よだか(マージナルヒーローズ用キャラクターシート)

理亜が作成したTRPG「マージナルヒーローズ」用のキャラクターシートです。

よだかの詳細

キャラクター情報  NPCでの使用可(使用前にコメントください)
TRPGの種別: マージナルヒーローズ
よだか

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キャラクター名: よだか
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外部URL: http://character-sheets.appspot.com/mar/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYvLf5tQEM
メモ:
詳細A:
本名:夜森 翼(ヨルモリ ツバサ)
陰気な黒髪の女子高生。16歳。

またの名を蒼焔ヒロイン・ナイトホーク。
名前の由来はそのまんま【夜鷹】であり、もっと言えば宮沢賢治の【よだかの星】である。
小学・中学といじめに遭い続け、当時のあだ名は【ヤモリ】。高校進学にともない人間関係のリセットに成功した。が、性格はすっかり陰気かつ卑屈になってしまった。
ヒーローとして目覚めた後もそれは変わらず、「なんで私が」「他にもっといい人がいたんじゃないの」が口癖。しかし、その責務を投げ出したことはない。自棄になれない性分。
戦闘では蒼い炎の翼を纏い、空中殺法をしかける。必殺技は蒼い炎の鳥と化しての突進
「天哭く夜鷹よ、星へと至れ(ナイトホーク・スタァズ)」
詳細B:
					
詳細C:
夜森 翼:オリジン

―――――よだかは、じつにみにくい鳥です。

 顔は、ところどころ味噌をつけたようにまばらで、くちばしは、平たくて耳まで裂けています。

 足もまるでよぼよぼで一間(おおよそ1.8m)と歩けません。

 ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでもいやになってしまうという具合でした。


※    ※    ※


―――――ばしゃあ、という音がして、私の意識は浮上した。

 顔を上げて見ると、赤崎さんと銀城さん、それに御手洗さんが、くすくす笑いながら見ていた。赤崎さんの手には空のバケツ。

 ああ、そうだった。私は。

 このいつもの三人組に、首を絞められて・・・多分、気絶したんだっけ。

「起きたぁー?ヤモリぃー」

 ヤモリじゃなくて、夜森(ヨルモリ)。何回目だろうか、このやり取り。少々呆れつつも指摘したら、空のバケツでひっぱたかれた。痛い。

「アンタさぁー、ほんっとムカつくよねぇ?そんなのこっちは分かってるのよ。わ・ざ・と・な・の。アンタみたいなジメジメ陰キャにはさ、『ヤモリ』の方が合ってるってこと。分かるぅー?」

「ほらアレ、井戸とか水の底とかに住んでんでしょ?ヤモリって」

「それヤモリじゃなくてイモリでしょー?マジ草ー」

 夜森 翼。中学三年生。

 所謂、いじめられっこだ。



――――――小学校、中学校と。私はとにかく、他人の感性を逆なでするたちらしかった。

 曰く、雰囲気がジメジメしてて不快。

 曰く、空気が読めなくてウザイ。

 曰く、会話ができなくてキモイ。

 曰く、陰キャ、コミュ障、ガイジ、ブス、ゴミ、クズ、親なし、ヒキコモリ、不快害虫、学校くんな・・・・・・。

 私はたくさんの人に、いろんな言葉で罵倒された。私個人としては納得できるものも出来ないものもあった。よく意味が分からないモノも。だがどうやら、私自身の自己認識は、その人たちにとっては関係ないらしかった。

