 正直言ってデタラメな人だ。誰でもD-2であのバケモノ相手に渡り合う能力を持っていると思わないでほしい。 付き合わされるこっちの身にもなってくれ。 ---- その教授が呼んでる声が聞こえる。 どうせまた、無理難題な訓練か、次の現場のブリーフィングだろう。 RIDEシステムにあの言葉をコールするたび、傷跡が増えていく。 それでも生き残って、強くならなきゃいけない。 もう二度と、名もない花を踏みにじらせないために。 ---- ということで、『壊胎』で使用したPC「黒田 修司」のアフターストーリーでした。 シナリオとキーパリングが素晴らしすぎて、初めて書いてしまいました。 こんなシナリオと演出、好きに決まってるじゃん…ズルじゃん… そんなことを思いつつ、探索中にテンションが右肩上がりになっていったシナリオでした。ああいうの大好きです。 ラストは禁断の変身に手を出して、生きて帰ってこれるって思ってませんでしたよね…ひとみちゃんのことを忘れられず、罪悪感と使命感に苛まれたまま頑張って生きていってくれ、黒田… 多分、彼はサルベージされたテープで、自分の二度目の変身を見てるんじゃないですかね。加速するサバイバーズギルト。 情報は全部抜いてましたけど、ラストシーンはどうにかなっちゃったヒロインを、禁忌の変身で泣く泣く殺して、心中することしか考えてませんでした。 NPC含め全員生還したいのはやまやまでしたが、これはライダーファンの悲しき性なんです…ヒーローには、オリジンストーリーで業を背負わせたくなってしまうんです…赦して… 最後になりますが、自分のやりたい展開・演出にとことん付き合ってくださった相方PLのアンスさん、演出ありきで相当な無理を言っても柔軟に対応してくださったKPのKadenaさん、そして最後まで温かく見届けてくださった見学者の皆さん、本当にありがとうございました! 次回の『傀逅』も、めっちゃ楽しみにしてます!
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