奈落の魔域攻略の依頼から帰ったアタシを待っていたのは、ギルドの仲間からの冷たい目だった。 「冒険者殺し」とあだ名された。 「冒険者殺し」とは、奈落の魔域など死体の回収が困難な場所で同行する冒険者を殺害し金品を奪う冒険者の事だ。 アタシは何も覚えていなかった。 ただ否定することしかできなかったが、確証もなかった。 結局、アタシ一人でベテランも含めた3人を殺害するのは不可能だ。というギルドマスターの鶴の一声で事は収まったが、仲間からの態度は変わらなかった。 それからアタシは誰ともパーティを組む気になれなかった。組んでくれるというやつも居なかったが。 薪割りの依頼、お使いの依頼…およそ冒険者の依頼とは言えないような依頼を受けては食いつないでいた。 そして今日もギルドで酒を飲んでいると、エミリーがアタシを呼んだ。 …また詰まらない依頼か… そんなことを思いながらも、アタシは立ち上がってエミリーのところへ向かう。 しかし、詰まらない依頼ではなかった。 アタシに新人3人の面倒を見ろだって? アタシなんかが新人の面倒を見られるわけがない…… だってアタシは、仲間を3人も殺した……冒険者殺しなのに…… 勿論アタシが手をかけた訳じゃない。でも、手には仲間の冒険者証があった。 そして、そのことを全く覚えていない自分自身が怖かった。 けれども、この子たちならアタシの事を知らない。 新人の面倒を見ろと言われて、少しだけ……嬉しかった。 研修をしっかり終わらせて、この子たちを一人前の冒険者にして見せる……そう思っていた矢先に、ギルドに呼び出されて依頼だと言われた。 まだ研修中なのに! アタシは怖かった。この子たちが死んでしまうんじゃないかということが。 けれどもこの子たちは臆せず依頼を受けた。 アタシがこの子たちを引っ張っていかないと…… そう自分を奮い立たせて、蛮族退治に向かった。 しかし、依頼内容と食い違いのある蛮族の出現。 当初、フッドの群れの退治ということで難なく依頼を達成できたと思っていたところ、フッドの群れの長と思われるボルグハイランダーが現れたのだ。 そこで、カーツが痛手を負った。 アタシは自分の身が切り裂かれたような衝撃を覚えた。けれど、ミハザがカーツを治してくれた。 仲間がいる……冒険者になって間もないこの子たちにアタシの心は勇気づけられた。 この子たちと、成長していきたい。 そう思える”出会い”だった……
コメント欄:(最大1000文字)
※投稿するにはこのコミュニティに参加する必要があります。
スレッド一覧に戻る
まだレスポンスがありません。