フォレストさんの日記 「心理学的観点から見る、良いシナリオを作るための備忘録」

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フォレスト
フォレスト日記
2023/01/25 21:03[web全体で公開]
🤔 心理学的観点から見る、良いシナリオを作るための備忘録
 どちらかといえば自分の為の備忘録に近いが、雑記として日記に残しておこうと思うシナリオを作るうえでの心得。
 ぶっちゃけ長い上、自分の主観だらけで参考にならない可能性も高いので説教臭いのが苦手な方は読み飛ばしてください。





 まず、シナリオを作るうえで重要なのはターゲット層(PL)の欲求を理解しているかということ。具体的にはマズローの五段階欲求を満たすものであることが望ましい。



▼第一段階:生理的欲求▼
 三大欲求[食欲・睡眠欲・排泄欲]を始めとする、これしなきゃ死ぬぞ? っていう基本的な欲求。シナリオで例えるならば“突然始まる無人島生活”のようなものが該当する。食料や水、体温の確保等をイベントで成功させるたびに安心感を得られるようになるシナリオ。“ゾンビ映画”的なものも当てはまるが、それはどちらかというと後述の【安全欲求】の方が主軸となる。
 ちなみに三大欲求は排泄欲が性欲と表記されることもあるが、厳密には性欲は第一段階の欲求ではない。広義的に含まれてしまっているだけなので注意が必要である。
 この段階が満たされると、第二段階へと進む。



▼第二段階:安全に対する欲求▼
 読んで字のごとく、暴力、病気、飢餓など死にかかわるものを遠ざけようとする欲求。ホラー系シナリオやクローズドなクトゥルフ系シナリオは大体ここが主軸となる。シナリオを作っていてホラー感や危機感が出せないと思ったら大体この欲求に対する刺激が足りていない。具体的には“未知のなにかによるPCの死の可能性の示唆”が足りていない。『薄暗い地下牢にあなたたちはいた』では恐怖感を感じないが、『あなたは棺桶の中にいた、ライトをつけると天板には無数のひっかき傷と血まみれの剥がれた爪が突き刺さっていた』という演出ならば恐怖感を感じることとなる。



▼第三段階:社会的欲求▼
 何かに所属したいという欲求。学級、会社、組織。『日本に生まれ、日本人であることに誇りを持つ』みたいなのもこれ。孤独感から遠ざかろうとする欲求。たいていのPCは最初から何かには所属しているので関係はないが、ここには宗教団体や政治団体が含まれるのでどちらかといえばエネミー側に関係してくる。
 “いじめられて不登校になっていた子供たちにスーパーパワーを与えて学校法人をすべてめちゃくちゃにする”みたいなシナリオがおおよそこの欲求を満たす。有名な手法として、宗教法人がよく使う『あなたは特別な存在です、私たちと一緒に神を信じれば孤独ではありません』といった話術、陰謀論系がよく使う『世界の真実に気付いたあなたは他の一般大衆より優れている。この事実に気付かない他の一般人は危機感を持つべきだ』という終末論。こういった甘言でその他大勢のエトセトラが敵に回るものとなる。

 あと普通にPL自身が孤独感を感じてTRPGを始めていることもある。社会的孤立感から自分でも仲良く楽しめるグループに帰属したいという欲求。たぶん全員持っている。この欲求の解決方法は普通にTRPGを楽しむことなのでシナリオ制作に関係してくるような要素はない。もしシナリオに役立てるなら『私たちと一緒に“レジスタンス”をやらないかい!』みたいな展開だが、……普通に必須イベントの範囲だと思われるので割愛する。



▼第四段階:承認欲求▼
 要するに“褒められたい”という欲求。TRPGに限らず、現代人は大体これが不足している。TRPGでシナリオを作るうえで最も重要な要素といっても過言ではない。特にTRPGは“手軽にできる異世界転生”と言われるくらいにはプレイヤーに優しい。また優しくあるべきだと私は考える。

 ただし注意点として、雑に褒めるようなセリフをNPCに言わせるだけでは効果が薄い。NPCが褒める言葉を使うことは重要だが、PL次第で褒めてほしいポイントが結構違ったりする点に注意すること。例えば“ロールプレイで場をにぎやかにした自分のキャラクターを愛してほしい”、“ぼくのかんがえた最強のキャラクターの強さに驚いてほしい”、“このシナリオに必ず必要な存在として周知してほしい”など様々である。
 これらを個別に対応して褒めるのは精神分析の専門家であるメンタリストの仕事であり、普通の雑多なGMでは対処不能なうえ、4~5人を同時に分析するのはメンタリストでも禿げ上がる。なので“褒める”気構えは本当に心構えとして覚えて置く程度でいい。“褒める”行為は人間関係を潤滑にする、他者尊重はTRPGの最終目標地点と考えてもいいと私は思う。

