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😶 (※シナリオネタバレ注意)『壊胎』後日譚 ~黒田の場合~ (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)今の職場に転がり込んで、もう半年がたつ。 それまでの俺には「非日常」と思えてしまうようなこの場所が、今では居心地がいいとさえ感じている。 訓練はキツいけど、酒保には気に入ったブランドのタバコとラムもあるし、食堂のメシも旨い。 バイクだって、非番の日には好きにいじってていい。 あの娘をあんな風にして殺したのに、安穏と生きていていいのか。何かしなきゃいけないんじゃないか。 そんな漠然とした罪悪感、使命感を抱えてここにきたのに、それがもう居場所になってしまっている。 重い感情に慣れていってしまう自分に嫌気がさしつつも、今日も何とか生きている。 --- きっかけとなったあの日、俺たちは真っ暗な闇の中で目覚めた。 その場所で水埜と、色の真っ白なあの娘と出会った。 そこからはもう、何とか外に出るために無我夢中だった。 薄暗い研究室、無造作に転がされた死体、訳の分からない言葉を喋るバケモノ。 そして、変身。 一度目に在ったのは体が軽くなる感覚と、万能感。 目の前で傷ついた教授や、悍ましいバケモノを見て、絶対に殺さなきゃいけない、そんな考えに囚われた。 その狂気に身を任せ、考えるより先に体が動き、変身していた。 ガキの頃に憧れた、正義のヒーローみたいだった。でも、俺は一歩届かなかった。 水埜がバケモノを倒したとき、「やった。終わった。」と思った。 けれど、殺したバケモノに駆け寄る彼女は「お父さん」と、確かにそう言った。 それに気が付いた時にはもう、遅すぎた。 二度目に在ったのは強烈な殺意と、破壊衝動。 バケモノに変わってしまったあの娘を楽にしてやりたい、その一心で縋るように禁忌を手に取った。 次の瞬間、目の前のすべてが、血の朱に染まっていった。 静寂、憎悪、恐怖、孤独。 そんなことを感じながら気づいた時にはもう、彼女だったものが辺り一面に転がっていた。 暗い部屋で手かせを嵌められ、助けを求めていた彼女を、 それでも心配させまいと「大丈夫」と言ってくれた彼女を、 殺したのは俺だ。 ---- 水埜にも迷惑をかけた。 学がない俺の代わりに研究所の調べものをほとんどやってくれたし、バケモノを倒せたのも全部アイツのおかげだ。 そして最後には、あの娘を殺した俺を、殺してもらった。 救助される直前。もうすべて忘れて、ドライバもシステムも、自分さえも、全部沈めてしまおう、そうも思った。 そんなときも、水埜が手を引っ張ってくれた。「これで救える命もあるんです」と。 あの言葉で、今の職場に来ることにも踏ん切りがついたと思う。 今でもアイツは、前衛を支える後衛として、そして突っ走る俺のブレーキ役として、俺の面倒を見てくれている。 どっちが年上か分かんないね、これは。 助けられた後、RIDEシステムとドライバを船に置いていこうとしていたことを話したら、病室で教授にドハッパ喰らったっけ。 持ってた分厚い本で、さんざっぱらどつきまわされたことを覚えている。 教授は俺たちよりも手ひどい怪我を負っていたにも関わらず、もう現場復帰している。 正直言ってデタラメな人だ。誰でもD-2であのバケモノ相手に渡り合う能力を持っていると思わないでほしい。 付き合わされるこっちの身にもなってくれ。 ---- その教授が呼んでる声が聞こえる。 どうせまた、無理難題な訓練か、次の現場のブリーフィングだろう。 RIDEシステムにあの言葉をコールするたび、傷跡が増えていく。 それでも生き残って、強くならなきゃいけない。 もう二度と、名もない花を踏みにじらせないために。 ---- ということで、『壊胎』で使用したPC「黒田 修司」のアフターストーリーでした。 シナリオとキーパリングが素晴らしすぎて、初めて書いてしまいました。 こんなシナリオと演出、好きに決まってるじゃん…ズルじゃん… そんなことを思いつつ、探索中にテンションが右肩上がりになっていったシナリオでした。ああいうの大好きです。 ラストは禁断の変身に手を出して、生きて帰ってこれるって思ってませんでしたよね…ひとみちゃんのことを忘れられず、罪悪感と使命感に苛まれたまま頑張って生きていってくれ、黒田… 多分、彼はサルベージされたテープで、自分の二度目の変身を見てるんじゃないですかね。加速するサバイバーズギルト。 情報は全部抜いてましたけど、ラストシーンはどうにかなっちゃったヒロインを、禁忌の変身で泣く泣く殺して、心中することしか考えてませんでした。 NPC含め全員生還したいのはやまやまでしたが、これはライダーファンの悲しき性なんです…ヒーローには、オリジンストーリーで業を背負わせたくなってしまうんです…赦して… 最後になりますが、自分のやりたい展開・演出にとことん付き合ってくださった相方PLのアンスさん、演出ありきで相当な無理を言っても柔軟に対応してくださったKPのKadenaさん、そして最後まで温かく見届けてくださった見学者の皆さん、本当にありがとうございました! 次回の『傀逅』も、めっちゃ楽しみにしてます!
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