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😶 こないだのスタリィドール の、存在しないOPです(妄想) 現代の魔女の工房は、清潔で明るく、非常に文明的だった。 暖かな暖炉の光と、歯車の唸りが途切れることなく続いている。OSは最新だし、テレビも薄くて大きかった。壁には、鳩時計ならぬフクロウ時計が引っかかっていて、機械仕掛けのフクロウがこっくりこっくり舟をこいでいる。 テレビの前では、小さな子供ぐらいの人形が三人、同じぐらい小さな椅子に腰かけていた。 画面では、正義の人形と悪い人形たちのアニメが流れていた。 「だって僕は“自分を信じている”もん」 「自分を信じて“夢”を追い続けていれば」 「夢はいつか必ず叶う!」 瞳の中に、紅の宝石を持つ人形は、派手なアクションに大興奮で、敵でも味方でも、誰かが吹っ飛んでネジと歯車がばらばらになるたびに、手を叩いて大喜びだ。 反対に、虹の宝石の人形は、気弱な面持ちで、登場人物の悔恨のセリフに同乗して涙ぐんだり、爆発するたびに「ひっ」と悲鳴を上げたりしていた。 虹色の、怖がりな手が恐る恐る隣に伸びる。赤色の手は、喝さいを上げながら、それを「ぎゅっ」と握り返した。 「オ~イ。 レベッカ、ヒース。……ん、シャロンもか」 声に呼ばれて、テレビの二人と、同じ椅子でお行儀よく膝に本を乗せていた、もう一人の人形も振り返った。 翡翠の人形の、瞳に据えられたエメラルドが、暖炉の光でチカチカと瞬いた。 「なあに、メイガスさん? ……またなにか、レベッカがしでかしたのかしら」声音はのんびりとしていたが、くすくすという笑い声には面白がるような響きがあった。 「それに、まあ。後ろにいるのはおばけさん? はじめましてね」 翡翠の人形の視線が、工房の魔女から、その背後に移される。それを知って、魔女は我慢できなくなったように小さく苦笑した。 魔女の背後には、ねじねじと黒く波打つ、いかにもな形をした魔女の帽子が、床から足を生やして歩いていた。 それは、アレキサンドライトの宝石の人形が、子供らしい献身の気持ちからお手伝いで運んでいるのだった。しかし、なにしろ帽子がとてもぶかぶかで大きいものだから、持つというより黒い筒が一本にゅっと生えているようにしか見えなかった。 魔女が、帽子のとんがった天辺を指の二本でちょこんと持ち上げると、アレキサンドライトはちょっと浮かび上がって、その場でじたばた手足を振り回して、それから「ぽとっ」と落ちてきた。 何事か、と戸惑うようにあたりを見回して、苦笑する魔女と目が合う。あっという間に林檎のように赤くなってもじもじと俯いてしまった。 「持ってくれてて、ありがとさん、シルフェル」 「い、いえ……ご主人様のお役にたてれば……」褒められると、ますます赤くなって消え入るように小さくなってしまった。
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