りちゃさんの日記
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日記一覧
りちゃ | |
2020/12/03 23:36[web全体で公開] |
りちゃ | |
2020/09/27 18:59[web全体で公開] |
😶 腕に刻まれる死 それから ある日の夕方、わたしは自室で大学のレポートを仕上げていた。 あらかた書き終えて思い切り伸びをすると、肩がぽきりと鳴った。 思わず、あ、と小さく声を漏らして、そのままゆっくりと腕を下す。 異常がないことを確かめると、ため息をついて背もたれに倒れこんだ。 お医者さんはもう何ともないと言ってくれたけれど、体中がこわばるようなあの感覚はまだありありとした恐怖としてこびりついていた。 手首を返して腕時計を見ると、秒針がかちこちと時を刻んでいる。 同時に、その下の皮膚越しに血管が同じリズムで脈打つのを感じる。 次第に紅い血潮が次第に熱を帯び、どろどろと蠢くような錯覚を覚えた。 目が、霞む。 脈動が、早まる。 イメージが視界いっぱいに広がっていく。 そして冷えて固まったところからぷつりぷつりと人の顔が浮かんできて、口々にわたしを攻め立ててきた。 お前のせいだ、きっとうまくいかない、どうして助けてくれなかったの、楽にしてくれ、許さない。 ぞろり、ぞろりと腕から這い上る恐怖に顔を伏せそうになる。 と、部屋のドアがノックされる音がしてわたしは椅子から立ち上がった。 ドアをあけた母さんが、夕飯出来たからそろそろ降りてきなさいと声をかけてくる。 わたしは振り返らないまま、わかったすぐ行くよと答えた。 冷や汗が一筋、背中を伝っていく。 ひとつ、ふたつ、みっつ…。ゆっくりと数を数えながら深く息を吸って吐く。 それから、ぱん、と両手で頬を叩いた。 頬がじんわりと熱くなって、段々と気持ちが落ち着いていくのを感じた。 夕飯の食卓を囲みながら、父さんと母さんといつものように他愛のない話をした。 大学の話や、父さんの新しい赴任先の話、料理の味付けの話や、最近よく連絡を取るようになった年下の女の子の話。 物静かな父さんとハキハキした母さん、芯の強い父さんと心配性な母さん。 二人のやり取りを見ていると、ぴったりはまったパズルのピースみたいに感じたし、わたしはこの二人の娘なんだなとも感じた。 そうして三人で食卓を囲んでいられることの運の良さを噛みしめた。 おかわりいるでしょ?と手を出され、ごめんなさい、と言いかけて、ありがとうと茶碗を差し出した。 父さんにも母さんにもまだ言っていないけれど、わたしは大学を出たら父さんの働く研究所への就職を目指すことに決めた。 まだ未熟なわたしだけれど、忘れたお弁当を届ける以外にもこの幸福な食卓のためにできることがある気がしたから。 この腕に伝わるものはもう、死に向けて刻まれる印だけではないのだから。 ーーーーーーーー 先日、Adam様キーパーで内山靖二郎様作の「腕に刻まれる死」に、電子工学科2年生、音無 依子(おとなし よりこ)で参加させていただきました。 ずっといつかは行きたいシナリオランキング上位だった腕に刻まれる死にやっとやっと参加することができました。SeRA研究所を訪ねる理由にせっかくなのでと職員の父親に会いに行くをチョイスしたのですが、キーパーのAdamさんがにょきにょきとキャラの名前とグラをはやしてくださいまして、それがまたイメージぴったりで。それもあって、思い入れたっぷりに演じることができて大、大満足でした。また、とあるシーンでの100ファンは見学席大絶賛だったみたいで、そちらは当時の絶望感との温度差にいまだに落ち着かない気持ちです(笑) というわけで後日譚妄想です。 ごめんなさいが口癖の依子だったのですが、色んな人にわがままを受け止めてもらったり、はっぱをかけられたりと克服していってくれたと思います。探索メンバーが揃って長身だったのでコンプレックスだった身長のことを気にしなくて良かったのもよかったかなあ。最後の言葉はあれでよかったのか、とも悩みましたし悩んでますけど、ともあれひとつの答えとして心に刻んでいきたいと思います。 改めまして、Syeruさん、ネズミさん、カニまろさん、キーパーのAdamさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者様の内山靖二郎様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
