3838さんの日記を全て見る
みんなの新着日記を見る
😶 5/10のBFCのトレーラー? まだこの地が荒れに荒れていた百数十年前のこと。 当時、今よりも幼く、情熱だけで動き回っていた自分たちは、荒れて腐っていたヴァルハーフェンの地を見つけ歓喜した。 その時の自分たちの目には、ゼロではない、マイナスからのスタートが、酷く魅力的に映っていたのだ。 好き勝手出来る猟場。なんの責任も負荷も掛からない遊び場だったその場所が、いつの間にか自分たちにとってかけがえのないものになっていき…… 「国を作ろうと思う」 言い出したのは誰だったか? 幼馴染の青年だったかもしれないし、その地で知り合った若者だったかもしれない。 自分と言えば、特に熱心に心動かされれたわけではなく、ただ流れに乗って諾の返事を返していた。 それからの動きは驚くほどに早かった。 いつの間にか集まっていた仲間や部下だと名乗るモノたちが活発に動き出し、幼馴染の手足となって荒れていた土地を平定しだす。 周辺諸国からのちょっかいを華麗に退けつつ、上手くかじ取りする幼馴染を半ばあきれたように感心していた自分をも、うまく使ってきたのには、流石に不快感をにじませたが、手際は見事だった。 国内の不穏分子をあぶり出し、物理的に懐柔したり、離してもわからない相手は叩き潰したり、(この世から)引退させたり、思えば、一番充実していた日々だったのだろう。 そんな忙しくも愉悦に満ちた日々を送っていたある日、偶然に出会った蛮族らしからぬ不可思議な者たち。 彼らと約定をかわし、互いに文書を残した。 月日は流れ、友人たちはそれぞれ割り振られた領に引きこもり、今では会うとお互いに腹の探り合いを試合うような心温まる交流を続けている。 一方の自分はというと、幼馴染に出来上がった国の中心を任せ、すべての責任から逃れようと隠居という選択肢を選ぼうとしていた。 渋り妨害する彼を懐柔すべく、親友の妹を公国軍へ放り込めば、諦めたようにそちらにかかり切りになってくれた。 彼の指導を受け、めきめきと頭角を現した彼女は公主を支える優秀な諜報員と成り果てたのは、少し誤算だったかもしれない。 隠居の場所を用意してやるという親友の甘言に乗せられた自分はと言えば、辺境の都市の市長に収まり、大人しく…… 「してるのか?」 「……してるわよ」 一人回想しているオニキスに、男は呆れたような眼差しを送った。 「誰だ? 他人(ひと)の首脳陣の塵を壮大な埃にして更迭させ、領内の人事を一新させた奴は?」 「あら? 以前から、鬱陶しいってグチっていたのはだぁれ? 親友の憂いを失くして差し上げたのよ」 「物理的になっ!」 男はクソッと髪をかきむしり「信じられねぇ」と吐き捨てる。 「確かに隣とくっついて何かしらを仕掛けそうだとは言ったさ。だがな、ここまでオマエがすると分かっていたら……」 「だって、暇なのよ」 オニキスはフゥとワザとらしく愁いを帯びた声を出す。 「とても暇なの……少しは遊んでもいいじゃない?」 せっかくの仮面武道会なんですものと、副音声のついた言葉に、男は「そういうやつだよな」と叫ぶと、窓枠に足をかけた。 「帰る」 ばさりと背中の翼を広げ、窓枠の外へと身を投げた男に「お気をつけて、領主様」とにっこりとほほ笑んだ市長は、大空を飛翔していくドレイクの後ろ姿を見送った。 一方そのころ、図書館の奥にひっそりと眠っていた一冊の古文書が一人のラミア娘によって発見された。 ラミア娘は、それを上司に報告し、その古文書が巡り巡って市長の手へ渡ってくる。 「あぁ……この本を見つけられる人材が、ここにいたのね」 クスリと嗤った市長は、部下に命じる。 その内容は、古文書に示された洞窟の調査と探索。 「そうね、彼女一人じゃ荷が重いでしょう?」 「……でしたら、護衛役として武官や調査補助として役人を数名付けましょう」 「そのあたりの人選は任せたわ」 部下の言葉に、市長は、笑みを深め頷いた。 (うまくすれば……古の約定は、未だ効力を失してはいないはず。 ならば、今回の仮面武道会で……きっと楽しいことになるわ) そして、事態は動き出す。 『仮面武道会篇~都市予選<前編>』 開幕まで、もう少し……
レスポンスはありません。
コメント欄:(最大1000文字)
web全体で公開 友達まで公開 本人にのみ公開 ※投稿するにはログインが必要です。