りちゃさんの日記
りちゃさんが書いた日記の一覧を閲覧できます。
日記一覧
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2020/07/13 20:51[web全体で公開] |
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2020/07/12 11:56[web全体で公開] |
😶 駒鳥の葬式 それから 雲一つない夏空。 足を止めると汗をぬぐって、あいつと最後に会った場所を見上げた。 真っ白な建物のその窓から一羽の小鳥が飛び立つのが見えた。 見てはいないはずの光景を想って目を閉じた。 そして胸を通り過ぎる感情を反芻する。 これは痛みだろうか、それとも悼みだろうか。 夢にも会いに来てはくれないなんて薄情じゃないかと思ったこともあったなと思い出した。 瞼の裏の暗闇に、じんわりと陽の橙が滲んできた。 今なら理由がわかる気がしたし、あの場所に僕らが呼ばれたことには理由があったのだと思えてならなかった。 目をあけて視線を落とすと両手を見つめた。 結局本当のことは何もわからなかったけど、何かを託されたのだと思った。 懐かしい笑顔を、泣いてる誰かにはいつも添えられた手を、時折見せる強さを。 僕はきっとずっと憶えている。 熊谷ちゃんだって、葉山君だってきっとそうだろう。 別々の道から行き会って、撚り合った僕ら。 あいつを知っている僕らが未来への答えを探す。そうやって生きていく。 顔も知らない誰かのために。 心に刻みながら、祈りながら。 それならそれはきっとあの優しかった駒鳥のための葬列だ。 そして葬列の果てに、またいつか会えることができたら、その時は。 顔を上げるといつの間にか日は傾いて夕焼けが空に広がっていた。 遠くで鐘が鳴っている。 子供たちが笑いあいながら家路を急ぐのをしばらくぼうっと眺めていた。 ーーーーーーーー 先日、やなせ様キーパーでたると様作の「駒鳥の葬式」に参加させていただきました。 初の秘匿チャット、ハンドアウトありのシナリオ体験でした。そして初の継続探索者での挑戦でもありました。連れて行った森野風太はクトゥルフ神話TRPGデビュー戦の時の探索者で、キーパーのやなせさんとはその卓で同時にデビューしたので、森野の成長したところ(とトラウマ)を見せちゃうぞと張り切ってたのですけどいやいや難しいですね!どんどん新規と変わらない動きになってしまって継続探索者がっつりされてる方々すごいなと思いました。シナリオはクローズドのほどよいリドル系で、ココフォリアの素敵さも相まって雰囲気に浸りながら謎解きできる幸せを噛みしめられました。 というわけで後日譚妄想です。 油断するとネタバレしてしまいそうなくらいあれがそれでもう!だったのですが、キャラクター的なことで言えば、ぎゅべっふぃさんの実は制御の効いていたやんちゃっぷりが本当に面白くて、熊のきぐるみ被って「グリズリーです」って名乗られたときの衝撃たるや、よりさんの葉山君と揃って「え、どういうこと」状態でした。でも動いてみるとあざとすぎない可愛さもあり保護欲湧いてました。葉山君も力弱くて足も遅くてSAN値も40しかなかったのに妙に頼りになるキャラクターで実は森野よりも五つも年下だったと知ったときはこれまた衝撃大でした。包容力がすごい。こんなにそれぞれ違うのに信頼できる面子だったからこそ、真相には触れきれず仕舞でしたけど、みんなの間にぴたりとはまる要素が重みのあるものになったのだなあと思いました。そして闇の奥にあるものに恐れおののいていた森野も誰かのために踏み込んでいく理由が持てた気がします。 改めまして、ぎゅべっふぃさん、よりさん、そしてキーパーのやなせさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者のたると様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/07/12 11:49[web全体で公開] |
😶 雨の紡ぎぐるま それから 今日はご主人はしょうがっこうだけどお昼までだから、遊びにぬけだすのは我慢して帰りをまってるとこ。 しとしと雨のこんな日は、鼻がきかなくてちょっと心細いけど、やわらかくてあったかい雨の中をぱしゃぱしゃ走り回るのはとっても気持ちがいい。 庭の草だって雨の粒にあたってぴょんぴょん踊ってる。 駄菓子屋のおばあちゃんがこの間、こういう雨はかみさまが紡ぎぐるまをまわして地面にひっぱってる水の糸なんだって教えてくれた。水の服をきせてもらったから草も、花もあんなにきらきらしてうれしそうなんだって。 けど、にんげんは雨があんまり好きみたいじゃなくて、ご主人も雨の日はちょっとつまんなさそうだ。 どっじぼーるができないんだよって言ってたけど、おいらはそれなら転がりっこすればいいのにって思うな。 泥はあったかくてくすぐったくて、しょうがっこうの庭って泥んこを作るためにあるんだっておいら見てすぐわかったのに。 にんげんは泥もあんまり好きじゃないみたいで、おいらとご主人がいっぱい跳ね飛ばしっこして帰るとママさんはいっつも怒るんだ。へんでしょ。 ママさんは怒ったりやさしかったりいつもくるくるへんげしてて、大変だなあすごいなあっておいら思う。 とにかくママさんは雨の日はにはぴりぴりしてて、そしたらパパさんがおいらにレインコートを、ご主人にながぐつをくれたんだっけ。 おそろいの黄色いので、泥んこにはさわれないけど雨やしぶきががぷつぷつコートの上ではねるのが面白くって、それにとってもかっこいいだろ。 師匠もととまるもすごいすごいって撫でてくれるし、アキホちゃんはあんまり感心しすぎてええっとそうねなんて言ってたもんな。 ちらりと塀の方を見上げた。 ブロックの上からアキホちゃんがひょっこり顔を出してこないかなって思ったけど今日はそんなことはなさそうだ。 ざんねんみたいな、ほっとしたみたいな変な気持ちでいると、赤い傘がひとつ、家の前を通りすぎて行った。 傘はひとつ、話し声はふたっつ。 ちょっと身を乗り出してのぞいてみたら、おんなの子がうれしそうにおしゃべりしてて、おとこの子がちょっときんちょうしてるみたいで、でもやさしい顔でおんなの子をみてた。 おいらはぴんときたよ。たぶんこれって文がくてきだってね。 ふたりを驚かさないように気をつけながら耳をぴんとたてた。 これはぜったいユウに教えてあげなくっちゃ。 明日か明後日か、雨が止んだらユウもお社に来てるかもしれない。 虹が足をおろすあのお社に。 虹の足の下にはきれいなたからものがうまっている。 そんな話をしてたのは誰だったっけ。 おいらは見たことないけどきっとほんとうだって思う。 師匠、ととまる、アキホちゃんに観月姉ちゃん、ユウ、そしてときどきはツカサにひまりにトモキとヨシノも。 顔をみると、声をきくと、おうちに埋めてるたからものとおんなじくらいうきうきしてくる。 雨はまだしとしとふりつづいてる。 レインコートも着せてもらってないけど。 ご主人ももうすぐ帰ってくるけど、 ちょっとだけ、ひとっぱしりみんなに会いに行っちゃおうかな。 みんなもおいらがいないとさびしいだろうしさ。 ーーーーーーーー 本日、マダラ様の語り部でマダラ作の「雨の紡ぎぐるま」に犬のへんげ柴健太で参加させていただきました。 マダラさん作の墨之町シリーズ第2弾ということで前回と同じ面子で参加してきたのですが、雨の紡ぎぐるまでございますよ!言われたらこの時期のさあさあとした雨が糸に見えてくるからすっごいなあと思うわけですよ。白い糸が平行にするするっと地面に向かっていく。文学的です。文学的雨です。今回へんげ側で登場したユウが自称文学的猫のへんげでこいつがまた面白くって、難しい表現には健太ではついていかせられなくってそこだけ残念無念でしたけどずっと他の人とのやりとりを見て笑ってました。あと、今回は特技をがんばってみよう回だったとかで、師匠の看板変化やととまるのイリュージョンショーも冴えわたっていてさすが変化の大御所たぬきときつねは違うなあと感心した回でもありました というわけで後日譚妄想でした。 子供のころって新しいひびきのよさげな単語を覚えたらばかみたいに使いたがるじゃないですか、健太はああいう時期なのです。文がくてき、はシナリオ中もどはまりしてて事ある毎に使ってました。ゲストも前回は自然派なふたりでしたが、今回は高校生ということもあって町派だったこともあってとりまく景色も変わって、家の脇のあじさいだとか映画館の軒下だとか、でもやっぱり水彩の似合うやわらかい感じでとても絵になってました。ユウのマフラー擬態も、2組のあいあい傘もすごくかわいかったです。いやあ、ゆうこやかわいいな。 小笠原ナカジさん、Fjagaさん、そして語り部のマダラさん、楽しい時間を本当にありがとうございました。 またよろしければ遊んでやってください。
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2020/06/28 07:53[web全体で公開] |
