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😶 【セッション資料】里田麗奈の話 (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)※以下の文章は、掲示板セッション「地獄雲」のシナリオ内に登場するNPCの独白です。セッションに参加していない方には、何のことやら分からないと思いますので、スルーしてください。 ============================== ......あの日、私と紗希絵、悠菜の三人は、放課後も教室に残って、ダラダラ喋ってました。何を喋ったかはあんま覚えてません。多分、テストの結果がヤバかったとか、悠菜のバイト先の店長がキモいとか、そんな話だったと思います。 話が一段落して、そろそろ帰ろうかって雰囲気になったときでした。みなみの机の上に、財布が置いてあるのに気づいたんです。ピンク色で、ウサギのキャラがプリントされてる、新品の財布です。 「みなみのヤツ、また財布忘れてるよ」 私は呆れ気味に言いました。みなみが、ついこの前も財布をなくして、新しいのを買ったばかりだと、知ってたからです。 「しゃーない、預かっといてやるか」 手を伸ばしかけたそのとき、紗希絵が横から割り込んできて、サッと横取りしてしまいました。 「は~い、みんな聞いて~!ファッション・コーディネーター、サキエカナハラのお財布チェックの時間だよ~。今日は千谷みなみちゃんのお財布を~チェック、チェック!」 そう言い放つと、紗希絵は楽しそうに財布を開き、中身を机の上に広げ始めました。 「ファッション・コーディネーターって何だよ。いねーよ、そんなヤツ」 突っ込みを入れつつ、悠菜も身を乗り出します。 「ちょっと~、やめなよ~」 そう言いつつ、私も止める気は全くありませんでした。ちょっと中身を見て、ひとしきり騒いだら、片付けて、明日しれっと返せばいい。そんな風に思ってました。 「はい、まずはお財布の評価から。色といい、柄といい、キラキラのビーズでデコってあることといい、とっても女の子らしくてキュートですねー。でも、この歳でキャラものの財布ってのはどうかなー?みなみちゃんにはもう少し大人の雰囲気を目指して欲しいかも。さて、それから......ッッ!!?」 楽しそうにコメントしていた紗希絵が、急に凍りつきました。財布の中から何か見つけたみたいです。私も悠菜も「あれっ?」と思って、手元を覗きこみました。 紗希絵の指は一枚のプリクラを摘まんでいます。そこには、一組のカップルが仲良さそうに写っていました。女の方は、もちろんみなみです。そして、男の方は......見慣れない顔でした。 「これ誰?知ってる人?」 「............じゅんくん」 「えっ!?」 神沢純。紗希絵の元カレ。 私と悠菜は顔を見合せました。私たちは知っていたんです。紗希絵の未練を。この半年間、誰に告白されても断ってきたのは「じゅんくん」が忘れられないからだということを。 「な、何かの間違いだよ」 とっさに言いましたが、間違いでないのは分かっていました。だって、プリクラの上には、お絵かき機能を使って、こう書いてあるんです。「みなみとじゅんチョーラブラブ♥️」 私も悠菜もかける言葉が見つからずにおろおろするしかありませんでした。紗希絵はしばらくジッと写真に見入っていましたが、突然、乱暴に机の上のモノを財布に押し込むと、私に向かって投げつけました。 「な、何?」 何とか財布を受け取った私が訊くと、紗希絵は冷たい声で言います。 「捨ててきて。こんなもの、見たくない」 突然の命令に、言葉を返せずにいると、紗希絵はさらに畳み掛けてきます。 「捨ててきてよ!友達でしょ!?」 紗希絵の目には涙が溜まり、顔は怒りで歪んでいます。有無を言わせない雰囲気に押されて、私は仕方なく頷きました。紗希絵は、私の返事を見てとると、鞄を引っかけ、早足で教室を出ていってしまいました。 「ちょ!紗希絵、待って、待って!」 悠菜も慌てて後を追います。私は教室に一人ぼっちで残されてしまいました。 その後、私は残された財布をどうするか、決めないといけませんでした。 黙ってみなみに返すことも考えたけど、もし紗希絵にバレたら、何を言われるか分かりません。そう思うと、決心がつきませんでした。かといって、学校のゴミ箱に捨てれば、何かの拍子に見つかって、犯人探しが始まりかねない。私たちが教室で喋っているのを見ていた人がいたら、疑いがかかるかも。 悩んだ末、私は誰にも見つからないところに財布を捨てることにしました。いい場所を思い出したんです。 学校の裏山に、今は使われていない、古い井戸があるんです。私は、たまたま、場所を知っていました。去年同じクラスだった男子が、そこで肝試しをした時のことを話してくれたんです。他には何もないところだから、滅多に近づく人はいないし、井戸の底にはゴミが溜まっていて、ちゃんと管理もされてない。財布をこっそり捨てるには、すごくいい場所に思えました。 山の斜面を登って、井戸のところへ着いた頃には、息が切れ、足が痛くなっていました。靴は泥だらけだし、服には葉っぱがくっつくし、最悪です。 ぽっかりと開いた井戸の口に、財布を投げ入れたときには、肩の荷が降りて、ホッとした気分になりました。そして、同時に、紗希絵に対するイライラが膨らんできます。 何で私がこんな思いをして、紗希絵のワガママに付き合わなきゃいけないの?そりゃ、彼氏を取られたことには同情するけど、何も財布を捨てることないじゃん。大体、そんなに気に食わないなら自分で捨てに行けよ!紗希絵はいつもそうだ。自分の人気を利用して、他の人を動かそうとする。断れないと知りながら、計算ずくで-- 無性に腹が立った私は、つい、口にしてしまったんです。 「紗希絵、調子乗ってるよなー。......死んでくれたらいいのに」 完全な独り言のつもりでした。でも-- 「......ネガイ、カナエヨウ」 ......返事があった。井戸の底から。返事といっても、音として聞こえたわけじゃなくて、心に直接話しかけてくるような感じでした。声の主は巨大で、冷たくて、何だかとてもザラザラしていて、ともかく嫌な感じがしました。 そして、戸惑う私の前で、ソレは起こりました。始めは、井戸から何か黒い煙のようなものが上がっているように見えたんです。黒い、もやもやしたものが、どんどん出てきて、空中で何かの形になっていく。輪郭のはっきりしない、まるで小さな雲です。 でも、その雲には手足がありました。人間のものとも、動物のものとも違う、生えては消える何本もの蠢く手足!よく見ると、口もあります。血を流す生傷に似た口がいくつもあって、不快な口笛のような音を出している。そして、あの目!地獄の火みたいに燃える大きな目が五つ同時に開き、私を睨み付けたんです! ......その後、しばらくは記憶がありません。 気がついたら夜になっていて、私は山の麓の道路で蹲っていました。服は泥まみれで、あちこちに破れ目ができています。右足の靴がなくなって、額には切り傷ができていました。流れる血をハンカチで押さえながら、何とか立ち上がり、ふらつく足で家に帰ったのを覚えています。 翌朝、学校に行くと、紗希絵が死んだことを知らされました。私は、すぐに、ピンときました。あの怪物だ。あいつがやったんだ。私の「願い」を叶えて......。 友達を殺してしまったショックに、私は打ちのめされました。心の中は、悲しさと申し訳なさと後悔の気持ちで一杯でした。何日かは我慢して学校に行ったけど、感情が頭の中で暴れまわって、とうとう立ち上がれなくなって......。その先は、みんなの知ってる通りです。 ......私の話はこれで終わりです。謝って許されるものとは思わないけど、本当に、本当にごめんなさい......。私が......私が紗希絵を......。
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