後編より登場する者達 ワイバーン(NPC兼エネミー):緑の翼竜と称される龍族の一種、本来草食性で実害はほぼ無いに等しい。今回この様な行動に出たのには何かがあるようだが… ゴブリン・リカントのコンビ(エネミー):頭が悪く力押しで物事を解決するゴブリンと多少ずる賢く知恵のある獣人のコンビ、双方とも利害が一致したため行動を共にしている エピソード本編 村をたってからしばらくすると村人が立てた立て看板が見える地点にたどり着く。どうやら村人が湖に向かうまでの道で目印となる物を立てておいたらしい。そこにつくと早速グレゴリーが一言 グレゴリー:「ふぇ~!いつも村の行事で俺っちも水を汲みに行ってるが改めて村と湖までは結構距離があるな。いつもは何となく行き来してたから気づかなかったが流石にちと疲れたぜ」 休憩しよう。と提案が出る。無理も無い。俺ですらここまで目的の場所が離れているとは思っても居なかったからだ。日ごろ何となく通っている場所でも目的ができて移動していると結構歩いている気がする ジャック:「確かにな。2KM位は歩いたと思うが…これじゃ、目的の場所にたどり着いたとき疲労で例の翼竜と戦えんと思うぞ。ちと、休憩しておこう」 少し、立て看板のところで腰を下ろす、周辺を吹き抜けるそよ風が心地よい、周囲の植物達もゆらゆらと揺れている。グレゴリーが食糧の小麦で作ったパンと、村のリンゴで作ったジュースをかばんから取り出して差し出す グレゴリー:「なあ、後目的地まで何Mだろうな?って看板があったか…何々?北の湖まであと1M、丁度目先か。よっと…お!見える見える。湖だ」 俺も立ち上がり前方を目を凝らしてよく見ると確かに澄んだ水を湛えた水源地帯が広がっている。あの場所が村の名物、北の湖か ジャック:「長く歩いた甲斐があったな。目的の場所は目の前にあるという事だ。あと少しで到着だ。頑張っていこうぜ」 と、出発しようとする時に周囲に何者かの気配を感じ取る。俺のレンジャーとしての感覚が瞬時に何者かは人間だという事を気づかせた。息遣い、風の流れる方向、敵意のある無し…一応は警戒はしていたが、やがてダニエル爺さんだという事に気づく。俺は見透かすように ジャック:「客は呼んではないはずだぜ?出てこいよ。ダニエル爺さん」 そう呼ばれると、爺さんは流石だな。とこちらの力量に感心した面持ちで現れた ダニエル:「このワシの気配を見破るとは…流石じゃな。最近平穏な日々が続いていたからと言っても村一番のレンジャーとしての能力は衰えてなかったという事か」 爺さんが現れたのを見て、一番驚いたのは他でも無いグレゴリーだ。彼には爺さんの雰囲気が全く読めてなかったらしい。驚愕の表情で グレゴリー:「おい!何で爺さんがここに?って言うか。どう見ても爺さんが居るようには見えなかったぞ」 周囲の風景に溶け込んでいたのだから普通の人間や鍛治屋には見破る事ができないのは当然だ。これはレンジャーでないとできない風景同調の技だからだ。 ダニエル:「門外漢の鍛治師に今の技を見破るのは酷と言う物…それより何故ワシがついてきたか分かるか?」 こちらが質問するより先に聞いてくる。全く…油断もすきも無い爺さんだ。目つきの鋭さと相まって油断できない相手だぜ。俺は返答した ジャック:「山脈などを住処にする翼竜が何故こんな辺鄙な地方にまで現れたか?と言うことだろう?」 その返答に、爺さんは如何にも、と言う表情で語った ダニエル:「左様、本来翼竜の類は人里はなれた山脈に群れを成して生活しており、自分達の生息地から決してはなれる事は無く、自分達に危害を加える様な真似をされなければ他の生命体に襲い掛かったりするような真似はせぬ。今回の出来事は…きっと何かがあってこの地に降り立ったに違いない。そこでワシも調査に同行しようと思ってな」 なるほど、そう言う事か。確かに戦力は増える方がありがたいが…しかし… ジャック:「爺さん、理由分かったがそんな老いぼれた体で戦えるのか?敵は翼竜だけとは限らないしもしかしたら盗賊の類が潜んでるかもしれないぞ。いくら風景同調の技が使えるからといって無茶だ」 そういい終わる前に、グレゴリーがあ!と叫び声を上げる。いつの間にか爺さんは俺の目の前から消えて後ろに回り込んでいた ダニエル:「無茶をしってて老体に鞭打ってここまで気配を消してやって来た。嫌だといってもついてゆくぞ。お主等に老いぼれ扱いされるほどワシは鈍っておらぬわ」 爺さんはもとレンジャーだったのだろうか?風景同調といい今の素早い動きといいこれらは全てレンジャーが師匠から叩き込まれる技だ。俺ですら見破れなかった今の動き…この爺さん。できる グレゴリー:「たまげたな~レンジャーってこんな素早い芸当ができるのか。俺っちは戦闘の手ほどきを受けた程度の鍛治師だから全然分かんねぇわ…はは」 グレゴリーは青ざめた笑みを浮かべていた。一介の鍛治師には今の出来事は未知の世界の芸当だった様だ 結局、爺さんを一向に加えて再び湖に向かって歩き出す事にした。目指すは北の湖、後数分で到着と言う時であった。 ジャック:「……居るな」 ダニエル:「うむ、面倒な連中が」 俺達が敵の気配に気づく。何時襲われても大丈夫なように武器に手をかけておく グレゴリー:「居るのか?なら用心しないとな」 グレゴリーも手製の戦闘ハンマーを構えて用心し始めた。しばらく油断ならぬ雰囲気が続いた ジャック:「出てこいよ。お前達の事はとっくにばれてるぜ!倒されたくなかったらさっさと帰んな!」 