マダラさんの日記
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日記一覧
マダラ | |
2020/06/01 18:37[web全体で公開] |
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マダラ | |
2020/06/01 01:16[web全体で公開] |
😶 氷の姫君 ちょっとあとのこと(▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)札幌の街では、ゴールデン・ウィークにやっと桜が咲く。 全国区のテレビやコンビニエンスストアの看板なんかはもうとっくに夏を見据えた展開をしていて、毎年この時期は春に置き去りにされたような気分になる。花見の場所取りの仕事を請け負うことが多いために桜こそ見る機会はあったが、そんな一人ぼっちの仕事が楽しいわけもなく、むしろ周囲の浮かれた雰囲気と自分を比べてしまって沈んだ気分になるのが常だった。 けれど今年の僕は、妙に浮ついた気分でいた。長い冬の終わりを前に、身体の中の細胞の奥にある、人間ではない部分が騒いでいるような。それでいて穏やかな春の風の中に含まれた眠り薬に、うっかりと身を委ねてしまいたくなるような。そんな気分だ。今年の冬に街を襲った寒波が、特別強烈だったせいだろうか。いや、そんな理由じゃないのは分かりきっている。だって……。 「──お兄ちゃん、ねえ、お兄ちゃん!」 と、病室の窓の外の街を覆う桜を眺めながらそんなことを考えていた僕の意識を、ベッドに横たわった妹──千歳の声が現実に引き戻した。膝の上の聖書を閉じ、僕は彼女に顔を向ける。 「ああ、悪い。どうかしたか?」 「どうしたもこうしたも、ずっとぼおっとしてるじゃない。お見舞いに来てくれても、それじゃ張り合いないんですけど。……ほら、神父さまから手紙来てたよ」 その言葉に僕は思わず眉をあげ、千歳の手元の白い便箋と、そこに書かれたかっちりとした文字に目を向け、やれやれと首を振った。 「……どこまでバラした?」 「こないだ電話でぜーんぶ話したわよ。私の病気のことだけで精いっぱいな感じだったのに、お兄ちゃんに娘ができたって聞いたときの驚きようときたら、そのままひっくり返って死んじゃうかと思ったんだから」 「語弊のある言い方をするんじゃない」 「だって、養子とはいえ、お兄ちゃんがその歳でパパになって、私は十五歳でおばさんだよ? 氷愛ちゃんかわいいからいいけどさ。……神父様、お兄ちゃんとも話したがってたよ」 「合わせる顔がない」 目を合わせずにそう応えて肩をすくめる僕に、千歳は特大のため息をついた。 冬の事件で千歳が感染した、人を人でなくする恐ろしい病気は未だ治ってはいない。けれど進行を抑える薬の量産体制はすっかり整って、完治させるための研究も着実に進んでいるようだ。研究チームの中心には心強いことに久々知さんの名前もあるらしく、おかげで僕も、病床の千歳に自信を持ってきっと治ると言うことができていた。 「ところで」ふっと千歳が便箋から顔を上げて言う。 「今日はお花見なんでしょ? 早くいかないと」 「そうだけど、ほんとにいいのか、千歳? 僕だけ行っても……」 「いいに決まってるでしょ。お兄ちゃん、私より全然頼りないんだから、良くしてくれる人のことは大切にしないと」 彼女がそう言い終わるのと同時に、病室の外で、おにーちゃん、おねーちゃんと呼ぶ、幼い少女の声がした。窓から穏やかな春風が吹き込み、千歳の頬にかかった長い髪を揺らす。 「……氷愛だ。それじゃ、今日は行くけど、また来るからさ」 「うん。あ、お兄ちゃん」 席を立った僕を引き留め、千歳はにこりと笑った。 「助けてくれて、ありがとね。皆にも伝えて。本当に、ありがとうって」 満面の笑みを浮かべる彼女に、僕も頬笑みを返した。 ***** 花見の名所はひどく騒がしかった。むせかえるようなももいろの連なりのなかを歩く僕の手を、急がないと逃げられてしまうとでも言いたげに氷愛が引く。雪をのっけたまま春を迎えてしまったような白い髪と赤い目に、周囲からは奇異の視線が向けられるが、今の彼女はそんなことなど気にしていないようだった。 先にこちらを見つけて、鮫島さんが大きく手をふって声をかけてくる。最近は家族が増えた僕の為に、実入りの良い、それでいて手を汚さなくていい仕事を優先的に回してくれる。ありがたい限りだ。 氷愛の声に、女子高生の集団に取りかこまれていた颯太さんも飛んでくる。まあ……いい人なのは確かだし、あの事件の後は僕もいっそう世話になっているけれど、まだ氷愛を彼の家に泊まりに行かせる許可は出していない。 