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😶 最後の大隊の侵攻 虎谷竜希の後日談 (▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)夜。ふらふらになりながら、実家に帰ってきた。少し中を覗くと、もう深夜になるのに慌ただしく、オーヴァードになって鋭くなった鼻には焦げた匂いや血の匂いが伝わってくる。…酷い惨状が予想できて、思わずこぶしを握り締めた。 「ん…?…あー!!!お嬢!!!お嬢が帰ってきてる!!!」 「お嬢、ご無事ですか!?お怪我は!?ああ、服もボロボロに…」 「今、組長呼んでくるッス!!姐さんもすぐ来るっスよ!!」 屋敷の入り口で立ち尽くしていた私に気が付いたのか、組員がわらわらと寄ってきた。あちこちに包帯が巻かれ、すすにまみれた姿だった。それでもこちらに元気な姿を見せていた。…こちらにきた組員は、だが。 「…何人…」 「え?」 「…何人、亡くなりましたか。何人、重症を負いましたか。…このシマに…私の守るべき街に、どれだけ被害がでましたか…!?」 みっともなく声が震える。必死に動いている内は、まだ良かった。でも。 宙に浮かんだビルから脱出した後に見た景色が。 救助や消火に動き回るエージェントや有志の人々の姿が。 けたたましく響く叫び声と泣き声が。 強く強く、私を責め立てているように思えた。――お前がモンティナ少佐の企みに気が付いていれば。一度詰め寄ったあの時に無理やりにでも殺していれば。もっと早く情報を集めることができていたら。ここまでの被害は出なかったのだ。――そんな声が頭の中でこだまする。 組員たちの慌てた顔が目に入る。きっと酷い顔色だろう。こんなことをしていては邪魔だろう。でも、止められなかった。衝動のままに叫んだ。 「私のせいなんだ!!私が、止められなかったから死んだ!!怪我をした!!何が…何が『力には自信がある』よ!!!結局守れなかった!!!!…こんな…こんな役立たずな私に優しい言葉をかけないで…!!!」 ああ、最悪だ。ただでさえ忙しいのに、こんなやつあたり同然の言葉を彼らに向けるなんて。何も周りは悪くないのに。ぐるぐると黒い感情が沸き上がってくる。 「竜希」 それを抱擁と言葉で霧散させられた。龍の入れ墨が彫られた逞しい腕は、父のものだった。そっと顔を見ると、いかつい顔に優しい笑みをたたえていた。 「…状況は聞いてる。その上で言う。…お前は悪くない。」 「っ!でも!!」 「竜希は悪くない。お前は自分のできる最善を果たした。…お前も分かっているだろう?お前の上司がどれほど有能な男か。お前みたいな若輩が気付く事は難しかっただろうよ。…状況を的確に判断して、救援を求めて、情報を必死に集めて。お前はしっかりと動いていた。…違うか?」 「…違わない。」 「だろう?やっぱりお前の所為じゃねえよ。――そして、上司を失って悲しむ心も、悪くない。」 ヒュ、と喉が鳴る。だって、だってあの人は。街を地獄に作り替えた張本人で。街からすれば自分の都合でこちらを傷つけた悪いやつで。 「この街を壊したのも上司のやつだが…お前にとってはそれだけじゃないんだろう?…いいんだ、悲しんで。自分の近しい人が死んだ事を悲しむのは当たり前だ。…それに罪悪感を感じることはねぇよ。」 ――変わり者ではあったが、とても尊敬していた。しょっちゅう物を壊す私を、見捨てないで面倒を見てくれた。あの硬い体に守られて、なんども助けられた。あの人の指示の下なら、どんなヤツにも負けない気がしていた。見るたびに食事をしていて、時々ご相伴にあずかったりもした。あの人のいたずらに巻き込まれて、呆然としたこともあった。……残酷な非日常の世界だというのに、とても楽しかった。 いわばこの街の仇ともとれる人物なのに、彼について思い出せば楽しい思い出ばかりだった。それをこの街への裏切りだと思っていたけど…そうか、悲しんでいいのか。 ずっとこらえていた感情が零れ落ちる。私は父の腕の中で、そのまま泣き崩れた。 ねぇ、少佐。私はあなたを否定しました。この街を地獄にしたあなたを許すことはできませんでした。…あなたを否定したことを忘れないためにも、私はこの街を守る。最後に誓った言葉は嘘ではありません。…でも、今だけはあなたを失ったことを、悲しませてください。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ゆきりん様GMで行った、DX3rdのセッション「最後の大隊の侵攻」PC1の虎谷竜希の後日談でした。目まぐるしくまわる状況の中で必死に動き、最後には尊敬する上司を失った竜希。許せない気持ちも、悲しむ気持ちも、全てを飲み込んで。竜希はこの街を守るために、前を向き続けるでしょう。そんな後日談でした。 GMのゆきりん様、一緒にプレイしたひら蛾様、ナベ様、紅音様、イサミ様。とても楽しいセッションをありがとうございました!また、ご一緒しましょう!
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