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😶 アフターストーリー③「心傷夢③」 (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)――――目が覚めるとそこは、見慣れた自分の部屋だった。 ベッドの上で上体を起こすと、少しだけ頭が痛む。 「いてて…。久しぶりに昔の夢を見ていただけのはずなのにすごい頭がくらくらする」 数年前、私は両親を殺され、紆余曲折あり現在は探偵事務所を開いている。 失踪した姉たちは未だに見つけられず、親殺しの犯人もまた、復讐出来ずにいる。 「うーん、なんだろう。なんか大事なこと忘れている気がするようなしないような……まあいいでしょう」 思い出せないなら大したことじゃないんだろうと思い、思考を放棄することにした。 それにしても、本当に懐かしい夢を見たものだ。 ベッドから立ち上がり、最低限の身支度を整える。 そして、部屋に用意しているコーヒーメーカーに水を入れスイッチを入れる。 「そういえば、今日は依頼の予定は入ってましたっけ」 私はスマホを手に取り、スケジュールを確認する。 「今日は何もなし…っと」 私は確認を終えると、出来上がったコーヒーにぼとぼとと角砂糖5,6個入れて、片手にチビチビと飲みながらリビング兼職場の事務所へと足を運ぶ。 扉を開けると、来客用のソファーに座った白く細長い髪をした美少女が目に入る。 「こんにちは、カラちゃん」 「はい、おはようございますアリアさん。コーヒー飲みますか?」 私は、彼女に話しかけながら向かい側の椅子に腰を下ろし、彼女専用のマグカップにコーヒーを注いでいく。 「あ、ありがとう」 彼女は嬉しそうな表情で私に微笑みかける。 その笑顔を見ると、何故か心が暖かくなるのを感じる 「それと、敬語は使わなくていいのに」 「すみません、まだタメ語で話すことに慣れてなくて…」 「もう、仕方ないなぁ」 彼女はそう言いながらも、どこか楽しげな様子だ。 「アリアさんはこれから仕事ですか?」 「うん。10時からレコーディングの仕事で、13時から撮影が入ってるかな」 「そうだったんですね。お疲れ様です」 「ふふっ、ありがとう。あ、そうだカラちゃん。この後時間ある?良かったら一緒に朝ご飯食べに行きたいんだけど」 彼女がこちらの様子を伺いながら尋ねてくる。 「ごめんなさい。ちょっと用事があって……」 「そっかぁ、残念。また今度にしようか」 彼女の誘いに乗れないことを申し訳なく思っていると、彼女は気にしてないと言わんばかりに笑ってくれた。 「それじゃあ、私は行ってくるね」 「あ、はい。行ってらっしゃい」 私がそう言うと、彼女は満足げに事務所を出て行った。 「さて、次はあの本だったかな」 仕事がない日は基本的に朝から夜までアラビア語の文献をよく読み漁っている。 それは、マダムへの対抗策を一つでも見つけようとする私なりの決意であり、日々のルーティンワークでもある。 「えっと、この本はどこに置いたっけ」 事務所の本棚に乱雑に置かれた本の山から目的の一冊を探していると、不意に懐かしい本が視界に入った。 それは、唯一あの家から持ってきていたもので。家族との記録が詰まったアルバムだった。 「……懐かしいな」 私は、その本を手にとって眺めた。 中に入っている写真はどれも懐かしく、写っている全員が笑ったり、泣いたり、怒ったり色んな表情をしている。 しかし…… 「あれ、この写真」 一枚の写真が私の目に止まった。そこに写っていたのは、幼い私と姉の二人で撮った最後の写真で。 「……こんな写真ありましたっけ」 姉がいなくなった時も、両親の葬式の時もこの写真を見ている余裕なんて無かったから記憶にはないけれど。 確かに、この写真には姉がいたはずだ。 「うーん、思い出せませんね」 少し気になったけど、思い出せなかった。まあたいしたことでもないだろうと、考えるのをやめた。 「さて、今日も一日頑張りますか」
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