EP4招かれざる客

mist
mistスレッドエピソード[web全体で公開] 押されたいいね! 3
登録日:2023/06/16 01:07最終更新日:2023/06/16 01:07

「鉄槍まみれ亭」に来て一か月。

こっちの冒険者達も皆良い人たちばかりで、他所からきたアタシ達を温かく迎え入れてくれた。

こっちの冒険者達ともパーティを組んで依頼に出ることも何度かあった。

こっちでは都度都度違う冒険者達とパーティをその場で組んで出ていく…という格好が多い。

「若気の至り亭」のように1つの班(パーティ)で何度かの依頼を行う…という事は中々無いようだ。

今日は久しぶりに、若気の至り亭から一緒に来ていたアモル、セーイ、レンベルクと近況を話し合っていたところだ。

しかし、どこかからアタシの名前を呼んでいる声が聞こえる…

振り向くと、ラージャハ帝国の第三皇子…ライジャがいる。なぜここに…!?

聞けば、アタシ達を追ってここまでやってきたらしい。依頼があるそうだ。本人が言っていたが確かに”義理堅い男”…なのだろう。

依頼というのが、なんでも”曜変天目ディスコ”という名前からは想像もつかない施設の完成祝賀披露宴…その警備をして欲しいという事だった。

各国の要人を招いての祝賀披露宴という事で、警備は万全にしないといけないらしい。通常の警備とは別に参列者に隠れて陰ながらの警護…という事だった。

なるほど。確かに冒険者向きだ。

ラージャハ帝国の専用車両にのり、魔動列車でラージャハ帝国へと向かう。

到着するなり”曜変天目ディスコ”へと案内される。瑠璃色の光が落ちていて、とても幻想的な空間だ。思わずうっとりしてしまう。

当日はダンスを踊らなければならないらしい…だが、アタシを始めアモルもセーイもダンスの経験はない。レンベルクだけが経験者だ。

ダンスを教えてくれる先生…なんとも言えない先生だ。男なのか女なのかよくわからない…しかし、見た目は間違いなく男だ。

ダンスは教えられた通り、何とか踊ることが出来た。セーイは先生にみっちりと指導されている…セーイにしては珍しい。しかし、真面目に取り組んでいるのはセーイだからだろう。

そして、衣装…なん十着…何百着…とある中から、自分に似合いそうなドレスを見つけた。赤いドレスだ。
一見して貴族か何かだと見間違えられるようなほどに、自分を着飾らねばならない…どうやらうまくいったようだ。

完成祝賀披露宴当日。

ライジャの挨拶から始まる…普段のアイツからは想像もつかない丁寧なしゃべり方だ。挨拶が終わると、音楽が流れ皆が踊りだす。

セーイとレンベルクはふらっとどこかに行ってしまった…残されたアタシはアモルと踊る…。アモルの踊りは実に見事だった。アタシの出来も悪くなかったと思うが、アモルの踊りには敵わない。
悔しさを表に出したつもりはみじんもないのだが、気を遣わせてしまったのかなんなのか、アモルが首飾りをアタシにつけてくれた。
プレゼントだと言う……またかッ!

だが……ドレスを着ているからか、水晶の首飾りがとてもよく似合っているように感じる。少し……嬉しい。

その後戻ってきたセーイやレンベルク達とも一緒に踊った。

ダンスの息が合ったと感じたのはセーイだ。おそらくセーイが呼吸を合わせてくれたのだろうか。アタシも気持ちよく踊れた気がする。

そしてひとしきりダンスが終わると、セーイがふらっとライジャの近くへと移動している。何やら話をしているようだ。

かと思えば、隣にいた人をボコボコに殴っている…ただ事ではなさそうだ。

事態を重く見たライジャが、笛を吹く。警備への合図なのだろう。会場内があわただしく動き出す。アタシもレンベルクもアモルもセーイの加勢に入った。

敵は魔動機術を扱う暗殺者のようだ。

煙幕を駆使し、こちらを翻弄してくる。

だが、セーイの拳が見事に決まり暗殺者を捕縛することができた。
やはりセーイの力はすごい…見習わないといけないな。

暗殺者を捉えると、どこかに隠れていたライジャが現れ警備の者たちを呼ぶと、警備の者たちが暗殺者を連行していく。

改めてライジャから礼を言われた。今回の事を歌にしてアタシ達の名前を語り継ぐそうだ。

…やめて欲しい!と、アモルを始め、セーイも遠慮した。
……しかし、結果歌は完成しラージャハ帝国で広まった後にキングスフォールまで広まってきてしまった。
鉄槍まみれ亭に戻ってからしばらくたったころ、その歌を耳に挟んでアタシは頭を抱えた……
いいね! いいね!  3

コメントを書く

※投稿するにはこのコミュニティに参加する必要があります。

スレッド一覧に戻る

コメント一覧

まだレスポンスがありません。