敵は奇襲をかけるつもりだったが、思惑通りにいかない事を悟ると一気に決着をつけようと草陰から現れて襲い掛かってきた! ジャック:「ちっ…散開しろ!」 号令一つでその場から散開する。俺達がたっていたところに敵の武器が振り下ろされる。見事に地面が陥没する ゴブリン:「ああ…あ?一発で決めるつもりだったのに…」 見ると敵の一人は小鬼のゴブリンだった。世界各国に生息しておりその棍棒を駆使した力押しの戦闘を得意としており考えるより行動でもって多種族や旅人から金銭や物品を要求するたちの悪い魔物だ リカント:「くそったれ!気づかれたから一気に押し切ってやろうと思ったのに!」 ついで現れたのは獣人のリカントであった。村の住人やレンジャーが邪悪な魔導師の実験や倒し続けた魔獣の怨念が乗り移った事により獣人化した魔物で自慢の爪と牙を生かした戦法が厄介だ ゴブリン:「あ~?んな事言ってもお前が草むらに潜んでれば絶対気づかれないって言ってただろ」 相方のゴブリンが間の抜けた言葉をうつ。それを聞いてリカントがやかましい!と突っ込みを入れる。どうしてこの手の連中は毎回ワンパターンなのか リカント:「敵にまさかレンジャーがいるとは気づかなかった。こうなりゃしかたねぇ…全員引き裂いて金品は強奪だ!」 どうやら、全員倒さない限り先には進めないようだ。俺達は武器を手に取りそのまま戦闘に入った まずは俺が先手をうった。手製の弓に矢を構えると正確に放つ。素早く飛んでいった弓はゴブリンに飛んでいく。敵はよけようと右側に飛びのいたがよけきれず、わき腹を掠めたようだ。紫の血が流れ出した。傷を受け激怒した敵が叫び声を上げながら俺に向かって突進してくる グレゴリー:「させるかっての!必殺…銅鑼叩き!」 突進してきた敵に対し巨大な銅鑼を叩くかのような要領で敵を叩きのめす。怒りで我を忘れていた敵はハンマーの一撃を体に直撃してぐぇ!と叫ぶと息絶えた ジャック:「悪いな…にしても見事な一撃だった。あの状態では体の骨がバキバキに折れただろうな。あいつ」 反撃してくれたグレゴリーに礼を言う。突進自体は単調な攻撃だったが直撃を受けてたら結構なダメージだっただろう グレゴリー:「へへ、こう見えてハンマーの扱いには自身があってね…って!ヤバイ、ダニエル爺さんが!」 見ると俺達が戦ってたうちにもう一人の敵はダニエル爺さんの方に向かって言ったらしい、急いで爺さんの下に駆け寄る 対峙する爺さんと獣人。毅然とした態度で構える爺さん、大して獲物を見るようなぎらついた目つきで近づく獣人 リカント:「へっへっへ…獲物にレンジャーがいたのは予想外だったがお前だけでも倒して金品の類は奪わせてもらうぜ…まさかこんなヨボヨボの老いぼれがいたとはな…」 ゆっくりとにじり寄る獣人 ダニエル:「お前さんの仲間が倒されているぞ。助けようとは思わんのか?」 リカント:「仲間?はっ!俺達魔族にそんな大層なモンは存在しねぇ!あるのは利害が一致した場合のみ一瞬だけ協力するって事だけだ!さあ…始末してやろう!あの世でゆっくり暮らすんだな!」 リカントの鋭い爪と牙が爺さんに襲い掛かる! ダニエル:「・・・・・・・未熟じゃな」 遅かったか。爺さんに一撃が決まった…かに見えた。しかし、爺さんはその場に立ち尽くしている。敵も離れた位置に立っていた 一瞬、何が起こったか分からず呆然とする俺達、敵も状況が全く飲み込めてなかったらしい グレゴリー:「ど…どうなってんだよ?爺さんは全く無傷だ!あの一撃を受けたってんならひとたまりも無いぜ!」 リカント:「しとめ損ねたか!ならもう一回!!!」 敵が爺さんに飛びかかろうとした。その時 ダニエル:「自分の体をよくみてみい。そろそろじゃな」 瞬間、敵の体が爆発し粉々に砕け散った。黒焦げになって飛び散る破片 グレゴリー:「爆薬でも仕掛けたのか?派手な結末だぜ…」 驚いているのか感心しているのか分からない呆気に取られた表情のグレゴリー ジャック:「爺さん。爆破種の罠を敵に仕込んだんじゃ…」 レンジャーが得意とする罠の一種で数秒後に敵の体内で爆発を起こす罠である。敵によるが熟練のレンジャーが使う爆破種は相当な致命傷か。もしくは力なき魔物などは一瞬で消え去るだろう ダニエル:「爆破種じゃ。日ごろから作成しておってな。これ位の芸当は朝飯前じゃ」 わっはっはっと大笑いする爺さん。その手際のよさは熟練の旅人のそれを思い起こさせる様な代物であった グレゴリー:「こんなに強いんじゃ。今でも現役の冒険者としてやってけるんじゃないか?自警団も爺さんみたいな熟練者がいると助かるだろうし」 などと軽口を叩くグレゴリー、しかし爺さんは首を振った ダニエル:「ワシはもう現役を退いとるよ。これからの自警団の役目は村の若い者がやるべきじゃ。何時までも自警団の立場にしがみついて追っては後進の育成にもならん。それこそ老害と言うものじゃ」 いつまでも軽口を叩いておらんと行くぞ!と発破をかけられて俺たちは再度湖に向かって出発した。そこまで考えているのか…どうりで隠居状態でも村の人々から信頼が厚いわけだ。などと考えて歩く事数分、ついに目的の湖にたどり着いた 湖にたどり着いた俺達を迎えたのは食い荒らされた植物と巨大な足跡に踏み荒らされた惨状が広がる景色だった。そこには村人達で賑わう湖の姿は無い グレゴリー:「ひでぇ…グラジオラスが全滅してるだけじゃなくてこうも荒らされてるとは…」 俺達はそのあまりに凄まじい状況に絶句した。これは、早く事件を解決しなくては、そう思って早速調査を開始した 周辺を移動して回っている間気になる事があったので爺さんに聞いてみる ジャック:「翼竜は草食なのか?