😶 洋館への招待状 それから 目の前の景色が霞んでいく。 一歩踏み出すたびに止まってしまいそうな体を叱りつけて足を踏み出した。 皆はどうなっただろう。 それを確かめる余裕すらなくなっていたけれど、誰かがここで何が起こったのか外に伝えなければ。 そのことだけが朦朧とする意識をかろうじて繋いでいた。 悔しい。悔しい。 本当なら自分がすべて成し遂げなくてはいけなかったのに。 皆を助けて、敵を打ち倒して、これが白峰なのだと、わたしだってそうなのだと見せつけなくてはいけなかったのに。 皆に、おじ様に、お父様たちに、お兄様たちに、そしてわたし自身に。 いったいどこで間違えてしまったのだろう。 三田さんは彼女ならではの視点を発揮してくれていたし、巨瀬さんは情報の整理と共有をこなしてくれていたし、阿瀬さんは適度に緊張をほぐしてくれていた。 相手のペースで戦ってしまったことだろうか。 ずっと感じていた違和感を、後でどうとでもなると高を括ってないがしろにしたことだろうか。 そしてその時が来てみれば、白峰の家名も小さい頃から叩き込まれた知識も技術も、一切が無力だった。 こんなにも自分が無力だと感じたのははじめてだった。 わたしのせいだ。 そんな思いに足元がぐずぐずと泥に飲まれていくように感じて、歯を食いしばった。 そんな過ぎたことを悔やんでいる場合じゃない。 今は一歩でも前へ、そのため以外のすべては無意味だ。 考えはまとまらず、口がからからに乾いて音も聞こえづらくなってきた。 引きずる足元が砂をこする感触だけがまだ前を向いていると教えてくれていた。 悔しい。悔しい。悔しい。 誰か、わたしを見つけて。 このままじゃ終われない。終わらせられるわけがない 誰でもいい、神様、どうか、どうか、 数日後、古びた洋館に続く山道で男女の衰弱死体が発見された。 ーーーーーーーー 本日、あひる様のキーパーであひる作の「洋館への招待状」に資産家の娘で大学生の白峰黒子で参加させていただきました。 ロスト率高めのリドル系シナリオで、4段階選べる難易度は上から二つ目のHardで遊ばせていただきました。 そして、そして、初ロスト。しかも全滅!これはくやしい、とてもくやしい! 終わった後で、あそこでもっとああしておけばということは言い出したら切りがないくらいぐるぐるするのですが、ちょっと頭硬かったなあというのが最大の反省点でした。でも、ああでもないこうでもないとみんなで会議しながら進めていくのはすごく楽しかったです。 某リアル脱出なゲームで失敗組にかけられる言葉として「脱出ゲームの悔しさは脱出ゲームでしか晴らせませんよね?」というものがあるのですが、ほんとその通りでリドル系の悔しさはリドル系で!またどこかでリベンジしたい、と皆で言い合っていました。 というわけで後日譚妄想でした。 ディレッタントベースのキャラクターやるのは初めてでしたけど楽しかったです。 隙あれば上流階級ムーブをつっこんでやろうと虎視眈々な導入パートから、本番に入ってからはさすがにRPする余裕が減ってしまいましたが、一番年若いのに一番偉そうなキャラクターだけはキープしたいと頑張りました。 一方で、実は優秀な家族の中で本当に自分に自信は持ち切れていないという辺りは出せず仕舞だったので、シナリオ終了からこと切れるまでの間に詰め込んでみました。 他のお3方を気にする余裕はさすがに出せず励ましあいながら進むでもなくなのが申し訳ないなと思いながら、失敗したあとの心情としてはこれかなあという妄想でした。ロスト描写もはじめてなので楽しかったです。 こるめさん、マダラさん、柏木さん、そしてキーパーのあひるさん、楽しい時間を本当にありがとうございました。 またよろしければ遊んでやってください。
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2020/06/27 02:29[web全体で公開] |
😶 シロツメクサの約束 それから 真っ赤な空がまちを真っ赤に変えていく。 そんなまちをおいらは思いっきり走ってく。 土手も真っ赤で、川も真っ赤で、くもも真っ赤で、なんだかにおいも真っ赤だ。 じてんしゃのあの子も、たんぽぽふいてるあの子も、みんな真っ赤で、おいらはそんな中をびゅんびゅん走ってく。 真っ赤と真っ赤の間はだんだんぼんやりしていって、おいらも二本足で走ってるのか四本脚で走ってるのかだんだんぼんやりしていって、そんなのお構いなしに家に向かって走ってく。 手をつないだこどもとすれ違った。 うつ向いてるのにうれしそうで、顔中がゆうやけと違う赤色でいっぱいだった。 すれ違いながら、わん、と鳴いて飛びあがるとくるりと一回転して見せた。 胸がくすぐったいような、思いっきり吠えだしたくなるような、そんな気持ちで走ってくのがとっても気持ちが良かった。 おいらにはよくわかんないこともあったけど、今日の探検隊はきっと大成功だったと思う。 お師匠もととまるもよしよしって風に頷いてたし、原っぱに吹いた風は花びらいっぱい舞いあがらせて、まるでお山がかんむりをかぶったみたいだった。 あれはきっとものすごいふしぎで、アキホちゃんもあんなにすごいふしぎは初めて見たんじゃないかな。 首にひっかけた白い花のわっかが、そうだよそうだよと言うように揺れた。 おいらは家につくと、庭のおうちに敷いてあるタオルをめくって土をひっかいた。 出てきたのはどれもおいらのたからものだ、 子供の歯が抜けるときに噛んでたボールに、かかとが取れたサンダル、ロープのきれっぱしに、白い穴あきくつした。 その中にみんなで作った白い花のわっかを置いてそっと土をもどした。 タオルを元通りにしてその上にねころぶと、やさしい風が鼻をくすぐった。 今日はきっとあの原っぱの夢を見ると思う。 ーーーーーーーー 本日、マダラ様の語り部でマダラ作の「シロツメクサの約束」に犬のへんげ柴健太で参加させていただきました。 ゆうやけこやけ初体験だったんですけど、感想としては、1にも2にも「かわいい!」に尽きます。みんなかわいい。おいらもかわいい(笑) かわいいと思ったら、夢ポイントを投げるシステムがまた良くて、もうずっとかわいいかわいい言ってました。ポイントを投げるときに一言を添えてたんですけど、具体的に褒めると良いとこがどんどん見つかるし、どんどん投げるのが楽しくなってきてました。豆狸ののかぜ師匠がかわいい、狐のととまるがかわいい、ナビ役の狐アキホちゃんがかわいい、駄菓子屋のおばあちゃんが、用務員のおじさんが、校長先生が、探検隊の隊長が、かわいい!ヒロインももちろんかわいい!多少あざとくても舞台雰囲気がほんわかなのでするっと受け入れられちゃいました。やばかったです。 というわけで後日譚妄想でした。 健太はずっと無邪気キャラクターでやらせてもらったので、あれこれわかんない風に持っていくのが楽しかったです。シリアス方面や大人方面は全部師匠とととまるにやってもらってました、ありがたやありがたや。 あとシナリオ最後に全リソースをつっこんですごいふしぎを発生させるんですけど、どんなふしぎにするかPCで相談するんですよね。これが本当に楽しくて悩ましくて、最後の最後には少しおまけしてもらってよくばりセットみたいにしてもらえたのもうれしかったです。特技だいぶ使い忘れてたし、犬要素で使いそびれたとこもあるし、他のへんげも楽しそうだし、また隙を見てやりたいなって思いました。 小笠原ナカジさん、Fjagaさん、そして語り部のマダラさん、楽しい時間を本当にありがとうございました。 またよろしければ遊んでやってください。
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2020/06/18 21:33[web全体で公開] |
😶 カーネーションを貴方に それから 週が明けて、学校では空席が目立つようになった。 机につっぷすと制服の袖からお香の匂いがしてくる気がした。 教室はためらうような静かさに包まれていて、毎朝、宿題をやっただやっていないだの会話がひどく遠い思い出に思えた。 早く麻衣の明るい声が聴きたい、三浦くんの遠慮がちな優しい声が聴きたい。 そんな風に考える自分の勝手さと後ろめたさで泣きたくなった。 授業はお昼には終わって、先生から明るいうちに帰るように言われた。 誘われて小駒くんと一緒に三浦くんの家にお見舞いにいった。 小駒くんがいつもの調子で明るく話しかけている間、わたしは何て話せばいいのかわからなくてずっとだまって聞いていた。 次はお菓子作ってくるから、と帰りがけになんとか言えたけど、ものすごく場違いなことを言ってしまったような気がして三浦くんの顔をまともに見られなかった。 皐月とはどちらから言い出したともなく、駅まで一緒に帰るようになっていた。 一度、デパートの花屋に立ち寄ったとき、麻衣と来る約束をしていたのよ、と言いながらいろいろな花の花言葉を教えてくれた。 売れ残りのカーネーションを目にとめたわたしに、皐月は黄色いカーネーションを一本手に取って、知ってる?とわたしに言った。 その日、わたしたちはいろいろな話をした。 『――になりそうね?』 わたしはあれから何日かに一回は夜中に悪夢で飛び起きることがあった。 恐る恐る台所を覗くとお母さんがテーブルに頬杖をついていた。 