久々知さんは草に留まった蝶を熱心に眺めている様子だ。こんな日にまで生物オタクを発揮しなくてもとは思うが、彼女のそういう部分に、あの日の僕らも、千歳も助けられたのだ。これからは好奇心から妙な事件に巻き込まれないことを祈るばかりだ。 氷愛の後ろで彼らを眺める僕に、鮫島さんが花見弁当を手に声をかけてくる。僕も笑みを浮かべて、皆の輪に入っていた。 神父様、僕、この街でなんとかやっていけそうです。 そう呟く僕の頬を、やけに冷たい、それでいて穏やかな風が撫ぜる。誰かに見られているような感覚に空を見上げ、僕は突き抜けるような青空に、小さく手を振った。 おわり 以上となります。先日参加させていただきました「氷の姫君」(KP:Adam様)のマダラのPC、佐久間深雪の後日譚のようなあれそれです。妹を助けたいと頑張っててたら、家族が一人増えてたよ。 ハンドアウトをもとにキャラを作るのは初めてでした。そして今回担当したHOはキャラの近しい人が失踪するというもの。失踪する人物に妹を設定し、一週間あれこれ考えていたので、妹絡みのシーンは気持ちが入っちゃいましたし、他のPLさん方がメインの探索目的が他にいる中でも彼女のことを気にかけてプレイしてくださっているのがとてもうれしかったです。千歳ちゃんからのありがとうも伝えたくてコレを書いたところもあります。 あとはNPCの氷愛ちゃんがとにかくかわいかった! 佐久間はぶっきらぼうなひねくれキャラだったんですが、自分とも妹とも重なるような境遇の彼女には優しくならざるを得なかったです。それにかわいいんだもの。だってかわいいんだもの。 だから氷愛ちゃんだけに心を開く感じにしようかなと思ってたら、皆さんのPCもとても素敵なロールプレイで佐久間に良くしてくれるので、彼は当初の想定よりもなんか、大分人と話せるやつになってました。 そうして最後は大団円のハッピーエンド、自由度が高いシティシナリオで、ちゃんと必要な情報を得ることができているのか不安なところだったので、本当に良かった……! 個人的な心残りは、振るわないダイス目も相まって探索・戦闘ともにあんまり貢献できなかったところと、あとはRPがぜんぜん上手いことできなかったところですね。皆さまをお手本に精進していきたいところです。 それではこのあたりで。読んでくれた方々、同卓させていただいたもなか様、ココ様。ラチャ様、そしてKPのAdam様、本当にありがとうございました!
マダラ | |
2020/05/26 00:25[web全体で公開] |
😊 週末から今晩にかけて(▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)3つのセッションに参加させていただきました。初めましての方が殆どの中、大変よくしていただきました。こちらも楽しいセッションの一助となれていたならいいなと思います。 以下短いようなそうでもないような感じの感想、ネタバレ注意(参加セッションだけでなく、PCが過去に通過したシナリオのネタバレも入ってます。少しでも危険を感じたらブラウザバック推奨です) 『LOVE DISCHORD』 KP:瑠奈さま マダラのPC:琴平優李 マダラにとっては二度目のシティシナリオ、二度目の高校生探索者。ちなみに一度目はほんの半日前に参加した『五月雨屋敷の走馬灯』というなかでのセッション、同日の明け方に幕を閉じたそちらの余韻と眠気を残しながらの参加となりました(そちらの感想は既にあげております)。 とはいえ今回のPCである琴平は軽音部員で『五月雨屋敷』の三村とは全然違うキャラ。もちろん同級生や周辺人物も全然違って、また一つ楽しい青春の物語を経験することができました。芸術(ギター)は沢山振って沢山成功させられて満足だったけれど、ギター(“大きな棍棒”ベース)の方は一度もロールできなかったのが心残り。 結構な数出てきたなぞなぞも大変楽しませていただきました。ああいうのって一度解けないまま解説されるとそれっきりなので、解けずにKPからのヒントをもらったところはとても悔しかった。 あと濃いNPCたちがとても好きだった。特にヒロイン的立場の同級生に関してはマダラは致命傷で済んだけど琴平は惚れたんじゃないかな。 『魔女裁判』 KP:hiroaki(^ω^)bさま マダラのPC:会沢龍美 PC二人のシナリオで、今回の相棒だったのは #青山で青山な青山っぽい青山さま宅の間宮さん。今回マダラのPCであった会沢と彼とは前に一度 そばうどん様の卓にて『瑠璃色絵画』を共にし、そこでとあるNPCの少女を救えず心に同じ傷を負った仲でした。 