ここまで見事な食いっぷりならばそうとしか思えないが…」 ダニエル:「うむ、彼らは草食であって肉食ではない、にしても…」 俺達はあたりを見渡す。何処まで見ても荒れ果てた台地と静かな湖が広がるだけだ ダニエル:「生息地の草や花を食べて生活しているが…見事な食いっぷりじゃな」 などと爺さんが感心していたその時だった!上空から怒れる咆哮と共に巨大な影が!事件を引き起こした張本人。翼竜ワイバーンだ グレゴリー:「来た!噂には聞いてたがかなりの大きさだぜ」 手製のハンマーを構えるグレゴリー ジャック:「えらくド派手な登場だな。こりゃ」 弓を構える。ここでこいつをし止めるか制圧すれば事件は解決だ。気合を入れていこう ダニエル:「来るぞ…油断はするなよ…」 俺達が戦闘態勢に入ると翼竜のほうもこちらの戦意を感じ取ったのか。そのまま襲い掛かってきた 巨大な翼を広げて大空から滑空してくる翼竜 ダニエル:「来るぞ!岩陰に隠れろ!」 俺達はとっさに岩陰に隠れる。幸い近くに身を隠せそうな大岩があったので以後その場所で戦う事にした。翼竜が大空から俺達の同行をうかがっている中、岩陰で作戦会議を始める グレゴリー:「どーすんだよ。先ほどのゴブリンとかは地上の敵だったからハンマーで殴り倒したりはしやすかったが今回の相手は空中の敵だぜ?上空に浮かんでると攻撃しようがないぞ」 ダニエル:「翼竜とて常時空中と言うわけではない。たまに羽を休めるのに地上に降りてくるときもあるじゃろう。その時は地上戦に持ち込めるはずじゃ。そこで、じゃ。空中に居るときの戦闘は、ジャック。お前に任せる。弓で狙撃してくれ。その間ワシは地上で罠を仕掛ける。グレゴリー…お前はジャックに攻撃が向かないように囮となってくれ。石を投げるなどで敵の注意をひきつける位はできるはず。そして地上に降りた時」 その場に居た全員の意見が一致した ジャック:「総攻撃。だな。分かった。空中に居る間は俺に任せてくれ」 グレゴリー:「頼むぜ!ジャック。じゃ、俺は行くぜ!」 作戦通り俺達は行動を開始した。早速囮になるグレゴリー、敵に向かって石を投げつけたり岩から飛び出して注意をひきつける グレゴリー:「おらおら!俺っちはこっちだっての!」 翼竜もグレゴリーの挑発に耐えかねものすごい勢いで滑空して襲い掛かる ジャック:「今だ!岩陰に隠れろ!」 こちらの合図と共に近くの岩陰に隠れるグレゴリー、岩陰の、数M外れた場所に巨大なクレーターが発生した。翼竜の滑空で生じた衝撃波が地表を鋭くえぐったのだ。それを見て。冷や汗をかくグレゴリー グレゴリー:「あっぶね~。隠れるのが遅れてたらエライ事になっちまってたぜ」 獲物を捕まえられず上空に再び飛び上がる翼竜。すかさず俺が岩陰から飛び出し上空に矢を放つ 翼竜:「!!!!!!」 地上から飛び出してきた矢の嵐に驚いて飛びのく翼竜、矢の飛んできた位置を確認するとその地点に滑空してきた ジャック:「来たか。岩陰に!」 素早く隠れたので難は逃れた。だがこちらも先ほどの戦闘で矢を消耗してしまった。さらにグレゴリーも囮になってくれているがどれだけ持つか分からない。出きる事ならとっとと終わらせたいのだが… 前方でグレゴリーが必死に囮になってる中、ダニエル爺さんが別の場所でなにやら罠を仕掛けている。どんな罠かは知らないが ジャック:「この矢じゃだめか。ならば別の種類のこの矢で。行くぞ!」 戦闘はその後も続いた。滑空が通用しないと悟った翼竜はその羽で突風を発生させぶつけてきたり、こちらが放った矢を強靭な鱗で弾き返したりなどそこいらの魔物とは比べ物にならない位巨大な実力を遺憾なく発揮していた グレゴリー:「こいつぁ久しぶりに強敵が来たぜ!」 突風を必死に戦闘用ハンマーで耐えながら囮を続けるグレゴリー ジャック:「積極的過ぎるのも考えもんだぜ。まぁ恋愛でもなんでもないんだがな!見える!」 強度の高い矢を翼竜に連射する 翼竜の方もだいぶ空中で飛び回って疲れたのか?一旦地上に降りてきた ダニエル:「よし、罠が完成した…あとは」 爺さんがこちらに戻ってくる。その間、俺達は必死に持ちこたえていた 敵の殴り倒しがグレゴリーに直撃する グレゴリー:「う…ダイレクトに来た…すまねぇ…」 地に突っ伏すグレゴリー ジャック:「グレゴリー!大丈夫か!?…?」 敵の強靭な腕が今度はこちらに襲い掛かる。息をするかのように軽くかわして見せたがこちらにも余裕がなくなってきた ジャック:「(やばいな、グレゴリーの安全を確保しなきゃいけないってのに、余裕がないぜ…爺さんは罠を仕掛けに言ったようだが…)」 そんな時爺さんと合流する ダニエル:「罠は仕掛け終わった。こっちじゃ。おびき寄せてくれ!」 分かった。と敵に矢を放って爺さんと共に仕掛けてある場所までおびき寄せる。やがて目的地点まで到着するとすぐさま罠の範囲外の岩陰に隠れた ジャック:「何をする気なんだ?」 ダニエル:「まあ見ておけ…始まるぞ」 翼竜が罠の地点まで来ると突如、地面から無数の茨が、どうやら茨召喚の罠を仕掛けたらしい。しかも大規模な代物を 地面から次々と現れる茨、捉えられて悲痛な大声を上げる翼竜、やがて地に付して抵抗を止めた ジャック:「終わった…か」 どうする?と話し合いになったその時だった。湖の方から泣き声が、すると翼竜は深手を負ったにもかかわらずものすごい勢いで湖の方に向かっていった ジャック:「爺さん、グレゴリーが倒れてると思う。あいつの事を頼む」 俺はすぐさま翼竜の後を追った。