りちゃ | |
2020/09/12 14:10[web全体で公開] |
😶 知ラナイ家 それから 朝倉太郎丸の病室を訪れると、部屋の主はいつもと変わらず虚空に視線を遊ばせたまま黙って来客を出迎えた。 こちらも勝手知ったもので窓際に向かうと一瞬の逡巡の後、カーテンを開いた。 窓の外には夕暮れの街が広がっている。 ビルの群れは暗がりに息をひそめながら所々を雲母のように煌めかせ、沈みかけた夕日は秋空を橙に灯しながら、たなびく雲を薄紫に染め上げていた。 時が止まったような錯覚を覚えて身じろぎすると、窓ガラスに反射した自分の姿がその所作を真似た。 その表情を注視するが、特に変化は見られない。 平凡な見慣れた冴えない男の顔だ。 そう、もうすっかり片付いた案件なのだ、あれは。 頭を振って窓に背を向けると朝倉は視線だけこちらに向けてきた。 やたら陽気な看護婦さんの言う通り、最初に比べると徐々に回復してきている。 LINEを開くと数日前の朝倉からの着信に目を落とした。 そして思い出す。あの知らない家での一件を。 だいたいずるいんだよ。 俺のせいだ、なんて。 あんな言い方されたらこっちだって怒れないじゃないか。 どうせこいつのことだ。一人でなんとかしようとしたのだろう。 こいつのたすきを継いだ形の俺たちは、最後に報われたような気がするけれど、こいつはどうなんだろう。 あまり気にしないような気もする。そういうやつだった。 持ってきた飲み物を仕舞おうと冷蔵庫を開けてみると、カットされたりんごと日持ちしそうな惣菜がひっそりと収まっていた。 少し迷った後、そのまま扉を閉じた。 これはこれで祈りの一種なのだという気がしたからだ。 あの娘たち、また見舞いに来てたみたいだぞ、と朝倉に声をかけた。 物静かな、けれど妙な説得力のあった縦坂さん。 てっきり本屋かと勝手に思っていたけれど、ティーショップで働いているのを窓越しに見かけて驚いた。 行動的で、泣いて笑って忙しそうだった南ちゃん。 保母さんだったとかでこちらはそう意外ではなかった。彼女の料理からは時折季節外れの花の香りがするような気がした。 どちらも美人で、朝倉がどこでどうやって彼女たちと知り合ったのか聞き出してやりたくなった。 早くよくなって起きて来いよ。 そうしてまた飲みに行こうぜ、学生の頃みたいにさ。 そこで俺らがどんだけ格好良くお前の後始末したか聞かせてやるよ。 ーーーーーーーー 先日、時雨様キーパーで八重樫アキノ様作の「知ラナイ家」に、事務員の仁井谷 円治(にいたに のぶはる)参加させていただきました。 21時に突然クトゥルフしたい、というわがままから実現した卓でしたけど、和製ホラー的な怖さがあって楽しかったです。描写やギミックは洋風な展開が多かった気がしますけど、舞台が日本の一般的な家屋ってだけで勝手に脳みそが和風ホラーフィルターをかけてしまうものなんですね。加えて迫りくる恐怖とちりばめられた罠がどこに潜んでいるかというどきどき感が終始あって、3人でお互いフォローし合いながら進められたのはチームとはいかないまでも仲間感あってよかったです。 というわけで後日譚妄想です。 キーパーの時雨さんがいつもやられていることだそうですが、NPCとの間の親密度を1d100で決めるのが面白かったです。マダラさんちの藍生さんが73とまずまずだったり、柏木さんとこの南ちゃんが32と、それって本当に仲よいの?という数字だったりする中、仁井谷は96を引いて、親友ポジションいただいちゃいました。そういう訳で、導入NPCだった朝倉が、プレイ中ずっと頭の片隅に居ついていて、あいつのためにも生きて帰らないとなあ責任感じそうだしというプレッシャーがあってそれもまた楽しでした。 改めまして、マダラさん、柏木さん、そしてキーパーの時雨さん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の八重樫アキノ様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/09/08 01:19[web全体で公開] |