そのため、今回のシナリオ概要の「とある絵を見ていたことをきっかけに不思議な経験をすることになる」という謡い文句、『魔女裁判』というタイトルを見て「あー、これはひょっとしてリベンジかもな」と思いながらの参加となりました。 そんな背景もあり、通常以上にロールプレイやNPCに向ける目に熱がこもってしまったような気がします。見ていた絵とまるで同じ街で出会う人々との数日間の暮らし、心が洗われるような幸せな暮らしとそこに起こる悲劇。『瑠璃色絵画』で負った心の傷(“一夜を明かすごとにSAN値減少”という形をとっていました)と、それが見せる苦しむ少女の悪夢も、今回の会沢の行動に強い影響を与えました。彼の苦しみが一種特別なリアリティを持って自分にも襲い掛かってくるような気分でした。 クライマックスは本当にダイスの振るたびに息が止まるような緊張に襲われました。だからこそ、そんな中響いたとあるキャラの言葉と、そこから流れ込んだハッピーエンドには心が強く揺さぶられるのを感じました。 そうです。ハッピーエンド。その後の間宮さんの「今度は救えたねえ」という言葉が全てでしたね……前セッションの他PCのことなんかも思い出して。俺、やり遂げたよ……みたいな気分になってました。 なんだか前セッションの話ばかりしてるみたいなってるな……。当然のことですが、『魔女裁判』がそんな風なこちらの想いを受け止め倍で返してくれるような素晴らしいシナリオとKPさんだったということです。何よりNPCや彼らの生きる中世の街の描写が素敵。中世はあんまりないかもだけど、現代以外の時代を舞台にしたシナリオもプレイしてみたいと思いました。 『うそつきだれだ』 KP:アメマス/FIG@元絵描き職人さま マダラのPC:渡会南 いやもう笑った。めっちゃ笑った。 以上です。嘘です。もう少し続きます。 いやでもあの笑いはその場を経験した人にしか分かんないかもな……KPが「早いと一時間くらいで終わる」と言ってたにもかかわらずがっつり二時間かかったということから色々察してください。棺桶ダンスを生業とするPCが二人も来ると思わないじゃん。 マダラのPCは渡会。奴は結構変なことする奴なのに苦労人とかツッコミとかに収まることが多いですね。理由は単にマダラがボケに行くの苦手ってだけなんですけど。 茶番を求められる場面とかでちゃんと面白いことしたいのにどうにも苦手なんだよなぁ……こう、自分はツッコミの時の言葉選びとか、或いは真顔で妙な行動に出る感じとか、そういう「平熱のユーモア」で勝負していきたいなと思う今日この頃です。 シナリオのギミックもとても楽しく、短時間ながら大変濃い体験をさせていただいたセッションでした。 感想は以上です。3つ分とはいえべらぼうに長いな……わざわざ読んでくれた方はありがとうございます。 いやオンセ楽しいですね。すっかりはまってしまいました。今度は異性の探索者も作ってみたいなと思いながら、今日はこのあたりで。
マダラ | |
2020/05/24 15:54[web全体で公開] |
😶 五月雨屋敷の走馬灯 それから 三村桐野の場合(▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)以下は5月22日に開催されたセッション「五月雨屋敷の走馬灯」(KP:ダイン様)にさんかしたマダラのPC「三村桐野」の、シナリオ後のアフターストーリー的なものです。同セッションで同卓させていただいたりちゃ様の感想形式に触発されて書いたものとなります。ネタバレ注意です! 隣町に向かう鉄道の路線には、一瞬だけ海が見える場所がある。晩夏の陽を浴びて、蒼い海面がきらきらと光る、その光に目を刺され、僕は思わず目を細めて、視線を手元の古びた本に落とした。 救いのない話だ。最初に読んだときは単にそう思った。戦争の悲惨さを描いた、辛いけどよくある話。小学生の頃に国語の教科書で読んで、それきりあとは目を背けるような話。今までもこれからも、世界から消えることはきっとない、悲しいけどありきたりな話だと。 けれど、今はもうそんなこと言えない。 見てしまったから。 聞いてしまったから。 そう、僕は触れることさえしたのだ。 藍川の後に図書館であの本を借りて、一晩かけて読んだ。塩辛い水に頭の先まで使って悶えるような、そんな苦しい物語だったけれど、それでも、そこには想いがあった。決して忘れないという。誰かから誰かへの、波の音のように微かだけれど消えることのない、誓いがあった。 忘れないことが、想い続けることが、あんな風に誰かを救うなら。救えるなら。 そうだ。