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😶 腕に刻まれる死 それから ある日の夕方、わたしは自室で大学のレポートを仕上げていた。 あらかた書き終えて思い切り伸びをすると、肩がぽきりと鳴った。 思わず、あ、と小さく声を漏らして、そのままゆっくりと腕を下す。 異常がないことを確かめると、ため息をついて背もたれに倒れこんだ。 お医者さんはもう何ともないと言ってくれたけれど、体中がこわばるようなあの感覚はまだありありとした恐怖としてこびりついていた。 手首を返して腕時計を見ると、秒針がかちこちと時を刻んでいる。 同時に、その下の皮膚越しに血管が同じリズムで脈打つのを感じる。 次第に紅い血潮が次第に熱を帯び、どろどろと蠢くような錯覚を覚えた。 目が、霞む。 脈動が、早まる。 イメージが視界いっぱいに広がっていく。 そして冷えて固まったところからぷつりぷつりと人の顔が浮かんできて、口々にわたしを攻め立ててきた。 お前のせいだ、きっとうまくいかない、どうして助けてくれなかったの、楽にしてくれ、許さない。 ぞろり、ぞろりと腕から這い上る恐怖に顔を伏せそうになる。 と、部屋のドアがノックされる音がしてわたしは椅子から立ち上がった。 ドアをあけた母さんが、夕飯出来たからそろそろ降りてきなさいと声をかけてくる。 わたしは振り返らないまま、わかったすぐ行くよと答えた。 冷や汗が一筋、背中を伝っていく。 ひとつ、ふたつ、みっつ…。ゆっくりと数を数えながら深く息を吸って吐く。 それから、ぱん、と両手で頬を叩いた。 頬がじんわりと熱くなって、段々と気持ちが落ち着いていくのを感じた。 夕飯の食卓を囲みながら、父さんと母さんといつものように他愛のない話をした。 大学の話や、父さんの新しい赴任先の話、料理の味付けの話や、最近よく連絡を取るようになった年下の女の子の話。 物静かな父さんとハキハキした母さん、芯の強い父さんと心配性な母さん。 二人のやり取りを見ていると、ぴったりはまったパズルのピースみたいに感じたし、わたしはこの二人の娘なんだなとも感じた。 そうして三人で食卓を囲んでいられることの運の良さを噛みしめた。 おかわりいるでしょ?と手を出され、ごめんなさい、と言いかけて、ありがとうと茶碗を差し出した。 父さんにも母さんにもまだ言っていないけれど、わたしは大学を出たら父さんの働く研究所への就職を目指すことに決めた。 まだ未熟なわたしだけれど、忘れたお弁当を届ける以外にもこの幸福な食卓のためにできることがある気がしたから。 この腕に伝わるものはもう、死に向けて刻まれる印だけではないのだから。 ーーーーーーーー 先日、Adam様キーパーで内山靖二郎様作の「腕に刻まれる死」に、電子工学科2年生、音無 依子(おとなし よりこ)で参加させていただきました。 ずっといつかは行きたいシナリオランキング上位だった腕に刻まれる死にやっとやっと参加することができました。SeRA研究所を訪ねる理由にせっかくなのでと職員の父親に会いに行くをチョイスしたのですが、キーパーのAdamさんがにょきにょきとキャラの名前とグラをはやしてくださいまして、それがまたイメージぴったりで。それもあって、思い入れたっぷりに演じることができて大、大満足でした。また、とあるシーンでの100ファンは見学席大絶賛だったみたいで、そちらは当時の絶望感との温度差にいまだに落ち着かない気持ちです(笑) というわけで後日譚妄想です。 ごめんなさいが口癖の依子だったのですが、色んな人にわがままを受け止めてもらったり、はっぱをかけられたりと克服していってくれたと思います。探索メンバーが揃って長身だったのでコンプレックスだった身長のことを気にしなくて良かったのもよかったかなあ。最後の言葉はあれでよかったのか、とも悩みましたし悩んでますけど、ともあれひとつの答えとして心に刻んでいきたいと思います。 改めまして、Syeruさん、ネズミさん、カニまろさん、キーパーのAdamさん楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者様の内山靖二郎様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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