一体何が…と思ったら何とそこには巣の上で鳴き声を上げる幼い竜たちが、翼竜が俺の姿を発見すると必死で何かを伝えようとしている。そこには自分はどうなっても構わないが子にだけは手をかけないでくれ。と言う思いが込められている。その目からは涙が ジャック:「……なるほどな、そういう事か」 俺は武器を下ろして戦闘の意思を解除した。レンジャーには自然や動物を敬う寛大な心が必要。そう学んだ事もある。心なしか、あの涙には子を守る親の意思がひしひしと伝わってきた。そんな気がしたからだ 俺から戦意が消えた。と知ると翼竜は一安心したようだ。そして俺に何かを渡してきた。よく見ると緑色の淡い光を放つ鉱石のようなものだった。心なしか気が穏やかになってくる ジャック:「何じゃいこれは…ひょっとして、信頼の証か?」 その時、聞き覚えのある声が、振り向くとそこには村長の姿が 村長:「なるほどな…そういうことか。子を守るためにはるばるとここに…」 彼の顔にすまない。と謝罪の表情。事情が事情だ。知らなかったとはいえまさかこんな事だったとは… ジャック:「ああ、そういうことらしい。ここに住みたいからこの鉱石が代金ってことか?」 村長に石を差し出す。その石は淡い緑色の光を絶え間なく放っている。渡そうとしたが、お前が持っていろ、と言われたので俺はポケットにしまう 村長:「龍言語は分からんので何を言っているか分からないが状況を見たら大体何を言わんとしているかは感じる事はできる。そういう事なら何も言うまい。それにその宝石も有難う。と言う気持ちを示したかったのだろう。貰っておけ。お前にはそれを手にする資格がある」 そこにやってくる爺さんとグレゴリー、グレゴリーの方は何とか意識は回復したようだ。朦朧とはしているがこの状況を見て納得する グレゴリー:「まさか、子を養うために湖の植物を。そりゃ、生活するためだから仕方ないか」 ダニエル:「全ては、子を思う親心が招いた出来事だったというわけか…」 村長が全員に振り返る 村長:「古老が居ないので後をつけてきたがお前達は、金さえ貰えばどんな非道な事をやってのける連中でも、魔物を倒しまくって武勲をたたえてもらいたいだけの英雄気取りの連中でもないようだな」 そしてこう付け加えた 村長:「お前達なら信頼できる。よろしい。村の滞在はいつでも許そう。翼竜の世話は我々に任せておけ」 その様子をみると翼竜は挨拶しようとしたのか?大きな一声を上げた ジャック:「英雄ってがらじゃねぇが、家族は大事だからな」 グレゴリー「親御さんか、そりゃ、必死なわけっすよ」 二人の意見に爺さんが後を追うように ダニエル:「これからは村一同で共存していかんとな。改めてよろしく頼むぞ。翼竜よ」 その後、翼竜との和解が成立した後、村では俺たちの功績をたたえるパーティが夜遅くまで開かれた。今後は災難に襲われる事はないだろう。そう願ってのパーティだった そうして… 俺たちが村に戻ったその夜のことだった 誰かが俺の家の扉を叩いている。誰だ?こんな遅くに…眠たい頭を働かせて扉を開けるとそこにグレゴリーが、こちらは寝着姿なのにグレゴリーは相変わらず普段着だ ジャック:「ふぁぁ。なんだいこんな遅くに」 するとグレゴリーの大はしゃぎしている事、まるで子供のようだ グレゴリー「ジャック!ジャック!夜中に悪いが外を見てみろって!?」 相変わらず派手なはしゃぎぶり、何がそんなに素晴らしいのか? ジャック:「何があった?」 夜空を見上げてみろ。と言うので見上げるとそこには見事な蒼い月が…この世界でめったに見れないくらい蒼く光る月…あれがこの世界の人々が神聖視する蒼い月だというのか…? グレゴリー:「今日は満月の日ってんで外に出たら蒼い月が見れる日だったって訳だよ。いや~素晴らしいな。師匠から一度はあの月で取れる鉱石を加工して一品を作ってみろ!って言われてるけどやはり実物を見ると良いもんだ…ジャック?ジャ~ック。どうした?何で泣いてんだ?」 俺は思わず涙を流していた。何故だろう?あの蒼い月を見るだにつけ。涙と悲しみが止まらない ジャック:「あ…ああ、そうか。頑張ってくれ。俺は…」 全てを偏在なく照らす月、それは太陽のそれと全く変わらない神秘的なものであった。誰もが憧れるのも分かる グレゴリー:「何で泣いて…は!…」 それ以上聞こうとしてグレゴリーは抑えたようだ グレゴリー:「俺っちさ!決めた!村を出てあの蒼い月に行ってみる!」 突然の知り合いの決意。こうなりだしたらグレゴリーの奴は止まらない。一人でも目指そうとするだろう。だが知り合いを一人で行かせるのは危険だ。ならば ジャック:「俺も行っていいか?一人で目指すのは余りにも危険すぎる。それに、俺も行ってみたい…」 そう言うと、思わずグレゴリーはガッツポーズを取った グレゴリー:「しゃ!決まり!明日、村長とかに挨拶に言ってこようぜ!」 次の日 俺達が月を目指す。と言うことを聞くと村の人々は快く送り出してくれた。つらくなったら何時でも戻ってきてくれ。その一言が何よりも頼もしい言葉だった ジャック:「なぁにちょちょいっと散歩に行くようなもんだ」 グレゴリー:「行こうぜ!ジャック!道は険しいがこれは楽しい冒険になりそうだぜ!」 グレゴリーと共に歩き出す。果てしない旅路に向かって ジャック:「ありがとよ。この村が俺の故郷なんだからよ。当然じゃねぇか」 ブルームーン…それは、蒼き月に憧れる人々のお話 エピソード1 完
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後編より登場する者達