😶 夜華 それから 私はその日、いつものように喫茶ヴェローナで昼下がりを楽しんでいた。 足元には大きな紙袋。 買ったばかりの浴衣が包みの中に淑やかに収まっている。 夏も終盤に差し掛かっており、いささか時期を逸した感もあったが、沸きあがる高揚感を押しとどめるものではなかった。 そして、その勢いで翻訳の練習を兼ねて先日のことを文字に起こそうと考えてしまった。 これがいけなかった。 1時間もしないうちに私はテーブルに突っ伏していた。 何かの記憶違いではないかと、手帳をそっと開いて書きかけの手記に目を落とした。 最初は何もおかしくなかったはずだ。 舞台は夏祭りで、思いがけず美少年と二人きりになるくらいは青春ドラマの範疇だ。 まあ、美少年ではなく実際は年上だったのだけれど。 そのとてつもなく整った顔立ちの、背丈が私の頭二つ分くらい小さい男性と不思議な夜店を巡ることになった。 これもまだいい。不可思議な舞台のせいかそのギャップは好ましく映ったほどだ。 日本に来てからはついぞ聞く機会のなかった詩的な誉め言葉も、声を合わせた讃美歌も夏の熱気に中てられた素敵な思い出と言っていい。 けれど――。 その先を読み返すのに耐えきれず手帳を閉じて再びテーブルに突っ伏した。 さすがにこれは、何というかマニアックに過ぎると思う。 相手が美青年というのがまた背徳感を煽った。 両手で顔を覆っても、頭の中には鮮明にシーンの数々が止めどなく再生されていく。 思わず首筋に触れるとまだほんのり熱を持っているようだった。 とたんに彼の澄ました顔つきと言葉が蘇ってきた。 なんだか無性に悔しくなった私は、勘定を済ませると店を出てスマホを取り出した。 勢いのままに、そらで番号を入力して通話ボタンを押す。 どこからか祭り囃子が聞こえてくる。 今日が近所の神社の夏祭りだったことを思い出して、浴衣姿で彼の前に立つ私を想像した。 少しは驚かせられるだろうか。 そうなるといいなと思いながら、鳴り続くコール音に耳を澄ませた。 翻訳家とは情熱を伝える作業だと思う。 そしてそれはきっと人生においては特別なことではないのだろう。 ーーーーーーーー 先日、柏木様キーパーで草村英雄様作の「夜華」に、アメリカ人翻訳家Angelina Sullivan(アンジェリーナ サリバン)参加させていただきました。 不思議な祭りでわいきゃいしてきた訳です。途中から悪ノリ全開で楽しんじゃってましたけど、これはまずいですよ、まずかったですよね。アンジーはフットワークは軽いけど真面目寄りな子のはずだったんだけどなあ。こんなに日記を書きづらかったのは久しぶりです。楽しかったけどね!終盤の乱ちきの責任割合はキーパーに9割、相方だった天地志乃君のキャラ性能に1割といったところだと思います。願わくば同じ境遇を嘆きあえる被害者が増えてほしいところです。 という訳で後日譚妄想です。 と言っても完全な負け戦というか、終始振り回されてたアンジーに対して志乃君は全くと言っていいほど動じていなかったので、逆襲を試みますという話なんですけど、これがまた勝てる気がしません。絶対無理でしょう。かわいそう!キーパーにはシナリオ概要を伏せて始めたためのマッチングということで責任がありありなので、次回クリチケを5枚くらいいただかないといけないなと思いました。 改めまして、時雨さん、そしてキーパーの柏木さん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の草村英雄様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/08/23 22:39[web全体で公開] |