目が合ってもじもじしているとホットミルクを作ってくれた。 二人で向かい合ってミルクを飲んだ。 静かな時間がゆっくりと過ぎていった。 わたしもいつかお母さんになって、こんな時間を過ごすんだろうか。 上目遣いに様子をうかがうと、お母さんは泣きそうな顔で笑っていた。 わたしも同じような顔をしていたと思う。 言い知れない不安が続く毎日でも、暖かな気持ちがこうして繋がっていることはわたしを少しだけ強くしてくれる気がした。 流しの脇の瓶に刺された赤いカーネーションが一輪、ふわりと揺れた。 ーーーーーーーー 本日、お水様のキーパーで灰月市様作の「カーネーションを貴方に」に参加させていただきました。 好き嫌いがかなりわかれるシナリオとのことで、確かにそうかもと思いました。 NPCの麻衣、皐月と同性キャラクターということもあって、二人は今どういう気持ちなんだろう、これからどうなっていくんだろうとあれこれ考えさせられて、とてもいとおしくなりました。いつも明るいムードメーカーな小駒くんも、遠慮がちだけどお節介なくらいの気遣い屋の三浦くんも抜群のけん引力で、後ろをついて行きながらありがたい気持ちでいっぱいでした。 というわけで後日譚妄想でした。 学校欠席組はそれぞれに事情を聞いたりしたことを総合して、たぶん、こういう状態なのではと思ったところでありますが、例によってあくまで妄想でした。三浦くんは壁に絵が飾ってありそうとか、本棚からトリガーになりそうなものが載ってる本が抜き取られてそうとか妄想は広がったのですがびびりなので書ききれませんでした。麻衣と皐月は何言ってもネタバレになりそうで、今も割とまずいのではと思いながら、ぎりぎりの線を探りながらどうしても書きたいことだけごめんなさいさせてもらってます。シナリオやった人と存分にネタバレ会話したい!! あひるさん、マーシュさん、そしてキーパーのお水さん、楽しい時間を本当にありがとうございました。シナリオ製作者の灰月市様にも感謝です。 またよろしければ遊んでやってください。
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2020/06/17 10:20[web全体で公開] |
😶 銃弾の貫くものは それから 窯の戸を開くと赤銅色の景色が広がる。 すぅ、と息を吸い込むと肺が温かい空気に満たされ、笑みがこぼれるのがわかった。 陶芸家の端くれとして飽きるほど繰り返し見てきたけれど、それでもこの景色、この瞬間が一番好きだ。 練りが雑だと壁に混じった気泡が焼成中にはじけてしまうし、積み方が悪いと重みで歪んだり欠けたりしてしまう。 含んだ水分によって縮み方は変わるし、釉薬の発色だって思った通りにいかないことはしょっちゅうだ。 そう言った後戻りのきかない工程のその入り口なのだけど、いつだって不安よりも胸が高鳴った。 この力強い炎がくよくよした気持ちになんてさせてくれないのだという気もする。 今日の作業分をすべて窯に入れ終えて一息つくと、風がさあと吹きぬけた。 作業場の方でがたがたと戸が動く音が聞こえて慌てて駆け戻ったが、待っていたのは餌をねだる野良猫だった。 ここ数日はどうも気持ちが浮ついているなと思う。 戸口や電話が気になって仕方がない。 あの子が何の気の迷いか、陶芸教室にやって来はしまいかと。 これは別に浮ついた気持ちじゃなくて、純粋に心配からだ。 どうやったって思い出したくないものを思い出してしまうということもあるだろうし、陶芸というのはそういう時にうってつけだと思うのだ。 粘土を練って、ひもを積んで、形をたてる。 ろくろを回している間は余計なことを考えている余裕はないだろうし、失敗したってやり直しがきく。 自分と折り合いをつける時間だ。そして、丁寧な仕事をすればするだけ応えてくれる。 釉薬を塗り、焼き上げる。 黄色、橙、紫、桃、赤、空色。 鉄赤結晶釉、雪白結晶釉、禾目トルコ結晶釉。 大きく塗ってもいいし、縁にアクセントをつけるくらいなのもいい。 窯の火はあの子の目にはどんな風に映るだろう。 最初は圧倒されて、そしてだんだんとわくわくした気持ちになるだろうか。 そうであってほしい。だってそれは本当に暖かいのだ。 赤い太陽のように。 そして吹き飛ばしてやってほしい。 あの子の中の雨雲を。 あの子の色が、自責の雨に負けないように。 あの子は何を作りたがるだろう。 湯呑か、茶碗か、最初は皿がいいかもしれない。 どんなものだっていい。それが教えてくれることがあるだろう。 ほんのささいな作品を焼き上げた自分も、確かに自分のひとかけらなのだと。 そんなひとかけらで、がらんどうの静かな部屋が埋まって行ってくれたなら。 いつか窓が開いて風が吹き込むだろうか、陽が差し込んでくれるだろうか。 今日も陶芸教室は閑古鳥だ。 ふと思い至ったのだけれど、名刺を渡したくらいだとあちらも遠慮というか気後れしてしまうのじゃないだろうか。 これは決して浮ついた動機からではないのだけれど、電話でお誘いくらいしてもいいのかもしれない。 ちょうどタイルの欠けたのが足元に落ちていた。これをはじいて表が出たら電話しよう。裏だったらそのなんだあれだ。 コイントスの要領でタイルを指ではじいた。 くるくると飛び上がったタイルは、練りかけの粘土に垂直に突き刺さった。 ーーーーーーーー 先日、無機物様キーパーで雪空鈴音様作の「銃弾の貫くものは」に参加させていただきました。 急遽シナリオが変更になったりして、あわせてキャラクターを変えたのでどうなるかなと心配でしたが、案の定難しかったです(笑) 老け顔のそんなに売れていない陶芸家のおじさん。一般社会の常識からあんまり外れたキャラクターにしたくないなという今日この頃なのもあって、不思議空間と向き合うのに時間がかかってしまいました。単身部屋をふらふら出てしまったとき追いかけてくれた赤井くん、ツ―マンセルのときにお相手してくれた横田くん本当にごめんねありがとう。多々良くんとの心理学バトルは笑った。 という訳で後日譚妄想です。 Superflyの「フレア」を聞きながら、書いていたらなんだこれ(笑)になってしまいました。PC含めて登場キャラクターの心のきずがどうなるのかいつも気になってしまうのですが、何か劇的な出来事があって全て解決ってことはないと思っていて、こつこつと「私は私のままでいい」と思えるかけらを集めていくしかないんじゃないかなあと、そんな思いを下心のかけらもないじゅんすいな安土稔(35)に乗せてみました。ネタバレ回避ラインを迷いましたが、どうなんでしょう。大事なところには触っていないと思いたい。問題あったら畳んだ形式に上げなおしたいと思います。 改めまして、サンタさん、木枯らしさん、かいかいさん、そしてキーパーの無機物さん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の雪空鈴音様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/06/13 23:01[web全体で公開] |
😶 マレウスを手に入れた! このたび念願のマレウス・モンストロルムを手に入れました! 前見た時は売り切れてプレミア付けてる中古ばっかり並んでてさすがにパスしてたのですが、ようやっと正価格で並んでたので我慢できずにぽちってしまいました。 試しにぱらぱらめくったり、いままで出会ったやつらの項を読んだりしてみたるのですけど、これは、これはいいものですよ! まず挿絵がいい。ルルブの雰囲気ある挿絵も好きなのですけど、マレウスのは世界の博物館、美術館、図書館なんかに所蔵されている歴史資料から引っ張ってきてあるものが多いんです。これはもう本当に図書館技能成功してる気分になれます。 項立てはクトゥルフ神話の神格、クリーチャー、その他の怪物みたいにわかれていて横並びがわかりやすいですし、コラムもちょいちょい乗っていてそれもたのしい。索引が完備されていてどういう区分かわからないけど前に出会ったこいつのこと知りたいみたいな需要にもばっちり答えてくれます。 そして自分はまだ縁遠いですけど、オリジナルクリーチャー作成支援のコーナーなんてのもあって、描写に使えるワードが2ページまるまる掲載されてたりもしました。 いやあ、いい買い物しました。 未所持の方でこういうの好きそうなら買いですよ! 雨の中届けてくれた郵便屋さんにも感謝です。
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2020/06/13 15:27[web全体で公開] |
