りちゃさんの日記 「Life goes on それから」

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りちゃ
りちゃ日記
2020/05/30 19:01[web全体で公開]
😶 Life goes on それから
目覚ましがなるよりはやく起き出して顔を洗う。
鏡の中からわたしがわたしを見返してくる。

おはよう、と言おうとして言葉が喉に引っ掛かった。
顔、顔、顔。

三面鏡に映ったわたしたちの顔がぐにゃりと歪んで苦しそうにわたしを見返してくる。
左の鏡に映った右の鏡に映ったわたしの顔が。
右の鏡に映った左の鏡に映ったわたしの顔が。
顔、顔、顔が、たくさんの顔が。

お、お、おは―。


わたしが占い師を休業して1か月が過ぎようとしていた。
それはあの出来事からもう1か月が過ぎたということでもあった。

人が怖い、正確には人の顔が怖い。
たくさんの人の顔が怖い。

わたしは言葉をうまく人に伝えることができなくなっていた。
それは話すことはもちろん筆談さえもそうだった。

幸い自由業みたいなものだったので仕事を一旦たたむことは誰の迷惑にもならなかった。

以来、わたしは自宅に籠って貯金を切り崩しながらリハビリを続けている。
病院の世話にならなかったのは、なんとなく避けたい気持ちがあったのかもしれないけれど、意地のようなものもあったと思う。

これは正しく与えられた代償だったという思いと、だとしたらどうにか乗り越えられるという確信めいたものがあった。

右足を踏ん張ると右肩にそっと触れ、ゆっくりとなでおろす。
二の腕、肘、腕、手首、そして指先へ。

『いまはキミがそばにいる 迷わずに踏み出すんだ』


思えばたくさんの励まし、忠告を、おべんちゃらを送ってきた。
他人の望みを、恐れを、言葉にのせて手渡して、ワンダラー・アキはそうやって生きてきた。目深に被ったフードローブで本当を包み隠して。

それが必ずしも悪いことだとは今も思わないけれど、言葉を伝えることができなくなった今、本当の言葉が欲しくなった。

『キミが教えてくれた 自分らしくあることを』

無邪気に笑うあの子のことが、敵意にさえ優しかったその心根が、
仲間と重ねた指先が、
わたしを奮い立たせて、背中を押してくれる。

テレビではもう名前を聞くこともなくなったけれど、わたしは覚えていよう。
ずっと、ずっと覚えていよう。

それは、過去に縛られるというのじゃなくて、わたしの背中を押してくれる思い出を、残してくれたわたしと一緒に、未来を生きたいと思った。
フードを脱ぎ捨てて、わたしの言葉を紡いでいきたい。


『瞬く星の向こう 夢見た未来描こう
 だからその時は 一緒にいようよ』


人生は、続いていくのだから。


ーーーーーーーー
先日、そばうどん様キーパーでぱぱぴっぷ様作の「Life goes on」に参加させていただきました。

これは大変なシナリオで、ネタバレせずに誉めるのが難しいのですけど考えさせられるシナリオだったと思いますし、まさに即興劇のウェイトが大きくてキーパーの負担やいかほどと感心するやらありがたいやらでした。
しかも今回使ったキャラクターは、開始前にキーパーのそばうどんさんに「大丈夫ですか」と心配されてしまったのもやむなしな怪しげ設定でしたが、その割に活かしきれなかったのは未熟さを痛感したところでした。その節は心配をおかけしてすみませんでした。

というわけで後日譚妄想です。
シナリオタイトルを見た瞬間から、Chemistryの「Life gose on」と繋がってしまって、せつなさが爆発していました。今回の文中の『』内は歌詞引用です。このシナリオを体験した方にはぜひ一度聴いてみてほしいです。
自分の言葉が欲しいという切っ掛けは、ワンダラー・アキこと田中弘子の経験したことはもちろんですけど、一緒に探索した東野洋子さんの説得が格好良く決まっていた時自分は言いくるめしか持っていなかったことだったり、平川おとさんが他3人が不定落ちしたときに立て直した姿だったり、佐藤太郎くんの全体をみてカバーするような動きだったりに触発された結果だったと思っています。
Life gose on、いい言葉だと思います。

改めまして、ゆねさん、akumuさん、四柳ののかさん、そしてキーパーのそばうどんさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者のぱぱぴっぷ様にも感謝です。
またよければ一緒に遊んでください。
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