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😶 壊胎 後日譚(ネタバレあり) (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)こら。淡々とした声は左隣から。 振り向くよりも先に、こめかみに冷たいものを当てられる方が早かった。 なんともいえない重量のそれは、そのまま桃の手に渡る。自分がいつも飲んでいる、紅茶のペットボトルだ。 お礼の言葉は隣からの「駐車場混んでるから」の一言に遮られてしまった。 隣へ向けていた視線を改めて目の前に。正面、ガラスの向こうから外を見ると、そこはいつの間にか人と車で溢れかえっていた。 大型ショッピングモールの駐車場なだけあって、いくらでもスペースがあるなぁと思いながら人待ちをしていたのはつい先程だったはずなのに、と首を傾げる。 しかし、よくよく考えると隣の人が戻ってきたタイミングだってわかっていない。時間が狂っていたのは、おそらく周囲じゃなくて自分の方。 とにかく急いでこの場から離れるべく、桃はハンドルに手を伸ばす。 慌てたその様子をずっと見ていたらしい隣の人、自分が誰よりも尊敬するその人は、可笑しそうな笑い声を遠慮なく零してきた。 最近、やたらと子ども、中でも乳幼児ばかりを意識していることには気が付いている。 私物の手帳に挟まれている出所の不明な写真とメモ、それが自身の行動の原因だということも。 どちらも、数週間前に自分の前に現れたものだ。 写真には母娘と思われる姿が、メモには覚えのない名前らしき文字列があった。 そこに映る人達も、まるで自分がやるように雑に千切られた紙に書かれた名前にも、心当たりはない。 なのに、客観的に見れば怪しいはずのソレを、桃は捨て置けずに持ち歩いている。 もう何度も何度も目で指で追ってしまって、名前も顔も覚えていても関係ない。どうにも陳腐な言い方しか浮かばないけれど、ソレはある種の『お守り』になっていた。 不思議だけれど、不快ではない。恐怖ではない。むしろ逆に、なんだか温かいのだ。 物言わぬ薄っぺらなソレに、言葉をかけた回数はどの程度になっただろう。 一体どこの誰なのか。自分との関係は何なのか。まずは浮かぶ単純な疑問から。 きっとここに書かれた名前はあなた達親子のものじゃないでしょう。わからないけど。ただの勘だけど。 そんな根拠のない推理まで。 音にしたのも、しなかったものも合わせたら、おそらく両手の指では足りない。 そして、得られた答えの数は未だにゼロのままだ。 「似ていた?」 唐突にと問われたのは、車を走らせてから暫くした頃だった。 赤色の信号を見つめながらいいえーと呑気な声を返したところで、だろうね、とこれまた淡々とした声が届く。 助手席に座るその人にだけは、心当たりのないメモと写真のことを話していた。手に入れた経緯も、自身の中に抱くな気持も全て、だ。 盛大にばら撒いてしまった荷物の中から出てきたソレに食いつかれた、というのがきっかけだったけれど、いずれは全て話していただろうと思う。 ひとりで溜め込むことも、抱いている何かを隠すのも向いていない自分と、一番多く時間を共有しているのがこの人なのだ。 「別に、探してるわけじゃないんですよー」 己の言葉に嘘は無い。一向に得られない答えが欲しくないわけではないけれど、今はその時じゃないのだろう。 時が来たら──例えば、今の道を突き進んで誰の耳にも届くような存在になれたら。 根拠のない話だった。それでも、確証なんてなくとも、それが一番の近道なのだと、自分の中の何かが告げてくるのだ。 「私は、私が選んだこの道を精一杯走り抜けるだけなんで!」 答えを求めるのではなく探すのではなく。自分のやるべきことをやっていれば、きっといつか。 そう笑う桃の言葉を、隣の人は否定も肯定もしない。応援もないが、笑い飛ばすこともしない。 明日からもいつも通り厳しく指導してくれるだけだ。そんな人だからこそ、桃はこの人について行くと決めている。 この人のことも紹介させてね。写真の誰か、紙に書かれた名を持つ誰かに、そう呼びかけながらアクセルを踏み込んだ。 ─────────────── 壊胎 後日譚でした。 道を違えて、全て覚えていない子の後日譚なのでどう書こうか迷ったのですが、このくらいの『予感』はあればいいなと思いまして。 本人として覚えている『選んだ』記憶は1度だけです。 自然と思い出すような奇跡は無い気がしているので(そんな生易しい処置じゃないと思っている)、再会しても初めましてなんだろうとは思いますが また逢えたらそこから始まるものはある。と、いいなぁ。 セッションの感想は本当「楽しかった」ばかりになってしまうのですが、楽しくなりすぎて(キックのクリティカル出した後とか)冷静な思考を忘れたことについては何度でも謝りたい。 冷たい海、ということは念頭にあったのに殺したらマズイの方を忘れる体たらく…見学席のパパ応援は今思い出しても申し訳なさと面白さに挟まれます。 なんであんなにキックばかりクリティカルしたんだろう……初手キックがクリティカルになった時からこの運命は始まっていたのでしょう。(なおファンブル) 探索については図からわかるヒント、というものを随分取りこぼして、行ったり来たりを繰り返した珍道中だったなぁ…と。 視覚情報からの情報収集、今後はもっと頑張りたいです。 あとは、本当に余談というか、私の中にあるだけのふんわりした設定の話を少し。 桃の師匠の性別は決めて居ませんでしたが、イメージしていた雰囲気は小沢さんに近いものがあり、エンディングのやりとりを見て少し驚いてました。 もしあの時、彼女がついていく選択をしたら小沢さんに師匠の面影を見て懐かしむのかな……みたいなifを考えたり。 まあ夢に向かって一直線で、その夢が両親を割と力技で説得してまで目指したもので、桃の性格は“頑固”なので。 彼女の性格をその言葉で表した時点で、道は決まっていたんだろうなと思います。 改めまして、KP Kadenaさん、PLないあさん、ありがとうございました! 後日譚、書きたいのがあと3本……頑張ろう
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