😶 台風の目 それから 気球はぐんぐん上昇していく。 高度計を見ると300フィート、約90mに達していた。 離陸直後には視認できていた光珠姉も、もう点にしか見えなくなっている。 先輩たちはナビゲーターから入る進行方向の地表情報と風向きからてきぱきと機器の調整をはじめた。 わたしは初めてのクルーとしてのフライトで、頭が沸騰しそうになるのをぐっとこらえて必要な作業を頭の中で整理する。 まずは計器のチェックと報告、球皮やバーナー、バラストの状態を確認。 ひとつの見落としが大事故の元になると思うと手が震えたが、なんとかひとつひとつこなしていった。 肩を叩かれて我に返ると、先輩たちが外を指さしている。 いつのまにか水平飛行に入っていたようで、そこには雄大な景色が広がっていた。 山が、畑が、電信柱に電線が、川が、道路が、目の前にいっぱいに広がって、ゆっくりと、ゆっくりと流れ過ぎてていた。 わたしはなんだか泣き出しそうになってしまって、すっご、とだけ口にした。 高度を見ると2300フィート、約700mだ。 スカイツリーも超える高さに自分が浮かんでいるというのは不思議な気持ちだった。 世界には、高度3万メートルを超える記録もあるらしい。 それくらいになると、その環境で死なないためのあれこれも必要なんだそうだ。 空には白い月がうっすらと浮かんでいる。 地球から月までの距離が約40万km。 土星までなら12億kmだ。 しばらくわたしは12億kmの距離を繋いだ去年のクリスマスに想いを馳せた。 5人で駆け抜けた台風の赤霧市。 激しい雨音、おいしそうなパンケーキ、車中のパーティ、病院の待合室での焦燥感。 死ぬほど怖い思いだってしたけれど、 最後に思い出すのは決まって星空の下のあの笑顔だった。 おかえり。 この景色を、彼女にも見せてあげたいな、そう思った。 ーーーーーーーー 先日、Rounin様キーパーで品口凸凹様作の「台風の目」に、気球同好会の大学生、天音 そら(あまね そら)で参加させていただきました。 動画を見て大好きだったシナリオで、視聴済み組が募集されていたのでありがたく参加させてもらってきました。シナリオにやたら厚みがあって動画では通過してないルートが結構あったみたいで、視聴済みとはいえ結構手探り感ありつつ楽しめました。 探索者面子も、探偵組が元刑事のりんさんに民間軍事会社のみさきさんと荒事ウェルカムなツートップだったので頼もしさ満点な半面、一般人枠として諫めなきゃという謎の使命感がうまれて面白かったです。シスター枠(!?)の光珠姉とは幼馴染設定をいただいて時には引っ張っていただき、時には庇っていただきました。また、ヒロインの子にパンケーキちゃんってあだ名がついて結構中盤まで引っ張っていたのもおもしろかったです。 天音は序盤はファンブルを連発してごめんなさいしか言ってなかった気がしますが、終盤、パンケーキちゃん(仮)に発破かけてからはダイス目が神がかっていて頭沸騰しそうになってました。 超長期なセッションになりましたが、その分思い出もたくさんできたなと振り返って思います。 というわけで後日譚妄想です。 天音は気球同好会ということで、セッション中に見聞きした天文学的な距離とは別に、気球に乗ってみて肌で感じる高度との間で感じるものがあると面白いなと思って乗せてみました。パンケーキちゃんが同じことを体験したとき、どんな言葉が聞けるのか、ちょっと想像すると楽しくなってきます。 改めまして、アズマさん、赤茄子さん、時雨さんそしてキーパーのRouninさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の品口凸凹様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。