いくつかの冒険を経験した…そろそろ遠方の依頼が来る頃だろう…なんて話をしていた矢先、ラージャハ帝国まで届け物の依頼を仰せつかった。 装備や水、食料はギルドが用意してくれる。それを運ぶラクダも。 砂漠越えは大変だ……けど、教本での予習はバッチリだ。 昼夜の気温差や、水の飲む頻度、そしてラクダの重要性、危険生物などは把握している……砂漠を越える自信はあった。 けど、そんなものは何の役にも立たなかった。 まさか出発してそうそうラクダを見失うなんて…… 流砂に巻き込まれないように必死で脱出している隙に、砂漠越えの装備、食料、水を一式摘んだラクダ3頭があっという間に砂漠の中に消えてしまった…… 流砂に気を取られたアタシはすでに方向感覚を失っていた。帰ろうにも方向は分からない… アモルの記憶を頼りになんとかオアシスまでたどり着いた。 これで何とか少しは生き延びられるだろう。 と、思ったら先客がいるみたいだ。 蛮族かと思ったら、どうやら人族らしい。 え?ラージャハ帝国の第三皇子?ライジャ・アザロス?聞いたことないよそんなやつ。 で、その第三皇子様もどうやら砂漠で遭難している最中らしい。 オアシスの遺跡を探索して何か役に立ちそうな物を探してこいだって?まぁ4,000Gも貰えるなら……どっちにしろ、ここに居たって助けはそうそう来ないだろうし、行ってみるよりほかなかった。 遺跡の奥に行くと、蛮族がいた。 車輪が8個付いた足を持つ銃を使ってくる蛮族だ。魔動機に似ていた。 車輪での動きに翻弄され、なかなか攻撃が当たらない…苛立ちを覚えた。 剣を持った右手…蛮族に向かって振り下ろしている最中…明らかに見当外れの方向に切っていたはず…心の中で しまった! と叫んだ。 けど、一瞬……意識が遠のいた。 勿論すぐに気が付く。でも体は動かない…自分の意思では。 振りぬくつもりで振り下ろしている剣を途中で止めるのは難しい。でもピタリと止まった。自分の意思では…ない。何かに止められた訳でもない。一瞬の時間の中で止まった剣はゆっくりと蛮族の方へ照準をあわせると、剣を持った右手から電撃が放たれていた。 一瞬の間の出来事だった…アタシは攻撃を外した…と思っていた。 魔法…だと思う何かがアタシの腕から出ていった。 仲間のセーイも巻き込んで。 謝ることも出来なかった……自分でも何がなんだかわからなかったからだ。 そもそも自分が撃ったという認識もなかった。ただそう見えた…というだけだったのだから。 そのことに動揺したのか、思うように剣も振れなくなっていた。蛮族に全く当たらない。先輩失格だ… けれど、後ろに控えてたはずのアモルが隣に来てこう言った。 『いやぁ、これが前線かぁ……こわいねぇ。敵の攻撃が当たったら死んじゃうだろうね』 『だから『俺を助けるために頑張って』セレナちゃん』 アタシの動揺が伝わってたのだろう。自分の身を挺してわざわざ蛮族との乱戦のさなかにアイツはやってきてわざわざこう言った。ご丁寧に使役しているゴーレムの魔法を解除してまで。 この期待に応えない訳にはいかなかった。 ‐‐‐‐‐蛮族を倒し終わって辺りをみると、どうやら魔動機文明時代の地下ドックか何かだったのだろう。魔動砂上船が停泊しているようだった。 整備された状態だった。アモルの話では魔動砂上船から降りて来たらしいのでさっきの蛮族が直していたのかもしれない。 セーイが魔動機文明語を読めたので、何とか舩を浮上させることができた。 浮上した先はオアシスの隣……待っていたライジャはどうやらこれを運転できるらしかったので運転をお願いし、ラージャハ帝国まであっという間にたどり着き依頼は完了した。 その後、ライジャの運転でハーヴェス側の砂漠の入り口まで送ってもらった。その魔動砂上船で。 魔動砂上船は預かる…と言われた。別に必要ないからお願いした。確かに高価なものかもしれないけど、アタシ達には必要ないからね。 けれど代わりにアタシ達の名前を憶えておいてくれるらしい。ラージャハ帝国の第三皇子に名前を憶えてもらえるとは光栄だ。 ギルドに戻ったら、エミリーに散々疑われた。 それはそうだろう。片道3日はかかると思ってた砂漠を2-3日で往復して帰ってきたのだから。 しかし、ちゃんとラージャハ帝国の受領印は貰ってる。 これからも、まだまだ冒険者としてのアタシの人生は続いていく。 あれ以来、意識を失っていない…けれど、またいつか起こるんじゃないか…そんな不安が付きまとっていた。
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