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😶 袋の人間 それから ぼつぼつとこぶし大の暗がりが目に留まるようになった。 会社の廊下の片隅に、商店街のアーケードの角に、道端の草むらの後ろに。 あの山小屋での出来事のあと、編集長に嫌味を言われながら次号には無難な記事を提出した。 山の天気は変わりやすいので突然の雨に襲われたらまっすぐ下山するのをお勧めします―ーそんな記事を街情報誌に求める読者はいない。僕もそう思う。 カメラも新調しなければいけなかったし、急な出費は痛かったけれど、それまで住んでいた木造のアパートも引き払って大通りから遠くない新築のマンションに引っ越しもした。 夜、寝るために部屋の明かりを消して横になると、かさかさと天井裏を何かが駆け回る音が聞こえるような恐怖が頭を離れなかったからだ。 引っ越しをして環境が変わってからは、段々と落ち着きを取り戻してきたように思う。 あの出来事の裏側を調べてみようと思い立ったのも心の奥に染み付いた袋小路を振り払いたくなったからかもしれない。 休日になると図書館に通っては古い新聞などを調べてみたがカストリ雑誌にうさんくさい小さな記事が見つかっただけだった。 帰り道、少し雲行きが怪しくなっていた。 事情が許す限り日のあるうちに家路につくことにしていたが、雨の強い日や風の強い日には、こぶし大の暗がりが目に留まった。 駅の改札の片隅に、マンションの階段の角に、玄関の靴の後ろに。 そんな日には部屋の電気を全部付けて布団にくるまった。 どこにも隙間ができないように。 そしてゆっくり数を数えた。ひとつ、ふたつ、みっつ、足の裏にぐにゃりとした感触を感じては振り払った。 と、つけっぱなしのテレビから知った声が届いた。 キャスターの陽気な声が、リアル天気の子をうきうきと褒めちぎっている。 携帯のLINEにぽこんと音を立てて着信を知らせてくる。 ぽこん、ぽこん、ぽこん。 そこでようやく暖かな気持ちが広がってくる。 ろうそくの温かい灯りが、歌うような輪唱が、青空へとつづく階段が僕を袋小路から連れ出して安らかな眠りへといざなってくれるのだ。 ーーーーーーーー 先日、あひる様の体験卓・初心者卓「袋の人間」に参加させていただきました。 クトゥルフは動画でリプレイを見てから、いつか自分も体験してみたいと焦がれていたものの敷居が高くて店の前を何度も行ったり来たりする人のようになっていました。そんな折、オンセツールの使い方指南までしていただける初心者体験卓を見かけて、これだああああと飛び込んできました。 ノリのいい超絶美男子の復鬼君に、作家で頼りになる園野さん、探偵で紅一点の楠木ちゃんとで山小屋の怪に巻き込まれてきた雑誌記者の森野でしたが、なんとなんと無事生還することができました! ネタバレ防止のため、もごもごがげふんげふんしたことや、あーあーがきこえないーしたことや、あまつさえふぁいとーがいっぱーつしたことも書けないのが残念でなりませんが、的確に(思い返せば親切に)恐怖で追い立ててくれたキーパーあひるさんと、わいわい演れた素敵な仲間たちが一緒だったからこその得難い体験でした。 終わってみれば深夜二時。体感時間と全然違う! 目が三本線になりながら感想戦を終えるころ、ツトゥグアさんがオールで次の戦場に向かう宣言。若いな!! とにかく準備から本編から感想戦まで楽しくて楽しくて楽しかったです。 良ければ日記などどうぞとの言葉に甘えて、勢いあまって後日譚など妄想してしまいました。 ほぼ五体満足で脱出できたのですが、成功報酬を入れてもSAN値がすこーし削れていたのでこんなのもよいのではないかなあ。 ツトゥグアさん、やなせさん、黒狐。クロコさん、あひるさん、本当にありがとうございました。 たのしかったー。 よければまたぜひ遊んでください。