【ロストロイヤル】白き指、血で濡らさば:その4【TRPGリプレイ】
注意: 当ページの内容の転載、複製は著作者の許可がない限り行わないでください。
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本作は、「うらべ壱鉄、冒険企画局、新紀元社」が権利を有する「ロストロイヤル」の二次創作物です。
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本作は、「うらべ壱鉄、冒険企画局、新紀元社」が権利を有する「ロストロイヤル」の二次創作物です。
陥落したアヴァロンより、魔王からの追手を振り切るため旅をするエゼク王子と3人の騎士たち。しかし、王子と血縁関係にあたるロンズデール卿、ウィルフレッドは謀反を企て彼らを襲撃するのだった。
ウィルフレッドを退けるも、彼の処遇について騎士たちの意見が2つに分かれることとなった。叛逆者として処罰するか、生かして別の道を考えるかという難しい選択。
騎士と王子たちは互いに意見を交換しあい、己の信念を表明した。決断のときは刻一刻と迫りつつある。果たして、4人はどの道を選ぶのかーー
◆◆◆
と真剣なあらすじを書いたけどセッションはほのぼのしていた。
あまり長々と書くと文字数がすごいことになってしまうので適度に割愛するが、強気な発言をしたトリンシックが「この状況どうしよう……」と葉巻を吸いながらたそがれたり、リリとノエルが真面目かつかっこいい描写でロンズデール領にPOPした狼、妖魔を狩って地域の治安に貢献したり。
「因縁」によりリリとトリンシックが対話するも「終わったら焼き鳥食べよう!」という至極平和な内容。ファンブルが出たりはしたものの命題をどうするかは一旦わきに置いて互いのキャラを確認することとなった。
しかし、これは嵐の前の静けさに過ぎなかったのだ。
◆◆◆
騎士と王子がロンズデール卿の屋敷を後にする予定日、4人は会議室に集まっていた。
場が静まりかえっているのは単に音のないためばかりではあるまい。
「みな、よく集まってくれた。報告は受けているよ。周囲で、妖魔の影が見られ始めたそうだね。あまり悩んでいる猶予もなくなってきた。アヴァロンを継ぐ者として……ぼくはここで、決断を下さなければならない」
固唾をのんで王子の一言を待つ騎士たち。
「……ロンズデール卿の処遇について。今一度、皆の意見を聞きたい」
「王子が手を下す必要はございませんわ。王子はここで、人を殺める選択をしなかった分、もっと違う道を作ることが出来る、リリはそう判断致しますわ」
「僕はウィルフレッドをきっちりと処分するべきじゃと考える。これから先のため、不安要素は残すべきではないと考えるからじゃ」
「例え反目していても親兄弟で争うのは悲しいことだと思うっす、ここで不安そうにしている人のためにも、ここで早期に決断を下すべきじゃないかと」
三者三様の見解。いずれも凹凸のある、完全な間違いや正しさを持たない意見だった。
「うん。きっと誰の意見も正しいのだろう。けれど、選べる道は一つだけ。ここに円卓はないけれど……この場で、協議を行おう」
かくして、一行がどちらの選択肢を行くかを決める円卓判定が行われるのだった。3つの6面ダイスが仮想の盤面を転がり、運命は決まった。
トリンシック、4
ノエル、8
そしてリリは……
「11!」
「ファンブルだけど出目は非常に高い!」
「おああああ!」
先ほどトリンシックが突然のファンブルにより刺されたのを思い出す一同。勝利は惜しいが命はもっと惜しい。
「とりあえず自分は正義一点消費で振りなおしたいです」
振り直しの結果、出たのは9。評議は「ウィルフレッドに手を下さない」という結果で確定した。
しばしの沈黙の後、エゼク王子は一同に語った。
「ロンズデール卿の犯した罪は、確かなものだ。彼のために動いた兵のことを考えても……無罪放免、というわけにはゆかない。家族だからと、甘い決断を下すわけには、いかないのだと思う」
でも、と確かな意思を込めて言葉を重ね。
「ぼくは、ロンズデール卿の命を、奪わないことに決めた。」
曇りのない目はまっすぐに、騎士たちを順番にとらえる。
「今、アヴァロンという国は滅びてしまった。
屁理屈だと思うかもしれない。でもぼくは、今無い国の法で人を殺めたくはない。彼の罪は……アヴァロン復興の折にこそ、裁くべきだ」
「……咎を背負えど、彼もまた憂国の士であるならば。今は命を奪い合うよりも、共に戦う道を求めたいんだ」
主の意を受け納得する騎士たち。まだ幼いとはいえその整然とした言葉には、アヴァロンの支配者としての片鱗をのぞかせる何かがあった。
◆◆◆
シーンは地下牢へ。格子越しに、王子の下した決断がウィルフレッドへと伝えられ……彼の表情が、みるみるうちに歪んでゆく。
「……勝者の務めすら放棄するか、〝姫王子〟!」
その口調にこもる刺々しさは、敗者の身となりがなら情けをかけられるという悔しさから出たものか。
「ほとほと呆れ果てた甘さだ。それは俺に対する侮辱か? 罪人をのさばらせるのがキサマの望む理想の国か?円卓の騎士ども、キサマらもこいつに感化された口か?」
攻撃的な言葉を真っ向から受けるも、騎士と王子は静かに語った。
「罪を裁くのは私たちの王子ではない、というだけですわ」
「生きて償う機会を与えるというのが王子の決断。そこに考えが合致しただけっすよ」
「この決断は王子の感情だけの決定ではなく、円卓会議による決定じゃ。王子は最後までよく悩んで決断したのじゃよ」
歯を食いしばるウィルフレッド。
「償いの機会だと? キサマら、俺に生き恥を晒せと言うか……!」
王子もまたこころに秘めたものを打ち明ける。
「円卓会議の決断は覆りません。あなたも、ご存知のはずでしょう。もうやめましょう、〝兄上〟。これ以上、ぼくらの間で血を流しても意味なんてない」
「……再び俺がキサマらの背後を狙ったら、何とする?」
「あら、では何度でもいらっしゃいませ」
ニッコリと笑うリリ。
「あなたの罪と屈辱が増えるばかりですわ」
「負ける道理がないっすね、そして貴公はそんな不名誉なことを何度もする方じゃない」
「それに、そんなことをさせないように、王子や僕たちが行くのじゃよ」
それを聞き、舌打ちを一つ残すウィルフレッド。
仮にも武人を名乗る者として、見逃された上でさらなる不義理を重ね、恥を上塗るのはウィルフレッドのプライドが許さない。騎士たちにそれをも見抜かれたのなら、完敗だった。
「発つなら、北東へ進路を取ることだ。街道沿いは先日土砂崩れで塞がれた。袋の鼠になりたいのならば、止めはしないがな」
「感謝を申し上げます、ロンズデール卿。……アヴァロンで再会できることを、願います」
「……ほざけ。アヴァロンの行く末。せいぜい見届けさせてもらうとするさ」
ウィルフレッドはその言葉を最後にそっぽを向いてしまった。感謝を短く述べ、その場を立ち去る騎士たち。
北東に向かっても安全であるという確証はどこにもない。なぜなら、アヴァロンを滅ぼした魔の手が生き延びた王子を狙ってあたりを探っているからだ。
小休止を終え、決死の逃避行が始まる。