愛善院さんの日記 「クローゼット」

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愛善院
愛善院日記
2020/07/20 23:31[web全体で公開]
😍 クローゼット
シナリオの種になりそうなのでメモ。


とあるキューブが
頭の中に住む私の頭に
こつりと降ってくる。

チョコレートだと思ってかじっても、
コンソメスープの素だと思ってお湯を注いでも、
サイコロだと思って転がしても、

それは、私の頭の中に住む私が
およそ自由闊達に
「操作」だとか「処理」だとかを行うものだ。

そのキューブが、それなりに興味深く、
何かをすれば、劇的な何かが起こるかもしれない
という、興奮と好奇心が失われなければ。



私は、頭の中の私のやるそれを
可能なかぎり冷静に観察していかねばならない
と、自分自身に課している。

なぜなら、そのキューブが
「いかなる作用でいかなるものになるのか」
私にも、頭の中の私にも、
判断がつきかねるからだ。


ある時、頭の中の私は、
そのキューブに何を思ったのか
クリップのような針金を使って、
グリグリと隙間をあけた。

たちどころに、そのキューブは、
クローゼットとなって、ガタガタと震え出す。

私の頭の中の私は、
それを見て、慎重に、その扉をこじあけた。

中から、小さな私が

覚悟を決めて、頭の中の私の鼻っ面に飛びかかる。

と、見る間に、
頭の中の私は、
その小さな私をするりと飲み込んでしまった。

こうして、
私の頭の中の私は、その頭の中に
小さな私をすまわせたのだ。


私は、いま、クローゼットの中にいる。
息をころして。
泣き出しそうな
悲鳴をあげそうな苦しみを隠すために。

きっと、外に出れば、
私は私の想像する限りの大きな私に
吸い込まれてしまうのだろう。

そして、その大きな私は
何事もなかったように、私となるのだろう。

そして、やはり、
苦しみを押し隠すクローゼットがあって……。


私は、頭の中の私の頭の中の私の……
延々と連なった私に操作される観察者で

同時に、
私の想像する限り大きな私を飲み込んだ
さらに大きな私の……
延々と連なった
私に観察される矮小な頭の中の者でもある。

……
とあるキューブが、
どこかの次元の私の頭の上に落ちてくる……。
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レスポンス

フィルヒョウ
フィルヒョウ愛善院
2020/07/21 06:11[web全体で公開]
> 日記:クローゼット
マトリョーシカが積み重なっていくのは分かったのですが、人は自分の苦しみを飲み込んでどんどん低次に追いやっていくということ?
この心の動きにあまり共感できなかった。
みさか
みさか愛善院
2020/07/21 00:08[web全体で公開]
> 日記:クローゼット

以前、誰か心理学者が言っていたのですが
歳を取る=成長する、というのは子供の心が大人になるのではなく
幼い心の上に少し大人の心、さらにその上にまた少し大人の心、
というように重層的に重なっていくものである。
したがって幼い心は幼いまま、ずっと心の奥底に残っている…
と言うような話をふと連想しました。

印象深い文章だったので思わずコメントしてしまいました。

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