 ひょんなことから、この状況は世間一般でいうところの『いじめ』なのだということを知り、対処として『先生に相談』をしてみた事があった。

 担任の先生は、私の相談事の内容を知ると、途端にバツの悪そうな表情になって、頭をかいた。そうしてから、

「もう他の人には相談したのか」と聞いてきた。私が否定すると、先生はこのような事を言った。

 曰く、ああいうのは罰を与えてもまた別の獲物を見つけて、同じ事をするだけ。

 曰く、そもそも公に問題にすると、自分を含めた大勢に迷惑がかかる。

 曰く、私がこのまま耐えてくれれば、誰も不幸にならずに済む。

 曰く、お前は心が強くてマイペースだから、きっと大丈夫。

 曰く、他の誰かに標的が移った結果、自殺やヴィラン事件にでも発展したら、それこそ取り返しがつかないことになる。

 曰く、頑張ってほしい。曰く、そもそもお前にも問題はある。曰く、俺にも立場やキャリアが。曰く、曰く、曰く、……。

 要するに。

 私は、彼女たちへの生贄ということらしい。


※    ※    ※


―――――よだかは、じっと目をつぶって考えました。

(一体僕は、どうしてみんなにいやがられるのだろう。僕の顔が味噌をつけたようで、口は裂けているからかなぁ。それだって、僕は今まで、なんにも悪いことをしたことがない。赤ん坊のめじろが巣から落ちていたときは、助けて巣へ連れて行ってやった。そしたらめじろは、赤ん坊をまるで盗人からでも取り返すように僕から引き離したんだなぁ。それからひどく僕を笑ったっけ)

 あたりは、もううすくくらくなっていました。よだかは巣から飛び出しました。雲が意地悪く光って、低くたれています。よだかはまるで雲とすれすれになって、音なく空を飛びまわりました。


※    ※    ※


 その日は、赤崎さんの機嫌が特に悪い日だった。

「オラッ、なんとか言えよヤモリッ!!文句あんなら言ってみろッ、ピーピー泣いてみろってんだよおらぁ!!!」

「ちょ、やめなよアッキー・・・なんか今日マジすぎない・・・?」

「ヤバ、めっちゃ痕ついてる、草」

 いつも以上に蹴られ、叩かれた。いつもなら避けるはずの顔への打撃も行われたあたり、相当かっかしていたらしい。

「邪魔すんじゃねーよなめ子!!こいつがゼンブ悪いんだよッ!!いっつもいっつも、こいつがアタシをムカつかせんのが悪いんだよッ!!!」

 彼女たちは怒鳴ったり、なだめたり、スマホのカメラで私を撮ったりしている。はやく終わらないかな、とか考えながら。ぼんやりとなりゆきを眺めていると。

『ほう、素晴らしい負のエナジィだ!お前こそ次のシヴァクゾーンの怪人にふさわしい!』

「・・・あ?」「・・・は?」「・・・うぇ?」

 ―――――――聞き覚えのない声が、聞こえた。


※    ※    ※

「お日さん、お日さん、どうぞ私をあなたの所へ連れて行って下さい。灼けて死んでもかまいません。私のようなみにくいからだでも、灼けるときは小さなひかりを出すでしょう。どうか私を連れてって下さい」

「お前はよだかだな。なるほど、ずいぶん辛かろう。今度空を飛んで、星にそう頼んでごらん。お前は昼の鳥ではないのだからな」

 よだかはおじぎを一つしたと思いましたが、急にぐらぐらしてとうとう野原の草の上におちてしまいました。


※    ※    ※


 私は息を切らして、すっかり空っぽになった夕焼けの教室に隠れていた。銀城さんもいっしょだ。御手洗さんは・・・分からない。赤城さんにやられてしまったかもしれないし、うまく逃げおおせたかもしれない。

「・・・ねぇ」

 銀城さんの声。

「・・・なんで、あの時、あたしの手を引いたの?」

 あの時とは、赤崎さんが私たちの目の前で化け物になった時だろうか。

 ・・・・・・なんでって、それは。

 銀城さんがすっかり腰を抜かしてて、自力で立てそうになかったから。御手洗さんは既に走って逃げていたから。

「・・・そういう事じゃない!!!」

 銀城さんの大声が響く。ちょ、見つかったらどうするの。

「・・・あたし、アッキーたちと一緒んなって、アンタを散々・・・イジメた、じゃん。見捨てても、誰も何も言わなかったのに。なんで」

・・・なんでって、それは。

『シヴァクゾー!!!』

 真っ赤なクモの化け物になってしまった赤城さんの咆哮が聞こえる。窓からだ。

 見ると、赤崎さんは校庭にいて、校門から逃げようとする生徒や先生たちの背中を追っていた。

 彼らは必死に走って逃げていたが、クモの八本の脚はとてもせわしなく動いていて、もうすぐにでも捕まえてしまうだろう。

 夕陽でさらに大きくなった赤崎さんの影が、一足先に彼ら全員の小さな体を真っ黒に飲み込んでいた。

「・・・ごめん、銀城さん」

「・・・え?」

「今から頑張って時間を稼ぐから、その間に逃げてね」

 教室の窓を開け、身を乗り出し、大きく息を吸う。声を張るなんて本当に久しぶりだ。喉が枯れていないといいが。

「・・・・・・赤崎さんッ!!!」

 ・・・・・・よかった。うまくいったようだ。

 赤崎さんの大きな影が、八本の脚が、びたりとその動きを止めた。


※    ※    ※

―――――よだかはそらへとびあがりました。もうすっかり夜になって、空は青黒く、一面の星がまたたいていました。そして思い切ってあの美しい星の方に、まっすぐ飛びながら叫びました。

