😶 部屋(場面)4つも作っておけば自由度高いシナリオだよね、と言うお話 「自由度高いシナリオ作るの難しいよ」「PCたちがシティでどこに向かうかわからず詰んだよ」というお話を聞いて。 以下はPL・GMやってる時の両方の体感とか受け売りではありますが、ソードワールドなどのファンタジー系TRPGのシナリオ作成に関する覚書です。 ●自由度を感じてもらえるシナリオ PL側が感じる「ゲームの自由度」は、必ずしも 「実際にGMが用意しているテキスト数」「何処にでも行ける広大なマップ」と比例はしないと思います。 GMによる物語の誘導がまったくない完全なオープンワールドは、 「100個の部屋とイベントを用意したゴール不明の超巨大ダンジョン」のようなものです。 道選びの相談に時間を食い、イベント遭遇による感動は薄れ、探索は作業化するでしょう。 自由度の高いシナリオの基本は、『部屋数4つのダンジョンシナリオ』で作れます。 【小さな廃屋での宝探しシナリオの例】 ・部屋A「裸足の足跡だらけの玄関」 → PLは敵を想像し、自然と警戒を高め準備を整える ・部屋B「罠の宝箱が置かれた書斎」 → ラッキーな追加報酬、かつての屋敷の主を想像させる ・部屋C「カギを持ったゴブリンのいる2階部屋」 → ザコ戦、『戦利品の鍵』を見たPCは鍵穴を探す ・部屋D「頑丈なカギのかかった地下室で宝を守るゴーレム」 → PCが進みやすい道を選んだ場合は最後に出会う強敵 たった4つの部屋(場面)しかありませんし、GM視点ではPCたちの辿る道順もほぼ予想できるでしょうが、PLたちは未探索の部屋から漏れてくる音や、宝箱の中身に想像を膨らませ、「音を立ててゴブリンをおびき出そう」「地下室のカギを無理やり開けてみよう」とか、自分たちで自由選択できます。 GMが少し凝るなら、ここに部屋や裏口を追加したり、廃屋までの道中探索を付け加えてゆきます。 最後で手に入る宝や、PCたちがそれを手に入れなくてはいけないストーリー動機のアレンジで、シナリオ全体のムードも調整可能です。 (「お金の為」「治療薬のレシピが3日以内に必要な急ぎの依頼」「蛮族も廃屋の宝を狙っている」) そして、この4つのハコは、そのまま『シティシナリオ』にも流用できます。 【行方不明の魔術師を捜索するシティシナリオの例】 ・場面A「依頼人に教えられた魔術師の自宅には、麻薬と大量の靴跡が残されていた」 → PLは敵を想像し、警戒を高める ・場面B「学院の研究室で調査。彼は薬品作りの研究をしていた」 → 事件の背景を想像させる ・場面C「麻薬の売人を探して戦闘で取り押さえる」 → ザコ戦、PCは売人のボスの居場所を聞き出す ・場面D「魔術師を捕らえ働かせている犯罪組織アジト」 → PCが手がかりを追った場合、最後に出会う強敵 こちらも、4つのハコでできているため、シティシナリオでもGMは道順予想が簡単です。 PCたちは解放された環境に置かれつつも、一番最初に持ってる情報が「A:魔術師の自宅」だけならそこに向かいます。 完全にオープンな環境ですが、PCたちは向かうべき場所や方針を打ち立てられるでしょう。 あるいは「麻薬についてギルドや警邏に聞き込みしよう」と、自然と場面を増やす自由なアイデアと行動を取ってくれると思います。道は少なくても不自由さは、それほど感じないはずです。 真に自由度の無い冒険というのは、超英雄クラスの冒険者が迷い猫を探しの判定に「出目6以上」を要求されたり、 「心を読んで情報収集スキップするの禁止」「魔剣の迷宮だからテレポできないよ」と、 駆け出しレベル帯と同じ不便さを味わう事です。 4つのハコをしっかり作って、PCたちが好きな順番でハコにアクセスできるようにするのが、「自由っぽさ」だと思います。 シナリオを作成する時、イベント数と分かれ道の本数を減らす引き算を恐れないでください。 ●道を複数用意する&手がかりが途絶えてしまっても詰ませない シナリオ上必ず通る道に、判定に失敗すると「詰む」ポイントを設置するのは避けましょう。 「カギの破損」だとか「再挑戦不可能な怪物の弱点に関する知識判定」などの事です。 こうした、「詰み」ポイントは別の道を用意したり、手間やお金で解決を図れるようにするといいかもしれません 例えば、鍵開けで「詰み」の発生があらかじめ予想できるなら、 GMは道中の宝箱に《魔法の爆弾(売値:3000G)》を用意できます。 使うのは勿体ないでしょうが、鍵を壊してしまったPCたちは泣く泣くこれで道を切り拓けます。 これが知識判定の「詰み」の場合は、高級爆弾を「魔術師ギルドの書庫で有料の調査」と、置き換えれます。 ●シナリオが止まった時 シティシナリオ中に向かう場所が分からず「詰み」そうになったり、 推理で状況が硬直してしまった時にはGMからNPCを出すなどして、押しの展開をいれましょう。 PCたちが情報を知る麻薬の売人をうっかり殺して手がかりが途絶えてしまった場合、 麻薬組織と敵対している盗賊ギルドの情報員NPCが接触を図ってきて、情報交換を持ちかけるかもしれません。 あるいは「キミたちは成果を得られず宿に帰ることになったよ」と時間を進め、 翌日、冒険者ギルドに新たな被害者の情報が飛び込んで来ることもあります。 なにかしら、判定に失敗したPCたちにペナルティが発生しつつも、物語が進むワケです。 「GMの情報の出し方が不親切なせいで迷わせちゃったな」と思った場合は、ペナルティは少な目にしましょう。 (全くないペナルティが無い場合は、「じゃあPCが頑張らなくても良かったじゃん」となるので、さじ加減が難しいのですが……) ●高レベル環境と4部屋シナリオ どんなレベル帯になっても、4部屋シナリオは有用です。 もし、高レベルPCたちが「地下室を魔法で感知して【トンネル】を開けてボス部屋直行する」「【チャーム】で魅了してボスの居場所を聞き出す」ような大きくショートカットするような選択肢を取ったとしても、固定の4つの部屋(場面)さえしっかり用意できていれば、シナリオは大きく崩壊しないはずです。GMは「してやられたよ」という顔をしながら、最後のハコのボス戦を始めましょう。 ソードワールドの高レベルは戦闘に時間掛かりますし、処理で頭も疲れます。 道中は楽勝・ショートカットされてもボスさえ強敵なら、満足感ある4~12時間分のテキスト卓になると思います。 ●最後に、誘導のコツ ダンジョンでもシティでも、道選びの判断材料を置くとセッションがスムーズに進みます。 GM「右の扉の部屋からは賑やかな音楽と複数人が騒ぐ声が聞こえる。左の部屋内には気配は感じられないね」 PC「怪物の宴会かも知れないし、先に右の部屋を調べておこうか」 山の分かれ道で、上からパラパラ小石が振ってくる危なそうな道があったら避けるはずです。 砂漠でのワイルダネスなら、砂塵の向こうに塔のようなシルエットが見えれば、まずはそこを目指すでしょう。 新たに訪れた貧民街で美味しそうなにおいが漂ってきたら、正体を確かめたくなります。 欲望や興味を煽る道標は、PCのロールを促しセッション時間の最適化に役立つと思います。 (※10/29 いくつかの誤字を修正しました)
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