ワイバーン(NPC兼エネミー):緑の翼竜と称される龍族の一種、本来草食性で実害はほぼ無いに等しい。今回この様な行動に出たのには何かがあるようだが…
ゴブリン・リカントのコンビ(エネミー):頭が悪く力押しで物事を解決するゴブリンと多少ずる賢く知恵のある獣人のコンビ、双方とも利害が一致したため行動を共にしている
エピソード本編
村をたってからしばらくすると村人が立てた立て看板が見える地点にたどり着く。どうやら村人が湖に向かうまでの道で目印となる物を立てておいたらしい。そこにつくと早速グレゴリーが一言
グレゴリー:「ふぇ~!いつも村の行事で俺っちも水を汲みに行ってるが改めて村と湖までは結構距離があるな。いつもは何となく行き来してたから気づかなかったが流石にちと疲れたぜ」
休憩しよう。と提案が出る。無理も無い。俺ですらここまで目的の場所が離れているとは思っても居なかったからだ。日ごろ何となく通っている場所でも目的ができて移動していると結構歩いている気がする
ジャック:「確かにな。2KM位は歩いたと思うが…これじゃ、目的の場所にたどり着いたとき疲労で例の翼竜と戦えんと思うぞ。ちと、休憩しておこう」
少し、立て看板のところで腰を下ろす、周辺を吹き抜けるそよ風が心地よい、周囲の植物達もゆらゆらと揺れている。グレゴリーが食糧の小麦で作ったパンと、村のリンゴで作ったジュースをかばんから取り出して差し出す
グレゴリー:「なあ、後目的地まで何Mだろうな?って看板があったか…何々?北の湖まであと1M、丁度目先か。よっと…お!見える見える。湖だ」
俺も立ち上がり前方を目を凝らしてよく見ると確かに澄んだ水を湛えた水源地帯が広がっている。あの場所が村の名物、北の湖か
ジャック:「長く歩いた甲斐があったな。目的の場所は目の前にあるという事だ。あと少しで到着だ。頑張っていこうぜ」
と、出発しようとする時に周囲に何者かの気配を感じ取る。俺のレンジャーとしての感覚が瞬時に何者かは人間だという事を気づかせた。息遣い、風の流れる方向、敵意のある無し…一応は警戒はしていたが、やがてダニエル爺さんだという事に気づく。俺は見透かすように
ジャック:「客は呼んではないはずだぜ?出てこいよ。ダニエル爺さん」
そう呼ばれると、爺さんは流石だな。とこちらの力量に感心した面持ちで現れた
ダニエル:「このワシの気配を見破るとは…流石じゃな。最近平穏な日々が続いていたからと言っても村一番のレンジャーとしての能力は衰えてなかったという事か」
爺さんが現れたのを見て、一番驚いたのは他でも無いグレゴリーだ。彼には爺さんの雰囲気が全く読めてなかったらしい。驚愕の表情で
グレゴリー:「おい!何で爺さんがここに?って言うか。どう見ても爺さんが居るようには見えなかったぞ」
周囲の風景に溶け込んでいたのだから普通の人間や鍛治屋には見破る事ができないのは当然だ。これはレンジャーでないとできない風景同調の技だからだ。
ダニエル:「門外漢の鍛治師に今の技を見破るのは酷と言う物…それより何故ワシがついてきたか分かるか?」
こちらが質問するより先に聞いてくる。全く…油断もすきも無い爺さんだ。目つきの鋭さと相まって油断できない相手だぜ。俺は返答した
ジャック:「山脈などを住処にする翼竜が何故こんな辺鄙な地方にまで現れたか?と言うことだろう?」
その返答に、爺さんは如何にも、と言う表情で語った
ダニエル:「左様、本来翼竜の類は人里はなれた山脈に群れを成して生活しており、自分達の生息地から決してはなれる事は無く、自分達に危害を加える様な真似をされなければ他の生命体に襲い掛かったりするような真似はせぬ。今回の出来事は…きっと何かがあってこの地に降り立ったに違いない。そこでワシも調査に同行しようと思ってな」
なるほど、そう言う事か。確かに戦力は増える方がありがたいが…しかし…
ジャック:「爺さん、理由分かったがそんな老いぼれた体で戦えるのか?敵は翼竜だけとは限らないしもしかしたら盗賊の類が潜んでるかもしれないぞ。いくら風景同調の技が使えるからといって無茶だ」
そういい終わる前に、グレゴリーがあ!と叫び声を上げる。いつの間にか爺さんは俺の目の前から消えて後ろに回り込んでいた
ダニエル:「無茶をしってて老体に鞭打ってここまで気配を消してやって来た。嫌だといってもついてゆくぞ。お主等に老いぼれ扱いされるほどワシは鈍っておらぬわ」
爺さんはもとレンジャーだったのだろうか?風景同調といい今の素早い動きといいこれらは全てレンジャーが師匠から叩き込まれる技だ。俺ですら見破れなかった今の動き…この爺さん。できる
グレゴリー:「たまげたな~レンジャーってこんな素早い芸当ができるのか。俺っちは戦闘の手ほどきを受けた程度の鍛治師だから全然分かんねぇわ…はは」
グレゴリーは青ざめた笑みを浮かべていた。一介の鍛治師には今の出来事は未知の世界の芸当だった様だ
結局、爺さんを一向に加えて再び湖に向かって歩き出す事にした。目指すは北の湖、後数分で到着と言う時であった。
ジャック:「……居るな」
ダニエル:「うむ、面倒な連中が」
俺達が敵の気配に気づく。何時襲われても大丈夫なように武器に手をかけておく
グレゴリー:「居るのか?なら用心しないとな」
グレゴリーも手製の戦闘ハンマーを構えて用心し始めた。しばらく油断ならぬ雰囲気が続いた
ジャック:「出てこいよ。お前達の事はとっくにばれてるぜ!倒されたくなかったらさっさと帰んな!」
敵は奇襲をかけるつもりだったが、思惑通りにいかない事を悟ると一気に決着をつけようと草陰から現れて襲い掛かってきた!