😶 ジュリエット それから 翻訳とは情熱を伝える作業だと思う。 『生きるべきか 死ぬべきか それが問題だ。』 ハムレットのこの一節を訳した日本語を、私はこちらに来てからはじめて目にした。 正確な訳者はわからないらしい。 憑かれたみたいに他の訳版を尋ねて回った。 そこにはそれぞれの情念があった。 伝えずには居られない衝動を浴びせられて、 そうして私は翻訳家になった。 午前11時の喫茶ヴェローナ、一番奥の窓際の席は店内がよく見渡せる私のお気に入りの席だ。 この特等席に開店直後から居座っているのだけれどほかに客は誰もおらず、さぼりの茂木さんか、仕事あがりの先生たちがやってくるまでは今日も貸し切り状態だろう。 私はここ数日、就労ビザの更新を控えてどうにも冴えない日々を過ごしていた。 収入は多くはないけれど、まずまず安定はしているし、残るのに不都合はなく、けれど帰って悪い理由も見つけられていなかった。 理由のわからない焦燥が足をすくませていた。 カップを取ってコーヒーをひと舐めした。 行き過ぎた酸味と水っぽさが脳みそに突き刺さった。 書類に顔をうずめるようにテーブルに突っ伏すと、虎目石の指輪が目に入った。 見入っていると吸い込まれるようにして思考はあの奇妙な旅路に彷徨っていった。 私はあの時、訳がわからないまま歴史を辿って、夢を手繰った。 鮮明に覚えているのは暗闇を進む色彩の乏しい揺れる視界と、痺れるような甘い香り。 昏く妄執のこびり付いた祈りと、真白く止まった時に満ちる静かな祈り。 私はそのだれにも届ける言葉も持てず、私の手は、私の夢は、ただただ拒絶の運び手となった。 思い返すとそれは悔しいことだと思った。 ふと呼ばれた気がして窓の外をみた。 黒猫がいつの間にか軒下に座ってこちらを見ていた。 『生きるべきか 死ぬべきか それが問題だ。 どちらが心にとって高貴なことだろう』 店の入り口が騒がしくなったと思うと、聞きなれた声が耳に届いた。 藤村先生が黒猫に駆け寄ってするりと逃げられている。 私はこの先いくつになっても、チャレンジを怖がらずに笑えるだろうか。 わからない、でもそうしたいと思った。 ホーソン先生が羨ましそうな笑顔で店の奥の絵を見つめている。 私はこの人の手を引いたことにいつかきちんと向き合うことができるだろうか。 わからない、でもそうしたいと思った。 茂木さんがママさんに何かを報告している。 私は小さな祈りを掬い上げて、絶望に包まれた涙に届けられるだろうか。 わからない、でもそうしたいと思った。 『生きるべきか 死ぬべきか それが問題だ。 どちらが心にとって高貴なことだろう 荒れ狂う運命が投げつける石や矢を耐え忍ぶのと 困難の海に対して武器を取り 敢然と対峙して終わらせてしまうのと…』 翻訳とは情熱を伝える作業だと思う。 そしてそれは祈りでもあり、その祈りへの応答でもあるのだと思った。 そうして私は翻訳家を続けることに決めた。 ーーーーーーーー 先日、デモ様キーパーで喀血卓様作の「ジュリエット」に参加させていただきました。 平日開催だったので2日にわけての探索行だったのですけど、ほんとうに良いところでちょんぎれてくれたおかげで再開までのインターバル期間がもう妄想が広がりのわくわくが溢れの大変でした。半クローズドの構成になっていて、シティもクローズドもそれぞれ好きなので一挙両得といった感じでそういった面でも本当に楽しめました。 そして合間にこっそり投下されていたお茶の子さんの1コマまんがのかわいさといったら!まさかの贅沢をありがとうございました。 という訳で後日譚妄想です。 シナリオタイトルはジュリエットだったのですけど、ずっとあちこちでハムレットのこのフレーズが浮かんでいました。しかも終わった後に調べたのですけど、「耐えて生きるか、戦って死ぬか」みたいなニュアンスだったみたいでびっくりしました。 そして今回他の3方がほんとうに素晴らしくて、個人的に敵わないな、羨ましいな、あれでよかったのかなと思ったところを思い出に書かせてもらいました。いつも言い訳のように言っていますけどあくまで妄想書き連ねなのでニュアンス違うなあとかあったらごめんなさい。 戦利品としていただいた虎目石の指輪ですが、タイガーアイは『幸運を招く聖なる石』とされていて、本当に必要なものを見抜く、行動力、決断力を助け、失敗することへの恐怖を和らげるのだそうです。必要なものをピンポイントでいただいたなあと感謝です。 改めまして、ままままさん、お米の子さん、Kadenaさん、そしてキーパーのデモさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の喀血卓様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/06/07 23:50[web全体で公開] |
😶 グリオーマアクアリウム それから プシュ、と小気味のよい音を立てて泡を噴き出した缶ビールを持ち上げると、横合いからカツンとぶつかる感触がして泡が宙を舞った。 それじゃま、お疲れさまです、と視線は前を向けたまま喉に流し込むと、隣からも同じように喉を鳴らす音が聞こえた。 季節は夏の盛り。 ビーチは大勢の人出でごった返していたが、あの二人は否が応にも目立っていたから見失う心配もなくて保護者役の二人で早々に一杯ひっかけ始めていた。 林田はいまからあれでこの先大丈夫なのか、と漏らしたのは自分だったか、夜野さんだったか。 彼女が退院して外を出歩くのに不自由しなくなってからも林田青年は少々過保護に見えて、けれどそれがほほえましかった。 麦わら帽子を取っただの取られだので、二人がくるくると追いかけあっている。 降り注ぐ太陽の光が二人を追いかけて瞬いた。 それはまるで回遊魚の群れのように。 水底のメリーゴーラウンドのように。 見守っているこちらに気づいて彼女がこれでもかと両手を振って笑う。 林田は少し恥ずかしそうにして、何か大声で叫んでいたが、こちらがひらひらと手を振って応えると、一刻も惜しい様子の彼女に波打ち際の方に引きずられていった。 そう、これくらいのことはあってもいいじゃないか。 あの慟哭を、振り絞るような覚悟を知っている俺は祈りにも似た気持ちで見送った。 ビールを飲み終えて、手が癖で折りあげていた二匹の金魚が風に吹かれて大空を舞った。 そうだ、行け、心のままに。 たとえここがどこかの誰かが用意した水槽の中なのだとしても、あいつらは自分たちのフォームで泳いで行けばいい。どこまでも、望む限りどこまでも。 そしてもしもその先に見えない壁が立ちはだかったときは、今度こそ道を作るのは俺たちの役目だとそう思いたかった。 誰かに選ばされるのじゃなく、あいつらが選んだ先が安心して進める道になるように。 木の壁なら蹴り破ろう、鉄の壁ならパワーショベルでもなんでも持ってこよう。 おやっさんが俺にそうしてくれたように。 これは長生きしなきゃいけなくなったな、と呟いた。 煙草はやめられないけどな、と被せられてたまらず噴出した。 ーーーーーーーー 本日、クロウ様キーパーで35様作の「グリオーマアクアリウム」に参加させていただきました。 海の底のような遊園地、開けたようで閉じた不思議な舞台で若人のきらめきにやられっぱなしでした。ぎこちなく心を触れさせる交流があり、直接言葉にしないでも同じ気持ちで支えあうチームであり、そしてそれでもやっぱりクトゥルフ神話TRPGでもあって、ネタバレ防止というだけでなくなかなか簡単に言葉にできないあれこれがあったひと時でした。 という訳で後日譚妄想です。 まあ、これくらいは許されてしかるべきでしょうという勢いにまかせた書き連ねです。明日が休みだったら本編の長さくらい続いていたんじゃないかと思える感想戦であーだこーだ話していたところからせめてニュアンスは拾えていると信じて。我らがヒーロー林田青年に精いっぱいのエールを送りつつ、抜群の安定からくる信頼感の夜野さんと大人の特権というやつをやらせていただきました。本当にこのPLたち、このPCたちだから出来上がった物語だと思います。 改めましてよりさん、緑茶さん、そしてキーパーのクロウさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の35様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
りちゃ | |
2020/05/31 21:16[web全体で公開] |