 ……ヤバいのは、“褒める”という行為を忘れてシナリオを作ってしまうことだ。ようするに“こんなすごいシナリオを作った私を褒めて!”ってGMがなってしまうことには注意しなければならない。
 これはシナリオに限らず漫画や小説でもそうだが、たいていの場合読者側が楽しめない内容になっていたりする。褒めなきゃならない対象がPLじゃなくてGMになっているのだから当然だ。
 【作り手が作っていて楽しくなかったら、読者が楽しんでくれる作品になっている】というのがクリエイターの基本となる。むろん、読者も作者も楽しめるのが一番だが、PLが楽しんでこそのTRPGなので、GM側は滅私奉公の気持ちを忘れるべからず。
 


▼第五段階:自己実現欲求▼
 なりたい自分になろうとする欲求。皆に褒められて承認欲求が満たされた後、“アイドル”だったり“ヒーロー”だったり夢として思い描いていた存在になろうとする欲求。
 ぶっちゃけここまでくるとキャラクターのエンディングかアフターの話なのでGMが用意するようなことはない。好きに夢をかなえてほしいところ。



(おまけ)▼第六段階:自己超越欲求▼
 五段階欲求って名前なのになぜかある六段階目。
 夢をかなえて“アイドル”だったり“ヒーロー”だったりになった後に得られる欲求。すべての欲求を満たした後、自分の限界を超越して世界全体を良くしたり、世界から貧困をなくそうと考えたりなど、多くの他者や世界を救済しようとする欲求。

 そう、いわゆる敵側の思想である。“世界を変えたい”という漠然とした思想をもった敵は、意外なことに第五段階までのすべての欲求を満たしているハイスペックな存在である可能性が高いのだ。

 ただし世界を変えたいエネミーがすべてそうとは限らない。たいていの場合不条理な社会に対するルサンチマン(妬み、嫉妬心、強者に対する不平等感)を爆発させただけの存在であることも多い。両社の違いは世界のルールを破壊した後、“王”となって責任を取るか取らないかだ。

 だが、私個人としてはこの自己超越欲求をシナリオに組み込むことは推奨しない。
 小説家スティーブン・キングの言葉だが、『矮小な人間ほど、壮大な物語を作りたがる』という話がある。
 “エモ”を求めるならば、敵側に“憐憫”や“小物に対する怒り”の感情を向けたほうが記憶に残りやすい。人は身近な感情や道理性がないとリアリティを感じられないようになっているためだ。






 少々長く書きすぎてしまった……💦 しかしこれで自分がシナリオ作りに困ったときはここを読んでアイディアをひねり出せることだろう。

 もしこの日記を最後まで読んだ物好きな人がいれば、ぜひ[行動経済学]や[犯罪心理学]で実際の事例を調べてみよう!
 心理学はシナリオのネタの宝庫! お勧めしますぞ!
 (*’▽’)
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レスポンス

一匹の死んだヌタウナギ(X連携)
一匹の死んだヌタウナギ(X連携)フォレスト
2023/01/26 00:43[web全体で公開]
> 日記:心理学的観点から見る、良いシナリオを作るための備忘録

おおおおお!
シナリオに欲求階層説を当てはめて作成するというわけですか!!
こりゃまた斬新!
しかしまぁ…無意識で行っていたものかもしれませんな
安全の欲求をおびやかすものとしてホラー系を持ってくるのはなるほどと思いながら、気付かぬうちに使用していたりしますねぇ
しかし言語化してるのとしてないのではシナリオの精緻な部分で差が出てくるやもしれませんね

承認欲求については難しい面があるのは認めますが、ただなにもシナリオに折り込まずともいいしGMのみがそこまで悪戦苦闘することもないかと思います。
実際に承認欲求を起こすのは PLでありPCではありませんので PL発言等でGM含んだ参加者全員が一人のPLの承認欲求を満たす行動を行うことは可能になります。そうすればGMの負担は分散するでしょう。
さらに「おぉぉ!」「なんと!?」「マジか!!」等の感嘆詞を利用するだけで賞賛という言葉を使わずともある程度は円滑になるんじゃないでしょうか。
多分考えるともっとアイデアの種は出てくると思います。

あとは…なんていうかな…極端な例だと自分は戦闘キャラだから戦闘始まったら呼んでくれとか、私は戦闘役立たずだから地蔵になってるとか
PCのスキルや能力の専門分野以外では関わり合いを持たないプレイングは PLの承認欲求を満たす行動が取れないばかりかパーティーという所属の欲求(社会的欲求)すら脅かしてしまうので気をつけたいほうがいいのかなぁと思いますが、そうなるとシナリオどうこうの話じゃなくなるのでこれにて

長々と失礼しもうした

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