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😶 とある探索者の少女の履歴・その2 (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)あの忌々しき一件から半年後。 少女自身もあの一件以来、どこかおかしくなってしまった。あの時の三人の名前をつけた指人形……それらがまるで、生きているかのように話すのだ。 そんな彼女の主治医である精神科医のカウンセラーと、姉が信頼を置いている旧友が、今回のシナリオの探索者らであった。 少女は姉が派遣したエージェントの目も簡単に潜り抜け、また勝手に事件に首を突っ込んだ。 望んだのは『死者蘇生』……。 少女はその手の魔術を、魔道書を探した。そしてついに確かな情報にありついたのだ。 魔道書『ネクロノミコン』。その捜索、奪還……その依頼を受けた一行は、目星をつけた場所へ調査に赴く。 そして、少女らは邂逅する。 惨たらしき運命に翻弄され、神々の祝福という名の呪いを受けた、哀しき少女に。 少女の名はソニア。 ソニアは、あの時の……少女の因縁の魔術師と、姿見が似ていたという。 そのためか、最初彼女は少女に厳しい態度を取り続ける。 しかし、ソニアは姉の旧友とカウンセラーに絆され、徐々に心を開いてゆく。 そして知ったのは、彼女がおそらく何者かによってこの姿にされたのだということ。 その外道こそがおそらく、この事件の根幹に迫る人物であろうことを。 憤りと少女に対する憐憫を抱いた探索者らは、その人物の探索をはじめる。 少女も、この潔白なる少女を穢した輩を許すことなどできなかった。そして、少女を孤独にさせることもまた……できなかった。 彼女は少女に語りかける。得意のダジャレを交えて。 しかしソニアは、渾身のダジャレでもどこかぎこちない笑みしか浮かべなかった。 だから少女はソニアと契約したのだ。 『笑顔の奪還依頼』を。 外道なる輩から少女の真の姿を取り戻し、笑顔を奪還せしめよう、と。 このとき、一人の少女と独りの少女は、間違いなく友人だった。かけがえのない仲間となっていた。 この事件を全て終わらせると……誰一人として、欠けることなく……誰一人として不幸になることなく、このシナリオの幕が閉じることを……誰よりも強く、願った。 この少女を救うため、笑顔を取り戻すために……少女らは東京を奔走した。 しかし、運命は非情にも……手負いの獲物を無慈悲に追い詰める猟犬のごとく、彼らを追い立てる。 その呪いは、全ての条件が揃った深き夜、醜悪な真なる姿を顕す。 少女の意思に関係なく、神々は彼女を決戦の地へと赴かせる。 ソニアを追う探索者一行。地獄絵図と化した彼の戦場にて、運命に翻弄された少女らは、災禍に食われた少女と相対す。 伸ばす手を阻む者共を果敢に蹴散らし、少女の元にたどり着く彼ら……しかし、待ち受けていたのは、限りなく深い絶望だった。 一人の少女を救いたいと願う独りの男から提示された、唯一ソニアを救う方法は…… ……殺めること、であった。 引導を渡す拳銃を託された探索者……姉の旧友は、抗った。 呪いにも、神々にも、運命すらも否定して。 拳銃を捨て、少女を強く抱擁した。 時間がなかった。 悪辣なるかの邪神どもは、数秒もしないうちに目覚め、顕現せしめうる。 ……おそらく。 いままでの……友を喪う孤独を味わったことのない少女……〇〇〇ならば……そのまま何もしなかったのではないだろうか。 〇〇〇は……二度と、友を喪いたくなかった。 二度と、目の前で、殺されたくなかった。 あの時のように、何も、できない……わけでは、ない。 目の前には、『死』そのものが、転がっていた。 少女を抱擁する彼をおしのけ、ソレの引き金を引くまでに時間はかからなかった。 近い……けれど、どこか遠い音が、探索者らの鼓膜を揺らす。 深い……あまりにも深い夜の夜明け前に相応しい、水面のような静寂が訪れた。 罪なき少女の心臓を撃ち抜いた〇〇〇は、その場に立ち尽くす。 そのあと、どうなったかはよく覚えていない。 崩落は探索者らをその場にとどむることを許さなかったらしい。心ここに在らずといった様子の〇〇〇を連れて出たのは、他でもない姉の旧友だったそうだ。 意識がはっきりとしたのは、おそらく自室にて一眠りしたあと。 ふと両手から血が滲んでいるのに気づき、爪を噛みながら、一本一本、こわばった指を外していく。 右手には、拳銃が握られていた。 左手には……ソニアとの、契約書が、握られていた。 血が滲んで、ぐしゃぐしゃになってしまっている。 これではもう読めたものではない。 だけど…… ……そこに書いてあった内容は覚えている。 そして、〇〇〇は、ソニアの最期の瞬間の表情を思い出す。 彼女は最期、いままでで一番とびきりの笑顔を〇〇〇に見せた。 少女の笑顔に、〇〇〇は呪われた。 以来彼女は、自分のことを『人殺し』と呼ぶ。 彼女が求めているのは、救いでも同情でも憐憫でもない。 自分が自分を赦すことができるほどの……断罪だ。
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