😶 りんごはあまい それから 三枚におろしたアジをぶつ切りにする。搬入されたくらげからピンセットで寄生虫を取り除く。水槽をスポンジで丁寧にふきとり、フィルターを交換して目が通るまでよく洗う。偽岩についた藻をブラシでこすり落とす。 ほぼ毎日皆で繰り返す作業だったが、ここ1週間は当番以外の仕事も空き時間を埋めるように積極的に買って出た。 新米が仕事を早く覚えたいと言えば受け入れられたし、仕事に没頭している間は嫌なことを考えずに済むのはありがたかった。 餌に我先にと群がってくる魚たちを見ていると、羨ましいような気分になった。 仕事から帰ると姉が居間でうたた寝をしていた。 夢でも見ているのか、ぐふふと気色悪い笑い声を漏らしたり腹を掻いたりしている。 5つ上のこの姉はこれで外づらだけは大したもので、しかもこちらが逆らえないのをいいことに事ある毎に弟を子ども扱いするものだから、俺は中学生にして「憤懣やるかたない」という言葉を覚えたほどだった。 その晩、スクーターに乗って星の海を滑走している夢をみた。 でもよく見るとスクーターは真っ白い平皿で、すぐ隣を見知った女性が三人、同じように平皿に乗って滑走していた。 慌てて加速すると、皿は海に飛び込んで嵐の中を漂う板切れになった。 頼りなさげな板切れに海の中から黒い長い手が何本もしがみついてくるので必死に振り払った。振り払うたびに甘酸っぱい香りが鼻を突いた。 そのたび泣き出したい気持ちになったけれど、気づかれないように平静を装った。 岡橋さんは妹さんと笑いあっているべきだし、泉さんには泉さんを頼りにしている人たちがいるはずだし、一木さんが俺たちにひどいものを見せないように気遣ってくれていたことはきちんと報われるべきだと思う。 だから自分がやったことは正しかったのだと思う。 そう思いたい。 けれど多分、あれは私事で、我がままで、新米社会人の自分では気づけなかった冴えた方法がどこかにあったのかもしれない。 心が折れてしまいそうになったとき、板にしがみついていた両手が温かい手に繋がれていることに気が付いて顔をあげた。 白い、ぼんやりとした人の形をした光が、掲げるように繋いだ両手を持ち上げると、自分の体が宙に浮きあがるのを感じた。暗い海から明るい空へ持ち上がっていく中で、ありがとう、と声を聴いたような気がした。 目を覚ますと、頬が濡れていた。 次の日、電車に乗ってあの駅で降りた。 住宅街の中を歩いて、森の中のような公園の中道を進んでいく。 あの人たちはそこに居るだろうか。 伝えたいことがあった。聞きたいことがあった。 それが出来れば紙くずのようになって戻らなかった何かに答えは見つかるだろうか。 許してもらえるだろうか。 気づいていたよと笑われるような気もした。 行く手に白煉瓦を組んだ建物が見えてくる。 足を速めた。こんどは距離を埋めるために。 勇気は、もうもらったから。 ーーーーーーーー 本日、やなせ様キーパーであるている様作の「りんごはあまい」に参加させていただきました。 やなせさんはオンセンほぼ同期で自分がキーパーやってみたいと思ったのも実はやなせさんが挑戦されているのを聞いて奮起したからでもあって、とても刺激を受けている方でした。テストプレイの募集が折よく空き日程で見つかったので、一も二もなく申請させていただき承諾してもらってからは本当にうれしかったです。 同卓させてもらったお三方もとてもよい方たちばかりで、同じくらいの戦歴だったり初プレイだったりとは思えない頼もしさで、シナリオが深まるにつれて仲間と感じられました。皆と一緒に喜んだり悩んだりできて良かったなあと思います。 そうであるが故に、自分がシナリオの中でした一つの決断があれでよかったのかと思わずには居られない、そんな気持ちを引きずりつつ というわけで後日譚妄想です。 ネタバレ防止のためあれやこれやは言及できないのですが、キーパーのやなせさんが最後に言ってくれた一幕と、同卓のみなさんからいただいた言葉を乗せて、なんとかもう一歩踏み出す準備として捏ね上げてみました。 3人の年齢がちょうど想定していた姉の年齢に近かったことで、我がままをさせてもらってしまっていましたが、特にあのとき同じところにいた一木さんとはもう少し一緒に何かできる線も提示できたかもしれないというプレイヤーとしての反省を込めて、隠し事を白状しに伺わせていただきたいというそんな再訪でした。 もちろん完全な私見、ifですので、もしもにょもにょがごにょごにょする場合は、かくかくしかじかでてくあっといーじーにしていただければ幸いです。 改めましてよりさん、こるめさん、とまとさん、そしてキーパーのやなせさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者のあるている様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/05/31 00:25[web全体で公開] |
😶 初キーパーを終えて とうとうKPデビューということで、唯様作の「最奥の底庭」を回させていただきました。 何度ココフォリアをいじっても、何度シナリオを読み返しても緊張して緊張して、当日なんとかまわしきれてほっとしつつ、集まってくださったお二人の人柄に助けてもらったなあと感謝してもしきれないです。 芯のぶれないお嬢様と天才少女の組み合わせは、噛みあいばっちりでずっとほっこりさせてもらえました。 情報量の多いシナリオで心配だったですけれど無事脱出してもらえてわがことのようにうれしかったです。 改めてありがとうございました。また機会があれば遊んでください。 また、準備するにあたって、ハウスルールとココフォリアのデザインを参考にさせていただいたあひるさん、読みスピードについてアドバイスいただいたそばうどんさんにも感謝いたします。
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2020/05/30 19:01[web全体で公開] |
😶 Life goes on それから 目覚ましがなるよりはやく起き出して顔を洗う。 鏡の中からわたしがわたしを見返してくる。 おはよう、と言おうとして言葉が喉に引っ掛かった。 顔、顔、顔。 三面鏡に映ったわたしたちの顔がぐにゃりと歪んで苦しそうにわたしを見返してくる。 左の鏡に映った右の鏡に映ったわたしの顔が。 右の鏡に映った左の鏡に映ったわたしの顔が。 顔、顔、顔が、たくさんの顔が。 お、お、おは―。 わたしが占い師を休業して1か月が過ぎようとしていた。 それはあの出来事からもう1か月が過ぎたということでもあった。 人が怖い、正確には人の顔が怖い。 たくさんの人の顔が怖い。 わたしは言葉をうまく人に伝えることができなくなっていた。 それは話すことはもちろん筆談さえもそうだった。 幸い自由業みたいなものだったので仕事を一旦たたむことは誰の迷惑にもならなかった。 以来、わたしは自宅に籠って貯金を切り崩しながらリハビリを続けている。 病院の世話にならなかったのは、なんとなく避けたい気持ちがあったのかもしれないけれど、意地のようなものもあったと思う。 これは正しく与えられた代償だったという思いと、だとしたらどうにか乗り越えられるという確信めいたものがあった。 右足を踏ん張ると右肩にそっと触れ、ゆっくりとなでおろす。 二の腕、肘、腕、手首、そして指先へ。 『いまはキミがそばにいる 迷わずに踏み出すんだ』 思えばたくさんの励まし、忠告を、おべんちゃらを送ってきた。 他人の望みを、恐れを、言葉にのせて手渡して、ワンダラー・アキはそうやって生きてきた。目深に被ったフードローブで本当を包み隠して。 それが必ずしも悪いことだとは今も思わないけれど、言葉を伝えることができなくなった今、本当の言葉が欲しくなった。 『キミが教えてくれた 自分らしくあることを』 無邪気に笑うあの子のことが、敵意にさえ優しかったその心根が、 仲間と重ねた指先が、 わたしを奮い立たせて、背中を押してくれる。 テレビではもう名前を聞くこともなくなったけれど、わたしは覚えていよう。 ずっと、ずっと覚えていよう。 それは、過去に縛られるというのじゃなくて、わたしの背中を押してくれる思い出を、残してくれたわたしと一緒に、未来を生きたいと思った。 フードを脱ぎ捨てて、わたしの言葉を紡いでいきたい。 『瞬く星の向こう 夢見た未来描こう だからその時は 一緒にいようよ』 人生は、続いていくのだから。 ーーーーーーーー 先日、そばうどん様キーパーでぱぱぴっぷ様作の「Life goes on」に参加させていただきました。 これは大変なシナリオで、ネタバレせずに誉めるのが難しいのですけど考えさせられるシナリオだったと思いますし、まさに即興劇のウェイトが大きくてキーパーの負担やいかほどと感心するやらありがたいやらでした。 しかも今回使ったキャラクターは、開始前にキーパーのそばうどんさんに「大丈夫ですか」と心配されてしまったのもやむなしな怪しげ設定でしたが、その割に活かしきれなかったのは未熟さを痛感したところでした。その節は心配をおかけしてすみませんでした。 というわけで後日譚妄想です。 シナリオタイトルを見た瞬間から、Chemistryの「Life gose on」と繋がってしまって、せつなさが爆発していました。今回の文中の『』内は歌詞引用です。このシナリオを体験した方にはぜひ一度聴いてみてほしいです。 自分の言葉が欲しいという切っ掛けは、ワンダラー・アキこと田中弘子の経験したことはもちろんですけど、一緒に探索した東野洋子さんの説得が格好良く決まっていた時自分は言いくるめしか持っていなかったことだったり、平川おとさんが他3人が不定落ちしたときに立て直した姿だったり、佐藤太郎くんの全体をみてカバーするような動きだったりに触発された結果だったと思っています。 Life gose on、いい言葉だと思います。 改めまして、ゆねさん、akumuさん、四柳ののかさん、そしてキーパーのそばうどんさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者のぱぱぴっぷ様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/05/26 11:59[web全体で公開] |
