【ロストロイヤル】白き指、血で濡らさば:その5【TRPGリプレイ】
注意: 当ページの内容の転載、複製は著作者の許可がない限り行わないでください。
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本作は、「うらべ壱鉄、冒険企画局、新紀元社」が権利を有する「ロストロイヤル」の二次創作物です。
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本作は、「うらべ壱鉄、冒険企画局、新紀元社」が権利を有する「ロストロイヤル」の二次創作物です。
ロンズデール領にて領主ウィルフレッドを処刑しないという選択肢を選んだ一行。屋敷を発って、半日ほどが過ぎた頃だろうか。森に紛れて歩を進める一行の視界に、不穏なるモノが映る。
それは、一見すれば美しい、白い花々。されど虫一匹寄り付かず、枯れることのない、白亜の花。
ボス戦……ってやつなのかな?と警戒を顕にする一同。
「悪い子が混ざっていますね」
「……くるみたいっすね。王子、俺たちから離れないでください」
王子が頷き応えるのと同時に。がしゃり、がしゃりと、重々しい鎧の足音が響く。
「生き延びたようだな、ヒヨッ子ども。そうでなくてはならん。ああ、そうでなくては詰まらん」
3mはあろうかという体躯。鋼鉄の鎧に身を包んだその男は、『鬼教官の騎士』トリアール。
「……『円卓の騎士』としての腕、鈍ってはおるまいな?」
人魚族であり、アヴァロン王国において多くの騎士の指南役を務めてきた古株の騎士だ。
だが。鎧の内側から感じられる気配は、異様なものだった。 アヴァロン王国を落とした魔物たち、魔人たち。それと、同質であると言っていい。
かつての同士が敵と化し襲ってくるという展開に動揺を隠せない騎士たち。だがこれこそロストロイヤルの過酷な側面、世界が騎士と王子に課す試練なのだ。
「我は『鬼教官の魔人』トリアール。騎士道に準じて降伏勧告ばかりはしてやろうが、『円卓の騎士』よ。此処で膝を折ってはくれるなよ。極上の死合いを前にしては、かの魔王の命令通りにエゼク王子殿下を殺めるだけでは、気が済みそうにないのでな……!!」
動揺で涙目になって騎士たちの後ろに隠れる王子(立ち絵つき)。かわいいぜ……とPLたちは暖かく見守っていた。
しかしなお騎士たちの戦意は揺るがず。巌のごとく立ちふさがるトリアールに対して名乗りをあげる。
「『緋々茜の騎士』、リリ・ノーブル。いざ参りますわ」
「『葬列の騎士』ノエルじゃ。残念じゃが、お主が満足する結果にはならんじゃろう!」
「我が名は『譲り葉の騎士』トリンシック。師から受け継いだ一刀、その身に刻むがいい」
武者震いと共に、がしゃりとトリアールの鎧が揺れる。
「滾る、おお、滾るぞ……久しく味わえなんだ戦場へ飛び込む高揚……!来れ、兵ども。戦の時間ぞ!!」
トリアールが片腕を振るうと同時に、白い花々が蠢き、妖魔へと姿を変えてゆく。
無数の小鬼たちで構成された魔群は、たちまちのうちに騎士たちを包囲する。血路を開き、突破せねば、明日はない。
戦いの火蓋が、切って落とされようとしていた。
◆◆◆
未プレイの読者のために軽くロストロイヤルの戦闘の特色を解説しておこう。
騎士たちは魔族によって構成される「魔群」と、その指揮官である「魔人」を相手に戦うこととなる。
勝利条件はシンプルで「魔群」の一時HPである「包囲」を0にした後、本体のHPである「血路」を0にすること。強力な「魔将」による妨害が途中で入るので、そちらも倒しておくと戦闘に有利になる。
PLは「魔群」、「魔将」のどちらを攻撃するかを的確に判断することが求められる。
◆◆◆
小鬼と魔狼(ダイアウルフ)により構成される一群を率いるトリアール。血路判定を制し、第1ラウンドは騎士たちにとっては数値的に有利な展開に。
まだシステムに慣れない面もあるが着々と包囲を切り崩す3人と王子。ノエルの魔力によって生じた幻影が妖魔たちを斬る。
「あれ、これ問題なく行けるんじゃね……?」
と筆者が思った直後それは起こった。
「ヒヨッ子。彼奴から受けたという薫陶、剣戟で示してもらおうか!」
王子への攻撃をノエルが「かばう」でブロックした後、前衛でDPSをたんまり稼いでいたトリンシックへ飛んでくるタゲ。
「いいだろう、とくとその身に刻むがいい!」
ノエルが受けたダメージは判定が拮抗したから3で済んだんだ。ならばこちらも行けるはず。逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ。
そして判定へ。トリンシックの達成値がトリアールを上回り返り討ちに……できるはずだった。
「……雄オオオオォォォッ!!!!」
刃がぶつかり合い、トリンシックが速さで勝るかと思われたときトリアールが大気を揺るがす咆哮をあげた。
そう、振り直しである。
魔将は自分が放った攻撃が失敗に終わったとき、コストである【狂気】が残っている限り何度でも振りなおせるのだ。ずるい。
最大【命数】が10のゲームなのに12点ダメージというすごい値が出て走馬灯が見えるトリンシック。このゲームにおけるPCのロスト率がやばい理由が垣間見えた。
「フハハッ……まだまだみっちりと稽古をつけてやらねばならぬようだなあ!」
トリアールの猛攻を耐え忍び、蔦魔術によってリリが包囲を再び崩す。
「では、残ったあなた達は養分にして差し上げますわ」
言葉ともに魔群の足元を蔓が覆う。波乱の第1ラウンドは双方痛み分けという形で終わった。
「……トリンシック」
かなりの手傷を負ったトリンシックを目にして、少し躊躇うも王子はは声をかける。
「まだ、戦えるね?」
信頼すればこそ。「もう戦わなくていい」などと、言うわけにはいかないのだ。いつまでも、〝姫王子〟ではいられない。
まだいける、そう自分に言い聞かせトリンシックは不敵に笑うのであった。