ジャック:「ちっ…散開しろ!」
号令一つでその場から散開する。俺達がたっていたところに敵の武器が振り下ろされる。見事に地面が陥没する
ゴブリン:「ああ…あ?一発で決めるつもりだったのに…」
見ると敵の一人は小鬼のゴブリンだった。世界各国に生息しておりその棍棒を駆使した力押しの戦闘を得意としており考えるより行動でもって多種族や旅人から金銭や物品を要求するたちの悪い魔物だ
リカント:「くそったれ!気づかれたから一気に押し切ってやろうと思ったのに!」
ついで現れたのは獣人のリカントであった。村の住人やレンジャーが邪悪な魔導師の実験や倒し続けた魔獣の怨念が乗り移った事により獣人化した魔物で自慢の爪と牙を生かした戦法が厄介だ
ゴブリン:「あ~?んな事言ってもお前が草むらに潜んでれば絶対気づかれないって言ってただろ」
相方のゴブリンが間の抜けた言葉をうつ。それを聞いてリカントがやかましい!と突っ込みを入れる。どうしてこの手の連中は毎回ワンパターンなのか
リカント:「敵にまさかレンジャーがいるとは気づかなかった。こうなりゃしかたねぇ…全員引き裂いて金品は強奪だ!」
どうやら、全員倒さない限り先には進めないようだ。俺達は武器を手に取りそのまま戦闘に入った
まずは俺が先手をうった。手製の弓に矢を構えると正確に放つ。素早く飛んでいった弓はゴブリンに飛んでいく。敵はよけようと右側に飛びのいたがよけきれず、わき腹を掠めたようだ。紫の血が流れ出した。傷を受け激怒した敵が叫び声を上げながら俺に向かって突進してくる
グレゴリー:「させるかっての!必殺…銅鑼叩き!」
突進してきた敵に対し巨大な銅鑼を叩くかのような要領で敵を叩きのめす。怒りで我を忘れていた敵はハンマーの一撃を体に直撃してぐぇ!と叫ぶと息絶えた
ジャック:「悪いな…にしても見事な一撃だった。あの状態では体の骨がバキバキに折れただろうな。あいつ」
反撃してくれたグレゴリーに礼を言う。突進自体は単調な攻撃だったが直撃を受けてたら結構なダメージだっただろう
グレゴリー:「へへ、こう見えてハンマーの扱いには自身があってね…って!ヤバイ、ダニエル爺さんが!」
見ると俺達が戦ってたうちにもう一人の敵はダニエル爺さんの方に向かって言ったらしい、急いで爺さんの下に駆け寄る
対峙する爺さんと獣人。毅然とした態度で構える爺さん、大して獲物を見るようなぎらついた目つきで近づく獣人
リカント:「へっへっへ…獲物にレンジャーがいたのは予想外だったがお前だけでも倒して金品の類は奪わせてもらうぜ…まさかこんなヨボヨボの老いぼれがいたとはな…」
ゆっくりとにじり寄る獣人
ダニエル:「お前さんの仲間が倒されているぞ。助けようとは思わんのか?」
リカント:「仲間?はっ!俺達魔族にそんな大層なモンは存在しねぇ!あるのは利害が一致した場合のみ一瞬だけ協力するって事だけだ!さあ…始末してやろう!あの世でゆっくり暮らすんだな!」
リカントの鋭い爪と牙が爺さんに襲い掛かる!
ダニエル:「・・・・・・・未熟じゃな」
遅かったか。爺さんに一撃が決まった…かに見えた。しかし、爺さんはその場に立ち尽くしている。敵も離れた位置に立っていた
一瞬、何が起こったか分からず呆然とする俺達、敵も状況が全く飲み込めてなかったらしい
グレゴリー:「ど…どうなってんだよ?爺さんは全く無傷だ!あの一撃を受けたってんならひとたまりも無いぜ!」
リカント:「しとめ損ねたか!ならもう一回!!!」
敵が爺さんに飛びかかろうとした。その時
ダニエル:「自分の体をよくみてみい。そろそろじゃな」
瞬間、敵の体が爆発し粉々に砕け散った。黒焦げになって飛び散る破片
グレゴリー:「爆薬でも仕掛けたのか?派手な結末だぜ…」
驚いているのか感心しているのか分からない呆気に取られた表情のグレゴリー
ジャック:「爺さん。爆破種の罠を敵に仕込んだんじゃ…」
レンジャーが得意とする罠の一種で数秒後に敵の体内で爆発を起こす罠である。敵によるが熟練のレンジャーが使う爆破種は相当な致命傷か。もしくは力なき魔物などは一瞬で消え去るだろう
ダニエル:「爆破種じゃ。日ごろから作成しておってな。これ位の芸当は朝飯前じゃ」
わっはっはっと大笑いする爺さん。その手際のよさは熟練の旅人のそれを思い起こさせる様な代物であった
グレゴリー:「こんなに強いんじゃ。今でも現役の冒険者としてやってけるんじゃないか?自警団も爺さんみたいな熟練者がいると助かるだろうし」
などと軽口を叩くグレゴリー、しかし爺さんは首を振った
ダニエル:「ワシはもう現役を退いとるよ。これからの自警団の役目は村の若い者がやるべきじゃ。何時までも自警団の立場にしがみついて追っては後進の育成にもならん。それこそ老害と言うものじゃ」
いつまでも軽口を叩いておらんと行くぞ!と発破をかけられて俺たちは再度湖に向かって出発した。そこまで考えているのか…どうりで隠居状態でも村の人々から信頼が厚いわけだ。などと考えて歩く事数分、ついに目的の湖にたどり着いた
湖にたどり着いた俺達を迎えたのは食い荒らされた植物と巨大な足跡に踏み荒らされた惨状が広がる景色だった。そこには村人達で賑わう湖の姿は無い
グレゴリー:「ひでぇ…グラジオラスが全滅してるだけじゃなくてこうも荒らされてるとは…」
俺達はそのあまりに凄まじい状況に絶句した。これは、早く事件を解決しなくては、そう思って早速調査を開始した
周辺を移動して回っている間気になる事があったので爺さんに聞いてみる