😶 うそつきだれだ それから 全然まじめに聞いてないですよね。 と言い当てられて、ちょっと驚いた。 今日の相談者は部活の後輩の妹の友達とのことだった。 駅前のドーナツショップはいつも通りの混雑で、差し向いに座ったテーブルにはくしゃくしゃになった包み紙と冷えきった紅茶のカップが並んでいた。 自慢じゃないけどわたしはよく相談を持ち掛けられる方だし、相談し甲斐があるって言われることだって多い。 コツは相手をちゃんと見て最後まで話を聞くことと、相手がどうしたいかを引き出して応援することだ。中身はあんまり問題じゃないし、相槌を打つためのポイントさえ押さえておけばちゃんと聞いている風に見せるのは難しくなかったりする。 結局のところ、ほんの一握りの切実な相談事を除けば、みんな最初から答えを持って話に来てるんだしね。 だけどたまにはこうやってイレギュラーだって起きる。 まあ、いいですけど。と言ってそっぽを向いたその子に少し興味がわいた。 この子は特別勘がいい子なのかな。 わたしに何か油断があったのかな。 それとも単にかまをかけてこっちの注意を引いているって線もある。 わたしは脚本を修正して、チップを上積みしてみることにした。 かき氷のシロップは実は全部同じ味なんだって、知ってた? 唐突なわたしの質問に、その子は少し驚いたような顔をしてみせ、ちいさくうなずいた。 でも買うときはついどの味にするか迷っちゃうじゃない?あれなんでなんだろうね。 わたしは組んだ腕をテーブルにもたれながら聞いてみる。 彼女はぽかんとした表情をして、ううん、と首をかしげた。 これは…外しちゃったかな。ほっとしたような残念なような気持になって、かわいいなもう、と頭をなでた。 有線放送が棺桶ダンスを流している。 最近静かなブームらしく、動画で火付け役になった二人組のナンバーらしい。 イッツアルーム、と軽快な合いの手が挟まれる。 そう、人はみんな心に真っ白な部屋を持っている。 鍵はかかっていないかもしれないし、ピンで簡単にあいちゃったり、鍵がその辺りで見つかったりするのかもしれない。 わたしは部屋に招かれると後ろ手にナイフを持って入っていく。 どうこうするためじゃなく、ただなんとなく。 なんですかもう、と笑って手を押しのける彼女の顔に覚えがあるような気がしてきた。 文化祭に来たことがあるのか。部活の皆で遊んだ時についてきていたのか。 違う、そうじゃない。それ以外のどこかで。 紅茶を飲み干すとポットに残った紅茶を注いだ。 出過ぎた紅茶は黒味を帯びて、茶葉のかけらがぐるぐるとカップの中で踊っていた。 ーーーーーーーー 先日、アメマス様キーパーでミヤモリ様作の「うそつきだれだ」に参加させていただきました。 緊急事態宣言解除に向けた動きもあって、なかなか先の予定が立たない中、突発卓で雰囲気よさそうなところに飛び込んだのですが、開始前に「人狼っぽい要素があります」と言われてかなりテンションあがりました。 シンプルな中にも推理要素があって、ヒントの少なさも進行描写も確かに人狼っぽい、と思いました。最近ご無沙汰ですけどひと頃かなり人狼にのめりこんでいたこともあって、キャラクターを演じるより人狼プレイヤーとしてのプレイになってしまったなーと反省も残りつつとっても楽しかったです。 というわけで後日譚妄想です。 セッション内であまりキャラクター色を出せなかった分、技能から膨らませた結果、すこし悪い人になってしまいました。こういうキャラクターを一人くらい持っていてもいいかなあ。 ちなみに棺桶ダンスは一緒に事件に巻き込まれたケヴィン・コフィンさんと棺桶旦 修さんの持ちネタで、多分別シナリオのネタなのかな。話に詰まったらとりあえず踊っていらしていて怪しさ抜群でした(笑) 改めまして、ままままさん、マダラさん、タケノコさん、そしてキーパーのアメマスさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者のミヤモリ様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/05/24 18:11[web全体で公開] |
😶 リボルバー それから 衝撃的な体験をしたあの日から数日。 またいつもの日常が戻ってきていた。 連日ワイドショーをにぎわしているニュースがお前も当事者なんだとその都度思い出させてくるけれどやっぱり実感はついてこなくて、山のように押し寄せてくる仕事に席をあっさり明け渡していた。 昼食をとりながら社員食堂のテレビをぼんやり見ていると、ペット特集だかでハムスターを撮った素人動画が流れていた。 コメンテイターは口々にかわいいですねと笑顔を浮かべている。 ハムスターは奪い合うように回し車に乗り込んではせわしなく車を回していた。 駆けても駆けてもどこにもたどり着かない檻の中になぜ喜んで入り込むのかわからないなと思ったが、自分の境遇も似たようなものかと思い至った。 午後一番で部長がにこにことこちらにやってくると、嫌な予感は的中していつものマシントラブル対応を頼まれた。 何も変なことはしてなんだよ、と言うが自覚がないということは進歩もないわけで心の中で悪態をついた。 と、部長との間に不透明な板がはさまったように遠のいて見え、右手にずしりと何かが握られたような錯覚が続いた。思わずつばを飲んでまばたきすると、視界は元に戻っていて右手には何も持っていたなかった。 ガチャリと金属が冷たく噛みあう音が聞こえたような気がして、振り払うように機械の点検に取り掛かった。 その日、夢を見た。 俺はリボルバー拳銃を手にもっていてシリンダーをくるくると回していた。 シリンダーを左に押し出すと、銃弾の代わりに小さい人間が込められていた。 目を凝らすとどれも見覚えのある顔だった。 そして、その中のひとつに自分を見つけると、自分が狭い井戸の底に立っていることに気が付いて空を見上げた。 不思議とパニックはなくて、ああそうかと腑に落ちた。 俺たちもあの男も、老人も、女性も、あそこに関わった誰もかれもが、きっとそれぞれに拳銃に込められた一発の弾丸だったのだ。 ガチャリ、ガチャリ。 何かが回転しているような音が響く。 いつの間にか手にしていた台本の役名がパタパタと書き換わっていく。 それがいつ止まるのか、息をつめてただ待ち構えた。 電光掲示板にとらえどころのない言葉が流れていく。 荒野に乱立する巨大なアンテナに宇宙の果てから届いた電磁波のように。 そんな途方もなく遠くから発信される基準の前では、次に撃ち出されるのが誰かなんて俺たちにとってはただの運次第なのだ。そんな気がした。 ーーーーーーーー 先日、木枯らし様キーパーでシャイ様作の「リボルバー」に参加させていただきました。 有名なシナリオらしく、あれこれ試行錯誤が楽しかったです。 決して重たくはない分量でしたけど、探索、推理、演技に決断、全部が詰まっていて、なるほどの評価だったなーと思いました。 今回、受け身キャラのつもりで参戦したのですけど、全体のバランスから最前列から2番目くらいをずっと走っていた気がします。同行する場面が多かった蛇崩さんには大変お世話になりました。 あとはRPというかキャラクターが演技をするという劇中劇みたいな場面もあって、黒須さんの後ろでガヤをしたり、無機物さん渾身の長回し演技を息をつめて見守ったりとなかなかない体験ができたのも楽しかったです。 というわけで後日譚妄想です。 SAN値も耐久力もぴんしゃんしていて、技能も聞き耳くらいしか変化しなかったのでどうしたもんかなと悩みましたが、仁井谷も衝撃的な目にはあうにはあっていたしこれくらいかなと落ちつけました。 すべてがどうしようもない気まぐれによるものなら、次は自分が――という妄想で、明確な人間関係を築けていないと一人芝居になってしまうなあと反省を込めて夢頼りでした。極力ネタバレを回避したつもりでしたが大丈夫だといいなあ。 改めまして、かいかいさん、サンタさん、無機物さん、そしてキーパーの木枯らしさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者のシャイ様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/05/23 14:15[web全体で公開] |