「お星さん、お星さん。どうか私をあなたのところへ連れて行って下さい。灼けて死んでもかまいません」


※    ※    ※


「赤崎さん、聞こえるよね?私がムカつくんでしょう?」

「不愉快なんでしょう?ごめんね。本当にごめんね」

「でも、襲うなら私にしよう?」

「関係ない人を傷つけるのは、やめにしよう?」

「ほら、ここにいるよ。貴女のイライラの原因は」

「ここだよ。ここにいるよ。ほらほら」

「赤崎さん。赤崎さぁん。おぉーい、ほーら」

「―――――おいで?」


※    ※    ※

――――――オリオンは、勇ましい歌を歌い続ながらよだかなどはてんで相手にしませんでした。

「ばかを云うな。お前なんかが一体どんなものだい。たかが鳥じゃないか。おまえのはねでここまで来るには、億年兆年億兆年だ」

――――――大犬星は、青や紫やうつくしくせわしくまたたきながら云いました。

「余計なことを考えるものではない。少し頭を冷やしてきなさい。そう云うときは、氷山の浮いている海の中へ飛び込むか、近くに海がなかったら、氷をうかべたコップの水の中へ飛び込むのが一等だ」

――――――大熊星は静かに云いました。

「いいや、とてもとても、話にも何にもならん。星になるには、それ相応の身分でなくちゃいかん。又よほど金もいるのだ」

――――――鷲の星は大風に云いました。

 よだかは、もうすっかり力を落としてしまって、はねを閉じて地に落ちていきました。


※    ※    ※

 走る、走る、走る、走る。

 単純な速度では勝てないので、モノを赤崎さんに転がしてみたり、カーブを使ってみたり、色々頑張ってみた。でも、さすがにもう限界で。

 ぜぇぜぇ、ひゅうひゅう。元々体力には自信のある方じゃない。足が縺れる。息があがる。視界がかすんで脇腹もなんだか痛い。

 赤崎さんが、廊下の壁を大いに破壊しながら私に迫ってくる。でもまあ。いいか、十分に時間は稼げたと思う。これなら銀城さんも他のみんなも無事に逃げ切れた・・・はず。

「あっ」

 やばい、一瞬安心したせいか私は・・・思いっきり、転んだ。

 赤崎さんが、一切の速度を緩めないままに私の背中を踏みつぶさんと迫る。

 ・・・・・・うん、おしまいっぽい。


※    ※    ※


そしてもう一尺で、その弱い足がつくというとき、


※    ※    ※

 ふ、と。

 ここではないどこか。異なる景色を私は見た。

 がたんがたん。がたんがたん。

 そこは多分、ちょっと古臭い列車の中だった。私はその2人掛け座席の一つに座っていて。

 窓からは。

 信じられないくらい綺麗な、星々の光。銀河の瞬きが映っていた。

 そうしてぼうっと窓の外に目を奪われていると、向かいの席に誰かがいるのに気付いた。

「・・・一つ、お伺いしたいことが」

 不思議なことに、その人の顔は分からなかった。特に隠したり覆ったりしていたわけでもないのに。声も、女性のような男性のような、
兎に角綺麗な声だったこと以外よく分からない。不思議としか言いようのない人だった。