ジャック:「翼竜は草食なのか?ここまで見事な食いっぷりならばそうとしか思えないが…」
ダニエル:「うむ、彼らは草食であって肉食ではない、にしても…」
俺達はあたりを見渡す。何処まで見ても荒れ果てた台地と静かな湖が広がるだけだ
ダニエル:「生息地の草や花を食べて生活しているが…見事な食いっぷりじゃな」
などと爺さんが感心していたその時だった!上空から怒れる咆哮と共に巨大な影が!事件を引き起こした張本人。翼竜ワイバーンだ
グレゴリー:「来た!噂には聞いてたがかなりの大きさだぜ」
手製のハンマーを構えるグレゴリー
ジャック:「えらくド派手な登場だな。こりゃ」
弓を構える。ここでこいつをし止めるか制圧すれば事件は解決だ。気合を入れていこう
ダニエル:「来るぞ…油断はするなよ…」
俺達が戦闘態勢に入ると翼竜のほうもこちらの戦意を感じ取ったのか。そのまま襲い掛かってきた
巨大な翼を広げて大空から滑空してくる翼竜
ダニエル:「来るぞ!岩陰に隠れろ!」
俺達はとっさに岩陰に隠れる。幸い近くに身を隠せそうな大岩があったので以後その場所で戦う事にした。翼竜が大空から俺達の同行をうかがっている中、岩陰で作戦会議を始める
グレゴリー:「どーすんだよ。先ほどのゴブリンとかは地上の敵だったからハンマーで殴り倒したりはしやすかったが今回の相手は空中の敵だぜ?上空に浮かんでると攻撃しようがないぞ」
ダニエル:「翼竜とて常時空中と言うわけではない。たまに羽を休めるのに地上に降りてくるときもあるじゃろう。その時は地上戦に持ち込めるはずじゃ。そこで、じゃ。空中に居るときの戦闘は、ジャック。お前に任せる。弓で狙撃してくれ。その間ワシは地上で罠を仕掛ける。グレゴリー…お前はジャックに攻撃が向かないように囮となってくれ。石を投げるなどで敵の注意をひきつける位はできるはず。そして地上に降りた時」
その場に居た全員の意見が一致した
ジャック:「総攻撃。だな。分かった。空中に居る間は俺に任せてくれ」
グレゴリー:「頼むぜ!ジャック。じゃ、俺は行くぜ!」
作戦通り俺達は行動を開始した。早速囮になるグレゴリー、敵に向かって石を投げつけたり岩から飛び出して注意をひきつける
グレゴリー:「おらおら!俺っちはこっちだっての!」
翼竜もグレゴリーの挑発に耐えかねものすごい勢いで滑空して襲い掛かる
ジャック:「今だ!岩陰に隠れろ!」
こちらの合図と共に近くの岩陰に隠れるグレゴリー、岩陰の、数M外れた場所に巨大なクレーターが発生した。翼竜の滑空で生じた衝撃波が地表を鋭くえぐったのだ。それを見て。冷や汗をかくグレゴリー
グレゴリー:「あっぶね~。隠れるのが遅れてたらエライ事になっちまってたぜ」
獲物を捕まえられず上空に再び飛び上がる翼竜。すかさず俺が岩陰から飛び出し上空に矢を放つ
翼竜:「!!!!!!」
地上から飛び出してきた矢の嵐に驚いて飛びのく翼竜、矢の飛んできた位置を確認するとその地点に滑空してきた
ジャック:「来たか。岩陰に!」
素早く隠れたので難は逃れた。だがこちらも先ほどの戦闘で矢を消耗してしまった。さらにグレゴリーも囮になってくれているがどれだけ持つか分からない。出きる事ならとっとと終わらせたいのだが…
前方でグレゴリーが必死に囮になってる中、ダニエル爺さんが別の場所でなにやら罠を仕掛けている。どんな罠かは知らないが
ジャック:「この矢じゃだめか。ならば別の種類のこの矢で。行くぞ!」
戦闘はその後も続いた。滑空が通用しないと悟った翼竜はその羽で突風を発生させぶつけてきたり、こちらが放った矢を強靭な鱗で弾き返したりなどそこいらの魔物とは比べ物にならない位巨大な実力を遺憾なく発揮していた
グレゴリー:「こいつぁ久しぶりに強敵が来たぜ!」
突風を必死に戦闘用ハンマーで耐えながら囮を続けるグレゴリー
ジャック:「積極的過ぎるのも考えもんだぜ。まぁ恋愛でもなんでもないんだがな!見える!」
強度の高い矢を翼竜に連射する
翼竜の方もだいぶ空中で飛び回って疲れたのか?一旦地上に降りてきた
ダニエル:「よし、罠が完成した…あとは」
爺さんがこちらに戻ってくる。その間、俺達は必死に持ちこたえていた
敵の殴り倒しがグレゴリーに直撃する
グレゴリー:「う…ダイレクトに来た…すまねぇ…」
地に突っ伏すグレゴリー
ジャック:「グレゴリー!大丈夫か!?…?」
敵の強靭な腕が今度はこちらに襲い掛かる。息をするかのように軽くかわして見せたがこちらにも余裕がなくなってきた
ジャック:「(やばいな、グレゴリーの安全を確保しなきゃいけないってのに、余裕がないぜ…爺さんは罠を仕掛けに言ったようだが…)」
そんな時爺さんと合流する
ダニエル:「罠は仕掛け終わった。こっちじゃ。おびき寄せてくれ!」
分かった。と敵に矢を放って爺さんと共に仕掛けてある場所までおびき寄せる。やがて目的地点まで到着するとすぐさま罠の範囲外の岩陰に隠れた
ジャック:「何をする気なんだ?」
ダニエル:「まあ見ておけ…始まるぞ」
翼竜が罠の地点まで来ると突如、地面から無数の茨が、どうやら茨召喚の罠を仕掛けたらしい。しかも大規模な代物を
地面から次々と現れる茨、捉えられて悲痛な大声を上げる翼竜、やがて地に付して抵抗を止めた
ジャック:「終わった…か」
どうする?と話し合いになったその時だった。湖の方から泣き声が、すると翼竜は深手を負ったにもかかわらずものすごい勢いで湖の方に向かっていった
ジャック:「爺さん、グレゴリーが倒れてると思う。あいつの事を頼む」