それが僕の目指したことだったじゃないか。 ***** 新聞部で隣町の無名の作家について特集記事を組みたい。そんな僕の提案を聞いた部長の顔には明らかな侮蔑が浮かんでいた。 入部して以来、この人とは徹底的にうまが合わない。僕の書く記事や取ってくる話題は、彼に言わせればいささかロマンチックで非現実的に過ぎるらしく、そのおかげで僕は春からずっと、部内での孤立を強いられていた。一丁前に異端児を気取ることができればいいのだけれど、僕はこの男の視線の前では委縮してしまって、目を伏せながらしどろもどろになってしまう。 「ゆきやま……聞いたことないな。桐野くん、なんでまた、これを書こうと思ったんだい?」 苦笑いと共に部長が投げた問いに、呼吸が詰まるのが自分でもわかった。心は既に背を向けかかっている。 逃げてしまえよ。 いいや、お断りだね。 そんな風に自答して、僕は息を吸う。 頭の裏側で、凛とした唄が響く。 それは古い御伽噺。誰かの誓いの物語。 「……正直、理由はわかりません」 その目を真っ直ぐに見据え、僕が放った言葉に、部長は眉をあげる。 「ただ。書かないといけないと思ったんです」 知ったなら、見たなら、それはもう誰かの誓いじゃない。僕らの祈りだ。 その後のことは、正直緊張のせいでよく覚えていない。部長が僕の目を見返して、重々しくうなずいたことは、なんとなく覚えている。 案外やるじゃない。そんな言葉と共に、誰かが背中をとんとんと叩いた気がした。 ***** 透明な潮風が頬を撫でる。あの時とおんなじ夕方の海岸で、僕は額に浮かんだ汗を拭い、お気に入りのスポーツ・ドリンクに口をつけた。 一日をかけて街を歩き回っての取材は、情けないことに自分の未熟さを痛感する結果となった。あの時にやっていたみたいにうまく頭も働かず、求めるものを見つけるための糸口も見えない。 そんなわけで、僕は小さな失望感と共に海を眺めていたのだけれど、そのうちに、軽い笑いが口から漏れた。 「まあ、そりゃそうか」 この海だって、一人で来てたら、飛び込もうとか、泳ごうとか、思いつかないもんな。いや、思いつかないよな。普通。 そう呟いた瞬間に、背中に鈍い衝撃が走った。ぐえ、とかそういう言葉にならない呻きをあげながら前のめりに転んだ僕の頭上で、賑やかな声がする。僕はため息をついて、痛む腰をさすりながら、立ち上がると、声の方向を睨みつけた。 「……なんでいるのさ」 というか挨拶代わりにスーツケースで突っ込んでくるなよ。そう抗議する僕の言葉も彼らは意に介さない。抜け駆けはズルいとか何とか言ってくる阿良川の横で、秋を前に細々と営業している数少ない海の家を見つけた小守が早速鴎にたかっている。藍川は海に目を向けているけど、今日はちゃんと水着持ってきてるんだろうな。 そんなことをあれこれと言いながら、僕は小さく微笑む。 友達と海なんて、ほんの半年前の自分には想像もつかなかったけど、案外悪くない、そんなことを思う。 いや、そんなことを思っている暇もないか。こうやって気を逸らしているうちに皆の話はまた明後日の方向に向かっている。海まで来ておいて結局いつものファミレスに行くのか。まあ、別にいいけど。 と、一瞬夕日を受けた海面がきらりと光って、僕らは皆ふっと黙って、そちらに目を向けた。 そう、一瞬だって油断がならない、息を吐く暇もない、やりたいことがいっぱいのそんな日々の中で、僕らはたまに海を見る。あの夕暮れのことを思い出す。 それが僕たちの──いや、わざわざこんな言葉を使うのは気恥ずかしいけれど、まあ、ほかにふさわしい言葉も思いつかない。それなら、きっとその言葉は、僕たちの為に、この瞬間の為にあるということなのだろう。 だから、これがきっと、ちょっと風変わりな、それでも眩しくてあたたかい──僕たちの青春のかたちなのだ。 〈おわり〉 以上となります。長々と読んでくれた皆様、ありがとうございました。三村はきっと今回の件で新聞部員として目指す理想と、大事な友人を見つけられたことでしょう。 切ないけれど爽やかな、青春って言葉以外で言い表せないような素敵な物語でした……終わった後もしばらくモチーフソングだという曲を聞きながらしみじみしていた。 最後の方、PCの三村の目を通して見るNPCのことが物凄くいとおしく感じられてしまって……その気持ちの何パーセントかでもRPに乗せられてたらいいなあっておもいます。自信はないですが。 この形式の振り返りとても楽しいな……これからも、全部とはいかないかもですが。気が向いたらちょこちょことやっていくかもしれません。 そして改めて、木枯らしさん、りちゃさん、柏木@さん、そしてキーパーのダインさん、ありがとうございました!