😶 五月雨屋敷の走馬灯 それから 秋も深まるころ、わたしは絶賛引きこもり生活を送っていた。 寝て、起きて、ぼんやりと時計を見やる。 時計の針が10時を指していても、カーテンはしっかりと閉め切っていたから、いまがいったい朝なのか夕方なのかもわからない。 部屋の外に物音がしないことを確認してそっとドアを開ける。 ドアのすぐ外に置かれているトレイの中にトーストとサラダと牛乳が並べられているのを見ていまは朝なんだとやっとわかった。そんなどうしようもない生活をかれこれ3か月は続けていた。 昔から他人の笑い声が気になってしまう性格だったけれど、あの不思議な体験をしてからは人目のないところでも、誰かがわたしを指さして笑っているような錯覚が止められないでいた。 夏休みの間は笑って放任していた両親も、新学期になっても頑として登校を拒否するわたしを心配たのか、何人ものカウンセラーか何かが入れ代わり立ち代わり家にやってくるようになった。 でも、あの恐怖を知らない人がわたしの何をわかれるっていうんだろう。 最初はにこにこと質問をしてきた彼らも最後には結局ありきたりなことを言ってあきらめ顔で帰っていった。 誰かがいつもわたしを見張っている。 誰かがいつもわたしをなじっている。 誰かがいつもわたしを哄笑っている。 そして昏い、寒い、どこか遠くに連れて行こうとしている。 本当は何かあったかい、きらきらした何かがあったはずの夏の日々。 何とか自分を奮い立たせようとそういった思い出をかき集めようとしても、ふと雑念がよぎって気がそれた瞬間にそれらは幻のように立ち消えてしまって、どんなに目を凝らしても見つけられなくなってしまうのだった。 玄関のチャイムが鳴った。 この時間は最近はお祖母ちゃんもパートに出ているはずだ。 どうしたらいいものか右往左往していると携帯からLINEの着信音が鳴った。 翠からのスタンプが3つ並んでいたのをみてほっと胸をなでおろした。 翠はこんな風に家に誰もいない頃合いを見計らって時々様子を見に来てくれていて、わたしも彼女らと居るときだけは不安を和らげることができていた。 玄関の扉を開けるなり、するりと入ってきた翠に飛び掛かられて目の前が真っ暗になった。アイマスクのようなものをかけられて、続けて耳当てで何も聞こえなくなった。 動転しているわたしの両手を誰かが握ってきて、わたしは捕獲されたリトルグレイみたいな恰好でのそのそと廊下を引きずられていった。 最初は体中から汗が噴き出してきたけれど、ゆっくり確かめるように連れられていくうちに繋いだ両手に懐かしさがあふれてきて、温かいトンネルを丸まった自分がどこかへ押し出されていくようなそんな気持ちになっていった。 歩みが止まり、両手が離された。 続いて視界が開けて、耳に音が戻ってきた。 突然の明るさに、二度、三度まばたきをすると居間に知った顔がずらりと並んでいた。 手を引いてくれていたのはやっぱり阿良川と鴎だった。 翠がアイマスクと耳当てを持って笑っていた。 三村が指さしたテーブルの上には、山盛りのお菓子にジュース、そしてホールのケーキが並べられていた。 そこでようやく今日が自分の誕生日だったと気づいた。 胸に言いようのない感情が込み上げてきた。 みんなで確かに何かを共有したあの夏の日々が鮮明に蘇ってくる。 だれからともなくあの唄を口ずさんでいた。 日差しの強い坂道で、潮の香りのただよう木立で、夕暮れの浜で、確かに聞いたあの唄を。 空気がどんどん軽くなるのを感じた。 明日の終業式来られそう?と聞かれて、我ながらぎこちない笑顔でハーゲンダッツおごってくれるなら、と答えた。 ーーーーーーーー 先日、ダイン様キーパーでJACK.Z 野生の無貌の神様作の「五月雨屋敷の走馬灯」に参加させていただきました。 すごい、これはすごいあおはるですよ。 プレイヤー全員友人で16才で夏休み、不思議なうわさの真相を探るシティもの。これ絶対面白い奴だーと思っていましたが、期待以上のとうとさでした。 PC4人が揃いもそろってインドア派で、屋内シーンのダイスロールにはめっぽう強いのに屋外にでるとポンコツになっていくのも笑えましたし、オカルト部に新聞部というマイナー路線の集団が、探索を続けていくうちにうちとけてガードが崩れていく感じはほんとよいものでした。 というわけで後日譚妄想です。 ほんとうなら圧倒的にハッピーな日記になるはずだったのですが、ふとした油断とダイス神のいたずらで発狂、3か月の一時的偏執症を引き当ててしまったのでした。どうしてこうなった(笑) そんなこんなで、同卓したPCさまたちのお力を勝手にお借りしてしまいました。妄想話と思って流していただければ幸いです。これは小守文乃一生頭あがんないな。 堅物に見えてお茶目な一面もみせてくれた阿良川、何故か対人交渉の一番の矢面にたたされていた三村、破天荒ながらセラピストでもあった翠、リーダーだったはずだったはずの鴎、天に愛された美少女ゲーム実況投稿者の四葉杏様、みんな大好きでした。 サイゼリアでだべったり、LINEタブでしょうもないことを発言しあったり、謎の唐突な〇〇回が発生したり。この面子だったからあの夏の日を体験できたのだなーと思います。 あと翠は絶体絶命のときに精神分析してくれてほんとありがとう。アフター的におおげさでなく一命をとりとめました。 改めまして、木枯らしさん、マダラさん、柏木@さん、そしてキーパーのダインさん、楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者のJACK.Z 野生の無貌の神様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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2020/05/19 14:46[web全体で公開] |
😶 瑠璃色絵画 それから 日傘をずらして空を仰ぐと雲一つない空が広がっている。 陽気も強くなってきた。 額の汗をハンカチで押さえて辺りを見渡す。 往来には半そで姿が増えてきたが、わたしはまだ衣替えするふんぎりが付けられなかった。 右襟が気になって引っ張り上げてから、癖になってきているなと、苦笑した。 家と家の間を縫ってしばらく歩くと目的の看板が目に留まった。 個人宅を使ったささやかな絵画教室で、あまり繁盛はしていないようだった。 研修先の大先生の古くからの知り合いでアートセラピーも行っているそうで、勉強になることがあるかもしれないね、と紹介してもらったのだ。 講師は温和な雰囲気の初老の女性だった。 最初だから何でも好きなものを描いてみてくださいと言われて、スケッチブックと画材を渡されると自然と青色に手が伸びた。 やっぱりここが引っ掛かりどころなんだろう。 絵具を溶きながら描くものを決めようとしたが思い浮かばず、とりあえず平筆で横線を引いてみた。これは空だろうか、それとも海なんだろうか。続いてすぐ下にもう一本。水を都度含ませながら引いたせいで自然とグラデーションが生まれていく。 瑠璃色。ラピスラズリ。青金石(ラズライト)を主成分とした半貴石。複数の鉱物を含むため深い青色から藍色までその色合いには幅がある。しばしば黄鉄鉱の粒を含んで夜空の様な輝きを持つ。 かなり古い時代から見出されていた石で、宝石としてのほかに顔料ウルトラマリンの原料として用いられてきた。有名どころでいうとフェルメールの「青いターバンの女」だ。フェルメール・ブルーなんて呼ばれ方もしているそうだ。とにかく高価で聖マリアやキリストのローブを塗るために使うとっておきの顔料だったらしい。 そんな蘊蓄を思い出しながら、ゆっくりと線を重ねていく。 下半分を塗り終えてしまうと今度は上に向かって同じように青を広げていく。 やがて紙いっぱいに線を引き終えると体を反らして眺めてみた。 これは一体何だろう。と考えても思いつけずにただ濃い青に目が吸い込まれた。 そこに隠された何かを掬い上げようとする。 それは無垢な深淵であり、穏やかな信頼でもあり、秘めた孤独でもあるように感じた。 わたしが描き上げた様子を見て先生がやってきて、いいですね、とうなずいた。 意味はわからなかったが、その落ち着いた笑顔と声の調子からはそれが心からのもののように思えた。 先生に礼をして教室を後にした。 喫茶店に入ってスマホを眺めていると占いページが目に留まった。 ラピスラズリ。パワーストーンとしては自他の邪心を取り除き、良い方向に導く。長期的な視野での試練を与える。 隣の席では大学生らしき男女が遊びの相談をしている。 そうか、そろそろ大学も夏休みか、と思い出して先日追加されたばかりの連絡先に指を伸ばした。 ーーーーーーーー 先日、そばうどん様キーパー紅音様作の「瑠璃色絵画」に参加させていただきました。 いやあ、「袋の人間」でも思いましたけどタイムリミットものはどきどきしますね。 わいわいやりながらも終始残り時間が気になっていました。 導入の壁紙がとてもおしゃれで、セッション中ずっと色彩豊かなイメージがついてまわっていたのも印象的でした。 で、このセッションの募集要項にもシナリオ製作者様のコメントにも、ロストはあるにはある、発狂もほぼない、とのことだったのですが、当パーティでは1名重症、1名不定という謎の現象が起きていしまいました。ダイスって怖いですね。 かく言う自キャラの河雲聖来が重症者でした(笑) しかもアイデンティティと言っていい精神分析をしくじって同行者の不定を解除できなかったのも、実は河雲聖来だったのでした。本当にダイスって怖いですね(笑) というわけで後日譚妄想です。 無事に揃って脱出でき、目立った後遺症もなかったハッピーエンドだったので爪痕をどうしようかなと悩んだのですが、未熟さを痛感しながらも支えを受けての再スタートといった心持にしてみました。 信頼できる上司に、天真爛漫な蛍ちゃんや、気配りのできる年下の智也君、頼れる貫禄の己斐さんと周囲が盤石の布陣なのできっと明るい未来に続いていけるのではと思っています。 また、今回のセッションでは、「ピース・メイカー」でご一緒させていただいた物部さんとの再同卓でき、「クレイジーガーデン」でご一緒させていただいたしまさんに来ていらして、縁はこうやって広がっては繫がっていくんだなあと4戦目にして感慨深くもありました。 改めて、すぬさん、物部皐さん、柏木@さん、そしてキーパーのそばうどんさん、楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の紅音様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでくださいね。