俺はすぐさま翼竜の後を追った。一体何が…と思ったら何とそこには巣の上で鳴き声を上げる幼い竜たちが、翼竜が俺の姿を発見すると必死で何かを伝えようとしている。そこには自分はどうなっても構わないが子にだけは手をかけないでくれ。と言う思いが込められている。その目からは涙が
ジャック:「……なるほどな、そういう事か」
俺は武器を下ろして戦闘の意思を解除した。レンジャーには自然や動物を敬う寛大な心が必要。そう学んだ事もある。心なしか、あの涙には子を守る親の意思がひしひしと伝わってきた。そんな気がしたからだ
俺から戦意が消えた。と知ると翼竜は一安心したようだ。そして俺に何かを渡してきた。よく見ると緑色の淡い光を放つ鉱石のようなものだった。心なしか気が穏やかになってくる
ジャック:「何じゃいこれは…ひょっとして、信頼の証か?」
その時、聞き覚えのある声が、振り向くとそこには村長の姿が
村長:「なるほどな…そういうことか。子を守るためにはるばるとここに…」
彼の顔にすまない。と謝罪の表情。事情が事情だ。知らなかったとはいえまさかこんな事だったとは…
ジャック:「ああ、そういうことらしい。ここに住みたいからこの鉱石が代金ってことか?」
村長に石を差し出す。その石は淡い緑色の光を絶え間なく放っている。渡そうとしたが、お前が持っていろ、と言われたので俺はポケットにしまう
村長:「龍言語は分からんので何を言っているか分からないが状況を見たら大体何を言わんとしているかは感じる事はできる。そういう事なら何も言うまい。それにその宝石も有難う。と言う気持ちを示したかったのだろう。貰っておけ。お前にはそれを手にする資格がある」
そこにやってくる爺さんとグレゴリー、グレゴリーの方は何とか意識は回復したようだ。朦朧とはしているがこの状況を見て納得する
グレゴリー:「まさか、子を養うために湖の植物を。そりゃ、生活するためだから仕方ないか」
ダニエル:「全ては、子を思う親心が招いた出来事だったというわけか…」
村長が全員に振り返る
村長:「古老が居ないので後をつけてきたがお前達は、金さえ貰えばどんな非道な事をやってのける連中でも、魔物を倒しまくって武勲をたたえてもらいたいだけの英雄気取りの連中でもないようだな」
そしてこう付け加えた
村長:「お前達なら信頼できる。よろしい。村の滞在はいつでも許そう。翼竜の世話は我々に任せておけ」
その様子をみると翼竜は挨拶しようとしたのか?大きな一声を上げた
ジャック:「英雄ってがらじゃねぇが、家族は大事だからな」
グレゴリー「親御さんか、そりゃ、必死なわけっすよ」
二人の意見に爺さんが後を追うように
ダニエル:「これからは村一同で共存していかんとな。改めてよろしく頼むぞ。翼竜よ」
その後、翼竜との和解が成立した後、村では俺たちの功績をたたえるパーティが夜遅くまで開かれた。今後は災難に襲われる事はないだろう。そう願ってのパーティだった
そうして…
俺たちが村に戻ったその夜のことだった
誰かが俺の家の扉を叩いている。誰だ?こんな遅くに…眠たい頭を働かせて扉を開けるとそこにグレゴリーが、こちらは寝着姿なのにグレゴリーは相変わらず普段着だ
ジャック:「ふぁぁ。なんだいこんな遅くに」
するとグレゴリーの大はしゃぎしている事、まるで子供のようだ
グレゴリー「ジャック!ジャック!夜中に悪いが外を見てみろって!?」
相変わらず派手なはしゃぎぶり、何がそんなに素晴らしいのか?
ジャック:「何があった?」
夜空を見上げてみろ。と言うので見上げるとそこには見事な蒼い月が…この世界でめったに見れないくらい蒼く光る月…あれがこの世界の人々が神聖視する蒼い月だというのか…?
グレゴリー:「今日は満月の日ってんで外に出たら蒼い月が見れる日だったって訳だよ。いや~素晴らしいな。師匠から一度はあの月で取れる鉱石を加工して一品を作ってみろ!って言われてるけどやはり実物を見ると良いもんだ…ジャック?ジャ~ック。どうした?何で泣いてんだ?」
俺は思わず涙を流していた。何故だろう?あの蒼い月を見るだにつけ。涙と悲しみが止まらない
ジャック:「あ…ああ、そうか。頑張ってくれ。俺は…」
全てを偏在なく照らす月、それは太陽のそれと全く変わらない神秘的なものであった。誰もが憧れるのも分かる
グレゴリー:「何で泣いて…は!…」
それ以上聞こうとしてグレゴリーは抑えたようだ
グレゴリー:「俺っちさ!決めた!村を出てあの蒼い月に行ってみる!」
突然の知り合いの決意。こうなりだしたらグレゴリーの奴は止まらない。一人でも目指そうとするだろう。だが知り合いを一人で行かせるのは危険だ。ならば
ジャック:「俺も行っていいか?一人で目指すのは余りにも危険すぎる。それに、俺も行ってみたい…」
そう言うと、思わずグレゴリーはガッツポーズを取った
グレゴリー:「しゃ!決まり!明日、村長とかに挨拶に言ってこようぜ!」
次の日
俺達が月を目指す。と言うことを聞くと村の人々は快く送り出してくれた。つらくなったら何時でも戻ってきてくれ。その一言が何よりも頼もしい言葉だった
ジャック:「なぁにちょちょいっと散歩に行くようなもんだ」
グレゴリー:「行こうぜ!ジャック!道は険しいがこれは楽しい冒険になりそうだぜ!」
グレゴリーと共に歩き出す。果てしない旅路に向かって
ジャック:「ありがとよ。この村が俺の故郷なんだからよ。当然じゃねぇか」
ブルームーン…それは、蒼き月に憧れる人々のお話
エピソード1 完