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💀 怪談:エレベータは何処にある? (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)久々の怪談投稿です。 今回は少し長くなりました、1900文字程度です。 このお話はフィクションですので、あまりお気になさらず。 皆さん、もっとも身近な密室って何だと思いますか? 私はエレベータこそが人々の生活の中に紛れこんだ密室だと思います。 階を移動している間は小さな部屋の中でどこにも行くことが出来ず、緊急時に取れる手段も電話をかけるだけ。 なんとも頼りないとは思いませんか? もしもエレベータを吊るしているケーブルが切れてしまったら? もしも凶悪犯と同じエレベータに乗ってしまったら? そう考えるとエレベータに乗るのが少し怖くなってしまいます。 エレベータの怖さはそれだけではありません。 今のエレベータの多くは電光表示で今自分が何階にいるかがわかります。 しかし、少し古いものだとその表記もなく、ただ静かに上り降りをするのです。 さらに扉がガラス張りになっていなかったとしたら、もう私たちに外の様子をうかがう手段はなくなってしまいます。 微かな浮遊感で上下に動いているかが、動いた秒数で大体の移動距離は推測できますがそれ以上のことは分かりません。 暗闇の中にいるのとほとんど同じようなものだと私には思えます。 臆病だと思いますか? 貴方もこんな経験をすれば同じような気持ちになりますよ。 これは、私の大学時代の話です。 バイト先を探していた私は、とある小さくて少しぼろっちいビルへと面接を受けに来ました。 面接の会場は4階とのこと。 階段を上るには少し大変な距離だったので私はエレベータを使って上りました。 上るときは問題なく4階で降りて、面接会場へと向かうことができました。 その後、面接はつつがなく進んで、もうそろそろ終わろうとする頃に面接官は奇妙なことを言われました。 「帰るときはエレベータを使わない方がいい。少し遠回りになるけど階段があるからそっちから降りなさい。」 その時は面接の一種かと思いました。 でも、エレベータの前まで戻ってきたときに確認してみましたが、そのビルのエレベータにはエレベータが何回にあるかを表示する部分がありませんでした。 監視カメラがあることも考えましたがそんなものがあるようなビルとは思えませんでした。 それに、面接で気疲れしていた私はとてもじゃないけれど階段を下りる気分にはなれませんでした。 私は面接官の言うことを無視してエレベータで降りることにしました。 エレベータの中は両手を広げることが出来ないほど小さくて、扉の上にあるうすぼんやりとした古めかしいライトが階を表示していました。 私は何となくそのライトをジーっと見つめていました。 ライトは順番に光りほどなくして1階のライトが点きました。 しかし、エレベータは止まる様子を見せません。 あれ? 階のボタンを間違えたかな。 そう思ってボタンを見ますが、確かに1階のボタンが点灯していてそれを押していたことがわかります。 不思議に思って、また階の表記を見上げていみるとB1、B2のライトが順番に灯ったかと思うとついにどのライトも消えてしまいました。 それでもまだエレベータは止まりません。 前身に感じる小さな浮遊感と外から聞こえるモータ音で下っていることだけは分かりますが、このエレベータが何処へ行こうとしているのかもわかりません。 焦りと訳の分からない事態への恐怖で自然と呼吸が浅くなっていました。 降り始めてから5分後、ようやくエレベータが止まり扉が開きました。 外は真っ暗でエレベータの照明が照らす範囲しか見えませんでした。 しかし、外から聞こえる獣の唸り声、ひたひたと何かが這いずってくる音。 そして何よりも照らされ地面が茶色い地面だったことでそこが異常な場所だってことは分かりました。 急いで扉を閉じると、がんと何かがぶつかってくる音と荒い獣のようなうなり声が聞こえました。 私はあわてて全ての階のボタンを押しました。 軽く地面に押し付けられる感覚と共にエレベータが上っていきます。 そして、扉が開き古ぼけたビルの姿が見えると同時に転がるように飛び出しました。 幸い、私はまた元のビルの4階に戻ってこれたようでした。 その後、階段を下って帰った私は普段と同じような日々を過ごしました。 ただ、例の日に受けた面接の結果が来ないため問い合わせてみたところ、そんな面接はしていないという答えが返ってきました。 私は今でもたまに不安になります。 あの面接官は人間ではなかったのか。 それとも、あのエレベータは本当に元の世界に戻ってきていたのか。
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