「なんでしょうか」

「・・・『なんで、あの時、あたしの手を引いたの?』」

 その時、その人の声は銀城さんの声になっていた。とことん不思議な人だ。

 とはいえ、聞かれたからには答えねばなるまい。

「なんでって、それは」

「・・・助けない、理由がなかったから」

「『・・・あたし、アッキーたちと一緒んなって、アンタを散々イジメたじゃん。見捨てても、誰も何も言わなかったのに。なんで』」

「・・・逆に、聞くけど」

「いじめとか、酷い目にあわされたとか、仲が良くないとか」

「そんな理由で・・・・・・その人が死んでもいい。いなくなってもかまいやしないって・・・本当に思うの?」

銀城さんの声のその人は、言葉に詰まったようにしばらく黙った。そして、

「『・・・・・・・怖くないの?』」

「ないわけないよ」

「『恨んでないの』」

「ないわけないよ」

「『なら』」

「でも」

・・・・・・さっきから胸が熱い。体も熱い。でも不思議と嫌じゃない感じ。その熱に突き動かされるように、私は言葉を紡いでいく。

「・・・私は、その、こんな私、でも」


「・・・・・・誰かの幸せのためになれるなら、この身なんて何百回灼かれたって、構わないって、思えるから」

 そう、先生だって言っていたじゃないか。

『私がこのまま耐えてくれれば、誰も不幸にならずに済む』って。

 ・・・おためごかしだって、単なる体面を気にした言い包めだって、薄々は分かっていた。

 でも、それでも。それを『善い』と感じた心は。きっと誇れるものだと思うから。

「・・・上着のポケットを御覧なさい」

 その人の声は、銀城さんのそれから、元の男とも女ともつかないものに戻っていた。

 ブレザーのポケットのことだろうか。手を入れると、なにやら小さな紙切れが入っていた。

 取り出すと、それにはこのような文字が書かれていた。

                       
  銀河鉄道線 乗車きっぷ              
 
   [夜森 翼 ]発  → [     ]行き 
     心に希望 持つ限り 終日有効          
                   20XX/XX/XX 発券

 ・・・どうやら、切符のようだ。だが、行き先が書かれていない。

 妙に思っていると、ふいにその切符が輝きだした。

「・・・それは、ほんとうの天上にさえ行ける切符。いや、天上どころじゃない、どこでも勝手に歩ける通行券です」

「待って、何だかわかりません」

 輝きだした切符の空欄に、ひとりでに文字が綴られていく。輝きの中でも、私にはなぜかその文字の意味が理解できた。いや、理解できたのは文字だけで、この状況とか理屈とかはさっぱりだが。

 兎に角、切符にはこう刻まれていた。

「よい旅を。そして、あなたに『ほんとうのさいわい』があらんことを」

 [夜森 翼 ]発  → [よだかの星 ]行き、と。


※    ※    ※


―――――よだかは、俄(にわ)かにのろしのように空へ飛び上がりました。空の中ほどへ来て、よだかはまるで鷲が熊をおそうときするように、ぶるっと体をゆすって毛を逆立てました。

 それから、キシキシキシキシキシキシッと高く高く叫びました。

 その声はまるで鷹でした。

 野原や林に眠っていた他の鳥は、みんな目をさまして、ぶるぶるふるえながら、いぶかしそうに星空を見上げました。

 よだかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。


※    ※    ※

 轟、と。

 私の身体を、蒼い熱が包んでいた。

「・・・あれ?」

 私は、どうやらぼうっとしていたらしい。よりにもよってこんな時に?

 そうだ、赤崎さんが後ろに迫っていたんだ。そう思って後ろを振り向くと。

―――――そこには、真っ青な炎に包まれてもんどりうつ、大きな赤い――――今は色はわからない―――――クモの怪物、赤崎さんがいた。

「・・・・・・え?」

 その炎は、みると私の背中から噴き出しているようで。

 その形は、まるで広げた鳥の翼の様で。

「・・・・・・えええぇ・・・・?」

 蒼い炎が、クモの怪物を灼き尽くし、中から気絶した赤崎さんが排出されるまで。

 呆然と、座り込んでいることしかできなかった。

――――――この日、私は、わけのわからないままに『力』を得た。

 そうして、始まったのだ。

 『夜森 翼』の、もう一つの人生。

 ヒーロー『ナイトホーク』としての物語が。


※    ※    ※


―――――それからしばらくたって、よだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいま、燐の火のような青い美しい光に
なって、しずかに燃えているのを見ました。

 すぐとなりは、カシオピア座でした。天の川の蒼白いひかりが、すぐうしろになっていました。

 そしてよだかの星は燃え続けました。いつまでもいつまでも燃え続けました。

 今でもまだ燃えています。

著.宮沢賢治  『よだかの星』より
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本作は、「三枝チャージ、F.E.A.R.、KADOKAWA」が権利を有する「チェンジアクションRPG マージナルヒーローズ」の二次創作物です。