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😶 カーネーションは凛として枯れる それから (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)2020年10月。 僕は野薔薇零の墓前に立っていた。 小雨がしとしとと降り、他に誰もいない霊園の静けさをことさら際立てていた。 霊園からは街が一望でき、そこにはビル群やテレビ塔が黙とうを捧げるように厳かに林立していた。 僕らは罪の意識という脆い砂の土台に建てられた尖塔みたいなものだった。 他にどうすることも出来ずひたすらに天を目指した。 絶対に届かないと、絶対に終わることがないと、心のどこかで気づきながら。 天才なんていう肩書は、その孤独で純粋な祈りと懺悔と呪いの副産物でしかなかった。 もう君の姿を幻に見ることも少なくなってきた。 凄惨な光景と言っていい幻覚だったけれど、それが見えている間は僕は君のことを、君が背負っていたものの一端を、僕が与えられた救いを、そして君にあげられなかったもの全てを鮮明に思い出すことができた。 『かっこいい、面倒見のいい、一生懸命な零ちゃん。』 君のまねごとをしながら、君の足跡を少しでも辿ろうとがむしゃらに生きた2年間……人が変わったみたいだって訝しがられたりもしたけれど、喜んでくれる人たちもたくさんいたよ。 島での日々が、館の主との語らいが、そして君の在り方が、僕に思い出させてくれた温かかった母さんの思い出。 僕の話を静かに嬉しそうに聞いてくれた母さん、学校からの苦情に困った風にしながらも頭を撫でてくれた温かい手、好き嫌いで食べ残しをしてよく叱られたこと。 そんな全部が、認めたくない罪と一緒に目を背けていたそれら全てが、僕に罪と一緒にそれでも生きる意味を教えてくれた。生きなおさせてくれた。 僕は君に救われたんだ。 だから同じように君にも思い出させてあげたかった。 あかりさんとの大切な日々を。 あの夢の光景の他にも広がっていたはずの景色を。 止まらないで、と言ったというあかりさんが望んでいただろう行く先を。 脆い砂の上にそびえ続ける尖塔の、足元に土台を打って、杭を打って、凛とした君が君であるままに、それでも建ち続けていられるように。 そうやって僕は、君の共犯者になりたかったんだ。 クグロフの包みと、紅茶の茶葉を墓前に供えた。 檸檬のクグロフをひとつとり、齧る。檸檬のかすかな苦みがゆっくりと口に広がった。 天を仰いで唇をかみしめる。そうやって雨が降りかかるにまかせて立ち尽くした。 しばらくして雨はあがり、雲間から光が差し込んできた。 傘をたたむと、墓前に向き直り、そっと触れる。 もう君の姿を幻に見ることも少なくなってきた。 でも、なんとか間に合ったよ。 これからどうするかはおいおい考えるけど、ちょっと旅に出ようかと思う。 あちこちを周って、そうして死にぞこなった意味をもう一度考え直してみるかな。 答えが見つかったらまた会いに来るよ。これが今の僕のエゴだ。 じゃあね、元気で。 季節外れの訪問者が立ち去り静寂を取り戻した霊園の片隅に、小さな温室が佇んでいる。 その温室には、時刻や季節の移ろいにあわせてさまざまな灯りが差し込んで、そこに植えられた素朴な野ばらを包むだろう。 朝露が弾く柔らかな朝日が、力強い日差しが、切ない夕焼けが、囁くような星の瞬きが、静かな月明かりが。 いつまでも。いつまでも。 ーーーーーーーー 先日、あひる様キーパーで英エイスト様作の「カーネーションは凛として枯れる」に建築の天才、都築 建(つづき たける)で参加させていただきました。 何度か一緒にまわらせてもらってるメンバーだったのですけれど、みんな会うたびに個性が磨かれて素敵になっていて、マダラさんの時浦君は熱い語りと心が毎度ずんと響いてきて何度も耳目が釘付けにされたし、こるめさんの二階堂さんは周りへの気遣いを持ちつつ押さえるところはしっかり押さえて素敵だったし、柏木さんははらはらどきどきさせながら他では見られない展開を見せてくれました。そしてもちろんこの濃密な舞台を作り上げ、気持ちを引っ張り続けられる回しをしてくれたキーパーあひるさんも含めて、豪華なメンバーだったなと本当に本当に思います。 というわけで後日譚妄想です。 こんなん泣くわあああああ。セッション中もうまく喋れないくらい泣いて、終わってからも泣いて、これを書いてる今も泣いてます。どうしようもなく悲しいけれど、それだけじゃないです。野薔薇零という存在は、都築健に、そして都築健を通してプレイヤーの自分にも大切なものを残してくれました。大げさに言うと生きる意味のその一つと言っていいと思います。 大変で、大変で、本当に大変な2日間と6時間だったですが終わってみればあっという間だったなと思います。事前にあひるさんから登場NPCの何人かは参加者を見ながら、NPCたちの生い立ちから組み上げると聞かされていて、これは大変なことになった、と思っていたのですが、予想を遥かに超える厚みでした。自分は動き出しが遅くなってしまったこともあって、少しでも並んで立てるように積み木を積むのに必死でした。崩されるために積んだのですが、何も残らないのだけは絶対に嫌で、空回りはしてたとしても、全部を振り絞って頑張れたなあと、それだけは言えると思います。 都築としてはあの時あそこで死んでもいいやと思った場面があったのですが、エミリアちゃんとの友達設定やダイスに生かされてしまったので、生き残った人間がやるべきことをしよう、したい、と思った後日譚妄想でした。この翌日からの皆からの連絡には、世界のあちこちの写真と一緒に都築の近況が届けられると思います。 結局、どうすればよかったのかは聞かなかったし聞けませんでした。掬い取ることができなかったそれらは彼女のものだと思ったし、こちらは想像して向き合って行こうと思います。 あひるさんには大切なキャラクターだった彼女と引き合わせてくれて、申し訳なさもありつつ、それにも増してとにかく感謝でいっぱいです。 いつもはネタバレ避けた日記に頑張ってしてるのですが、今回はさすがにネタバレは回避できてる自信もつもりも皆無だったので畳んじゃいました。 改めましてマダラさん、こるめさん、柏木さん、そしてキーパーのあひるさん苦しくも楽しい時間をありがとうございました。シナリオ製作者の英エイスト様にも感謝です。 またよければ一緒に遊んでください。
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