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2020/05/17 02:05[web全体で公開] |
😶 クレイジーガーデン それから 晴れ晴れした気分! あんなにやきもきした1週間はテスト期間にだってなかった。 もう大丈夫だよね?って何度も何度も胸に手をあてたっけ。 あの誘拐事件から無事に家に戻ったとき、安心でお母さんにわんわん泣きついたりしちゃたけど、それだっていま思い返すとちょっと恥ずかしい。あのお父さんが、あのお父さんが、ちょっとうるっときてたのをわたしは見逃さなかったよ。 ご飯も残しちゃったりして心配させちゃってたんだろうなあ。 もう大丈夫だってわかったとたんご飯をおかわりしちゃう現金なわたしだけど、ほっとした感じで顔を見合わせてるふたりだったし、これも親孝行だもんね。 ニュースで犯人が捕まったって見た時、クラスでも少しざわざわしたけど、わたしは実は少し前に浜辺さんからこっそり教えてもらっていたのだ。 今度、快気祝いっていうの?だってしてもらうんだ。浜辺さんと、矢矧さんと、鈴木さんとみんなで。 ケーキ屋さんがいいなって思ってるんだけど、男の人は恥ずかしがるかしら。大人だから平気かな? ケーキはチョコレートのがいい。季節のフルーツも大好きだったけど、ちっさい種を見るとまだ、うっ、てなっちゃうからね。 家族でも先生でもない大人の友達がいるのって、ちょっと特別な気分。 わたしはもうこうやって元気100倍なわけだけど、寝るときに時々思い出すあのときのすーっと寒くなる感じ、あれにはまだまだ慣れそうにない。 そんな時は無理せず起きだして、サーブのポーズ。 ポーズをゆっくり繰り返しながら思い出す。イメージする。 ばっちり決まった鈴木さんの必殺キック、てきぱき調査してる矢矧さんのきりっとした顔、しっかり抱きとめてくれた浜辺さんの温かさ。 気分が落ち着いてベッドに戻ろうとしたら、机の上に置きっぱなしだった進路調査の紙が見えた。 何にも決まらないでまっしろのままだったけど、いまだとそうだな、婦人警官なんて良いんじゃない? 指でピストルを作って鏡に向かって、ばーんってやったあとさすがに恥ずかしくなってベッドに潜り込んだ。 頭まで布団をかぶって、ひとしきりじたばたしてるうちにぐっすり眠ってしまうわたしなのであった。 ーーーーーーーー 本日、Adam様のキーパーで詐木まりさ様作の「クレイジーガーデン」に参加させていただきました。 クローズド探索もの楽しい! しかもほぼほぼパーフェクトクリア! もともとリアル脱出ゲームも大好きな人間なので、密室に閉じ込められるとがぜんやる気がわいてきてしまいまして、不安なはずのキャラクターとの折り合いをつけるのが難しいやら楽しいやらでした。 また、探索者メンバーの中では最年少かつ唯一の未成年キャラでしたので、あっちこっちひっくり返しては見つけたものをお姉さんお兄さんの元にお届けするという使いっ走りプレイがたのしゅうございました。 それにしても、マルチリンガルインテリに婦警さんに探偵って勝ち確メンバーですよねwキャラクター的には頼りっぱなしにさせていただいておりました。 というわけで後日譚妄想でした。 そう言えば連絡先交換する場面なかったなあと思いつつも、いやするでしょ、たぶん、きっと、するよね? 浜辺さんの傷の具合はどれくらいで大丈夫になるんだろう。何てことないよって顔しそうだけど。 おそらく今回の同行者さんにはすごく影響されたと思うので、そういうところも年若いキャラクターを使う楽しみだなーと発見でした。 しまさん、Kadenaさん、めいろんさん、そしてキーパーのAdamさん、楽しい時間を本当にありがとうございました。シナリオ製作者の詐木まりさ様にも感謝です。 またよろしければ遊んでやってくださいまし。
りちゃ | |
2020/05/15 01:01[web全体で公開] |
😶 ピース・メイカー それから どうして。もし。たら。れば。 何百回目かになる自問と共にスマホの画面に目を落とした。 そこには村で知り合った一人の少女のアカウントが映っていた。 もちろんそれに答えるものはなく、どんな答えを求めているのか自分でもわからない。 それでも自問を止めることができないで、しばらく一覧とトークの画面を行ったり来たりしたあとで画面を閉じ、思いつくままこの手記をつけている。 村から戻ってきた俺は、いろいろな人たちからあの時のことを尋ねられた。 家族から、職場の同僚から、古い友人から。 あるいははれ物を扱うように、あるいは訝しむように、あるいは気遣うように。 大丈夫か、何があったんだ、何かしてあげられることはないか。 その全てに俺は、わからない、と答えるしかなかった。 わからない。わからない。わからない。 自分でも自分がわからないのにどうして他人にそれが伝えられるっていうんだろう。 それが他人のことならなおさらだろう。 それでも問いかけずにはいられない。 どうして。もし。たら。れば。 あの時偶然同行することになった人たちと後日話すこともあった。 体に後遺症が残った人もいれば、五体満足な人もいた。 けれど話していると共通して、みんなどこかずれてしまったように思えた。 何度も聞いた話もあれば、はじめて聞く話も合った。 そのどれもが現実味がないくせに妙に心に溜まっていって、たとえばいま自分たちがいる「ここ」が、実は本当の何かの上にかぶせた布切れなんじゃないか、そんな風に思えてきてしまう。 職場では、肝が据わったと言われることが多くなった。 実際、同僚が口元を思わず抑えるような現場でも、あまり心が動くことがなくなった。 それは自分が本当の何かを目にしてしまったからじゃないだろうか。 すべてのピースがかちりとはまったと感じたあの時から、俺のやるべきだったこと、感じるべきだったこと、そんな何かが決定的になってしまったのかもしれない。 けれどもそれらは叶うことはなかった。 背中にずしりとした重みを感じる。 宙ぶらりんになってしまった俺は、あれからずっと、頭上の何かにかじりつきながら見えない足元に地面を探してもがき続けているんじゃないだろうか。 手記に戻ろう。 職業柄、いろんな人の手記を目にすることがある。 そんな中にときどき、誰にあてたものでもない、取り散らかっているようでいて妙に詳細な手記を目にすることがあって、そういう手記には何故か決まって引き付けられた。 彼ら彼女らがどうしてそんなことをするのか今ならよくわかる気がする。 彼ら彼女らは、書くことで自分をここにどうにか繋ぎとめていたのじゃないか、そんな風に今は思える。 いま、俺がこうしているように。 開け放した窓から風が吹き込んでカーテンを揺らした。 視界の端に白いレースがふくらんで踊っている。 笑い声が聞こえてきた気がした。 ーーーーーーーー 先日、Rounin様キーパーでこりかん様作「ピース・メイカー」に参加させていただきました。 いやあ、やられました。これがクトゥルフか! 実に7時間以上のセッションでしたが、それを感じさせないお話で、終わった後は眠気と疲労感以上に心に鉛の塊をずどんと残されました。 例によってネタバレできないので、あれがこうしたことも、あばばーをごぼぼーしてしまったことも、せいやそいやがわっせわっせだった衝撃も書けないのがもどかしくも何かアウトプットしないのは勿体ないような体験でした。 というわけで後日譚妄想です。 何が起きても最低値しかSAN値が削れず、逆にクリア報酬で初期値から20もSAN値が増えてしまった鋼メンタルな渋谷八郎太でしたが、狂わなかったのじゃなく、狂えなかった結果なんじゃないかという気もしています。 この世とこの世ならざるものの狭間が埋められないときに人は狂ってしまうのだとしたら、この世ならざる方にすっぽり心を置いてしまったとき人はどうなってしうまうんだろうという妄想でした。 また、今回はキャラクターとプレイヤーの差があることで難しく、けれど楽しかったセッションでもありました。メタ的にはこっちに行くべきなんだろうけど、キャラクターがそちらに行ってくれないジレンマ。それでも最後にはなんとかキャラクターがしたいだろうことをさせてあげられたかなあと思います。 その過程で寄り道や手間を増やしてしまって、同卓してくださったみなさんには申し訳ないなあと思いつつ、一緒にお話をくみ上げられたことへの感謝に堪えないです。 物部皐さん、木枯らしさん、デモさん、紫芋さん、そしてキーパーのRouninさん、本当にありがとうございました。シナリオ製作者様のこりかんさんにも感謝です。 またよければ遊んでやってください。