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💀 怪談:花畑信号 (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)1500文字程度のちょっとした怪談です。 このお話はフィクションですのでご安心を。 これは私が小学校に通っていた時のお話です。 皆さんは小さいころに適当なルールを作って遊ぶことはありませんでしたか? 例えば、レンガの道の特定の色のレンガしか踏んではいけないとか。 近所の家の庭につながれている犬に目を合わせてはいけないとか。 特に理由もなく、何となく作ったルールに沿って行動して遊ぶというのを私は友達と良くしていました。 もっとも、即興で作ったルールだけあって次の日にはルールを忘れていたり、それどころか途中でルールを変えてしまうこともありました。 そんな中一つだけ絶対に変わらないルールがありました。 「通学路の途中にある花畑信号の歩行者ボタンを押してはいけない。押すと連れていかれてしまう」 なんともあいまいな警告です。 それでも小学生の時はなんだかそれが空恐ろしくて、破ろうとは思いませんでした。 それと同時に、小学校高学年になってくると今度は逆に度胸試しの一種で、どれほど悪いことができるかという遊びが流行ってきました。 始めは少し高い段差から飛び降りれるかとか、自転車を両手離しで走れるかというちょっとしたものでした。 しかし、それは徐々にエスカレートしていき、ある時こんな話題が上がりました。 「花畑信号のボタンを押せるやつはいるか」 私は手を上げませんでした。 色々やんちゃして調子の付いた悪ガキどもでしたが、例のルールは他の人も知っていたので皆嫌がっていました。 言い出しっぺの子はそんな僕たちを見て鼻で笑いました。 彼はできるといって得意そうにしているのを見てみんなも腹が立ってきました。 つい売り言葉に買い言葉で皆で花畑信号のところに行くことになりました。 通学路にあるだけあって花畑信号にはすぐにたどり着きました。 しかし、かるくあおられただけの怒りというものは弱いもので、信号につくころにはみんな冷静になっていました。 本物を前に立ちすくむ僕たちをまたバカにしたように笑うと、言い出しっぺの子が歩行者のボタンを押しました。 「どうだ? 何にもないじゃないか」 そうやってまた得意そうにする彼を見て、みんな安心しました。 それならと、他の子が手を伸ばすと言い出しっぺの子は手で防いで妨害しました。 ボタンを押したのが自分だけという優越感に浸りたかったのでしょう。 しばらくそこで問答があった後、結局彼以外には誰も押すことがないまま家に帰りました。 それから数日後。 いつも通り友達と悪ふざけをしながら学校から帰っている途中、花畑信号のところで赤信号に引っかかって待っているときのことでした。 例の言い出しっぺの子が何の脈絡もなく返事をしたのです。 「うん、わかった! すぐそっちに行くよ!」 確かに信号を待ちながらみんなでおしゃべりはしていました。 しかし、その時している話とは全く関係のない返答でした。 皆で不思議そうに思っていると、言い出しっぺの子はまだ車が通っている道路へと飛び出して…… その後のことはあまりよく覚えていません。 ただ人というのはあそこまでよく飛ぶものなんだと、ぼーっとした頭で考えていたことだけは覚えています。 それ以来僕たちはあまり悪ふざけをすることはなくなり、花畑信号に近寄ることもなくなりました。 そういえば、花畑信号がなぜ花畑信号と呼ばれているかを言っていませんでしたね。 地名か、そうじゃなければ近くに花畑があったんじゃないかって? ええ、そうです。 その信号の根元にはいつも小さな花畑のように、綺麗なブーケに包まれた花が何本も咲き乱れていたんですよ。
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