マーズ犬さんが書いた日記の一覧を閲覧できます。
😶 樹葬 再掲 木か海が良い 母はそう言った。 テレビを見ていて、内容が葬儀の話になったのだろう 私はなんとなしに了承した と言うのも、母に葬儀の話をされるのは初めてに思えてびっくりしてしまったからだ 「絶対に木か海に撒いてね、〇〇家の墓だけは絶対嫌だから」 海なら沖まで行ってねと付け加えた 母は父家の血筋ではなく、嫁入りして今の苗字になった 元々〇〇家に愛着があるわけでもないし、父方の爺さんと婆さんとは仲がいいとは言えない。 そういうものだろう。 「木...ってあるの？」 あると答えた母は木に埋める葬儀とやらを教えてくれた なんでも骨の上に木を植える物で、30年ほどたったら切って良い物だと 墓参りが木の下に行く事になるのか、などと言ったら 「墓参りはしなくていいよ」 墓参りは好きじゃなく、しなくて良いものだから海か木にしたのだろう なるほど、母らしい。なんとなく納得した 植える木だったら桜なんてどうだろうと思った 桜の木の下には死体が埋まっていると言う 母の骨ならそれは綺麗なものが咲くだろう そこまで考えて、初めて母が死ぬのだと聞こえたような気がした 私よりも先に死ぬのだろう。当たり前のことだ しかし母が先立って行く時の悲しみを思えば、あまり良い返事が返せそうになかった あーだの、うーだの返事を返せば 「...先に死んだら親不孝だからね」 「もし先に死んだら、墓に入れてやんないよ」 別に困りはしないな、なんて思った 「いいよ」 「...じゃああたしがずっと抱えるけどいいんだね」 「いいよ」 「骨も齧ってやる」 「いいよ」 墓に入れてやらないなどと言われてもまあ、どうとも思わなかったが。 ずっと抱えて、齧ってやると言われたら、なぜか嬉しく思えた
9
9