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😶 まだ気づいていないだけ クトゥルフTRPGを趣味にしようとオンセンSNSに登録して一週間が経つ。真剣に向き合ったおかげで、学校に向かう朝の満員電車の中、人々のステータスが見れるようになってきた。 あの人はAPP11、あの人は13、あの人は9……、着実に身についてきたCOC脳。担任を見て「医師・STR11/CON14/SIZ16/INT15/POW13/DEX11/APP9/EDU21」と思った時は、さすがにちょっと自分でもどうかと思った。 今日は学校に昨日セッションしたサプリメント「クトゥルフ・バイ・ガスライト」を持っていき、セッションの復習を行った。セッションをまっさらに楽しめるよう、シナリオはあえて読まずにいたので、シナリオを読むことでKPが初心者の多い卓を無駄なくサクサク楽しむ為に行っていた様々な工夫を発見し、感慨にふける。 「これ何?」 まさかである。隣の席の女子が声をかけてきたではないか。 「これはクトゥルフTRPGといって、本を使ったゲームなんだよ!」すると、後ろの男子が「あー、クトゥルフ! ニコニコとかに動画あるよね」「有名なの?」「マイナーだよ(笑)」 この感触は……イケる! ナイス、好奇心高い女子。 「豪華客船で宝石泥棒したり、火星に行ったりもできるんだよう。楽しいよ! やる? やるか?本とスマホあればどこでも出来るしやろうよ! 今やるか!」 ここぞとばかりに言いくるめを始めた私に、今度は前の席の女子が声をかけてきた。 APP16のSさん……!(中学~大学でお嬢様学校。淑女。) 「どんなゲーム?」 「(げへへ今日も可愛いなぁチクショウ)えっとね、サイコロふって、地図の上を探検したり、色々出来るんだよ!」 「へぇ~。そうなんだぁ! なんだか桃鉄みたいだね!」 桃……鉄……ッ。 「そう! 桃鉄みたいなゲーム!!」 後ろで男子がえっ……みたいに言いつつ小声でなにか否定的な事を言っていたが、私は遮って言い切った。 「むしろ、桃鉄!」 いいじゃない。クトゥルフも桃鉄もサイコロを振るし、ゲームだから、クトゥルフとパズドラ(Sさんの好きなゲーム)と桃鉄を比べるとすると、桃鉄の方が近いし……。そう考えれば、クトゥルフは桃鉄に含まれる、それでいいじゃない……。Sさんが嬉しそうだから、良いんだよ……。 アニメみたいな動画もあるから良かったら見てみてよ、と最後に締め、話題を終えた。 しめしめ。これできっと動画をみて興味を持って、Sさんがやりたいと言えば皆が集い、オフラインセッションとなるだろう。よし、私はKPが出来るくらいのスキルを身につけねば……。 一息ついて、私はふと思った。 Sさん「クトゥルフ 動画 ニコニコ 豪華客船」で検索するんじゃないか、と。すると検索先は……。 “かなり変態じみた怪盗たちのクトゥルフby月天忍” あ……やっちゃったな。これ引かれるヤツだわ。距離置かれるヤツだわ。 セッションとしては大変面白いものの、なんたってエンディングは変態白濁ENDである(興味のある方はどうぞ見てみてください。にくきゅうはSAN値保証しません)。 私は静かに、Sさんが「一緒にセッションしようよ!」と笑顔を向けてくれる未来が、ほぼほぼゼロだと確信したのだった。 (それどころか私に今後挨拶してくれるかどうか) 学校関連の望みが断たれ、致し方なく家でぼへえーとルルブを読んでいると、旦那に声をかけられた。 「昨日の?」 旦那はここ一週間、とりつかれたようにクトゥルフするお嫁を見守る社畜である。夜十一時にヘトヘトで帰ってきたら「セッション中なのでそっとしてください。ごはんは冷蔵庫です」と玄関に貼ってあったお嫁の冷徹なメモを受け入れ、忍者の如く物事をたてずに食事を寂しく一人で行い、寂しく暗い風呂に入り無音で就寝する寛大さを持ちあわせている。 一度これも勧誘して失敗したなぁと思いだす。ニコニコ動画「ノリで火星に来た探索者たちのクトゥルフ」を見せてハマらせようとしたところ、動画がまだ完結しておらず、更新は数か月単位であると知って絶望し「もうしんない! やんない!」となったのであった。ああ……Sさん……今頃、観てるかな……。 自失した瞳を漂わせる自身の嫁を見て、よほど可哀想に思ったのだろう、彼はこう言った。 「楽しそうだったね」 「うん! 楽しかった!」 「良かったね」 「良かった!」 「また出来ると良いね」 「うん!」 クトゥルフTRPGは楽しい。そう、楽しいのだ。 オフラインの周りの人はあまり気づいていないけど、楽しいのだ。 誰かいつか、自分の周りの人でそのことに気がつけば。あっという間だ。ハマる人はハマるのだ。 そしていつか、身の回りで少し流行るかもしれない。もっと利便性が高い、たとえばスマホアプリのオンセンSNSみたいなのが出てきたら……チュートリアルでシナリオが豊富だったら……簡易的でよい、AIを使ったKPが生まれたら。 桃鉄にはなれなくとも、パズドラやツムツムのようにはなれなくとも、いつか、誰か、親しい人と、オフラインセッションをするのだ。そういう未来はきっと、エントロピーの中、いずれかの世界線にはある。 まだ誰も気づいていないだけで、クトゥルフTRPGは、楽しいのだから。
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